先見日記

先見日記とは 先見リメ[ス

2006 Jan 16
いとうせいこう
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大学は終わった
浅草にて

 昨年末、早稲田大学文学部のキャンパスで、ビラをまいていた学生が教員複数名に私人逮捕され、その後警察に“建造物侵入”の容疑で逮捕・拘留されるという事件が起こった。
 逮捕されたのが早稲田の学生ではなかったため、“部外者の侵入を禁ずる”という大学当局の、いわば私有地への立ち入り禁止項目を守らなかったというのが理由になったわけだが、それにしても大学でビラを配っただけの人間が逮捕されるのは日本初、前代未聞である。

 しかし、事件への反応はあまりに薄い。おおかたは“部外者が排除されるのは当たり前だ”というような意識を持っているらしい。
 それを言ったら、早稲田などは部外者だらけなのである。サークルに集まる女子学生も、もぐりの学生も大勢いる。まさか彼らまで逮捕するはずもないから、実際は政治的活動をとがめられ、逮捕されたということになる。
 政治的な意見を発表することぐらい保証してやれなくて、何が大学だろうか。特に早稲田OBの俺としては、このみみっちい管理、自治のゆるみに暗澹たる思いがする。早稲田ってそんなに小市民的な大学だったのかよ。そもそも大学はある程度の公共性を持った“私有地”として、所有の曖昧さを保っているべき場所じゃなかったのか。理想って意外なくらい大事だよ。

 表現の自由とか、政治的な活動の自由とか、そんなレベルのことさえ言いたくない。ここにあるのはむしろ大人げなさである。言わせてやれよ、意見ぐらい。反抗も出来ない学生を増やして、それでどうなるっていうんだよ。それを複数で囲んで通報かよ。そういう脱力するような思いである。
 インターネット上にはもっと危険な意見が平気で出回っているのである。人間がその場でビラをまくことが、むしろ特異な行為になっているのではないかとすら俺は思った。人間が介在する情報伝達が煩雑で危険なものに見えるのである。それでやっきになって排除してしまう。

 ますます犯罪が増えるしかない。社会的感情の発露の場がなくなれば、個人的な無意識の暴発だけが連続してしまう。
 大学さえも、くさいものに率先してフタをする時代になった。自由区の機能を失った大学は、社会的意義の大きな部分をこれで失ったことになる。

End

















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