水尾 順一氏

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駿河台大学・同大学院経済学研究科教授 東京工業大学大学院兼任講師 博士(経営学)

日本経営品質学会副会長、日本経営倫理学会常任理事、(社)経営倫理実践研究センター上席研究員、2010年ロンドン大学客員研究員、資生堂社友他。著書『逆境経営 7つの法則』朝日新書、『CSRで経営力を高める』東洋経済新報社など多数。

企業でCSRの実務を推進し、大学でその理論構築をしながら、“CSRの理論と実践の融合”を社会に促進してきた立場から、以下に第三者意見を申し述べます。

高く評価できる点:「NTTデータらしさ」が発揮された、ステークホルダー重視の経営を読み取ることができます。

同グループの報告書はWeb版と冊子版の棲み分けでステークホルダーに「伝える力」を発揮し、「知る権利」を十分に満足させています。具体的には、Web版で網羅性を、冊子版でCSRの重点テーマである「社会・地域」「人」「地球環境」にとってよい“しくみ”に焦点を絞り、簡潔明瞭に伝えています。1つには特集から全体構成に至るまで一貫してよい“しくみ”をまとめ、同グループの主義・主張が明確に表現されていること、2つには重点テーマごとに2011年度の取り組み実績と今後の計画を明確にすることで、PDCAのマネジメントサイクルが実践され、経営品質の高さが示されていることです。
社会的課題の解決を図りながら、「Global Top 5」をめざす「攻めと守りのグローバルCSR」への取り組みが十分に開示されています。特集記事で世界のさまざまな課題を解決しながら社会に貢献する「積極倫理」が展開される一方、コンプライアンスやリスクマネジメントではグローバルな視点から不祥事を未然に防ぐ「予防倫理」の活動を知ることができます。

今後の改善に期待する点:CSRを果たしていくための基盤としてガバナンス体制におけるダイバーシティを意識した社外取締役の充実を期待します。

すでにグループ社員の約45%が日本国外で勤務しており、今後女性の活躍支援も一層重要となります。その意味から、ダイバーシティを意識した独立社外取締役の充実が期待されます。社外取締役の充実は、海外の人たちや女性への配慮を進めるだけではありません。社外の異質な知を導入することで、同グループが進めるグローバル・ガバナンスや社員満足、顧客満足、さらにはグローバル・マーケティングやブランドマネジメントなどへも新しい「知」が期待できるからです。すでに2012年7月に取締役会への意見具申として外部の知恵を導入するアドバイザリー・ボードを導入されたと伺いました。次のステップとして独立社外取締役の充実を期待します。なお、昨年提案申し上げた「中・長期のあるべき姿とその実現に向けたロードマップの明示」についても早期の実現を心から祈念申し上げます。

石田 寛氏

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経済人コー円卓会議日本委員会 事務局長 関西学院大学経営戦略研究科准教授

日本興業銀行で市場ディーリング、企画部門等の勤務を経て2000年10月より経済人コー円卓会議日本委員会で活動。2006年同会専務理事兼事務局長に就任。関西学院大学大学院准教授を兼ねる。

2012年のCSRレポートについて、私は次の3点を評価したいと思います。

  1. 1.3つのCSR重点テーマを軸に活動を進化させるとともに、企業理念・グループビジョンの実現までをめざした、体系的かつ一気通貫のプロセスとなっていること。
  2. 2.さまざまなステークホルダーとのダイアログやコメントを掲載していること。
  3. 3.グローバル・グループのさまざまな活動を多く記載していること。

ただ少し厳しい言い方をすると、これはNTTデータに限らず、日本企業全体を通して同じようなことが言えるのですが、CSRレポートに情報を詰め込みすぎで、自社のいわば独りよがりな情報発信になっている点が残念です。読み手に何を伝えたいのかフォーカスポイントをはっきりさせると、より良い報告になると思います。

今後、以下の点を踏まえ、さらなる改善を図られることをお勧めします。

  1. 1.経営戦略とCSRの一体化

    経営戦略とCSRとの位置づけが述べられておらず、経営層からのコミットメントについても伝わってきません。経営の意思決定におけるCSRの役割について、具体的な明示が必要です。

  2. 2.社会の懸念事項と3つの重点テーマのリンク

    3つのCSR重点テーマは、NTTデータらしさというよりも、どの企業も対応可能なものという印象を受けます。具体的にどのような社会の懸念事項に対処するのか絞り込んでいただきたい。その際には、自社のビジネスがどのように社会的コスト負担を軽減していくのかを明示することも一案です。

  3. 3.NTTデータへの期待ではなく、課題を知りたい

    ステークホルダーからは、総じてNTTデータへの期待が述べられていますが、私は積み残された課題が何かを知りたいと思います。課題を伝えることこそが、透明性の確保につながります。

経営がグローバル化にシフトしているということは、CSR経営へと舵を切り変えていくということを意味します。

今後、透明性確保や人権課題(Business on Human Rights)についても取り組む必要があり、まずは、上記3点に取り組むことから始めていただきたいと思います。

そして、その実行を通して、社会との協力関係を築きながら「変える力を、ともに生み出す」企業へと発展されることを望みます。

第三者意見を受けて

昨年の報告書に対していただいたご意見を踏まえ、本報告書では、社内外のステークホルダーの方々の意見をより多く掲載したほか、昨年に引き続き、CSR重点テーマを軸にしたわかりやすい報告に努めました。今回、水尾様からは、CSRメッセージの実現に向けて、「中・長期のあるべき姿とその実現に向けたロードマップの明示」の早期の実現、また、グローバル化にともなって課題となるダイバーシティを意識してガバナンス体制を充実させることについて、ご指摘いただきました。石田様からは、経営戦略とCSRの一体化の推進や、注力する社会課題をより明確化し、より当社グループらしい取り組みを推進することの必要性について、ご指摘いただきました。

今後もいただいたご意見を踏まえ、ステークホルダーの皆様との対話をより充実させながら、当社グループとしてのCSR活動のさらなる推進・改善と、より透明性を意識した情報開示の充実に取り組んでまいります。