2005年7月

リアルタイムに価格が動く市場に、世界の資本が集まる。世界有数の取引高を誇る東京工業品取引所の商品先物取引/清算システム

先物取引は未来を買う取引である。規制緩和、国際化の大きな波の中、商品先物市場はさらなる飛躍の時を迎えている。その先頭を切って走っているのは、世界有数の取引高を誇る東京工業品取引所である。1991年にシステム売買を導入して、取引参加者がビジネスチャンスを得やすい環境を実現。さらに2003年には分散型システムを取り入れて、商品追加や電子取引に対応しやすい体制を整えた。安心して取引ができる信頼性と、商機を逃さない高速レスポンスを実現したシステムにより、東京工業品取引所は未来におけるさらなる発展への切符を手に入れたのである。

東京工業品取引所 事務理事 濵田隆道氏 東京工業品取引所 常務理事 早川一成氏 東京工業品取引所 理事待遇 電算部長 福井裕一氏

魅力ある取引所に世界の資本が集まる

「バブルが崩壊したのは、日本の金融サービスが未熟であったため。世界の資本を効率よく集める仕組みを持っていなかった。特に金融サービスという領域で、日本は遅れをとってきました」と、東京工業品取引所 専務理事 濵田隆道氏は熱く語る。
商品先物取引は、3ヵ月先、6ヵ月先など将来の一定の時点で、金、白金、ガソリンなど特定商品の受け渡しと代金の決済を行うという契約をするものだ。商品が安いうちに将来の分まで手配して、リスクを回避する手段として生まれた。商品先物取引は、価格変動リスクのヘッジ、需要と供給の調整、公正な価格形成、資産運用などの場として機能する。決済が将来に行われるため、現時点では手持ち資金が少なくても大きな取引ができ、投資効率が極めて高い。
東京工業品取引所(以降「TOCOM」と表記)は、国内7つの商品先物取引所の1つで、1984年東京繊維商品取引所/東京ゴム取引所/東京金取引所の3取引所を統合して生まれた。上場商品は、貴金属4品(金、銀、白金、パラジウム)、石油4品(ガソリン、灯油、原油、軽油)、アルミニウム、ゴムなど幅広い。2004年度の出来高は約7400万枚であった。これは商品先物取引所のなかで世界第3位の出来高である。TOCOMは、日本経済に不可欠な資本を世界中から集める役割も果たしている。
「TOCOMも新しい手をどんどん打って、ナンバーワンを目指したい。ナンバーワンになれば、価格決定権を日本が持つことになり、より多くの資本が集まるのです」と濵田氏は意欲的に語る。
先物市場での取引所間の競争に打ち勝つには、システム技術と金融技術の両方が要求される。
TOCOMが世界から支持されている理由は、グローバルスタンダードの売買仕法や清算制度などを早くから取り入れて国際化に対応したことと、ガソリン、灯油、原油、軽油を次々に上場して商品レンジを広げ、金オプション取引もいち早くスタートさせるなど、より魅力的な商品の取り揃えに力を入れてきたことにある。特に、1991年、国内商品取引所としては初めて、ザラバ取引のシステム売買を始めた意義は大きい。

「金融サービス立国」を目指してさらなる挑戦

従来は、商品取引員会社の場立ち(せり人)が一堂に会して、1日5~6回の定められた時刻に売買を行う、いわゆる「場節取引」を行っていた。1991年のシステム売買の導入により、「ザラバ取引」が実現できた。つまり、9時から15時半までの取引時間帯であればいつでも取引ができる。
場節取引で、しかも場立ちが手や指で価格と売り/買いを表現する「手振り」では、世界の為替の変動をにらんでタイムリーに商いをするといったことは困難だった。ザラバシステムの実現によって、商品取引員会社のビジネスチャンスは拡大し、魅力的な取引の場としてTOCOMの評価が高まってきたのである。1991年当時と比べると、TOCOMの取引高は5倍以上に急増しているのはその証しだ。
「現状の商品数を、従来の手振りで取引していたら、立会場が4つは必要になるところです」と、東京工業品取引所 常務理事 早川一成氏は言う。先物市場では、売りと買いをマッチングさせる仕組みが複雑で、手振りの立会場には8~10人の取引所の職員が必要だ。また立会場が4ヵ所あれば、商品取引員会社は場立ちを4人派遣しなければならない。「マッチングをシステム化したことによって、TOCOMも商品取引員会社も大幅な省力化ができました」と早川氏は指摘する。
手振り取引は、世界の取引所から徐々に姿を消しており、優れた売買システムを構築した取引所に人気が集まる傾向が顕著になってきた。1991年にいち早くシステム売買に取り組んだTOCOMは、先見の明があったといえよう。
「TOCOMはこれからも、魅力ある商品を上場し、信頼できる取引の場を提供することで、世界の資本を集める仕組みを追求していきます。さらには、『金融サービスの国・日本』という国際的な立場を確立していきたい」と、濵田氏は目を輝かせる。

