2005年8月

カード利用履歴とPOSデータを連携させた巨大データウェアハウスを構築。流通系カード会社ならではの強みを発揮して競争優位に

カード業界は戦国時代を迎えている。競争が激化する一方で、広範な規制緩和が進んでいることから、新サービスを投入してシェアを一気に拡大するチャンスも広がっているのだ。イオンクレジットサービスは、イオンという日本最大の流通グループの一員であるという強みを活かして、急テンポで成長してきた。さらにいま、カード利用履歴に加えてジャスコ店頭でのPOSデータまで連携させた、カード業界としては稀有なデータウェアハウスを手に入れた。この武器を活かしてどのような成長戦略を展開するのか、これからのイオンクレジットサービスの動向から目が離せない。

イオンクレジットサービス株式会社 社長室 広報課 北岡亜美氏 イオンクレジットサービス株式会社 情報システム本部 システム企画室 室長 桜庭博文氏

カード加盟店へのベネフィット還元を重視

「カード会社にとってのお客さまは、加盟店と消費者です。この両方のお客さまの利益を真剣に追求すれば、結果は自然についてくると考えています」と、イオンクレジットサービス株式会社 情報システム本部 システム企画室 室長 桜庭博文氏は控えめに語る。
イオンクレジットサービスは、驚異的な成長を遂げてきた。カード会社としては後発ながら、日本最大の流通グループ・イオングループの一員である強みを最大限に活かしつつ、業界初となる年会費無料のゴールドカードの発行や、香港、タイをはじめとするアジア各国での事業展開など独自の戦略で、株式公開以来11期連続で増収増益を続けている。
「ジャスコなどの全国系列店の店頭でカード会員を募集したり、カード会員限定の割引セールを実施するなど、加盟店の全面的な協力があったからこそイオンクレジットサービスは伸びてきました。これからは、加盟店へのベネフィット還元を心がけて、加盟店に喜ばれるサービスを提供することで、さらにカードの稼働率を高めていきたい」と桜庭氏は言う。
しかし、インターネット系新興企業の参入や、大手銀行グループの合併と業界再編などにより、カード業界の競争は激化するばかりだ。ITを活用した情報武装が急務である。加盟店が最も強く求めるサービスも、情報分析の中から見えてくるはずだという考えのもと、データウェアハウスの構築が始まった。
「これまでは、CRMやマーケティング戦略を練るためのデータウェアハウスが、事実上ありませんでした。他社より遅れてデータウェアハウスを作るからには、他社よりすばらしいデータウェアハウスを作ろうと決心したのです」と桜庭氏は意気込みを語る。

最大容量156テラバイト。日本最大規模のデータウェアハウス

一般にカード会社では、「誰が、どの店で、何円使ったか」は把握できる。しかし、どの商品を買ったかまではわからない。したがって、CRMやワン トゥ ワン マーケティングに不可欠な「なぜ買ったか、何に興味を持っているか、次は何を買うか」という分析に踏み込むことが困難である。
ところがイオンクレジットサービスは、イオンとの提携により、POSシステムの売上データを組み合わせたデータ分析を行うことを可能にした。「何を買ったか」「何と何を一緒に購入したか」という、通常のカード会社では入手不可能な情報を入手すると同時に、「誰が買ったか、購入者はどのようなプロファイルなのか」という一般小売店ではなかなか入手できない情報を統合して、データウェアハウスを構築できる。
「イオンクレジットサービス1社が使うのではなく、データを提供していただく加盟店にも利益になるデータウェアハウスを構築しなければなりません。当社で加工したレポートを一方通行で加盟店に渡すのではなく、加盟店でもアクセスして利用してもらえるデータウェアハウスを構築したいと考えました」(桜庭氏)。
流通系のデータウェアハウスは、金融系での用途以上にスピード感が要求される。たとえば店頭でキャンペーンを実施して、初日のデータを収集・分析し、2日目にはその結果を受けてキャンペーンの修正をするといった要求が日常茶飯事になる。従来のように、あらかじめ使用頻度の高いサマリを用意しておくOLAP(多次元分析)形式のデータウェアハウスでは、新しい切り口が必要なときに機敏に対応できない。
イオンクレジットサービスは、単品レベルの生データを蓄積することを重視。まず、従来のカード利用履歴のデータに、ジャスコの年間数十億件にのぼる膨大なPOSデータを生データのまま統合して、巨大なデータウェアハウスを構築することにした。
データウェアハウスは、「ターゲット・マーケティング・システム」と呼ばれ、2004年12月に利用を開始した。まずは、ジャスコ20店舗のPOSデータ半年分とカード利用履歴データ2~3年分のデータを格納した。将来は、POSデータや利用ユーザの拡大を想定し、156テラバイト相当のデータ量を見込んでいる。

