地域医療連携ネットワークを活用した、慢性疾病管理プログラムの運用を開始 ~クラウドサービス基盤「医療情報連携プラットフォーム」の稼働に向けて~

ニュースリリース/NTTデータ

2010年7月13日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータは、2010年7月14日よりシームレスな地域連携医療のモデルとして慢性疾病管理プログラム(以下同プログラム)の運用を、千葉県立東金病院を中心とする地域医療連携ネットワーク「わかしお医療ネットワーク」注1において開始します。

同プログラムは、患者毎に設定された診療指針や検査情報などを地域の病院と診療所間で共有し、患者の疾病の最新の状態に応じて処置の必要性をシステムが自動的に検知し、適切な時期に適切な治療を提供することができる仕組みを展開するものです。医療機関同士で診療情報を共有するだけでなく、共有された情報を積極的に活用して医療現場での患者への治療につなげることで、地域ぐるみの医療を実現します。

今後NTTデータでは、同プログラムを含めた地域医療アプリケーションを全国の地域中核医療機関・自治体・団体などへ順次展開する予定にしており、それに先立ち2010年10月より複数医療機関の情報共有を実現する地域医療インフラとして、クラウド技術を活用した「医療情報連携プラットフォーム」を稼働開始予定です。

当社では、慢性疾病の管理など患者を中心とした地域ぐるみの連携システムによって地域連携EHR注2を実現するとともに、この取り組みを健康・医療・福祉・介護に関わるクラウドサービスに発展させ、地域住民への持続的かつ良質な医療の提供と医療費の適正化に向けた取り組みを一層強化します。

背景

近年、少子高齢化や生活習慣病等の患者の増加に伴い、医師不足や医療費の増加が課題となっています。国の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は、このような課題の解決に取り組むため、「新たな情報通信技術戦略 工程表」として本年6月22日に情報通信技術を活用した具体的な施策を打ち出しています。中でも、地域医療ネットワークを活用した取り組みとして、特定の疾病に係る地域連携医療モデルの確立と、各地におけるシームレスな地域連携医療ネットワークの実現を目指した方向性が示唆されています。

概要

1.慢性疾病管理プログラムについて

NTTデータは、地域ぐるみで患者の病状の悪化を防ぎ、医療費の増加を抑制することを目的とした糖尿病をはじめとする「慢性疾病管理プログラム」を千葉県立東金病院(平井愛山院長)と共同で開発しました。この慢性疾病管理プログラムは、患者の病状(主に検査値の変化)を常に監視し、対象となる患者を早期の治療へ誘導することにより、適切な時期に適切な治療を行うことで、重症化を予防し、良好な治療効果を実現します。

【図】

慢性疾病管理プログラム 概要図

慢性疾病管理プログラムの機能・メリット

  1. 1.病院・診療所間の連携におけるメリット
    1. 1.「重症化の恐れのある患者を拾い出す機能」(ハイリスク患者ピックアップ機能)

      地域全体の慢性疾患患者を病状の重さに応じて一覧化し、治療をすべき患者を自動的に抽出することで、医療機関の医師は対象の患者に対して優先的な治療をすることが可能となります。

    2. 2.「重症化の恐れのある患者の危険度を知らせる機能」(診療支援アラーム・ガイドラインパス機能)

      地域(病院・診療所間)で統一化された診療指針をプログラム化し、検査の数字に異常の表れた患者を危険度に応じて自動的に検知することによって、病状が悪化する恐れのある患者を未然に把握し、早期に専門医への診断や治療につなげます。

      この機能により、診療所のかかりつけ医は病院の専門医と役割を分担することで、比較的症状の軽い患者を中心とした治療に注力することができます。

  2. 2.地域全体への提供メリット

    上述の二つの機能により、患者は、病気の状態を専門医や身近な診療所のかかりつけ医などに見守られることで、地域ぐるみで提供される切れ目のない医療に安心感をもつことができます。

    また、地域の限られた人的な医療資源(医師・看護師など)の中で、効率的な疾病管理を提供できることから、地域全体における患者の病状の悪化(新規の人工透析導入や心筋梗塞、脳卒中などの発症)を抑えるなど医療費増大の防止が期待されるため、保険者(主に自治体)にとっては、増加する医療費負担を抑える効果が期待されます。

    これらの取り組みにより病院と診療所そして患者をつなぎ、さらに保険者にとってのメリットを提供することにより、シームレスな地域連携医療を実現します。

2.医療情報連携プラットフォームについて

今後NTTデータでは、慢性疾病管理プログラムを含めた地域医療アプリケーションを全国の地域中核医療機関・自治体・団体などへ順次展開する予定にしていますが、医療情報を共有し、地域医療連携を実現するには、「わかしおネットワーク」のような、各医療機関の医療情報システム同士を安全かつ効率的に接続する仕組みが必要となります。NTTデータでは、こうした複数医療機関の情報共有を実現する地域医療インフラとして、クラウド技術を活用した「医療情報連携プラットフォーム」を2010年10月より稼働開始予定です。

