2017年12月

密教・仏教に関する歴史的文書のデジタルアーカイブ化で研究の深化を支援し高野山大学・地域のブランディングにも貢献

真言宗の聖地・高野山。この地にキャンパスを構える高野山大学は、所蔵する貴重な資料をデジタルアーカイブ化して広く世に公開し、密教・仏教研究の促進に加えて地域おこしにもつなげることを目的としたプロジェクトをスタートさせた。NTTデータのデジタルアーカイブソリューション「AMLAD®(アムラッド)」を導入し、デジタルアーカイブシステムを構築。高野山大学とNTTデータの共同作業により、密教と高野山に関する様々な情報を世界に向けて発信する取り組みを進めていく。このプロジェクトを始めた背景と稼働までの経緯、今後の目標などを見ていく。

お客様の課題

  • 大学が所蔵する宗教的・歴史的に貴重な資料を研究等で活用しやすい形で公開・発信すること
  • 大学が立地する地元の魅力再発見と国際観光都市としての振興をサポートする地域貢献をすること
  • "山の正倉院"とも呼ばれる無尽蔵の貴重な資料を未来に継承していくこと

導入効果

  • デジタルアーカイブシステムの構築により、全世界から大学が所蔵する貴重資料を閲覧でき、検索も可能に
  • アーカイブを基点として世界遺産・高野山を持つ地域のブランディングと魅力アピールを促進
  • 試行錯誤を経たアーカイブ化作業により、今後の資料公開のベースとなるシステム構築がスタート

導入の背景と課題"山の正倉院"の発信と地域おこしに向けて
求められる大学のブランディング

和歌山県高野町にある高野山大学は、密教文化の研究教育をリードする大学だ。創立は1886年で、2016年に130周年を迎えた歴史の長い大学である。歴史という視点で見るなら、ルーツは真言宗の宗祖・弘法大師空海が高野山を開創した1200年前にまでさかのぼれるともいえる。

その悠久の歴史を背景に、同大学の図書館や密教文化研究所には空海の著作をはじめとする貴重な資料が山のように保存されている。そもそも高野山自体が"山の正倉院"と呼ばれるほどに、人類遺産の宝庫だ。密教・仏教に限らず、広く歴史全般の研究にも資するこれらの資料をいかに整理し、利用しやすい形で世に出していくかが、同大学における課題だった。同時に、高野山のある高野町の魅力を発信し、地域おこしを進めることもテーマ。この二つの目標を実現するため、まずは高野山大学自体のブランディングが必要だと考えた。

【写真】

高野山大学
文学部教授 副学長(教務担当)
密教文化研究所長
奥山 直司 氏

高野山大学文学部教授で密教文化研究所長の奥山 直司 氏は、次のように語る。

「高野山自体がすでに大きなブランドなのですが、まずは私たち自身が高野山ブランドの魅力を再確認し、そこから大学のブランディングにつなげたいという思いがありました」

選定ポイント文科省の私立大学補助金事業に応募したことが
デジタルアーカイブ化の直接的な契機に

貴重な資料をデジタルアーカイブ化してWebで公開・発信する「高野山アーカイブ」。デジタル化したデータをインターネット上で閲覧できるようにしたうえ、検索機能も備えることで、研究者や一般の人たちの資料へのアクセスを容易にする計画である。

このプロジェクトのパートナーとして、高野山大学はNTTデータを選定した。関西を拠点とするNTTデータ関西をフロントとしたサポート体制と、NTTデータのデジタルアーカイブに関する最先端技術、バチカン教皇庁図書館所蔵文書のデジタルアーカイブ事業などにおける実績が決め手となった。

プロジェクトを進めるには、当然コストがかかる。高野山大学が着目したのは、文部科学省の平成28(2016)年度私立大学研究ブランディング事業への応募だった。同事業は独自色を打ち出す私立大学を最長5年の補助金で支援するもので、これをきっかけとしてプロジェクトを始動させようという考えだ。NTTデータもこの提案に賛同。まずは同事業への応募と認定に向けて、両者の共同作業がスタートした。

同事業には地域の経済・社会・文化の発展への寄与を求める「社会展開型」と、先端的・学際的研究拠点の整備により国際的発展への寄与を求める「世界展開型」があり、高野山大学は「社会展開型」に応募。計画の有用性に加えて高野山自体が持つブランド力もあり、プロジェクトは無事認定された。これを受け、平成29(2017)年2月からNTTデータのデジタルアーカイブソリューション「AMLAD®」をベースとしたシステム構築がスタートする。

導入の流れ高野山というタイムカプセルに秘められた
貴重な資料の数々がいま研究を待っている

デジタルアーカイブ化にあたっては、大学側が原本をスキャナーで読み込んで電子化し、コンテンツとして作成。NTTデータがAMLAD®をベースに閲覧・検索のためのシステム構築作業を行う。

実際に作業が始まると、漢文資料特有の文字認識の難しさがハードルとなった。資料を読み込むスキャナーのOCR(光学的文字認識)性能の限界もあり、読み込んだ漢字を一つひとつチェックして、手作業で修正を加えなければならなかった。奥山氏いわく、こうした修正は「資料自体が要求するもの」であり、それを経なければ公開ができないという必須の作業だ。両者で検討を重ねながら、時間をかけ満足のいく形を模索していった。

