2016年2月5日

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STEM教育

科学技術人材を育成するSTEM教育。米国から日本、アジアへと広がり、新しい教育コンテンツが生まれつつあります。

第一公共事業本部 大塚 紘史

前回の記事でデジタルファブリケーションという新しいモノづくりについて紹介しました参考1。今回はデジタルファブリケーションの発展を後押しするSTEM教育について紹介します。

新しい教育モデル-STEM教育-

STEM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの分野を重点的に学習する教育モデルです。子供たちの科学技術への理解促進と、科学技術の統合的な育成を目的としています。今後のSTEM領域での雇用増加への対応と、国際競争力の向上のため、2000年頃より米国で始まりました参考2。オバマ氏の演説で取り上げられるなど、米国では科学技術人材育成のための国家戦略として位置付けられています。日本でも、世界最先端IT国家創造宣言(平成27年6月改定)にて「新しいモノづくりであるデジタルファブリケーションやロボティクス、プログラミング、コンテンツ作成など、学生等が、将来を展望した技術を習得できる環境整備を教育環境のIT化とともに進める。」と述べられており、ICTを活用した教育の推進と共に、科学技術の育成環境の整備が始まっています参考3

STEM教育のポイントは「手を動かすこと」

STEM教育では、知識習得よりも、知識を活用できる力の育成に重きを置いています。ただ「知っている」だけではなく、その知識を活用して「どう問題を解決するか」「どう探求していくか」。このため、STEM教育では、実世界のアプリケーション、つまり自ら手を動かして学ぶことが重要とされています。例えば、ロボットプログラミングを通して、ロボットにはどんな部品や構造が必要で、どうプログラミングをすればよいか、なぜ動かないのか、どんなロボットをデザインするかを、試行錯誤しながら学びます。また、この点で、3Dプリンターや電子工作により、自らつくりたいものをデザインして形にするデジタルファブリケーションは、STEM教育の中核を成していると言えるでしょう。

広がるSTEM教育コンテンツ

STEM教育の促進と共に、さまざまなSTEM教育のコンテンツが出てきています。ロボットプログラミングや電子工作教室などをよく耳にすると思いますが、ここでは以下の3つに分類して、STEM教育コンテンツを紹介します。

  • 教育プラットフォームの提供
  • 教育カリキュラムの提供
  • 場の提供
  • 教育プラットフォームの提供

    教育用ハードウエアや3Dプリンター、学習ツールなどが該当します。例えばマイコンボードのArduino参考4や小型コンピューターのRaspberry Pi参考5などは、手軽に電子工作を楽しめ、STEM教育では、よく利用されています。またLEGOのレゴマインドストームなども、はんだ不要で簡単にロボット組み立てを体験できるため、利用機会が多いです。プログラミングの学習ツールでは、NTT研究所が開発したプログラミング学習ツール「ビスケット」などがあります参考6

  • 教育カリキュラムの提供

    教育プラットフォームを利用した教育カリキュラムなどが該当します。子供や学生の意欲を引き出すノウハウを体系化し、教材として形にしています。例えば、日本マイクロソフトは、プログラミング教育カリキュラム「ロボット×クラウドではじめての本格プログラミング~レゴ マインドストームで地球を探査」の提供を開始しました参考7。また教育カリキュラムでは、ソニー・グローバルエデュケーションがSTEM101という教育方針を策定し参考8、学研ホールディングスは「算数教室」「サイエンススクール」といった教室事業を展開しています参考9。またインターネット経由でのオンライン教材も始まっています。この教育カリキュラムの提供では、クラウドやテレカンファレンスの環境などITを活用したサービスも多く見受けられます。

  • 場の提供

    参加者が自由に手を動かせる場の提供や、技術を競うコンテンストなどが該当します。最たる例がファブラボです参考10。ファブラボとは3Dプリンターや切削機、はんだなど、電子工作の道具が置いてあり、費用を支払うことで装置を使用することができます。設備が整っているのはもちろんですが、ファブラボの魅力は、集まる人達から構成されるコミュニティです。決められたカリキュラムをこなすのではなく、人とコミュニケーションを取りながら、自由にモノづくりが楽しめます。またファブラボは海外や日本15箇所の拠点とネットワークで接続されており、モノづくりのノウハウを共有できます。コンテンストでは、「国際科学技術コンテスト」「科学の甲子園」(科学技術振興機構)参考11、12や玉川ロボットチャレンジプロジェクト(玉川大学)参考13を始め、さまざまなコンテストが開催されています。特にロボット工作関連のチャレンジやコンテストの開催が増えてきています。

筆者は、教育プラットフォームの観点で、今後オープンソースハードウエアが重要なポイントになると考えています。オープンソースハードウエアとは、ハードウエアの設計(3D CADデータ等)、エレクトロニクスの設計(基板上の部品配置、回路図)、ソフトウエアなどの情報を無償で公開することを指します参考14

設計情報やツールが全てオープンであるため、他者のアプリを試しつつ独自に手を加えたり、開発したモノをインターネット上に公開したりと、応用力や探求力を育てるのに適しています。最近では、自動車をオープンソース化したOSVehicle参考15やPoppy参考16というオープンソースロボットが登場してきました。身近で使えるモノのオープンソースハードウエアが出てきたことで、使う側はより興味を持って、意欲的に手を動かすことができるでしょう。

おわりに

NTTデータでは、eラーニングシステムなどの教育分野向けのシステム開発の他にも、小学生向けのプログラミング入門イベント「夏休みこどもIT体験」参考17開催を通して、STEM人材の育成に寄与しています。また技術開発本部では、STEM教育の「手を動かすことで新しい発見をする」という考えを、新規サービス企画に活用するサービスプロトタイピングという手法の研究開発をしています。サービスのプロトタイプをつくりながら、顧客ニーズの発見や最適なシステム提案を行うアプローチを提唱しています。

【図】

著者プロフィール

【写真】

第一公共事業本部 第二公共事業部 大塚 紘史

センサーやM2Mに関する技術開発にて、センサーデータを効率良く収集するコンセントレーターとセンサーデータ収集基盤の開発に取り組んできた。デジタルファブリケーションの新規サービス検討にも従事。現在は官公庁向けの大規模システム開発に携わる。

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