2014年1月

地域医療ネットワークシステム「とねっと」を構築。柔軟性の高い医療連携により、安心して暮らせる地域づくりを目指す

埼玉県の東北部に位置する「利根保健医療圏」では、医療資源不足という地域の課題を医療連携によって解決することを目指して、地域医療ネットワークシステム「とねっと」を構築し、2012年7月から本格稼働を開始した。この「とねっと」は、中核病院と身近な診療所間での患者の医療情報共有、かかりつけ医カードを用いての救急医療支援など、地域住民の命を守るための先進的な機能を網羅しているのが特長だ。「ここなら安心して暮らせる」と住民が感じられる地域づくりに向けて、「とねっと」は今後も対象領域の拡大を目指して、進化を続けていく。

お客様の課題

  • 人口あたりの医師数、看護師数、医療施設数が不足。
  • 中核病院への患者集中のため、最良の医療サービスが提供できない。

導入効果

  • 既存医療機関、医師の医療連携により、質の高い医療サービスを地域住民に提供し続けていくことが可能に。
  • 救急車にタブレット端末を配備し、救急患者の適切かつ効率的な救急搬送を支援。
  • 慢性疾患を中核病院とかかりつけ医が連携して計画的に診療する地域連携パスを実現。

導入の背景と課題医療資源不足の問題をいますぐ解決するために「医療連携」

近年、医師の地域偏在や診療科ごとの需給不均衡などの原因で、深刻な医療資源不足が発生している。また、中核的な役割を果たす病院へ患者が一極集中することにより、医師や看護師に過大な負担がかかり、重症患者へ最良の医療サービスが提供できなくなっているという問題も指摘されている。
埼玉県は、人口あたりの医師数、看護師数、医療施設数が全国でも低い水準であり、なかでも、県の東北部に位置する利根保健医療圏(人口総数約66万人)は、医療資源の不足が顕著な地域である。今後ますます高齢化・長寿化が進むなか、地域住民へ質の高い医療を提供し続けていくために、新たな施策が求められていた。
そこで、同医療圏を構成する9市町(行田、加須、羽生、久喜、蓮田、幸手、白岡、宮代、杉戸)の医師会長、首長、中核病院長、保健所長などが集結して、「埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会」を設置。ITを活用し、医療連携のネットワークを構築して、こうした問題を解決する取り組みを開始した。

【写真】

埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会
会長(加須市長)
大橋 良一氏

選定ポイント豊富な経験とシステム継続性を重視する姿勢を評価

同協議会が2010年から整備を進め、2012年7月に本格稼働を開始したのが、地域医療ネットワークシステム「とねっと」である。
システム構築は、企画競争型入札を経て、NTTデータが担当した。
企画提案段階でNTTデータが評価されたのは、豊富な経験とシステム継続性の2点である。
NTTデータは、他県の地域医療ネットワークシステムをはじめ、多数の医療システムを構築してきた。救急車にタブレット端末を搭載する救急医療システムの開発も経験しており、画面を極力シンプルにして利便性を高めるなど、救急現場のニーズに沿ったノウハウも持っている。慢性疾患対象の地域連携パスも、他県での構築・運用実績があった。
「さらに重視したのは、システムの継続性と拡張性です。われわれはシステムを作るのが目的ではなく、長期にわたって多くの人が使い続けることが主眼。NTTデータは、この趣旨を理解して、参加する医療機関の負担が少なく、維持管理費・ランニングコストをより低廉にするための提案を重ねてくれました」と、加須市長で、埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会会長を務める大橋 良一氏は語る。

