2013年4月

デジタルペンで登録した情報をスマートフォンで共有。救急車と病院のスムーズな連携を実現

香川県では、救急患者をよりスムーズに病院へと搬送し、治療を円滑に行うために、従来の救急搬送情報共有システムを刷新し、2012年4月から運用している。NTTデータでは、救急隊がデジタルペンで手書きした情報をシステムに登録、スマートフォンなどを使い医療機関とリアルタイムの共有を可能とするシステムを、全国で初めて構築した。救急患者の搬送先のスムーズな決定に役立つほか、救急隊員が現場で得た画像などの情報も迅速に医師と共有できるため、患者の治療をスムーズに行える流れを実現することに大きく貢献している。

お客様の課題

  • 医療機関と救急隊の間で患者の応需情報などがリアルタイムで共有できておらず、救急患者の搬送先を決定するまでに時間と手間がかかっていた。
  • 搬送先の病院で迅速・適切な処置を行うためにも、より詳細な情報をより早く共有したかった。

導入効果

  • スマートフォンとデジタルペンで、救急隊員の負担を増やさず情報共有が可能になった。
  • 各病院への搬送実績を確認することで、受け入れ可能かどうかの判断が効率化された。
  • 事前に患者情報が届くため、病院側で受け入れ態勢を整えるなどの準備ができるようになった。

導入の背景と課題救急患者受け入れに関わる情報共有の迅速化が急務に

香川県が2005年から運用してきた救急搬送情報共有システムの刷新を検討し始めたのは、2010年11月のことだった。
24時間365日、常に迅速な対応を求められるのが救急救命の仕事。しかし、「当時使っていたシステムでは、救急隊員が患者受け入れ可能な病院を探す際に参照する情報がリアルタイムでないなど、改善すべき点があった」と、香川県 健康福祉部 医務国保課 政策医療グループ 副主幹の近藤 高弘氏は語る。
旧システムでは情報の更新が1日2回程度だったため、受け入れ可能なはずの病院に救急隊員が連絡を取ってみると満床だった、といった事態が多々発生。受け入れ先が見つかるまで、相当数の病院に1件1件連絡を取らなければならない状況だった。
システム更改に向け、香川県では、県内の救急病院の医師、県医師会、現場の救急隊員などの関係者で構成する検討会を開き、約10ヶ月間の議論を実施した。「今以上に何かを入力するなど作業が増えるのは避けたい」(救急隊員)、「救急患者の細かい情報を少しでも早く、少しでも多くほしい」(現場の医師)など、さまざまな意見が交わされた。

【写真】

香川県
健康福祉部 医務国保課
政策医療グループ 副主幹
近藤 高弘氏

【写真】

社会医療法人財団
大樹会 総合病院 回生病院
副院長兼救急センター長
関 啓輔氏

選定ポイント+αの手順を発生させることなく従来の作業だけで情報共有を可能に

香川県では、従来救急隊員が手書きで記入している「傷病者観察メモ」を電子化してシステムに登録することで、追加の手順を発生させることなく、迅速な情報共有ができないかと考えた。また、患者が搬送される病院をそのつど登録すれば、タイムラグのある空床状況よりも情報としての信頼性は高い。他の救急隊が受け入れ先を探す際には、他の病院から当たるなどして作業の効率化が図れるだろう。
「医療現場が新システムに求めていたのは、リアルタイムの情報を取得できることと、救急隊員に+αの手順を発生させないことだった」と語るのは、新システムの検討会の主要メンバーだった社会医療法人財団 大樹会 総合病院 回生病院 副院長兼救急センター長の関 啓輔氏。それに対してNTTデータは、富士常葉大学(現常葉大学)の小村 隆史準教授らが考案したシステムのコンセプトを基に、救急隊員がデジタルペンとスマートフォンを使ってシステムに登録した情報を、関係機関がリアルタイムに共有できるシステムを提案。NTTデータは、各消防本部や県下の病院などから現場のニーズをヒヤリングし、使い勝手のよいシステムを目指した。その姿勢について近藤氏は、「NTTデータになら、香川県の地域医療の今後を担う新たなシステムの構築をお任せできると感じた」と高く評価し、県の想定する条件を十分に満たすものとして採用された。

導入の流れさまざまな立場のニーズに即した仕組みや効果的な研修でスムーズな構築・導入を図る

デジタルペン

デジタルペン

デジタルペンにはカメラが内蔵されており、専用の用紙に記入することでペンの動きがデジタルデータ化される。救急隊員が手書きした「傷病者観察メモ」が、自動的にスマートフォン経由で専用サーバーへ送信され、県下の各関係機関で閲覧可能となるのだ。患者の状況などをスマートフォンで撮影した写真なども共有できるほか、搬送実績など受け入れ先選定に役立つ情報も、スマートフォンから簡単に登録、共有できる。

従来の作業に即した優れた仕組みではあるが、業務プロセスが変わることへの反対も少なからずあった。関氏と近藤氏は、それらを乗り越えて無事実用化にこぎつけたことについて、「小村氏らが提唱したデジタルペンを活用した傷病者情報の共有化のアイディアを基に、坂出市の救急救命士 笠井 武志氏をはじめとした香川県の救急医療に携わる仲間が意見を出し合い、医療機関も積極的に検証を行って、NTTデータをはじめ民間企業が技術とノウハウを提供してくれたからこそ、今回のシステムは実現できた(関氏)」「NTTデータは行政と現場のニーズをそれぞれくみ取り、行政と現場を結ぶシステムを構築してくれた(近藤氏)」と導入時を振り返って語る。

導入効果と今後の展望本システムを有効なツールとして救急医療体制の整備拡充を推進

2012年4月から、香川県の新しい「救急搬送情報共有システム」は無事に稼働した。以前と変わらない作業手順でスピーディーな情報共有が可能となっており、現場の救急隊員からも高い評価を得ているという。
もう1つ新システムが大きな効果を挙げているのは、受け入れ側の病院における準備態勢の効率化だ。患者が搬送されてくる前に、「傷病者観察メモ」などを確認し、必要な処置を検討することが可能となった。一刻を争う救急医療の現場では、ほんの数分であれ準備の時間が増えるのは大きな意味を持つという。
運用開始から約1年、「システムをより根づかせるため、2013年度は中小規模の病院に対する周知促進に注力する」と近藤氏。システムはあくまでツールであり、今後は、搬送する側や受け入れる病院側のさらなる体制整備も合わせて行うことで、救急医療の質の向上を全体的に図っていきたいという。
「とにかく優れたシステムなので、使えば良さが絶対にわかる。このシステムがもっと広まってほしい(関氏)」「今後もNTTデータには、より良い救急医療を実現するため、一緒にシステムを育てていってもらいたい(近藤氏)」と、両氏はともに今後への期待を語る。

【図】システム概要イメージ

お客様プロフィール

お客様名

香川県

県庁所在地

香川県高松市番町4-1-10

県政施行

1888年12月3日

面積

1,876km²

人口

988,355人(2013年2月1日現在)

主な事業内容

四国の東北部に位置する全国で最も面積が小さい県。半月型の地形で、南部には讃岐山脈・北部には讃岐平野が展開している。海岸線の延長は約699kmで、海面には多数の島が点在し、風光明媚な土地でもある。現在、香川県では、救急搬送情報共有システム以外にも、遠隔医療ネットワークの構築などが行われており、さまざまな面でのICT活用を推進中。

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