クラウド技術を用いたこれからの社会基盤、「社会情報プラットフォーム」がもたらすものとは何か。NTTデータのイノベーションナビゲーター、吉田 尚之が紹介いたします。

1.「社会情報プラットフォーム」とは何か

情報ネットワーク上に、あらゆる分野の企業や個人、行政・金融機関などが参加してさまざまなサービスを提供し、それを自由に利用したり多彩なビジネスを展開したり・・・・・・というように、私たちの暮らしやビジネスを変革していく"社会インフラ"の機能を果たす情報基盤が、「社会情報プラットフォーム」です。
「社会情報プラットフォーム」では、クラウド・コンピューティング技術を用いながら、さらなる信頼性確保や利便性向上を目指します。例えば、個人情報などの機密データについて統一的な規則に基づく情報管理を行うことで高いセキュリティを確保するとともに、企業間商取引や金融サービスに共通な認証・決済機能をプラットフォーム側で用意することで、機能の共通化や拡張性を確保します。
こうしたことにより、サービスを利用する側にとっては、情報システム機器やソフトウェアなどのIT資産を保有することなく、高品質で安定したサービスをより低コストで利用でき、既存システムとのスムーズな連携やデータの有効活用も図れます。一方、サービスを開発・提供する側にとっても、プラットフォーム側から提供される機能やアプリケーションを活用することですべての機能を開発する無駄が省けるため、コア部分の開発に注力し、先進的で多彩なサービスを効率的かつ迅速に開発・提供できるようになります。

【図】

図:「社会情報プラットフォーム」とは

2.「社会情報プラットフォーム」から生まれるメリットとは

中立的で自由な「社会情報プラットフォーム」のもとでは、データやアプリケーションの迅速な連携や利用が促進され、個人や企業、情報やモノの"つながり"が拡大・発展します。
もし、家を引っ越す際に行っていた数多くの申請が、ひとつの申請で住民票・電気・ガス・水道や電話の移転届からクレジットカードや銀行の住所変更、郵便の転送手続まで、瞬時に完了したら便利ではないですか?将来的にはそのような事が可能になるかもしれない、というのが、つながりをもたらす社会情報プラットフォームです。
「社会情報プラットフォーム」の上では、さまざまなサービス提供事業者がプラットフォーム上にアプリケーションを提供できるようになり、そこから、高品質で多様なサービスが生まれるとともに、これまでにない企業同士や個人とのチャネルが結ばれることで、新たなビジネスチャンスの創出も期待できます。
たとえば、現在、電子化が進みつつある財務情報などを基点として、金融機関や一般企業の情報が有機的に連携し、最終的にはすべてのビジネス領域がひとつになることも予想されます。企業や金融機関、税理士・会計士が安全につながることで、領域横断的に結びついた情報に基づく高精度な財務分析や与信管理サービス、複数の専門家を交えたワンストップの経営アドバイスなど、新たなサービスの提供も可能となります。
このように、「社会情報プラットフォーム」には、私たちの暮らしを大きく変える可能性が秘められているのです。

【図】

図:「社会情報プラットフォーム」から生まれる多彩なサービス

3.「社会情報プラットフォーム」が、IT投資に与える影響とは

現在、SaaSやクラウド環境を導入してビジネスに活用しようという動きが、企業の大小を問わず、盛んに進められています。導入した企業の6割以上が事業領域や売上高の拡大に効果を上げているという調査報告もあります。このような利用意識が高まっている半面、オープンなインターネット上で展開されるサービスに対するセキュリティの不安も根強く残っており、サービス提供側でトラブルが発生すればサービス中断も不可避であることから、クラウド環境の導入に踏み切れない企業も多いようです。そうした企業では、特定のサービス事業者が提供するASP型サービスの活用にとどまっているのが現状です。
SaaSやクラウド・コンピューティングといった多機能でシステム導入コストを低く抑えることが可能な技術は、中小企業のIT化を促進する手段として特に有効であると考えられます。しかしその一方で、限られたビジネス領域を対象にサービスが乱立し、本当に利用したい機能だけを選べる環境になっておらず、既存システムやアプリケーションとスムーズな連携が図れるようにもなっていません。このような点が改善されなければ、社会に流通するデータやアプリケーションを存分に活用できる情報基盤としての要件を満たすものとは言えないでしょう。