導入の流れ多彩な情報を一元管理する連携型システムを構築

出来上がったのは、中核病院・診療所・画像診断施設・臨床検査施設などにすでにあるシステム、すでにあるデータベース、他ベンダーのパッケージなどを最大限に活かし、多彩な情報を一元管理できるようにした連携システムだ。
主な機能は、医療連携支援、急性期医療支援、慢性期医療支援という3つの柱で捉えることができる。
まず基本は、医療機関間で患者の医療情報を共有する医療連携だ。中核病院の専門医と診療所等のかかりつけ医が、患者のCT/MRIなどの画像、血液などの検査結果、薬の処方などの情報を共有し、必要なときにいつでも参照しながら診療に役立てる。中核病院とかかりつけ医の役割分担と治療連携を効率よく行えるのである。かかりつけ医のいる診療所等から、中核病院での診察/検査日時を予約することも可能だ。
地域医療ネットワークで本人の医療情報を共有することに同意した住民には、「かかりつけ医カード」が発行される。たとえば急病で救急車を利用する場合、かかりつけ医カードを携行していれば、救急隊が救急車に配備してある専用タブレット端末でID番号を照会するだけで、「とねっと」に登録されているデータを見ることができ、患者のアレルギー情報や薬の処方などを瞬時に確認して、適切な病院へ最短時間で搬送できるのである。
糖尿病などの慢性疾患に対しては、「地域連携パス」を用意している。長期にわたって診療・検査に取り組む治療計画を患者ごとに策定し、診療所等で月1回、中核病院で年1回というように、診療/検査を効率よく役割分担しながら実行していく。さらに、検査結果が示す疾病状態の変化に応じて、処置の必要性をシステムが自動検知するしくみも備えている。
「もうひとつ大切なことは、このシステムは、医療機関が使ってくれて初めて意味のあるシステムになるということです」と大橋氏。
医師のさまざまな要望に応えて、NTTデータは、使い勝手を中心にしたシステムのブラッシュアップをきめ細かく実施している。医療機関からの質問に対しては、システムのプロではなく、医療のプロが理解できる言葉を使って、納得できる説明を即座に返答する努力を重ねてきた。
「行政側のほうも、7市2町の相互の了解をとりながら運用改善していくのは相当な苦労ですが、NTTデータはきちんと対応してくれています。今後も、システム保守にとどまらず、『地域医療のための支援』を継続してほしい」と大橋氏は語る。

導入効果と今後の展望医療機関および地域住民の参加が着実に拡大

「とねっと」は、稼働開始から約1年を経て、着実な広がりをみせている。
ネットワークに参加した中核病院等は15施設、病院・診療所は103施設。2014年度には、埼玉県立がんセンターも参加予定である。こうしたインフラ整備を背景に、かかりつけ医カードの発行に同意した住民数は、1万2600名余に達した(2013年8月16日現在)。
「この順調な広がりは、7市2町の行政、そして、中核病院、地区医師会の三者が、深い理解と協力のもとに密接に連携したからこそ生まれたものです」と大橋氏は語る。
今後は、医療機関だけでなく調剤薬局とも共有するという方法で、在宅医療の支援にも役立てていく計画だ。
「ここなら安心して暮らせる、住みやすいと、地域住民に感じてほしい。『とねっと』という基盤があるところで働きたいと思う医師が増えてほしい。そして、住民の命を守るシステムとして『とねっと』が広く認識され、埼玉県、さらには日本中に広がるようにと願ってやみません。そのために、わたしたちは引き続き力を注いでいきます」と、大橋氏は決意を込めて語った。

【図】システム概要イメージ

注釈

  • 医療圏

    都道府県が病床整備を図るにあたって、医療法に則って設定する地域単位のこと。都道府県によって設定する広さには差があるが、通常は、一次医療圏が市町村、二次医療圏が複数の市町村をまとめた地域、三次医療圏が都道府県の単位。

お客様プロフィール

お客様名

埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会

事務局

埼玉県加須市南町5-15 埼玉県加須保健所内

発足

2010年7月20日

圏域内行政

行田市、加須市、羽生市、久喜市、蓮田市、幸手市、白岡市、宮代町、杉戸町

圏域内人口総数

約66万人。

主な事業内容

地域における医療課題の解決を図るため、2010年1月29日に国が採用を決定した「利根保健医療圏における地域医療再生計画」の実現に向けて発足した協議会。「かかりつけ医カードと医療情報のネットワーク化による地域医療ネットワークシステム」(愛称:とねっと)の構築、管理・運営を担当。

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