従来のやりかたのシステム化ではなく、新しい仕組みを創造した

NTTデータは、TOCOMが誕生した直後の1985年から、国際市場化を目指す取引/清算システムの提案を開始し、基本検討や基本設計をTOCOMと一体になって進めてきた。
「重要なのは、手振りをそのままシステム化することではなく、取引の方法そのものを変えたことでした」と東京工業品取引所 理事待遇 電算部長 福井裕一氏は当時を振り返る。
従来は、1つの値段に対して立会場の場立ちが売り/買い枚数を出していく「板寄せ」という方式であった。これをザラバ取引に変えたことで、為替変動や国際情勢や需給状況等を反映した価格形成や価格変動リスクのヘッジがリアルタイムにできるようになり、市場として最も重要な「流動性」を実現することができた。「板寄せの仕組みをそのままシステム化した取引所もありますが、国際的な発展という点で差別化の成果が表れてきていると思います」と福井氏は言う。「1986年ごろは、『世界に通用する仕組みを創り出そう』と意気込んで、NTTデータと共に基本設計に取り組んだと聞いています」と福井氏。その志の高さが、現在のTOCOMの発展につながっているのだ。

マッチング・エンジンの速さは世界最高速か

次のターニングポイントは2003年のシステム・リニューアルである。
初期のシステムは、メインフレームによる集中型システムであった。しかしTOCOMは、原油など新商品を次々に上場しており、商品の上場/廃止や取引条件の変更へ即応できるシステムが不可欠になっていた。オプション取引、スプレッドなど、新しい取引形態に対応する機能も追加していかなければならない。また国内に留まらず海外からの電子取引にも充分対応できる環境が必要であり、同時にその取引状況や価格等をリアルタイムに監視して、市場を守る仕組みも導入する必要があった。
システム再構築を行うベンダーは、2000年の入札によってNTTデータに決定した。TOCOMでは、先立つ1999年に国内外のシステムベンダーとともに要件の調査や定義を行い、入札にあたっての提案比較では第三者のコンサルティング会社の評価も加えるといったステップを踏んで、公正な入札を行った。
NTTデータは、東京証券取引所で実際に稼動しているシステムを基盤にしてカスタマイズすることを提案した。短期間で、低価格で、信頼性の高いシステムを構築できることから、この提案が採用されたのである。
「システムが不安定だと、TOCOMが困るだけでなく、商品取引員会社にも多大な損害を与えてしまう危険があります。証券取引(現物取引)よりも注文の集中度が高く価格変動も激しい商品先物市場において、本当に安定したシステムを作ることができ運用も安心して任せられるかという観点で提案書を総合的に評価した結果、NTTデータが一番優れていると判断しました」と早川氏は補足する。
新システムは、売買処理にはメインフレーム、清算処理にはUNIX機、その他にPCサーバを用いた分散型システムである。NTTデータは、東京証券取引所よりも小規模なメインフレームで、1日100万枚を超す商いを難なくこなすシステムを作り上げることに成功した。メインフレームとUNIX系システムの調和も優れており、新システムは、「稼動開始時から安定稼動ができた」と高く評価されている。
「わたしがNTTデータを評価しているのは、ソフトウェア開発の工程管理がしっかりしていて、品質の高いシステムを作り上げてくれること。運用面もしっかりしていて、障害対応等には一切手抜きがない」と福井氏は言う。
もうひとつ特筆されるのは、取引システムの生命線であるマッチングの速さだ。「NTTデータが開発したマッチング・エンジンは、世界を股にかけてきた商社系の場立ちが、『ここのシステムが世界で一番速い』と言ってくれるのだから本物。紙に書いた仕様の数値以上の価値があります」と濵田氏はにっこりする。
2003年1月に、新システムが稼動して以来、T+1(翌日決済)の実施、軽油上場、金オプションの取引開始と、TOCOMは足早にビジネスを拡大してきた。システム面では、2004年11月に国際金融業界の標準プロトコルであるFIXに対応。2005年には、オーストラリアSMARTS社のパッケージを利用した市場監視システムも稼動を開始する。
「リアルタイムな取引のできるTOCOMのシステムは、公正な価格形成を促進し、先物価格の予想値を信頼性の高いものにして、産業の発展に貢献してきました。今後も、リアルタイムな価格情報を世界に向けて発信していかなければなりません」と早川氏は、熱を込めて語った。

全体概念図

お客様プロフィール

社名

東京工業品取引所(略称:TOCOM)

所在地

東京都中央区日本橋堀留町1-10-7

設立

1984年(昭和59年)11月1日

出来高

約 7400万枚(2004年度)

事業概要

日本を代表する総合取引所。上場商品は金、白金、ガソリン、灯油、ゴムなど。商品先物の出来高はニューヨーク商業取引所(NYMEX)、大連交易所(DCE)に次いで世界第3位

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