このようなさまざまな制約や課題をクリアし、ミッション・クリティカルなビジネスの要求に応えるのが、「社会情報プラットフォーム」です。クラウド環境に信頼性や利便性、柔軟性が付加されるとともに、多数のサービス事業者(SaaSベンダー)が参加することでリスク回避や多種多様なニーズへの対応が可能となるため、IT投資に十分な予算を回すことができない中小企業にも大きな恩恵をもたらすことが期待できます。保有するIT資産の運用に追われ、個別の業務ごとの効率化やコスト削減に注力する現状のIT投資行動から脱却し、「社会情報プラットフォーム」にIT投資を集約できれば、"つながり"から創出される新たなビジネス・スキームのもと、効果的で高付加価値なサービスがより低コストで享受できるようになります。このようにIT投資の予算が削減され、IT投資以外の「サービス向上に繋がる」投資へ予算を回すことが可能になってくるのです。

【図】

図:「社会情報プラットフォーム」が導く、これからのIT投資

4.「社会情報プラットフォーム」事業者に求められる資質とは

これまで述べてきたように、セキュリティ要件やその社会的意義の重大さ、取り組み規模の大きさから、「社会情報プラットフォーム」を構築・運用する事業者には、十分な実績と確かな技術力、信頼性・社会性・企業体力が求められます。
NTTデータはこれまで、多くの社会的要請を受け、IT技術を駆使した社会インフラを数多く構築してきました。クレジットカード会社と加盟店間の与信紹介データをつなぐ全国規模のインフラシステムの構築・運用をはじめ、地方公共団体を対象にe-Tax(国税電子申告・納税システム)提出済の税務申告データをインターネット経由で金融機関に提出するサービスの運営なども行っています。さらに、ニーズに即したソリューションをASP型で提供するプラットフォームを構築、そのプラットフォーム上で企業の税申告データを金融機関が参照できる財務情報流通ゲートウェイも提供しています。

【図】
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こうして培った実績やノウハウをもとに、NTTデータは信頼性・社会性のある企業として、「社会情報プラットフォーム」実現に積極的に寄与したいと考えています。プラットフォームに不可欠な機能・アプリケーションの拡充などを図ることはもちろん、中小企業に向けて高付加価値なサービスを低コストでサポートする環境を用意する一方、サービスを提供するSaaSベンダーや、利用者側(ステークホルダー)の積極的な参加促進など、プラットフォーム上に数多くのプレイヤーを誘致し、より多くの情報のつながりを生み出し様々なシナジー効果を生み出したいと考えています。
企業のIT投資に明確な費用対効果が求められる現在、ビジネスに革新をもたらす先進的な技術に信頼性や利便性を付与した情報基盤を通じて、より効率的なIT投資行動を促すとともに、新たな"つながり"によってビジネスを活性化し、豊かな社会づくりへと貢献していく・・・・・・、そんな「社会情報プラットフォーム」の実現が、今こそ求められています。

【図】

著者プロフィール

第一公共システム事業本部 e-コミュニティ推進ビジネスユニット 営業統括部 第二営業担当 部長
吉田 尚之

  • 総務省による「インターネットを活用した地方税申告に関する研究開発事業」に参画(2001年~2003年)
  • e-自治体協議会(地方公共団体行政サービスオンライン化促進協議会)技術部会 地方税委員会 主査(2001年~2002年)
  • 独立行政法人 情報処理推進機構 ベストプラクティスワーキンググループ委員(2009年~)

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