2011年5月

会社と社員が排出権を購入 仕事や暮らしでもカーボンオフセットを実現「CO2排出量ゼロビルディングとゼロオフィス」『Taisei 1ton Club』

「排出権」とは、国や企業などに対して割り当てられる、CO2などを一定量排出してもよい、という権利のこと。そして「カーボンオフセット」は、国や企業が削減しきれなかったCO2を、他の国や企業の排出権を購入すること、あるいは植林やクリーンエネルギー事業に投資することで、自らが排出した分を相殺(オフセット)する仕組みを指す。このカーボンオフセットを、会社と社員、その家庭で同時に実現させたユニークな試みについて伺った。

大成建設株式会社 環境本部 企画管理部長 丹下 誠司氏 大成建設株式会社 環境本部 企画管理部 企画室課長 宇治 昇一氏 大成建設株式会社 環境本部 企画管理部 地球環境室主任 秋吉 美穂さん
大成建設株式会社 札幌支店

大成建設株式会社 札幌支店

昨年10月、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)が2010年度の調査結果を公表した。CDPは、世界の主要企業に対し、気候変動対策とCO2などの排出量の公開について要請し、その情報を収集・分析して、評価を投資家に開示するNPOだ。その調査結果で大成建設は、パナソニック、花王とともに日本企業でトップの得点を得た。建設業界初の快挙である。
この高評価は、大成建設がCO2削減に関する情報を積極的に開示していること、そして2つのプロジェクトによってカーボンオフセットを実現したことによる。このカーボンオフセットについて、同社環境本部企画管理部長の丹下誠司氏にお話を伺った。

「1番目のプロジェクトが『CO2排出量ゼロビルディングとゼロオフィス』です。当社は、独自の省エネ技術によって、技術センターのリニューアルでは標準ビルに比べ35%のCO2排出削減(2008年度実績値)を、また新築した札幌支店ビルでは同49%の削減(2009年度実績値)を実現させました。残りの65%と51%のCO2排出量を合わせると、推計年間800トンとなります。大成建設は、この800トン相当の排出権を購入。これによって2つのビルは、10年度においてCO2排出量をゼロにすることができました。
2番目が『Taisei 1ton Club』注1です。これは社員が排出権を1トン単位で購入するという、個人家庭向けのカーボンオフセットプログラムです。参加した社員は社長以下の655名(全社員の7.2%)、全部で973トンの排出権を購入しました」
こうして大成建設では、会社と社員個人の力によって、計1,773トンのカーボンオフセットが同時に実現されたことになる。

『Taisei 1ton Club』への取り組み

ここでとりわけ注目したいのは『Taisei 1ton Club』だ。カーボンオフセットというと、大量の排出権を扱う企業の取り組みであって、個人が簡単にできるものではないというイメージがある。しかし、このプログラムは会社が一括で購入した排出権を、代金と引き換えに会社が社員に振り分けるというもの。そのため、社員は自らが購入手続きを踏むことなく、会社を通じて容易に排出権を手に入れられる。この手軽さはとても魅力的だと思えるが、社員の方々の反応はどうだったのだろうか?
環境本部企画管理部地球環境室主任の秋吉美穂さんはこう語る。
「『排出権って一体、何だ?』から『ゼネコンなのだからCO2削減技術で勝負すべき』まで様々な反応がありました。私たちが『Taisei 1ton Club』を立ち上げた目的のひとつは、社員ひとりひとりの省エネ意識を高めることでしたから、これをきっかけに議論が始まればいいと思っていました。といっても排出権は目に見えるものではありません。どんな仕組みなのか、どう自分の暮らしや仕事と関わっているのかわかってもらうために、いろいろと工夫をしました」
排出権をシリアルナンバー付きのステッカーにし、購入した社員に配布したこともそのひとつだ。このステッカーを使ってユニークな啓発活動が行われた。環境本部企画管理部企画室課長の宇治昇一氏がこう説明する。
「社員それぞれに、自分がカーボンオフセットをしたと考える物にステッカーを貼り、写真を撮ってもらいました。ある人はパソコンに貼って、パソコンの電気量をオフセットしたと示し、また自宅のガスメーターに貼って、ガスから発生するCO2を削減したと表してくれた人もいました。これらの写真を集めて『Taisei 1ton Club』のポスターを制作。こうして目に見えない排出権が、身近なものになるように工夫をしてみました」

