2005年7月

コミュニティビジネスの可能性を探る。三越のブログサービス「三越コミュニティサロン」のトライアル

個人の手軽な情報発信手段として急速に普及しているブログ。一方で、ブログのビジネス的価値は、まだまだ未知の要素が大きい。ビジネス・ブログは、IT系企業の社長など企業内個人が不特定多数へ直接メッセージを送る手段として用いられることが多かったが、最近では、特定の商品やサービスを軸にした情報発信にブログを使うサイトも登場している。情報発信、サイトへの集客手段、マーケティングツール。さらに老舗百貨店三越の場合は、「コミュニティ形成の手段」という、ひと味違ったアプローチをしている。ビジネス・ブログのもうひとつの可能性を探る試みとして注目したい。

株式会社三越 営業企画本部 ネットワーク企画部 ネットワーク事業担当 ゼネラルマネジャー 金沢春康氏 株式会社三越 営業企画本部 ネットワーク企画部 ネットワーク事業担当 三越コミュニティサロン担当課長 加藤まゆみ氏 株式会社三越 営業企画本部 ネットワーク企画部 ネットワーク事業担当 三越コミュニティサロン担当課長 杉本雅彦氏

百貨店と「コミュニティ」

三越コミュニティサロン

三越コミュニティサロン

1904年、株式会社三越呉服店が、多種多様な商品を取り揃える近代的な「百貨店」を目指すと宣言してから、ちょうど100年経った。三越が本店をおく日本橋界隈は再開発が進み、多様なショッピングの拠点が出現して、競争は激化するばかりだ。日本橋三越は新館を建設し、新たな百貨店づくりに取り組んでいる。
次世代の百貨店はどのような役割を担うべきか。

「お客さまのニーズに応えるために、常に自ら変化するのが三越の伝統です。次世代の百貨店像においても、主役はお客さま。百貨店は、お客さまのライフスタイルを豊かに彩るためのサポート役に徹することが重要だと考えています」と、株式会社三越 営業企画本部 ゼネラルマネジャー 金沢春康氏は言う。
「ライフスタイルを提案してゆくには、従来のマスマーケティングに加えて新しい方法も検討すべきではないかという思いが生じました。消費者の個別ニーズに密着し、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを実践するためには、小規模で親近感に満ちた双方向のコミュニティの形成が有効なのではないかと考えたからです。」と金沢氏は続ける。
2004年10月、日本橋本店の新館オープンと同時に、新館7階に設けたのが、三越コミュニティサロン(MCS)である。ノートPCが使える広々としたスペースを確保して、おしゃべりやインターネットを楽しめる、コミュニティ形成の場だ。
リアル店舗でのサロンがスタートすると同時に、インターネット上のバーチャルなサロン「MCSサイト」もスタートした。リアルとバーチャルの両面で、コミュニティ作りを進めているのである。 「ITは、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを行うための重要な武器ですが、リアル店舗とリンクさせてこそ、三越らしい双方向のコミュニティサービスが可能になる」と、金沢氏は言う。

売り場の販売員からの情報発信で「顔の見えるマーケティング」を実践

MCSサイトがもうひとつ注目されるのは、ブログのもつ可能性を探る場にもなっている点である。
ブログとはウェブログ(Weblog)の略称で、「ウェブ上に残される記録」という意味だ。インターネットで自ら情報発信者になりたいという場合、従来はホームページを立ち上げるのが一般的だった。しかしホームページ作成ツールは使いこなしがむずかしく、見栄えの良いものを作ろうとすればHTMLのプログラミング知識も必要になったりするため、誰でも気軽にホームページを立ち上げるというわけにはいかない。これに対してブログは、メニューを選択して部品を集めていくだけで、文字や写真で構成される情報発信ページを簡単に作成できる。日付の順番に記事が表示されるため、日記の感覚で思いついたことを書き込んでいくだけで済むのも手軽なところだ。
MCSサイトは、百貨店からの情報発信「感動百貨店日記」、コミュニティからの発信「倶楽部日記」、会員個人からの発信が柱になっているが、この3つともがブログを活用している。
感動百貨店日記は、三越本店のさまざまな売り場の担当者による日記形式の情報発信である。単なる売り場の紹介ではなく、担当者の個人的な趣味や経験がにじみ出るコメントが好評だ。MCSサイトの登録会員は、これらの情報にコメントをつけたり関連する話題を書き込んだりできる。現在23ショップの担当者が、発信者になっている。
倶楽部日記は、同じ趣味のもとに集まった会員たちのコミュニティスペースである。プロの写真家を中心に撮影会なども活発に行っている写真倶楽部のほか、マジック、食などをテーマにした倶楽部が活動している。