イオンクレジット社 現ターゲットマーケティングシステム 全体イメージ

リリース前の「Oracle 10g」と「SAS®9」で最新鋭システムを開発

データウェアハウスの構築にあたっては、複数のSIベンダーに提案を求めたが、最終的にパートナーとして選んだのはNTTデータであった。
「技術や仕組みの話ではなく、データ活用の提案を熱心にしてくれたのはNTTデータだけ。データウェアハウス利用者のほうに最初から顔が向いていました」と桜庭氏は採用理由を説明する。
NTTデータが金融系のシステム構築に豊富な実績があることも評価した。ハードウェア、ソフトウェアともに中立の立場であるため、さまざまな製品を柔軟に組み合わせての提案の自由度も高かった。
決定打になったのは、まだリリースされていない最新鋭技術にチャレンジする意気込みを持っていたことである。
イオンクレジットサービスは、各社の提案を求めた2003年の時点で、日本オラクルが提供する「Oracle Database 10g」と、SASインスティチュートが提供するBIプラットフォーム「SAS 9」の採用を希望した。「SAS 9」は、統計解析はもちろん、ビジネス・レポーティング、データマイニング、予測モデル解析まで幅広くカバーする製品であり、イオングループ内のさまざまなスキルレベルの利用者が多様なデータウェアハウス活用を行うためのツールとして最適であった。しかし、前者は2004年4月、後者は2004年9月に正式リリースされたバージョンであり、2003年時点ではまだ「未知のバージョン」であった。リスクが大きいと消極的になるベンダーが多いなかで、「作るからには最新鋭の良いものを作りましょう」と意欲的に答えたのがNTTデータだったのである。
実際、リリース前のバージョンを使ったシステム開発は、多大な困難を伴った。NTTデータは、SASおよびORACLEの米国本社・開発部門との間で、仕様を確認したり動作を検証したり、バグを連絡してつぶしてもらうなどの密接な連携作業をしながら、開発を進めた。

自由なデータ活用と高度なセキュリティを両立

個人情報を扱うだけに、セキュリティには二重三重の配慮をしている。
「イオンクレジットサービスは、指静脈を用いた生体認証システムをPCログインや執務室の入退管理に導入したり、全てのパソコンから外部磁気媒体への保存機能を削除するなど、個人情報漏えいの危険性をゼロに近づけるために、情報セキュリティ対策に力をいれています。もちろん、執務室への入退室の記録や、各種システムへのアクセスログは永久保存です。」と、イオンクレジットサービス株式会社 社長室 広報課 北岡亜美氏は語る。将来、データウェアハウスをカード加盟店に利用してもらうといっても、ファイルのアクセス履歴を個人が特定できるレベルまで完璧に行っているセキュリティ環境の中での利用なのである。
NTTデータもまったく同等のセキュリティ環境を作り、そのプロジェクトルーム内のみで開発を行った。厳重なセキュリティで個人の入退室履歴管理を行い、電子メールさえも直接送受信できない「無菌室」を作って、イオンクレジットサービスの信頼に応えたのである。
システムの構造にもセキュリティ面の工夫が行き届いている。
データウェアハウスから用途別のデータマートを生成し、データ分析には各人が必要な情報だけが見えるデータマートを利用するのである。データマートの情報にはカード番号とは別体系の分析用コードを振っているため、DM発送担当者などは、分析結果を個人情報秘匿データベースと逆照合して、ワン トゥ ワン マーケティングにつなげることができる。
データウェアハウスとデータマートはどちらも24時間対応で、バックアップやメンテナンスもオンラインサービスを止めずに行うノンストップ体制のもとに、常に最新のデータマートを生成する。新鮮なPOSデータを駆使した自由なデータ活用と、高度なセキュリティを両立させることができた。
今後、データウェアハウスの利用を社内外に広げていくことを検討中である。また、イオンクレジットサービス社内では、経営管理やコンタクトセンターのサービス強化につなげていく予定だ。
カード業界の競争は厳しいが、広範な規制緩和により、新しいサービス展開の好機を迎えているという見方もある。最新鋭のデータウェアハウスという武器を手にしたイオンクレジットサービスは、この好機をとらえて新たな成長路線に乗るための助走に入ったといえるだろう。

お客様プロフィール

logo
社名

イオンクレジットサービス株式会社

本社

東京都千代田区神田美土代町1

設立

1981年6月20日

資本金

154億6650万円

社員数

連結3159人、単独751人

営業収益

連結1228億1千万円

(売上高)

単独946億8200万円(2005年2月期)

事業概要

国内最大の流通グループであるイオン系のカード会社。カード会員数1507万人。アジア6カ国/地域のネットワーク展開で、アジアのカード会員200万人を突破。

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