2015年1月30日

株式会社NTTデータ経営研究所 公共行政サービスコンサルティングユニット
上瀬 剛

オーストラリア連邦政府では、政府をよりオープンなものにするという国家戦略に基づきオープンデータポータルを設け、オープンデータの総合窓口として多岐にわたる公的データを提供している。提携先は政府にとどまらず地方公共団体や公営放送まで多岐にわたり、民間や個人によるオープンデータの活用例もポータル上で紹介されるなど、今後もデータおよびサービスの増加、発展が見込まれる。

1.オープンデータの世界的広がり

日本政府はオープンデータの推進について「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月14日閣議決定)の中で触れ、「2014年度及び2015年度の2年間を集中取組期間と位置づけ、2015年度末には、他の先進国と同水準の公開内容を実現する」とし、先進諸国を参考とした取り組みの強化が提唱されているところである。こうした情報提供のインターネット上の窓口といえる「オープンデータポータル」の整備状況は国によりさまざまだが、今回は、提供しているデータがわかりやすく、かつ民間や個人が提供するオープンデータ関連サービスも紹介しているオーストラリア政府の取り組みを紹介する。

2.オープンデータポータル"data.gov.au"

2.1 政策上の背景

オーストラリアのオープンデータポータル"data.gov.au"は、オーストラリア政府が有するさまざまなデータを、検索、利用、再利用しやすくするために提供しているものである。こうした「使いやすさ」と「オープン性」を柱とする取り組みは、同国政府のオープンガバメントに関する国家宣言"Government's Declaration of Open Government"と同宣言に対する政府としての具体的な回答である"Government 2.0 Taskforce Report"を契機に始まった。前者では、オープンガバメントにはインターネット技術の有効活用が不可欠だという前提の下でInforming(周知)、Engagement(関与)、Participation(参画)の三つの原則を打ち立てた。また、後者では次世代の政府としてGovernment2.0を提唱し、これをLeadership、Engagement、PSI(non-sensitive Public Sector Information)からなる3本柱としていることからも、オープンデータが政府の戦略の中で極めて高い位置づけとなっていることがうかがえる。

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2.2 位置づけ

上記のような政策的な背景を踏まえ、使いやすいフォーマットとオープンライセンスの原則の下、ダウンロード可能なデータセットと政府諸機関との連携(リンク)によるオープンデータを活用したオンライン行政サービスが提供されている。ここで注意すべき点は、データを実際に提供しているのは"data.go.au"ポータルではなく、リンク先である関係政府機関であることだ。そのためポータルとしてはデータが最新であるか、また品質が十分であるかについて保証できないと但し書きされている。

2.3 ポータル提供主体

提供主体としては、ポータルの維持運営主体とリンク先のサービス、データセット提供主体に分けることができる。前者は政府の財政および規制緩和当局の技術責任者部門(The Office of the Australian Government CTO in the Department of Finance and Deregulation)であり、ホームページの開発、維持、日常的なオペレーションを担当している。一方、具体的なサービス、データセット提供主体は、(本資料作成時点で)144の組織である。組織についてすべて記載することはできないが、いわゆる政府省庁以外でも、国会図書館(National Library of Australia)や公共放送機関であるオーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation)、地方公共団体関連ではブリスベン市議会(Brisbane City Council)など多岐にわたっている。オープンデータが公的機関に広がっていることがうかがえる。

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2.4 利用プラットフォームなど

プラットフォームには、CKAN2.2が用いられている。CKANはOpen Data Foundationがオープンソースとして提供しているデータ管理、配信システムであり、同国に限らず欧米でも多く活用されている。同プラットフォームでは、"The Australian Government Open Data Toolkit"として、ワークフロー、セキュリティポリシーから、オーストラリアにおけるオープンデータ活用のベストプラクティスまでさまざまな情報を提供している。

なお、自分のアカウントを登録すれば(登録時の必要な情報は名前、メールアドレス)、個人向けにカスタマイズしたオープンデータポータルが提供される。

2.5 利用状況に関する統計データ

提供されているデータセットの数は3,620である(2014年9月22日時点)。注目すべき点は、最新の数値のみならずサービス開始時(2013年5月)からの伸びがグラフで表示されることであり、2014年1月から2月にかけて500弱から3000弱へと一気に6倍程度の伸びを見せている。

組織別でみると、地球科学局(Geoscience Australia)が2,800強と全体の3分の2強を占めており、ついで農業省(Department of Agriculture)が110強、統計局(Australian Bureau of Statistics)、ブリスベン市議会、通信省(Department of Communications)などが40台となっている。このことから、関係機関は多岐にわたるものの、データ提供主体は特定機関に依存することがうかがえる。特に地理情報に関わるものは国民や企業からの関心が高く、かつ視覚的にわかりやすいことからニーズが高いと推測される。

