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AIが変える7つの衣食住

FORTUNE

2019.01.07

AIによって私たちの生活はどのように変わるのか?移動のイノベーション、進化するコールセンター、買い物客の行動を予測することで生まれる新しいショッピング・エクスペリエンス…。AIの最先端事例で読み解く、近未来の7つの衣食住。

もう運転については心配ご無用

「このクルマ、行き先を知ってるぞ!」NBCのドラマ『The Office』で主役を務めたマイケル・スコット氏は、レンタカー会社で借りたフォード・トーラスでペンシルベニア州スクラントン近郊の湖に出掛けようとしたとき、そう叫びました。自動運転車を理想的な道路条件下で安全に走らせることは、すでに技術的に可能になっています。しかし、現実の世界では、我々のようにもう少し運転を覚える必要がありそうです。そこで登場したのが、悪名高いiPhoneハッカーのジョージ・ホッツ(George Hotz)氏が設立したスタートアップ企業「Comma.ai」です。Comma.aiのOpenpilot技術は、街路樹や一時停止標識がどのように見えるのかをコンピューターシステムに教えるのではなく、日々のドライバーのパターンを分析して自動運転モデルをトレーニングします。同社は、ダッシュカムアプリ「Chffr」とプラグインモジュール「Panda」から数百万マイル分の走行データを収集し、そのデータを集約することで、人間のドライバーを模倣する自律システムを開発しています。現在、その技術はホンダ、トヨタ、ヒュンダイの一部車種に採用されています。同社は、ユーザーが改善するという考え方で成功を収めているオープンソースシステムであるテスラのオートパイロットをiPhoneになぞらえ、自らをアンドロイドと位置付けています。マイケル・スコット氏がその1人でないことを願うばかりです。ダニエル・ベントリー(Daniel Bentley

16%

ロイター/イプソスが行ったアンケートで無人自動車に乗車することに不安はないと答えた女性の割合(それに対し、男性は38%

新たな旅の友

エイヤフィヤトラヨークトルは、火山灰が消えたあともずっと我々の頭から離れることはありません。2010年のアイスランドの火山噴火は何百万人という航空機利用客に影響を与え、それを機に旅行コミュニケーションは新時代を迎えました。情報配信能力という点で厳しい状態にある航空会社は、乗客に効果的かつリアルタイムにリーチする手段としてソーシャルメディアに注目しました。アクセンチュアインタラクティブのソーシャルメディアおよび新興チャネル担当責任者であるロブ・ハルレス(Rob Harles)氏は、「あの噴火以来、そのコミュニケーション形態には止められない勢いがあります」と語ります。しかし、その後の旅行者の数は急増し、2016年には到着者数ベースで30%増となる12億5,000万人を記録しました。そうした規模のソーシャルメディアインタラクションを人の力で行うことは「不可能」(ハルレス氏)です。

「フライトの遅れは?」、「ホテルのチェックアウト時間は?」といった旅行者の基本的な質問に答えることができる顧客サービスチャットボットが登場しています。例えば、ブッキングドットコムは、顧客からの問い合わせの60%を自動的に解決できるとされるボットを導入しています。この技術の次の段階は、ボットが旅行の種類(つまり、ビジネスか観光か)を理解し、フライトのアップグレードの提案から、例えばピッツバーグで最高のヴィーガンカフェの予約まで、全旅程にわたって利用者の好みに応じて提案を行うことです。現在チャットボットと呼ばれているものが、本格的な自動応答コンシェルジュになる日も近いかもしれません。クレール・ジルマン(Claire Zillman

コールセンターのアップグレード

「どうなさいましたか?」

IBMは、2020年までに顧客サービス対応の85%が人間を介さずに処理されるようになると予測しています。機械学習や自然言語処理により、チャットボット、高度な電話サポート、人間の担当者の役割をほとんど果たすことができるセルフサービスインターフェースが実現しています。

顧客サービス担当者として働く270万人の米国民はどうなるのでしょうか。一部の人は、激高した顧客への対応などボットにはできない仕事に配置転換されるかもしれません。この技術に頼る企業は、ヒューマンエラーの撲滅、データ検索速度の劇的な向上、顧客サービス対応におけるバイアスの排除に役立つとしています。

しかし、ボットで終わりだと思ったら大間違いです。スイスの投資銀行であるUBSは先頃、ニュージーランドのAIエキスパート企業のFaceMeと組んで、チーフエコノミストのダニエル・カルト(Daniel Kalt)氏本人であるかのように顧客と対話できるデジタルクローンを開発しました。IBM WatsonのAI技術を利用して開発し、カルト氏本人がトレーニングしたアバターについて、同行は「人間味とデジタル技術の融合」の実現に向けた研究の一環としています。マッケーナ・ムーア(McKenna Moore

