2005年1月

インターネットと非接触型ICカードのドッキングに新発想あり。マイレージバンクサービスを競争力強化へつなげた「JAL IC サービス」

JR東日本が交通非接触型ICカード「Suica」のサービスを始めて以来、ICカードサービスの可能性には多くの企業が注目してきた。インターネット上のサービスにICカードを結び付けて、新しいビジネスモデルを創出したのが日本航空(JAL)である。2005年1月にスタートした「JAL ICサービス」は、貯めたマイルを1円単位の買い物に使えるうえ、Suicaと同じ感覚で飛行機の搭乗ゲートを「タッチ&ゴー」できる画期的なサービスだ。競争力強化にしのぎを削る国内航空業界において、利用客がJALを「ファースト・チョイス」にするための魅力づくりに成功した。

株式会社日本航空ジャパン 国内旅客事業マーケティング企画室 企画部 部長 平田邦夫氏

2005年1月11日、JAL ICサービスが始動

2004年12月、日本航空(JAL)は8月に発表した「JAL ICサービス」の具体的サービス内容と非接触ICカードへの切り替え及び新規カードの募集を開始した。同時にこの4月に発表していたJR東日本の、Suicaの機能とJALカードの機能をドッキングした新しい非接触型ICカード「JALカードSuica」の募集も併せて開始した。空と陸のカードサービスがひとつになり、飛行機に乗って貯めたマイルを、JR東日本の列車に乗るために利用するといったことができるようになるものだ。
利用者の驚きはさらに続いた。JALカードSuicaのために発行した非接触型ICカードを用いた新たな「JAL ICサービス」が、2005年1月11日から始まったのである。
最初にスタートしたのは、「JAL IC利用クーポン」だ。
JALマイレージバンクで蓄積したマイルを、クーポンに交換してICカードにチャージしておき、空港売店、ホテルなどでの買い物や飲食の支払いに利用できる。搭乗や宿泊でマイルが貯まるマイレージバンク制度は多くの飛行機利用者の間に定着したが、貯めたマイルを1円単位でこまめに買い物に使えるサービスは国内初の快挙だ。
「JAL IC利用クーポンは、マイル特典の使い勝手を上げただけでなく、ICカードにマイルをチャージして自分でコントロールできるようになったという大きな意義があります」と、「株式会社日本航空ジャパン国内旅客事業マーケティング企画室企画部 部長 平田邦夫氏」は指摘する。これまではJALマイレージバンクの管理は全面的にJALが行っており、会員は、電話、メール、会員向ダイレクトメールなどで自分の保有するマイル数を知ることが出来たが、今回からマイルを電子クーポンに変換してICカードにチャージする方式にすれば、リーダ・ライターにかざすだけで残高確認ができ、マイルの使いかたを自分で細かく計画することができる。しかも、ワン・トゥ・ワン・マーケティングや情報提供など、新たなサービスをプラスしていく可能性が広がる。
さらに2月15日からは、国内線で「JAL ICチェックインサービス」もスタートする。
これは、JALチケットレスサービスを利用したうえ、Web上でチェックイン手続きを済ませておくと、紙の搭乗券を出力する手間をかけずに、ICカードをかざすだけで飛行機に搭乗できる「タッチ&ゴー」のサービスだ。利用者は空港のカウンターやチェックイン機に寄る必要がなく、直接セキュリティゲートへ向かうことができ、空港での滞在時間を短くすることができる。JAL ICチェックインサービスの発展形として、ICカードをかざす代わりに、IC内蔵携帯電話を利用することも可能となる。

インターネットと非接触型ICカードを車の両輪として競争力強化へ向かう

JAL ICサービスは、インターネットと非接触型ICカードを表裏一体のものとして活用することから生まれた、新しいビジネスモデルである。
「インターネット通販は急速に普及していますが、商品を手に取ったり試着できないのが難点となっています。その点、航空座席は実物を手にとって見比べる必要もなく、購入した商品をお客様に配送しなくても空港に来ていただければよい、その点でネット販売に最もなじみやすいものです。」
「しかし、国内線の個人利用者の約半数がインターネット経由で航空券を購入するようになった現在、単にインターネットで航空座席が予約できるだけでは、競争力強化にはつながりません。JALマイレージクラブ会員も1600万人を突破しましたが、多くの会員は、他の航空会社の会員を兼ねていますから、単に会員数が増えれば囲い込みに成功したとは言えません。航空座席そのものは差別化がむずかしい商品ですから、インターネットをじょうずに使った新たなサービスを創出することが急務になっていました」と平田氏は背景を説明する。
そこで目をつけたのが、非接触型ICカードである。手軽な操作で情報を繰り返し書いたり読んだりできるうえ、非接触型であるため磨耗も起きにくい。
すでに、インターネット上でクレジットカードなどを用いて清算を済ませておくチケットレスサービスは、空港での登場前の手続きを簡素化するサービスとして活用されている。しかし、チケットレスサービスの利用者も、空港では紙のチケットを出力して手に入れなければならない。この手間をなくせば、利用者の利便性が上がるうえに、受付カウンターの対応負荷も軽減される。航空会社としての費用削減にも寄与するのだ。
「非接触型ICカードとインターネットは、航空会社が競争力を高めるための車の両輪なのです」と平田氏は強調する。

