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2024年5月2日展望を知る

レジなし無人決済×パーソナライズで小売業の課題を払拭する「Catch&Go」

利用者がレジを通さず商品を自由に持ち出せる。そんな小売店が日本でも実現し始めた。NTTデータのデジタル店舗運営サービス「Catch&Go」は、小売業の課題解決のみならず、データ活用による新たな展開も見込めるという。
  • 本記事は日経BPの許諾を得て日経MOOK『リテールDX2024』(日本経済新聞出版)より転載しています。
目次

小売業の喫緊の課題解決へ すでに導入の検討は現実的

小売業が抱える課題は多々あるが、足元で深刻なのは労働人口の減少や人件費の高騰だ。近い将来、売上拡大どころか、現状維持さえ難しくなるかもしれない。
こうした課題の解決につながるものとして注目されているのが、NTTデータが提供するデジタル店舗運営サービス「Catch&Go」。このサービスは、レジなし・無人決済の店舗を実現する。
利用者が事前に自分のスマートフォンにインストールした専用アプリをゲートにかざして入店し、商品を持って店外へ出ると決済される仕組みだ。利用者はアプリに決済手段を登録しておくだけで、商品を自由に持ち出せるようになる。
類似のサービスとして、セルフレジを導入する小売店が増えている。これについて、NTTデータ法人アセットベースドサービス推進室部長の神山肇は「Catch&Goなら、小売店の人材難の問題の解決、利用者の利便性の向上、いずれにおいてもセルフレジを上回る効果が期待できます」と話す。
店舗の運営期間が長くなるほど、投資コストに見合う可能性が高くなるのも特長だ。Catch&Goを導入すると、出店コストは既存の店舗よりも嵩む。来店客がどの商品を手に取ったかを認識するシステムを構築するには、店内に多数のカメラや重量センサーを設置する必要がある。一方で、運営においては人件費を抑えられるメリットが大きい。
神山によれば「導入コストも下がりつつあります。店舗の売上にもよりますが、投資コストの回収期間は一般的なフランチャイズの店舗よりも短くすることも可能になります」とのことだ。

路面に日本初出店 行動データ収集をポイントに

2023年10月には、イオンフードスタイル横浜西口店内に、ダイエーが運営するCatch&Goを導入したウォークスルー店舗がオープンした。路面のスーパーにウォークスルー店舗が併設されるのは日本初(※)だという。
実はダイエーとNTTデータは2021年から共同で、NTTデータ社内にCatch&Goを導入したウォークスルー店舗を運営してきた。路面のスーパー内での出店は、そこでの実証実験の結果に基づく。ダイエーは、人材難の問題の解決と利用者の利便性の向上の双方の観点から、出店する価値があると判断したのだ。
神山は「これからは、利用者の行動データの収集もポイントになる」と付け加える。
例えばネットショッピングにおいては、利用者の購買履歴に基づくレコメンドや、利用者と似た行動履歴を持つ利用者の購買履歴に基づく協調フィルタリングが当たり前になっている。リアル店舗にはないネットならではのサービスだ。
Catch&Goを導入する店舗では、店内に設置したカメラを使って顧客の行動データを収集し、ネットと同様のレコメンドや協調フィルタリングを実装できるようになる。
行動データを多く集めるほど、パーソナライズの精度は向上する。企業は、これまでリアル店舗では想定しなかったやり方で、LTV(顧客生涯価値)を高められる可能性が出てくるというわけだ。
神山は「当社としても、今はまだシステムの提供がメインですが、将来的には行動データを活用し、企業のマーケティングを支援したいと考えています」と力を込める。

(※)
NTTデータ調べ

マイクロマーケット進出など 新たな事業機会の創出も

Catch&Goには興味深い活用事例もある。トヨタ自動車と共同でJAPAN MOBILITY SHOW 2023に出展した「e-Palette Store」だ。
e-Palette Storeは、トヨタのモビリティサービス専用バッテリーEV「e-Palette」に、NTTデータのCatch&Goと生成AI技術を活用した接客用AIを組み合わせたもの。無人の店舗がクルマで移動することで、生産者と顧客の「ラストワンマイル」をつなぐことを目指す未来型ストアのコンセプトモデルだという。
レジなし・無人決済・生成AIによる対話・言語分析レコメンド機能を持ち、個人に合わせた商品やサービスの提案もできる。今後ますます高齢化・過疎化が進む地方での導入も期待される。企業の目先の課題解決に留まらない、社会課題の解決につながる取り組みだ。
「とはいえ、無人運転×無人店舗の実装は、法整備の問題等もありまだ少し先の話かもしれません。私が現段階のCatch&Goを活用して企業の皆様に検討いただきたいと思うのは、オフィス内などのマイクロマーケットへの出店です。見込める売上規模が小さく、これまで検討の余地がなかった場所への出店が可能になっています」
神山は、Catch&Goがさまざまな事業機会の可能性を秘めていることを強調した。

(CASE)ウォークスルー店舗「CATCH&GO」(イオンフードスタイル横浜西口店内併設)

ダイエーとNTTデータが蓄積してきた運営ノウハウを生かしてつくられたウォークスルー店舗。ウォークスルー店舗の路面店は日本初となる。売場面積は約15坪、取扱商品は弁当や飲料、菓子など約400品目。
店舗の上部に設置したカメラと商品棚の重量センサーによって客が手に取った商品を認識する。利用者は専用アプリをインストールした自身のスマートフォンを入店ゲートにかざし、ほしい商品を手に取って退店するだけで自動的にクレジットカードまたはQRコードで決済される。レジに並んだり、セルフレジでスキャンしたりといった手間が一切不要となっている。

ウォークスルー店舗「CATCH&GO」(イオンフードスタイル横浜西口店内併設)

ウォークスルー店舗「CATCH&GO」(イオンフードスタイル横浜西口店内併設)

  • 本記事は日経BPの許諾を得て日経MOOK『リテールDX2024』(日本経済新聞出版)より転載しています。
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