半年をかけて準備作業が進められ、晴れて7月31日に一般公開を開始。第1弾として『胎蔵秘密略大軌』という文書が高野山アーカイブで公開された。まずは一つの具体的な成果が生まれたわけだ。

奥山氏によれば、大学は所蔵する無数の資料を公開する必要性をずっと以前から感じていたという。かつては資料を出版物やDVDとして公開していたが、いつでもどこでも閲覧できるデジタルコンテンツとは異なり、使い勝手に不便なところがあり、検索機能も持っていないため、有効には活かされていない現実があった。しかし最新技術で実現するデジタルアーカイブであれば、全世界の人たちが高野山の資料に瞬時に触れられるうえ、デジタルならではの利点として検索も自由になる。これは「革新的な出来事」だと奥山氏も自負する。

「"山の正倉院"である高野山は、いわば大きなタイムカプセルのようなものです。伝統を引き継ぎながら現在も動き続ける生きた高野山という側面も当然ありますが、1200年にわたって情報を貯蔵してきたタイムカプセルとしての高野山という側面もあるわけです。その膨大な資料の一つひとつが、いま研究を待っている状況にあります。すべてを一気にデジタル化するのは無理な話ですが、まずはとりわけ重要な資料を選び、広く内外の研究者や一般に公開していこうと考えました。この作業には、NTTデータの持つすぐれた技術と豊かな経験が力を発揮します。それをぜひ使わせてもらい、1200年の伝統と最先端技術のマッチングを果たしたいという思いが、今回のプロジェクトの根底にありました」

導入効果と今後の展望アーカイブの先を見据えた壮大な構想
1200年の伝統を未来へ継承する端緒に

こうしたプロセスを経て公開に至った「高野山アーカイブ」。今回の事業では、空海の著作をはじめとする宗教的・歴史的文書に加えて、高野山で古くから作られてきた古地図や近代の古写真などもデジタルアーカイブ化して公開していく予定だ。ゆくゆくはスマートフォンを使い、昔と現在の地図や景色を見比べられるような仕組みを開発することも視野に入れていると奥山氏は話す。

その先に見据えているのは、高野山に関わるすべての人々が楽しみ、喜べるような形のネットワークづくりだ。2004年に世界遺産登録された高野山は、研究に資する宗教的・歴史的遺産の宝庫としてだけでなく、観光都市の視点からも大いに注目されている。実際に近年、高野山にはグローバリズムの波が押し寄せ、大学にアジア各地からの留学生や研究者を受け入れているほか、アジア、欧米を問わず世界中から集まる観光客で賑わっている。「社会展開型」である同事業の目指すところには地域貢献も重要な要素として入っており、今後は地域おこしにも積極的につなげていきたいと奥山氏は語る。

そのためにも、金剛峯寺をはじめとする高野山の各所、高野町役場など行政機関、地域住民や関係者ともネットワークを結び、高野山全体で発信していくことが重要だ。その求心力として「高野山アーカイブ」を位置づけることも狙いの一つとなっている。

「最長5年の補助金事業ですが、私たちが目指すものが5年で済むとはまったく考えていません。この5年で長く継承していくためのベースをつくり、その後の10年、20年をかけて積み重ねていきたい。それこそ100年という長いスパンを視野に入れて進めていくべき仕事だと実感しています。私たちとしては、そのためのシステムを、NTTデータと一緒に知恵を絞りながらつくっていきたいという思いです」と奥山氏。8月に公開されたばかりで、まだまだ閲覧できる資料が少なく、具体的な効果測定も今後の課題。しかし奥山氏をはじめとする高野山大学の教職員たちは、伝統と未来をつなげる大きなプロジェクトに携わる幸運と誇りを感じながら、一歩一歩前に進んでいる。

【図】

図1:高野山の入り口にそびえる大門

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図2:壇上伽藍は〈胎蔵曼荼羅〉の世界を表しているという

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図3:高野山大学 図書館の密教・仏教に関する蔵書量は国内有数

お客様プロフィール

【図】
お客様名

高野山大学

所在地

和歌山県伊都郡高野町高野山385

創設

1886年

学校紹介

1886年創設。高野山の中心・金剛峯寺のすぐそばにキャンパスがあり、密教・仏教の精神に基づく教育と研究を行う。文学部の1学部構成で密教学科と人間学科を置き、大学院にも密教学・仏教学専攻を設置。特徴的な研究施設として密教文化研究所を有する。貴重な資料を多数所蔵する図書館は1929(昭和4)年の完成で、武田五一設計による建物は国の登録有形文化財。真言宗の宗門の子弟だけでなく、広く一般の学生を受け入れており、近年は海外からの留学生も多い。

ウェブサイト

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【写真】高野山大学様

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本稿に登場したサービス

高野山アーカイブ

高野山大学が保管する仏教や密教に関する歴史的貴重資料をデジタル化し、広く公開するためのデジタルアーカイブシステム。これによりデジタル化した仏教や密教に関する歴史的貴重資料を、高機能ビューワにより閲覧することが可能となります。

【図】

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