地域においては、医療機関ごとに異なるベンダーによる、異なる仕様の医療情報システムが利用されていますが、医療情報連携プラットフォーム上の「統合化エンジン」を介してデータ交換処理を行うことで、フォーマットの異なる医療情報であっても医療情報システム間で連携させることが可能になります。これにより、各医療機関ではこれまで通り既存の情報システムを使用しながら、疾病管理を中心とする各種の地域医療連携を行うことが可能です。

医療情報連携プラットフォームでは、EHRに実績ある統合化エンジンとして、世界30ヵ国に1000以上の顧客を持つOrion Health(ニュージーランド オライオンヘルス社)のOrion Health Rhapsody(ラプソディー)注3を採用しています。

【図】

医療情報連携プラットフォーム 概要図

医療情報連携プラットフォームの提供機能・メリット

  1. 1.地域に分散する各医療機関に導入される異なる医療情報システム同士の診療情報交換を、シームレスに実現します。(HL7注4、DICOM注5などの標準規格と各種ベンダーフォーマットとの互換や、SS-MIX標準化ストレージ注6などを活用した情報交換が可能です。)
  2. 2.統合化エンジンで診療情報を中継することにより、新たに地域連携ネットワークに接続する医療機関の参加を柔軟に実現します。また、ネットワークに参加する医療機関の医療情報システム更新の際にも、既存の電子カルテベンダーに縛られない幅広い選択が可能です。
  3. 3.個人情報の取り扱いに配慮し、ユーザ認証や利用者に応じた医療情報へのアクセスを制御することで、安全な地域医療連携ネットワークの提供を保証します。
    インターネットを活用した通信に際しては、厚生労働省が推奨する「医療情報の安全管理に関するガイドライン4.1版」に準拠したNTTデータ「@OnDemand接続サービス®注7等を利用することで、情報のやりとりを地域医療連携ネットワークに参加している医療機関に限定したものとし、外部への情報漏えいを防ぎます。

今後の展開

慢性疾病の管理など患者を中心とした地域ぐるみの連携システムと医療情報連携プラットフォームを軸に、地域連携EHRを実現するとともに、この取り組みを健康・医療・福祉・介護に関わるクラウドサービスに発展させ、当社のサービスだけでなく他社のシステムや他地域のネットワークの相互乗り入れができる情報インフラ(クラウド型のサービス)の提供を目指します。これらにより、地域住民への持続的かつ良質な医療の提供と医療費の適正化に向けた取り組みを一層強化します。

参考

国内最大級の保健医療福祉分野の展示会「国際モダンホスピタルショウ2010」(公式ホームページ http://www.noma.or.jp/hs/(外部リンク))にNTTグループとして出展します。この展示会にて、今回の取り組みに関するデモ展示を予定しています。

  • 会期:2010年7月14~16日
  • 会場:東京ビッグサイト(有明・東京国際展示場) 東展示棟(東4・5・6ホール)
  • ブース:NTTグループ(F-111)

注釈

  • 注1わかしお医療ネットワークは、平成12年度の経済産業省による実証事業「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業」の対象として採択されて以降、運用が継続されている千葉県立東金病院を中心とした地域医療連携ネットワークです。
  • 注2生涯健康医療電子記録(EHR:Electronic Health Record)などと略されます。正確な定義については確定していませんが、地域における連携を目的とするものをここでは「地域連携EHR」と表記しています。
  • 注3創立17年間ヘルスケア統合化ソリューションにおいて世界をリードするニュージーランドソフトウェア開発企業。オライオンヘルス社の実績として、世界で著名大型EHRプロジェクトである、カナダHealth Infoway、スペイン IB-Salut EHRプロジェクト、アメリカ最大な州HIEテネシー州のShared Health、英国NHSのGreat Glasgow EHR、などで、統合化エンジン「ラプソディ」が使用されています。なお、NTTデータはOrion Health Rhapsodyの日本における公認代理店です。
  • 注4医療情報を交換するための標準規格です。
  • 注5医用画像のフォーマットと、医用画像機器間の通信に関する規約を定義した標準規格です。
  • 注6すべての医療機関を対象とした医療情報の交換・共有による医療の質の向上を目的として厚生労働省が平成18年度より取り組んできた「厚生労働省電子的情報交換推進事業(SS-MIX)」における成果物の一つで、既設の病院情報システムから送信されるデータを標準的な形式で受信し、まとめて保存することができる機能です。
  • 注7レセプトオンライン請求用の専用ネットワークをインターネット上で手軽に利用できる医療機関向けサービスです。現在お使いの環境に専用ルータを設置するだけで、医療ガイドラインに準拠したセキュアな環境を構築。さまざまな用途で活用可能です。
  • 「@OnDemand接続サービス」は株式会社NTTデータの日本国内における登録商標です。
  • 「Orion Health」と「Rhapsody」の名称とロゴの所有権はOrion Healthおよび関連会社に帰属します。
  • 文中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
岩内
TEL:03-5546-8051

サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
ヘルスケアシステム事業本部
戦略企画室 市場開発担当 田中(智)、木村、高塀
TEL:050-5546-8762