Fintechという言葉が昨年あたりから聞こえている。Apple Pay、BitCoinなど新たなサービスが誕生し、リテール決済においては、さまざまなビジネスモデル革新、技術革新が起こっている。この変化は過去からどのような構造的な変化に基づいて起こっているのか、今後どのような変化が期待できるのか。

1.Fintechがブームになっているが、最近画期的に進化した世界なのだろうか?

昨今、Fintechという言葉が社会をにぎわしています。金融機関は、機会とも脅威とも取れるこの変化に対して積極的に投資しています。これは産業として中長期的に大きく進化すると皆が考えていることを示しています。では、このFintechによる変化は最近のお話しなのでしょうか?

実は違うと思います。

過去を振り返ってみますとリテール決済の世界というのはこれまで、実にInnovationの連続であったと思っています。

まず、支払猶予(ユーザンス)という考え方が誕生し、掛け売りが可能となりました。それらが汎用化されて商習慣の一部となると取り引きを証明する情報が必要となり、手形・小切手が登場します。更には連続的な与信を求めた結果、クレジットカードが登場し、世界中のどこでもどのような通貨の国でも決済ができる世界に至りました。それら一つ一つがInnovationに相当する変化だったと思います。

元来、決済をするための基本的構造というのは至ってシンプルです。商取引に対して、購買者(支払者)から販売者(受領者)に代金が渡ればよいというものであります。プリペイド、デビット、クレジットという分類は、支払者の決済タイミングによるものであり、単なる基本形のバリエーションです。加えて「現金をハンドリングする不便さ」を解消するために半世紀以上さまざまな工夫(磁気カードの発行、ICカード化など)を繰り返して進化し続けて来た領域なのです。

2.過去からの連続的なInnovationによって進化してきたリテール決済の世界ですが、現在は何が進化しているのでしょうか?

クレジット決済などの主要決済手段は先進国世界全般にほぼ浸透しました。現在は新興国などでの利用を拡大させている状況にあり、アジアの片田舎に旅行しても、飲食店などでの利用は困難であるもののホテルなどのクレジット決済には困らなくなってきました。

この進化は、ITの存在なくして実現しえなったことであります。

  • 記号化が可能な金融取引についてはITで処理が可能となる。
  • 規模が拡大した方が限界的な処理単価が低下するため集約化が進む。
  • 更に、通信網が国を超え地域を越えた処理を可能とした。

という過程を経てきました。

これらの決済手段はある程度確立され、既にITの特性を活かした、規模の経済が効いた状況にたどり着いているということです。

では、進化はどこで起こっているのでしょうか?

象徴的なものはApple Pay、MCX、Android Payなどの利用者インターフェースの進化です。従来の磁気ストライプカードは大変古い技術であるため、セキュリティが相対的に低下してしまいました。しかしながら、一旦普及してしまったインフラを大きく進化させることは大変です。そこにスマートフォンの登場です。

多くの人々がスマートフォンという高度なIT機能を保有した機器を保有した結果、インターフェースを進化させることができる時代がやってきました。

それから、電子的に価値を代替する技術の進化です。BitCoinなどのBlock Chain技術を利用し、電子的に価値を代替するものです。BitCoinそのものはアンダーグラウンドな領域における利用などが進んだなどの側面はあり普及に疑問がありますが、Block Chain技術自体は取り引きの足跡がネットワークの中で確認できるなどの新しい実現機能があるため、今後、さまざまな利用形態が考えられます。

そして、表面には出にくいですが与信技術の進化です。SNSなどを通じてネットワーク上から個人の信用度を推測するに資する情報が取得できることが可能になりました。Internet上でコミュニティが構成される世界になったために、与信するための技術・情報取得が高度化したのです。

Innovationにも文脈が存在します。

3.今後のリテール決済におけるInnovationはどのように進むでしょうか?

前章で記述しましたが、リテール決済にいくつかの新たな変化は起こっています。

しかし、よく見ますと、それらはスキームを構成する基本的なネットワークの部分はあまり影響を受けていません。ネットワークの外部性と言われる事象であり、参加者が増加すると参加者が多いこと自体が大きな価値を持ちます。そして、一旦出来上がったネットワークを変更することは大変困難な事です。

では、今後Innovationは起こりにくいのでしょうか?私は起こると思います。

消費者の皆さんが決済を行う利用者インターフェースなどは未だ進化していく余地が大きくあります。既に物理的なクレジットカードなどはなくても、本人が確認できれば購買できる仕組みは技術的には可能です。指紋、光彩、声紋、DNAなど確かに本人であることが分かれば処理はできるようになります。皆が簡単に、何時でも使えるように工夫ができたときInnovationとなって結果を残していくと思います。

それから、決済そのものの方法ももっと幅が広がる余地があります。新興諸国などでは携帯電話を使った送金などが普及しておりますが、すごく簡単につかえるのであれば先進国にもインパクトを及ぼします。

将来、相手と指先を付けるだけで送金が可能になったら面白いと思いませんか?

我々は、皆さんが楽しく、安全で、快適に使える決済環境を目指して、Innovationを起こしていきたく思います。

著者プロフィール

株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部カード&ペイメント事業部 GT5戦略室 部長 渡邊 賢

1993年NTTデータ入社、NTTデータ経営研究所、コーポレートディレクション(戦略コンサルティング)、Deloitte Tohmatsu Consultingなどのコンサルティング経験を経て、2014年より現職。

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