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AIが変える、ものづくりの未来

FORTUNE

2019.02.04

AIは急速に社会へと浸透している。そしてAIは、人間固有の能力であると信じられてきた創造性にも深い影響を与え始め、代替する可能性が指摘されている。今、デザイン、共同作業、人間の健全な労働までもがAIによって変革される未来が見え始めてきている。

設計の効率化

コンピューターアルゴリズムが科学技術や医療の仕事を代わりに行うようになっているが、クリエイティブな仕事についてはまだ安泰だろう――そんなふうに考えていませんか。しかし実際はそうともいえません。ソフトウェア開発を手掛けるオートデスク社は、つい最近、「ドリームキャッチャー」と呼ばれる研究開発プロジェクトから新しいプログラムを商品化しました。このプログラムには、クリエイティブな業務に携わる人間の設計者をAI技術によって支援する機能が搭載されています。すでにエアバス社、アンダーアーマー社、スタンレー・ブラック&デッカー社といった企業で使われているこのソフトウェアは、ジェネレーティブデザインという急成長分野から生まれた実例の一つです。デザイナーは、このプログラムに要件や制限事項、さらには材料の総コストまで、さまざまな特性を入力します。すると、数百あるいは数千もの選択肢が自動的に生成されます。人間のデザイナーがそれらの選択肢を選り分けると、ソフトウェアが好みの傾向を把握し、より優れた選択肢を元にこの作業を繰り返すことができるようにしてくれます。航空機メーカーのエアバス社は、このソフトウェアを使ってA320型機の内部パーティションを再設計し、以前の構造よりも約30キロ、すなわち45%の軽量化を達成しました。文責:アーロン・プレスマン(Aaron Pressman

人間とロボットの融合

組立ラインではロボットが数十年にわたり、さまざまな製造作業を担ってきました。近頃では、「人間」という名の自動化された作業マシンに対し、新機能の追加が進められています。コラボレーティブロボット、略して「コボット」と呼ばれるそれらの新しい装置は多岐にわたり、人間の作業者に正しい部品を手渡す機能を備えたロボットヘルパーから、装着した人の力を増幅するだけでなく、AIソフトウェアによるガイダンスも提供する外骨格型スーツのような、「アイアンマン」を彷彿とさせるものまでが存在します。BMWのサウスカロライナ州スパータンバーグ工場では、「ミス・シャルロット」という愛称が付けられたコボットが、ドアの組み立てをサポートしています。また、高級自動車メーカーのメルセデス・ベンツでは、最高級クラスのいくつかのラインで組み立てている車両を顧客ごとにパーソナライズする際に役立つ、コボットテクノロジーの開発に乗り出しています。大型の自動システムから、小回りのきくコボットヘルパーと人間の組み合わせへと切り替えることで、たとえばSクラスのセダンをカスタマイズするための多種多様な部品の中から、何かを選び出すまでの時間が短縮できるといいます。MITのジュリー・ショー(Julie Shaw)教授は、周りの人間からの合図を読み取ることでコミュニケーションをとる方法とそのタイミングをコボットに学習させる、機械学習を使って開発したソフトウェアアルゴリズムの研究を進めています。そのほか、コボットを人間の脳波の計測データにつなぐ研究を行っている研究者もいます。心を読み取る支援ロボットの開発が実現すれば、それこそ真のコラボレーションと言えるでしょう。文責:アーロン・プレスマン(Aaron Pressman

48%

人間のふりをするチャットボットを「不気味」だと感じる人の割合(マインドシェア社調べ)

クリーンエネルギーの実現

風力エネルギーを化石燃料発電よりも圧倒的低コストで利用するには、風力を電力に変換する処理の効率を高める必要があります。そのために役立っているのが、シーメンス社で開発された機械学習テクノロジーです。科学者チームは、巨大な風力タービンにコンポーネントの振動と天候に関するデータを取り入れることで、たとえば回転翼の角度を変更して、絶えず微調整が自動的に行われるようにすることが可能だと気付きました。しかし、研究者のフォルクマル・シュテルツィング(Volkmar Sterzing)氏によれば、「その計算を解析的に行うのは不可能」とのことです。

この種の問題こそ、AIと機械学習にうってつけだと言えるでしょう。必要なパラメーターはセンサーによってすでに生成されていましたが、「以前はそれらのデータがリモートメンテナンスとサービス診断にしか使われていませんでした」と、シュテルツィング氏は説明します。「それが今では、風力タービンで生成される電力量の増加に役立っています。」と同氏。さらにこのテクノロジーは、前方からタービンを吹き抜ける予測不能な気流に対し、タービンを調整することもできます。

シーメンス社の風力事業とスペインのガメサ社の風力発電事業の統合によって昨年設立された独立企業である、シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー社。彼らにとって、このAIを広く導入することはチャンスとなります。文責:ジェフ・コルヴィン(Geoff Colvin

人間の生死にかかわるリスクの監視

人間は、自分の限界を知ることがあまり得意ではなく、食べすぎたり、寝不足になったり、特定の時間内で達成できる作業量などを過信してしまったりします。たとえば、感謝祭のディナーの場合ならそれほど深刻な問題にならないかもしれませんが、トラックでの長距離輸送や重機の操作といったある種の専門職では、人間のこのような欠陥が、危険や恐ろしいほどの損失につながる可能性があります。

そのため、リスクの高い業務で従業員を保護する、守り神のようなAIを採用する企業が増えています。たとえば、ビジネス向けソフトウェアを手掛けるSAP社のシニアバイスプレジデント、マイク・フラナガン(Mike Flannagan)氏の説明によると、従業員から収集した何百時間ものセンサーデータでトレーニングを重ねたシステムが、リアルタイムでさまざまな状態(作業者の心拍数、体温、疲労度や緊張感を示す指標など)を監視して、各作業者に休養または休憩が必要なタイミングを知らせています(SAP社は、これを実現する「Connected Worker Safety」製品を提供しています)。

こういった種類の作業とは無縁の人々も、車両が人間の状態を監視できるようにする方法を自動車メーカー各社が構想していることから、近い将来、自宅の駐車場でこの種のテクノロジーを目にするようになると考えられます。このようなテクノロジーは今のところ、一部のモデルのダッシュボードで点滅するコーヒーカップアイコンで見られるにとどまっています。しかし、大手自動車メーカーの大半と提携するAI企業、ニュアンス・コミュニケーションズ社で自動車向けイノベーション管理部門の責任者を務めるニルス・レンケ(Nils Lenke)氏の指摘によれば、新型車両で疲労検知ボイスや顔認識テクノロジーが標準装備される日も近いとのことです。文責:エリカ・フライ(Erika Fry

訂正:本稿の旧バージョンではオートデスク社のAI搭載設計プログラムの名称が誤っていました。

本稿はFortune2018111日号に「25 Ways A.I. Is Changing Business」の一部として掲載されています。

 

この記事はFORTUNEのスタッフが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。