SHARE Twitter Facebook Google+ はてなブックマーク LinkedIn

AIは人間の医師を超えるか? ディープマインドが囲碁の次に目指すのは医療の革新

2018.11.01

囲碁のチャンピオンを破った囲碁AI「AlphaGo」を開発したディープマインドは、医療用製品の開発を計画中。一般的なタイプの眼のスキャンから、失明の恐れのある50以上の疾患を医師が検出できるよう支援する製品で、ディープマインド AIアルゴリズムが、ヘルスケア製品に発展する初めての事例である。

Bloomberg) - ロンドンを拠点とするAI(artificial intelligence、人工知能)企業であり、アルファベット傘下のディープマインドは、医療用製品の開発を計画しています。この製品は、一般的なタイプの眼のスキャンから、失明の恐れのある50以上の疾患を医師が検出できるよう支援します。

科学誌『ネイチャー・メディシン』上で発表された論文では、ディープマインドがトレーニングしたAIソフトウェアは、人間の医師よりも適切に疾患の徴候を検出したと報告されています。ディープマインドと、研究パートナーであるロンドンのムーアフィールズ眼科病院(Moorfields Eye Hospital)およびユニバーシティカレッジロンドン眼科研究所(University College London Institute of Ophthalmology)は、本テクノロジーの2019年中の臨床試験実施を見込み、計画を進めていると述べています。

ディープマインドは、この臨床試験が成功すれば、規制当局に認められた製品を開発し、ムーアフィールズ眼科病院も英国全域に展開でき、製品も、当初5年間は無料となる見込みとしています。このソフトウェアは、機械学習を利用するディープマインド AIアルゴリズムが、ついにヘルスケア製品に発展する初めての事例になります。

アルファベットは、AIを利用してヘルスケアを向上させる目的で、いくつかの取り組みを実施してきました。今年、アルファベット傘下のライフサイエンス企業であるVerilyは、グーグルのAI専門家と協力し、異なる種類の網膜の画像から、一連の心臓血管の問題を発見できるアルゴリズムを開発しました。ディープマインド自体には、完全にヘルスケア専任の部門があり、英国のNHS(National Health Service、国民保健サービス)および米国退役軍人省(U.S. Department of Veterans Affairs)などとの研究プロジェクトが進行中です。

ディープマインドと英国のNHSの研究は、論議の的でした。昨年、英国のデータプライバシー監視機関は、別のNHSトラストであるロイヤルフリー病院(Royal Free Hospital)が、160万人分の患者のカルテをディープマインドに違法に提供していたことを報告しました。これは、患者が急性腎障害を起こすリスクがある場合に医師に警告するモバイルアプリの開発を支援するためでした。

眼のスキャンの研究においては、ディープマインドとNHSパートナーの各機関は、同様の問題を回避する処置を講じています。ピアス・キーン(Pearse Keane)氏は、このプロジェクトで研究を進めるムーアフィールズ眼科病院のチームを率いる上級医師です。彼はインタビューの中で、ディープマインドが開発したアルゴリズムのトレーニングとテストに使用した16,000件の眼のスキャン画像はすべて匿名にしたため、「我々ができることはすべてした」と述べています。この匿名化のプロセスは、同病院の情報統制部門により承認および監視されており、ディープマインドは、スキャン画像が使用されていた患者を特定し直す試みから排除されました。

また、NHSは、このソフトウェアの開発に使用されたデータはムーアフィールズ眼科病院が所有しており、データをその他の研究にも自由に使用できると強調しました。

ディープマインドとムーアフィールズ眼科病院の研究が着目するのは、OCT(optical coherence tomography、光干渉断層撮影)と呼ばれるタイプの眼のスキャンであり、このスキャンは、AMD(age-related macular degeneration、加齢黄斑変性)の診断に利用できます。AMDは、糖尿病などの疾患に関連付けられるその他の網膜の異常と並び、先進国における失明の原因の1位になっています。

しかし、キーン医師は、OCTスキャナーが頻繁に利用されるようになった一方、その画像を正しく解釈できる専門家のトレーニングが追いついていないと述べています。その結果、OCTスキャンで抽出されたほぼすべての異常が、再検査のため、眼科医への照会に回されています。2007年から2017年の間に、英国内における眼科医への照会は、37%増加しました。このため、待ち時間が長くなり、失明を防ぐために迅速な処置を実際に必要としている患者たちに対応するのが困難になっています。

システムの基準を定めるため、ディープマインドは、AIのトレーニングに使用されない1,000件のスキャン画像でソフトウェアのテストを実施しました。そのパフォーマンスと、特にOCTスキャン画像を解釈するトレーニングを受けた4人の上級眼科医および4人の視力検定者による診断を比較しました。その結果、研究者は、50を超える眼の疾患に対し、AIが照会の判断を正しく行うことができ、94%の精度であったという知見を得ました。この精度は、大半の人間の判断よりも優れていました。重要なのは、ソフトウェアには、偽陰性、つまり疾患の徴候を見逃したケースがなく、偽陽性、つまり、システムが緊急の評価を求めることを推奨したのに対し、医師は患者に症状の観察だけを推奨したケースが2件のみだったことです。この結果は、いずれの専門家よりも優れていました。

ディープマインドのソフトウェアでは、人間の脳の働きに大まかに基づいた機械学習の一つであるニューラルネットワークを2種類使用しました。一方のニューラルネットワークが眼の疾患に関連付けられたOCT画像の特徴にラベル付けを行い、もう一方がこのような特徴に基づいて眼の疾患を診断します。

ニューラルネットワークを2種類使用し、タスクを分割したのは、ディープマインドのAIによる意思決定の根拠が、人間の医師にとって完全に不明瞭なブラックボックスではないことを意味している、とキーン医師は語りました。

(Alphabet傘下のライフサイエンス企業であるVerilyに関する記述を訂正)

本記事の著者へのお問い合わせ:Jeremy Kahn(London在住、jkahn21@bloomberg.net
本記事の担当編集者へのお問い合わせ:Giles Turner(gturner35@bloomberg.net)、Molly Schuetz

©2018 Bloomberg L.P.



この記事はBloombergのJeremy Kahnが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。