ワン・トゥ・ワン・マーケティングとブログの関係

金沢氏らがブログの存在を知ったのは、2003年頃であった。 「かねてより携帯電話を使った情報発信型マーケティングについてNTTデータのスタッフと情報交換を行っていました。NTTデータはクチコミマーケティングなど、新しいメディアに関する研究にずいぶん早くから取り組んでいたからです。さらに、ソーシャルネットワークとブログの研究を始めたというので、私達のめざすコミュニティ作りに生かせないかと、共同で検討を進めました」(金沢氏)。
従来のオンライン掲示板は、特定のテーマを中心に人が集まる。テーマに関する興味深い内容を見る事ができる一方で「個」が何を考え、何を指向しているかを読み取ることは難しい。しかし、ブログは、発信者個人が作り出すページを中心に様々な話題が展開され「個」の特徴が見えやすいため、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの材料として高い可能性を有していると考えられる。
NTTデータは、こうしたブログの特性が、新しいビジネススタイルに大きく貢献するものであるということに注目。ブログを使いこなすことそのものを目的にするのではなく、コミュニティを作り、そのコミュニティからビジネスバリューを引き出す方法を研究してきた。コミュニティをワン・トゥ・ワン・マーケティングにつなげていきたいという三越にとっては、最適なパートナーだったと言える。

ビジネス・ブログの普及には社内研修も重要

現在、MCSブログは、NTTデータが提供するブログホスティングサイト「Doblog」注1のノウハウを利用して、構築され運営されている。ブログを用いたサイトを構築し円滑に運営してゆくためには、機能設計はもちろんのこと、情報発信の方法や、会員サポート、さらには運営にはどのようなリスクがありそのリスクを回避するには何をすれば良いかなど、さまざまなカンどころがある。
これらのノウハウを共有し、実践してゆくために社内研修はポイントとなる。
「一番心配していたのは、売り場の担当者が、自ら日記を書いてくれる体制を定着させられるかということでした。なぜなら最もいそがしい店舗の最前線が発信者になってこそ、最新の情報を提供できるからです」と、三越コミュニティサロン担当課長 加藤まゆみ氏は言う。MCSサイトでは、売り場の部長への説明会から現場への記事の書きかたの指導まで、2週間にわたる詳細なレクチャーを実施して、「常に新鮮な情報が発信されるブログ」を目指した。
また、検索エンジンで上位にヒットするためのSEO注2について、そもそもブログはSEOに有効だとされているが、さらに研究し、工夫を重ねることが大切だ。「先日も、ある商品の紹介記事を自分で書いてみて、情報の記入フォーマットからSEOをきちんと意識することが大事だと痛感しました」と、三越コミュニティサロン担当課長 杉本雅彦氏は言葉を添える。

新しいマーケティングの推進をめざして

三越は、コミュニティのテーマのひとつとして、「コト起こし」を掲げており、MCSブログも、このテーマに貢献する存在に育てていくことができると期待されている。
「いままでは、『フォーマルウェアを販売する方法を考える』という視点からのアプローチだったわけですが。これからは、毎年違うドレスを着ていきたくなるような場を作り、結果としてフォーマルウェアを買っていただくという、ライフスタイル提案型のアプローチが必要になってきます」と金沢氏。MCSブログで形成されたコミュニティは、顧客が求めている「コト」を発見したり、個々人に合ったライフスタイル提案を的確に行なう手段として有望なのだ。
「MCSブログそのものは、まだ成果を語る段階ではありません。売上への貢献などは先の話です」と金沢氏。しかし、コミュニティを核にしたコンサート、パーティ、展示即売会などが動き出しているのも事実である。MCSサイトに売り場担当者からのメッセージを書き込んだ翌日に、「あの婦人靴はどれですか」と複数の女性が三越を訪れるなど、リアルショップとバーチャルサイトとの情報の還流は始まっている。三越劇場に出演する俳優陣が自ら書き込みをしたいと申し出てくれるなど、社外からの注目度も高い。
原点を見直して新しい百貨店像を打ち出そうとしている三越にとって、ブログは大きな可能性を秘めたビジネスツールということができる。

  • 注1Doblog(ドブログ)

    NTTデータが、2003年11月に立ち上げた独自のブログホスティングサイト。米国のブログをそのまま輸入したサイトがいくつか登場し始めたころで、エンジン部から自社で開発したブログホスティングサイトとしては、日本で1、2番目に古い。DoblogのOEMサイトは、MCSサイトのほかにもB食倶楽部などいくつかあるが、いずれもコミュニティ作りに独自の知見を持つ、ビジネスモデル創造型のサイトである。

  • 注2SEO

    Search Engine Optimization。検索エンジンの上位に表示させるためHTMLを最適化すること、またその技術。

顧客リレーションシップ改革 ~お客様が主役のネットワーク図

お客様プロフィール

logo
社名

株式会社 三越

所在地

東京都中央区日本橋室町1丁目4番1号

創業

1673(延宝元)年(呉服店・越後屋)

設立

2003(平成15)年9月1日

資本金

374億400万円

売上高

8338億7000万円(2005年2月期)

事業概要

三井グループ発祥の老舗百貨店。1904年、デパートメントストア宣言をして、日本の百貨店の発祥となる。2003年、旧三越と連結子会社4社が合併して新生・三越が誕生

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