コスト削減だけではなく売上増大の提案を行ったNTTデータ

JAL ICサービスのビジネスモデルは、JALとNTTデータの長年にわたる勉強会から生まれたものだ。両社は、2002年末から、インターネットとICカードの活用をテーマとする勉強会を行ってきた。
「わたしは勉強会のたびに、NTTデータの担当者に向かって『会社としての意見はいいから、個人としてどう思うのか、利用客としてどんなサービスが欲しいのか』と迫りました。ベンダーとしての常識を捨て去って利用者の視点に立つことで、新しいものが見えてくるはずだと思ったからです」と平田氏は言う。
互いに本音で語り、知恵を絞りきるミーティングを重ねるなかで、JAL ICサービスのビジネスモデルが徐々に形成されてきた。
「マイレージバンクのサービス向上策は、多くのベンダーがさまざまな提案をしてきましたが、NTTデータが提案してくれたこのJAL IC利用クーポンのビジネスモデルが最もユニークでした。投資効果がきちんとペイする提案だったのです」と平田氏はにっこりする。
利用者がICカードを使うようになれば、1600万人のマイルを管理するJALの負担は軽減される。しかし、メリットが業務負荷の軽減だけであるならJALは動かなかった。「JALのマイレージサービスのほうが便利だ」と利用者が感じてくれるまでに使い勝手を向上させる提案を行い、さらに、小売店店頭での清算プロセスまでしっかり設計してあったからこそ、JALは動いた。国内航空路線の年間利用者は、片道ベースで1億人を越える。ICカードによる差別化がそのうちのわずか1%に影響したとしても、数十億円の増収につながる。斬新なだけでなく、投資効果がはっきり見える提案をNTTデータは提示することができた。
「ストレート、透明、スピードというのが、NTTデータの印象。当方の予算規模を本音で話したら、打てば響くように一発でリーズナブルな価格の提案が返ってきました。何段階かのステップを踏んで価格調整をするベンダーもありますが、われわれはステップを踏んでいる時間の余裕はありませんでした。われわれ航空業界のスピード感を肌で理解していると感じました」と平田氏は言う。

カード決済ソリューションの構築にも豊富な実績

NTTデータは、コンサルティングだけでなく、システムインテグレーションまで総合的に担当している。特に、JAL IC利用クーポンのシステム構築では、これまで蓄積してきたICカード技術と、多機能カード決済サービス「INFOX」が強みを発揮した。
INFOXは、NTTデータが提供する決済ネットワーク・INFOX-NETと、これに接続する多機能決済端末で実現されるカード決済ソリューションである。INFOX-NETは、NTTデータが提供しているカード決済総合ネットワークCAFISに接続しており、CAFISを通して金融機関やクレジットカード会社との間で決済を行う。
INFOXの特長は、クレジットカード、デビットカード、ICカードなど多様化する決済手段に対応していることだ。またINFOX-NETへの接続には、一般電話回線のほか、DoPa網、衛星パケット通信なども利用できるため、タクシーなどのモバイル環境へのサービス展開も可能。NHKの放送受信料口座振替やスルッとKANSAIの非接触ICカードサービス・PiTaPaのショッピングサービスなどに採用されており、実績も豊富である。
「電子クーポンを利用できるようにするためには、空港の小売店などにリーダ・ライタを置いてもらうなどの協力をあおがなければなりません。INFOXのインフラに接続することにすれば、小売店の負担は最小限で済みますし、システムの短期立ち上げにも大いに役立ちます」と平田氏は言う。
JALのICカードは、今後さらに大きく進化していく。双方向の情報提供サービスも企画中。国際便にサービスを広げることも検討している。
「他の航空会社もICカードのサービスを始めるでしょうから、さらに先手となるサービスを次々に考えていかなければなりません。このプロジェクトはまだ続いているのです」と平田氏はNTTデータへのさらなる期待を言葉に込めた。JALとNTTデータとの熱い勉強会は、今日も、エンドレスで続いている。

JAL ICサービス概念図

お客様プロフィール

社名

株式会社 日本航空

本社所在地

東京都品川区東品川2-4-11

代表取締役社長

新町 敏行(日本航空)

資本金

1,000億円(2004年6月26日現在)

売上高

1兆9,317億円4,200万円(平成15年度3月期)

事業概要

JALとJASが経営統合した持ち株会社が株式会社日本航空。関連企業として国際の日本航空インターナショナル(代表取締役社長 羽根田 勝夫)と国内の日本航空ジャパン(代表取締役社長 小松原 光雄)がある。

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