マネーボール2.0

NHLのスカウトは、2017年にシーン・ドゥルジ(Sean Durzi)選手(上記写真)について検討した結果、この19歳のディフェンスマンの指名を見送ることにしました。ところが、そのわずか1年後、彼はトロント・メープルリーフスから2巡目指名を受けることになりました。それは、モントリオールに本社を置くスタートアップ企業「Sportlogiq」が開発し、「Moneyball 2.0」と名付けた強力な最新AIソフトウェアがもたらしたことでした。それにより数テラバイトのデータを解析した結果、彼の優れたプレイメイキング能力が明らかになったということです。Sportlogiqは、AIを活用してチームの次のスター発掘を支援している数社のうちの1社にすぎません。

カールソン・ケッスラー(Carson Kessler

ショッピングのあり方が変わる

従来型店舗には新たな「商売」があります。それは理想的なAIデータ収集ラボです。ホームデポは、何百万件という取引のデータを利用して、キッチンの大改修などに取り組むDIY愛好者が他に何を必要としているかを突き止め、ハイパーターゲットクロスセルのほか、詳細なホームプロジェクトガイドも提供しています。セフォラは、ModiFace(先頃ロレアルが買収)によるAI顔認識を利用して、買い物客が自分にぴったりのメイクシェードを選びやすくしています。このソフトウェアは、過去数百万人のユーザーを分析して、ユーザーに似合うものをより的確に予測します。さらに、MITのスピンオフ企業であるCelectは、買い物客の行動の予測や店舗のどこでどんなプロモーションを行ったら効果的かの判断、最善の結果につながる商品配置の把握に機械学習を利用しています。

10番通路の値段のチェックについてはどうでしょうか。一例として、ウォルマートは、棚をスキャンして在庫切れ商品、顧客が誤った場所に置いた商品、値札の間違いを見つけるという、いずれも人間にとって時間と手間のかかる仕事を行うロボットを50店舗で試験運用しています。小売業者は店内技術について堅く口を閉ざしていますが、CBインサイツによれば、NaviiやSimbeのようなAIロボット開発企業は注目を集め、投資家を引きつけています。フィル・ワーバ(Phil Wahba

この広告を見て笑顔になる?

マーケティング担当者が考えた広告が必ず当たるとは限りません。ケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)が出演するペプシのスポットCMのような不発の可能性を低くするために、マーケティング担当者はますます人工知能に頼るようになっています。感情認識AI企業のアフェクティバによると、フォーチュン500社の1/4は同社の技術を自社の創造的開発プロセスで利用し、AIによって強化された調査で広告候補に対する反応を調べています。87カ国からの700万の顔(および38億の顔の骨格)の画像でトレーニングされたアフェクティバのシステムは、個人の顔の表情を解読します。同社の技術は、広告を見たときの20種類の特異的な表情だけでなく、「嫌悪感」を含む8種類の感情も識別します。

2011年以来(3万件の広告に相当)アフェクティバの製品を導入しているメディア調査大手のカンター・ミルウォード・ブラウンは、高い称賛を受けたコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が出演したナイキの広告が主なポイントで視聴者の笑顔を誘うことを発見しました。同社常務取締役のグラハム・ページ(Graham Page)氏は、「犠牲と夢に関するキャパニック氏のメッセージが肯定的な反応をもたらしているという事実を突き止めることができました」と語ります。また、ワールドカップの広告に登場した女性選手に対し、視聴者は驚きながらも肯定的な反応を示したことも分かりました。

カンターでは、顧客のキャンペーン強化を支援するだけでなく、すべての顧客のためになる幅広い知見を得ているとページ氏は指摘します。同社によれば、主役が(伝統的な役割ではなく)現代的な役割で登場し、視聴者が「革新的」と表現する広告は25%高い効果が出ています。エリカ・フライ(Erika Fry

次の食物の栽培

一見すると、農業は種まき、水まき、収穫を繰り返す単純な仕事のように見えます。しかし、実際には、食物の栽培は一連の複雑な方程式に基づいています。「我々が農業で扱っているデータの多くは非常に複雑です」そう語るのは、室内垂直農業企業「プレンティ」の共同創立者兼最高科学責任者であるネイト・ストーリー(Nate Storey)氏です。環境要因(気流、二酸化炭素、光、湿度など)、植物の遺伝学、さらには施肥や水まきといった作業はすべて、相互に作用する変動要因です。現在、プレンティなどのいくつかのスタートアップ企業は、AIを利用して農業における複雑な意思決定の管理を支援しています。例えば、プレンティとその競合企業であるBoweryやGotham Greensはいずれも、機械学習によって窒素や鉄分の不足、害虫といった植物の問題の有無を判断し、事前に対処するのに役立つ画像のデータセットを収集・分析するシステムを構築しています。「このソフトウェアは問題について学習できるだけでなく、我々人間が個々に行うことができないような規模で自動的に行うことができます」(ストーリー氏)。ベス・コウィット(Beth Kowitt

更新:この記事のBrooklyn Dynamicsに関する部分は1031日に削除されました。

この記事のある版は、フォーチュン2018111日号の記事「25 Ways AI Is Changing Business」の一部として掲載されます。

 

この記事はFORTUNEのスタッフが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。