少量でも取引できる排出権

『CO2排出量ゼロビルディングとゼロオフィス』、『Taisei 1ton Club』の2つのプロジェクトで大成建設が購入した排出権は、京都クレジットのCER注2だった。その取引の仲介を行ったのがNTTデータだ。
10年3~4月、NTTデータは「CO2排出権オンライン仲介サイト」を開設。インターネットを通して排出権取引を仲介するサービスの試験運用を実施した。この一環として、大成建設の京都クレジット購入を仲介したのである。プロジェクトのポイントは、簡便な手続きで申し込みができること、そして少量の排出権についても取引を可能にしたことである。
「『Taisei 1ton Club』では、約9,000人の全社員に主旨を説明したメールを一斉に送りました。このように、会社が社員の参加を積極的に募ったことが、結果的に多くの社員の参加に繋がったのだと思います。また、今回の個人が行うカーボンオフセットは、1トンという小口の排出権取引を扱う仕組みがなかったら、実現できなかったのではないでしょうか」と丹下氏は語った。

全社に共通のテーマ『環境』

さて、『Taisei 1ton Club』というユニークなプロジェクトを行ったことで、企業はどう変わったのだろう。
「ゼネコンは、建築、土木、設計、都市開発、エンジニアリング、環境といった専門の分野に分かれているため、どうしても縦割りの組織になってしまう傾向があり、私は常々会社で共通のテーマを見つけてみんなで語り合うようなことが必要だと思っていました。今回の『Taisei 1ton Club』では、それができたのではと思っています。縦割りの組織に『環境』という横串を挿せたという手応え感があります。かつ、このプロジェクトは環境省の平成22年度カーボン・オフセットモデル事業にも採択され、政府からの評価もいただいております。」(丹下氏)
最後にカーボンオフセットに関する将来的展望を語っていただいた。「ゼネコンですから、カーボンオフセットというよりは、やはり省エネ技術の開発が中心になります。環境性能に優れたビルへの期待が高まる中で、大成建設では2020年までを見据えたロードマップを描き、ゼロカーボン建築の実現を着実に進めています。
NTTデータと大成建設は、異なる分野の企業ではありますが、社会インフラを構築しているという共通面もあります。排出権という意外な接点で、これからもうまくコラボレートできたらと思っています」

注釈

  • 注1NTTデータ経営研究所が主催するカーボンオフセット・プロダクツ・プロジェクト(COP)プログラムを活用したカーボンオフセット。
  • 注2「京都クレジット」は、京都議定書で定められた手続きによって発行される算定割当量。「CER(Certified Emission Reduction)」は、国連によって認証される「認証排出削減量」。途上国において実施されるCO2削減プロジェクトにより獲得される。

お客様プロフィール

お客様名

大成建設株式会社

本社

東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 新宿センタービル

創業

1873年10月

資本金

112,448,298,842円

事業所

国内 東京支店をはじめ全国に15支店、国内営業所など55ケ所
海外 中東支店をはじめ12ケ所の支店及び営業所

事業内容

建築工事、土木工事、地域開発、都市開発、道路、鉄道、港湾、空港の企画、設計、監理、ホテル、スポーツ施設の保有、賃貸、維持管理及び運営、土壌浄化、河川の水質浄化など

お気軽に
お問い合わせ
ください

大成建設株式会社様の事例に関するお問い合わせ

お問い合わせフォーム

大成建設株式会社様の事例に関連する情報

業種

多様な文書管理に対応したサービスや橋梁監視システムの提供で、 建設・不動産業界を支える

サービス

環境配慮型のインフラ構築やグリーンITソリューションをご提供