欧州や豪州など海外では既に導入が進み、国内企業においても対応が求められる「国際財務報告基準(IFRS)」。その最新情報を踏まえ、IFRS対応で求められる情報システム部門の役割やITロードマップの重要性について、NTTデータの岡野哲也が解説します。

1.あらゆる業務システムに影響を与えるIFRS適用

IFRS(国際会計基準)は国際会計基準審議会(IASB)により設定される会計基準で、日本の会計基準とは原則主義であるというポリシーから本質的に大きく異なります。企業活動と投資活動がグローバル化する中、世界共通の尺度であるIFRSを導入することは、これまでの業務を見直し、企業価値の最大化を図るチャンスになるとも言われています。
日本では2015年にIFRSの強制適用が予定されており、一部の先進的企業においては先行適用を公表して具体的活動を開始するなど、国内でも対応に向けた動きが活発化しています。

そのようにIFRS適用をビジネスチャンスと捉えて積極的に取り組んでいる企業のほか、予算上申を終えて2011年度からいよいよ本格対応に乗り出そうとしている企業、さらには2012年に予定されている適用方針の最終決定を待って確実に制度対応を行おうという企業、IFRS対応への企業の姿勢を大別すると、そうした3つのタイプに分けることができます。
いずれのスタンスで臨むにせよ、IFRSの適用は経理・財務部門だけの問題ではなく、社内の多くの業務に影響を及ぼすことから、企業の大きな変革活動として課題を共有することが不可欠です。そしてまた、情報システムへの影響についても、会計システムはもちろん、業務系システムやフロントシステムまで広範囲に及ぶため、それぞれの部分への影響度の大きさを考慮した上で、業務やシステム全体でバランスの取れた対応をすることが重要となります。

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図:制度動向と各社の取り組み状況

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図:業務・ITの成熟度に応じたゴール設定

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図:IFRS対応による情報システムへの影響

2.IFRS検討を進める上での重要事項:3つのポイント

IFRS適用を検討している企業にとって、欧州などの先行事例や実績などを踏まえつつ、特に押さえておきたい重要なポイントが3つあります。
まず第1のポイントは、「制度解釈と業務・システム対応の連携」です。多くのプロジェクトでは制度先行でIFRS適用の検討を進めますが、業務やシステムに制約事項を反映するタイミングが後手にならないように、あらかじめIT部門側でも並行して検討に着手しておく必要があります。制度解釈と業務・システム検討をスムーズに連携させるため、制度検討時から業務・システム側の検討メンバーを配置して、検討内容を共有し、さらにその内容を踏まえた業務やシステム影響調査により、業務・システムの制約条件を洗い出して制度解釈にフィードバックするといった取り組みを、業務・システム部門が自ら進めていく必要があります。このように、影響調査および制度解釈の結果を業務・システムに対してどのように反映していくのかを、会社やグループとして明確に意識しながら業務部門とIT部門がシームレスに連携し、具体的な検討を進めることが、最初のポイントになります。

【図】

図:制度解釈と業務・システム対応の連携

第2のポイントとして、「業務やシステムの全体像を見据えた具体的なIFRS対応」を図ることもまた極めて重要な検討事項です。例えば、複数会計基準への対応においては、業態や業務、業務量、要員スキルなどの観点を考慮し、全社標準的にどのような業務フローを採用するかを検討することが重要となります。システムへの影響についても、具体的に自社の業務・システムのどのような部分にどのような見直しが求められることになるのか、全体像をとらえた上で、IFRSへの対応方法を検討していく必要があります。

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図:業務・システムでの具体的なIFRS対応方法~複数会計基準の実現:総勘定元帳~

IFRS対応は、制度要件を満たすと同時に、経営・ITの将来像を見据えつつ、明確なゴール設定のもとグループ全体で取り組むべきものであると考えます。そのためにも「IFRS対応への目標設定を行い、IT部門も含めた全体ロードマップを構築し、実行すること」が欠かせません。これが、IFRS適用を検討する上で第3のポイントです。この「IT全体ロードマップ」の策定について、以下に詳しく述べます。

3.経営施策も盛り込んだ「IT全体ロードマップ」の策定

IFRS適用のあるべきIT全体ロードマップ

IFRS対応の計画策定に当たっては、2015年の強制適用に向けた目標とマイルストーンを明確にし、各年度や各フェーズの実施内容を明確にしていく必要があります。しかし、強制適用まで残された時間は限られており、早期に準備・計画フェーズに着手しなければ、業務やITの変更対応に時間的制約を課してしまう可能性があります。IFRS適用を機に業務改革などを図りたいと考えている企業であれば、早期着手の必要性はなおさらです。
そうした意味で、適用を機に高いゴールを目指すのか、必要最小限の制度対応で済ませるのかといった目標を明確にした上で、将来を見据えた「IT全体ロードマップ」を策定する必要があります。すなわち、全体のスケジュールの中で、IFRS適用の目的を踏まえつつ、IT部門としての目標を設定し、またその実現のためにシステム制約事項への対応や経営効果を高める施策などをどのように実施していくかということを、ロードマップとして策定することになります。

【図】

図:IFRS対応の目標設定とロードマップ構築

「IT全体ロードマップ」のシナリオは各社各様

情報システムの更改時期はIFRS適用の有効な機会といえますが、基幹システムの構築やバージョンアップ直後だったり、次期システムの検討時期に入っていたり、システム更改が当面予定されていなかったりと、企業によって状況はさまざまです。そこで、それぞれの状況においてIFRS適用の最適なタイミングを逃さないためにも、次期システム構築までのスケジュールに鑑み、IFRS適用の目標などの内部課題に基づく要件を十分考慮しながら、業務・システムの更新方針を早期に検討することが重要となります。

【図】

図:ITロードマップとIT施策統合マネジメントの重要性

中期目標も取り込み、IT全体構想の早期着手へ

以上に述べてきた通り、「IT全体ロードマップ」の策定に当たっては、

  • 企業グループ全体のIT部門としての目標・マイルストーンの設定
  • 見える化や業務標準化といった経営効果を高める価値施策の取り込み
  • システム更改時期も含めたシステム制約事項の取り込み
  • IFRS制度検討と連携したIT全体構想の早期着手

といったことが重要なポイントとなります。このように、業務改善施策やシステム制約条件などを盛り込んで構築した「IT全体ロードマップ」のもと、IT施策を統合的に実行しながらIFRS適用を着実に推進することで、新たな会計基準の導入を、業務改革や企業価値の最大化につなげることが可能となります。

【図】

図:経営効果を目指した中期目標設定とIT全体ロードマップ

NTTデータではこれまで、先行する欧州をはじめ国内外のさまざまな業態・業種の企業において、IFRS適用を実施または支援してきました。例えば欧州の大手通信会社においては、グループ会社数が多く、規模・業種とも多様であったため、量的・質的重要性とIFRS対応の複雑性を考慮し、4段階に分けたロードマップをもとにIFRS対応を実施しました。また、グローバル規模でビジネスを展開する大手メーカーへのIFRS対応支援においては、IFRSによるグループ経営管理の実現やグローバルグループ業務の標準化を実現しています。
こうした経験を通じて得られた実績やノウハウをもとに、NTTデータはコンサルティングやアセスメント、ロードマップ策定や会計系システムの構築など、多岐にわたるIFRS対応サービスを展開、適用規模などに応じてあらゆる企業のニーズに柔軟にお応えできるよう、IFRS適用に向けた先進的な取り組みを進めていきたいと考えています。

著者プロフィール

法人コンサルティング&マーケティング本部 IFRSビジネス統括部長
岡野 哲也

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