一方、アクセスに関する統計についても以下の指標が公開されているが、これも数値のみならず、過去の推移がグラフで簡単にわかるようになっている。

  • トータルページビュー
  • トータル訪問数
  • 1回訪問当たりの閲覧ページ数
  • 直帰率
  • 新規訪問率
  • 平均閲覧時間

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2.6 提供されている代表的なデータ

提供されているデータは、国土、地理、地図系に関する情報が多いものの、それ以外(税、議会など)も含まれ、実に多様である。ポータル上のメニューの一つである"Datasets"を選択すると、組織別、分野別などさまざまな切り口からデータを検索することができる。例えば"Community Services"というグループに位置づけられているデータを見ると、政府オフィスの所在地、トイレの所在地から、過去のサイバーセキュリティに関するプログラムの資料、駐車場、アイススケートリンクの所在地、公衆インターネット接続環境と、ひとくくりにはできないほど多岐にわたる情報が提供されている。また、情報が必ずしも公的機関に関するものとは限らず、娯楽、スポーツなどの施設には民間が提供するものも含まれており、官民でのデータの共有が進んでいることがうかがえる。

データのフォーマットもさまざまである。PDFの比率は非常に小さいものの、CSVとエクセル(XLS)が大方の提供形式となっている。機械判読可能な形式ではあるが、データベース化を鑑みた場合にはまだ初歩的な段階であるといえよう。

ライセンスについてはクリエイティブ・コモンズが中心のようである。

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3.ユースケース

オープンデータを活用したサービスの提供は、ポータルの運営側ではなく、各行政機関など側となるが、ポータル上では、オープンデータを有効活用しているベストプラクティスが6事例ほど紹介されている。日本でも今後、オープンデータ基盤の整備から利活用の促進へと政策上の重点がシフトしていくことになるが、こうした先進事例は参考になろう。以下に代表的なものを解説する。

3.1 Public Knowledge

こちらは、「情報公開窓口」ともいえるもので、政府機関、議会(および傘下の委員会)といった組織において、どの程度の職員数を抱えているか、出費の額がどの程度であるかといったことが表示される。また、検索の切り口をActivityにすると、OutcomeやProgramといった単位ごとの費用が過去3年にわたって表示される。

さらに注目すべきは個人に関する情報提供である。大臣に限らず議員については名前をリンクすることで、顔写真や所属のみならず議員としての活動がその費用と併せて表示されるなど、充実した情報が提供されている。また、いわゆる公務員についても、前職や同僚の名前、職務などが表示され十分な情報提供である。

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3.2 BudgetAusおよびPublic Service gains/loses

"BudgetAus"は、納税者視点で政府の予算の透明性を目指していくべきという立場に立ち、予算に関する情報をわかりやすく取りまとめたサイトである。サービスを開始したのは(政府機関ではなく)Rosie Williams氏という一般人で、現在はオープンライセンス化されていることから、趣旨に賛同する人がサービスに参加することができるのが特色である。

また、職員の数を減らしたり増やしたりした行政サービスの一覧を公開する"Public Service gains/losses"もある。これもやはりWilliams氏が主導している。政府が主体であれば必ずしも積極的に公開しないであろう情報が、参加者の分析レポートとして掲載されているところが注目すべきである。また、こうしたサイトを、オープンデータの先進事例として紹介するポータル運営側の器量の大きさにも感心させられる。

Public Service Gains/Lossesの画面は、得てして一般の人には伝わりにくい統計情報を、グラフィックを多用して独自の表現形態を用いることで興味を惹かせる仕組みを取っているので、ぜひともアクセスしてほしい。

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3.3 Interactive:social security payments by electorate

日本と同様オーストラリアでも社会保障関連費用は連邦政府の予算の中でも最大である。このサービスでは、政府のさまざまな社会保障プログラム(年金から家族向けの税制優遇まで)の中から具体的なサービスを選ぶと、当該サービスの受給者の数が選挙区単位で表示される。こちらも地図上で色を使い分けることで、国全域の中で受給者がどの地域に偏っているか、またサービスの違いでその違いがどの程度顕著なのかなどを視覚的に把握することができる。こちらのサイトもColin Goualray氏という個人が提供している。

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4.最後に

日本では、政府のIT戦略でオープンデータへの取り組みが大きな柱と位置付けられている。また地方においても現政権の地方創生の政策と併せてオープンデータへの取り組みが徐々に広がっていくことが想定される。そうした中、今後はデータの提供から提供データの利用およびそれを活用したサービスの開発が課題となる。

今回調査したオーストラリアは、サービスの開発主体を政府など公的機関に限定せず、むしろ民間(中でも個人)によるサービス開発を積極的に推奨するとともにそれをPRしている。また、オープンデータの政策そのものも国民、企業から評価の対象となり、アクセス件数やページ閲覧状況に関する情報も積極的に公開し、それをデータ提供側における競争意識へとつなげている点も興味深い。データの提供方法はCSVが中心である点はまだ過渡期ではあるが、利用者にわかりやすく伝えて何度も利用してもらおうという意図で、地図を用いたり、独自の表現形態を用いている点も興味深い。こうしたポータルは今後も徐々に見直しが図られていくことから、今後の動きについても要注目である。

注釈

  • 本文中に記載されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標であり、敬称名は略させていただきました。