ITの世界では、近年、「IoT」、「オープンデータ」、「ビッグデータ」が時代のトレンドになっている。気象情報はこの3つの分野のフロントランナーとも言える情報(データ)であり、その活用とそれによる新たな価値創出は、今後のこの3分野でのビジネスを考えていく上において、大きなヒントを与えるものになる。本稿ではハレックス社の取り組みについて紹介する。

1.ハレックス社のチャレンジ

株式会社ハレックスはNTTグループ唯一の気象情報会社としてICTを前面に押し出して、同業他社と差異化を図った特徴ある事業展開を行っています。その最大の武器が、自社開発のオンラインリアルタイム・ビッグデータ処理と分散型クラウドコンピューティング処理を用いたシステムが生み出すハレックス社独自の1日48回更新(30分ごと)1kmメッシュの情報鮮度が高い詳細な気象情報提供の仕組み『HalexDream!』です。

この『HalexDream!』はAPIでの提供を基本としていて、さまざまな業務システムに組み込んで利用することが可能となっています。この特徴を利用して、天気のみならず降雨の状況(予報を含む)や土砂災害リスク等の自動監視機能を実現し、これまで鉄道会社様の運行管理システムや地方自治体の防災システム等でご活用いただいています。最近では農業分野や太陽光発電や風力発電といったエネルギー分野、建設分野での活用事例も増えてきています。

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図1:気象レーダー・降水ナウキャスト解析システム

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図2:土砂災害警戒システム

2.気象情報はビッグデータ活用の時代

「気象」とは"大気"の"形(象)"と書きます。すなわち、気温や気圧の変化等の大気の状態のことです。また、その大気の状態の結果として現れる風や雨、雪等の現象のことを指します。

地球上で発生する気象は、太陽の活動により地球に供給される熱エネルギー(放射エネルギー)により引き起こされます。この地球に供給される熱エネルギーは、緯度、地形、季節、時間などによって異なるため、地球の表面を覆う大気には温度差が生じます。大気の場合、空気が部分的に温まると膨張して密度が下がり、周囲より浮力が大きくなるため上昇します。一方、逆に冷やされると収縮して密度が下がり、周囲より浮力が小さくなるので下降します。これは大気の動きのほんの一例ですが、これにより気圧がその周辺よりも高いところや、反対に低いところが生じます。こうした空間の物理的な不均一を解消しようとする働きによって、大気に一種の"乱れ"、「擾乱(じょうらん)」が発生します。風がその"擾乱"の一番分かりやすい例で、大気は気圧の高いところから低いところのほうへ流れ、"風"を引き起こします。

気象現象の根本的な原因はこの"擾乱"にあります。この擾乱や定常状態の基本部分は物理的な気象要素として熱力学や流体力学を用いた方程式によって記述できる現象であり、現在、気象庁ではスーパーコンピューターを用いて、熱力学や流体力学といった物理学の方程式による数値計算により大気の擾乱を予測しています。

その結果は5kmメッシュ(四角く区切った予報単位のこと)や20kmメッシュといった細かな単位で情報提供していただいているのですが、そのデータは1億個を超える膨大なメッシュの気温や風向風速、気圧といったさまざまなデータが、毎時送られてくるような(頻繁に更新されるような)"ビッグデータ"です。数値予報データだけで送られてくる電文数は約5万電文。1日のデータ量は約50Gバイトに及ぶと言われています(新聞朝刊36ページ換算で約150年分)。さらに最新の気象衛星『ひまわり8号』の画像に至っては1日1テラバイトに及ぶと言われています。

【図】

図3:気象ビッグデータ

ハレックスをはじめとする民間気象情報会社は、国の機関である気象庁から詳細な気象解析データや予報データをオープンデータとして提供を受け、そのデータを活用して、さまざまなお客様固有の"しっかり守りたい"、"もっと儲けたい"、"無駄を省きたい"という課題を解決するための特別なソリューションを提供することを生業(なりわい)の基本としています。ハレックスの場合、その中核を担っているのが、前述の気象庁から送られてくる膨大な気象情報データ(数値予報データ)を独自の"オンラインリアルタイム・ビッグデータ処理"により可視化することに成功したツール『Weatherview』です。

3.データの可視化から状態の可視化へ

前述の『HalexDream!』もこの『Weatherview』の研究開発成果を活用して生まれたものです。現在は『Weatherview』をさらに進化させて、「ビッグデータの可視化」の一歩先にある「状態の可視化」を目指した第2世代のツール『Weatherview2』も実現できています。

データというものは、所詮は状態をさまざまな指標により数値で表した(符号化された)"代替手段"に過ぎません。"気象"という自然現象を相手にする以上、本来やるべきは、単なる「データの可視化」の一歩先にある「状態そのものの可視化」(複合化)であると考えています。状態そのものを可視化することで、これまで見えてこなかったさまざまなものが見えてきて、防災分野をはじめさまざまな分野で、気象データをより活用できるようになると思っています。

例えば、これまでの天気図で一般的に用いられている風の表現方法は図5に示すような矢羽根です。矢羽根の方向が風の吹いてくる方角を表し、矢羽根に付いたヒゲの本数や太さが風の強さを表していました。これはこれで素晴らしい方法ではあったのですが、それは紙という媒体と、静止画像という表現方法の"制約"の中において優れた表現方法であったと言うことができます。『Weatherview2』では、これをITの力によって、よりグラフィカルに面的な"流れ"として表現することを可能にしました(図5、図6参照。実際は動きのあるアニメーション表示)。

【図】

図4:現在の天気図における風の表記方法。地点ごとの矢羽根による表現です。

【図】

図5:Weatherview2における風の表現(その1)

【図】

図6:Weatherview2における風の表現(その2)

『Weatherview2』では、この風の表現のほかにも、幾つかの機能を用意しています。

エマグラム(emagram)

その地点その地点の上空における大気の安定度を評価するために用いられるグラフです。

【図】

図7:エマグラム。地上から上空にいくにつれて、気温が下がっていく様子が描かれています。

気象データの時系列変化

任意の地点での気温や気圧、風向風速といった各種気象データの時系列変化をグラフで示します。

気象断面図

気象は上空の大気の状態(安定度)で決まるので、垂直面を加えた三次元の空間で捉える必要があります。これに挑戦した第一歩がこの「気象断面図」です。

【図】

図8:気象断面図

『Weatherview2』を活用することにより、従来は見えていなかった大気の中で起きているいろいろな事象が目で見えるようになってきました。気象情報は時として人々の生命にも直結するような社会的に極めて重要な情報です。また、世の中のあらゆる業種業態の8割は、なんらかの形で天気に左右されると言われています。こうした情報の品質を担保する仕組みを用意することは、気象情報会社としての最低限の責務であると私は思っています。気象情報提供の世界は、これから間違いなくITを用いたビッグデータ活用による"状態の可視化"の世界に入っていくと思っています。

株式会社ハレックスの取り組みに、大いにご期待ください。

【図】

図9:気象情報ビジネスのマーケット

著者プロフィール

株式会社ハレックス 代表取締役社長 越智 正昭

公共分野にて長くマルチメディア関連システム、電子政府関連システム等の開発と営業に従事した後、2009年、本社営業企画部長を最後に、NTTデータを卒業。気象情報会社ハレックスの社長として、気象ビッグデータを活用した新しいビジネスの創出に陣頭指揮を執って取り組み中。

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