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2024年1月29日展望を知る

DXの推進で全社レベルの成果を創出するカギ
~先進事例に学ぶ、DX推進組織が担うべき役割と具体的な取り組み~

多くの企業がDXに取り組んでいるが、当初期待された全社・事業レベルの成果創出に至っている企業は多くはない。成果拡大にはDX推進組織が事業部門を巻き込んで、目指す姿に向けた変革テーマを再定義し、変革テーマ単位でプロジェクトの企画や実行をマネジメントする体制を構築した上で、事業部門の主体的な取り組みを促すことが重要である。本稿では先進企業における取り組みやよくある課題を踏まえて、DX推進組織が取り組むべきことを説明する。
目次

1.先進事例に学ぶ、DXによる成果を拡大するための3つの策

多くの企業でデジタル活用によるビジネスプロセスやビジネスモデルの変革(デジタル・トランスフォーメーション、以下DXと記載)に向けた取り組みが進められています。これまでDXを推進してきた企業では、DX推進組織を新設して全社的な取り組みを進め、一部の業務で商用化を実現するなど、既に一定の成果を獲得できている企業も多く存在しています。しかし、本来DXで期待されている全社・事業レベルでの成果を創出できている企業はまだ多くありません。本稿では、先進企業における取り組みを踏まえて、デジタル活用でビジネス変革を実現して全社・事業レベルの成果を創出していくために、DX推進組織が担うべき役割と具体的な取り組み内容をご紹介します。

先進企業における取り組み状況

DXで全社・事業レベルの成果を創出できている先進企業では、どのように取り組みが進められているのでしょうか。当社のお客さまでは以下のようにDXを全社的な経営課題として捉えた上で、事業環境や業務への理解が深い事業部門がDXの取り組みを主体的に推進しています。

  • 経営ビジョンや重点投資領域としてデジタル活用によるビジネス変革が掲げられており、全社としてデジタル活用やデータに基づく意思決定・アクションが当たり前化し、事業部門とDX推進組織が一体で取り組んでいる。
  • 各事業部門が主体的に具体施策を企画・推進。スピーディにPDCAサイクルを回しており、一定のビジネス成果を創出し、データを元に検証/効果測定されている。

また、事業部門の主体的な取り組みを実現するために、DX推進組織は以下のような取り組みを行っています。

  • DX推進組織は、各事業ドメインの専門性を有した支援機能と、技術・スキル領域毎に横断して支援機能を提供しており、事業部門が意思決定やアクションに注力できるように強力にサポートしている。
  • デジタル活用による変革を経営・事業部門主体で構想・追求するために、各事業部門とDX推進組織がアラインし、意思決定やアクション、成果創出に向けた事業部門の課題/要望をいち早く捉えて、優先度を合意形成しながら迅速に対応している。
  • 各事業部門は人材育成や中途採用等により一定のIT/データリテラシーを獲得していることに加え、DX推進組織によって実務をフィールドとした伴走サポートや勉強会が実施されており、継続的に実践スキル向上を図っている。

全社・事業レベルの成果創出に向けてDX推進組織が担うべき役割

先進企業群の取り組みも踏まえると、DXにより全社・事業レベルの成果を創出するには、DX推進組織が事業部門と一体となって取り組みを進めながら、事業部門による主体的なDX推進を実現していくための仕組みづくりを行うことが重要と考えられます。

  • (1)全社・事業レベルでの価値創出の視点で、目指す姿の実現に必要な変革テーマやプロジェクトを全社的かつ網羅的に整理する(構想)
  • (2)変革テーマ(プログラム)単位で具体的なプロジェクトを企画、実行状況をモニタリングし、適宜改善に向けたアクションを行う(実行)
  • (3)事業部門が主体的に取り組みを企画・推進(自走)できるようになるための仕組みを整備する(推進体制)

2.全社・事業レベルの成果創出に向けて取り組むべきこと

(1)DXで目指す姿の実現に向けた変革テーマとプロジェクトの再定義(構想)

全社・事業レベルの成果創出には、まず構想の見直しが必要となります。これまで当社のお客さまにおいては、構想段階の取り組みに起因する問題として、以下のような例がみられました。

  • 大局的な目指す姿を描けておらず、業務改善レベルのテーマをボトムアップで積み上げた状態に留まっている
  • 目指す姿はあるものの、早期成果創出や投資リスク最小化を重視するあまり、実現に繋がりづらい目先の取り組みに終始してしまっている
  • 各事業部門がバラバラに検討を進めたため、商材やプロセス毎に全く異なる仕様となってしまい、顧客体験が悪化している
  • 事業部門毎にデータ活用基盤が乱立する等、部門を跨いで重複する取り組みが進められ、重複投資やサイロ化が発生している
  • 経営層から目的や意義を捉えずに、取り組みありきで進めているように見られ、個々のプロジェクトの実行段階で承認が得られない、途中で取りやめの判断が下る

これらの問題を防ぎ、全社・事業レベルの成果創出につなげるには、経営層や事業部門を巻き込んでDXで目指す姿の実現に向けた変革テーマを改めて定義すること、変革テーマを踏まえて具体的なプロジェクトを全社レベルで網羅的かつ構造的に整理すること、目指す姿・変革テーマ・具体的なプロジェクトのKGI/KPIを整合させること、の三点が重要になります。

目指す姿を踏まえて全社・事業レベルの成果創出に向けた変革テーマを再定義し、必要なプロジェクトを網羅的かつ構造的に整理するには、下図のように目指す姿の実現に必要な変革テーマとプロジェクトを構造的に整理、可視化するバリューツリーを活用することが有用です。これにより、経営層、事業部門、DX推進組織間での議論や合意形成を効果的に進めることが可能になります。また、各プロジェクトの目的やプロジェクト間の関係性、影響範囲が可視化できるため、成果創出に向けたマネジメントも行いやすくなります。

図1:バリューツリーによる整理例

図1:バリューツリーによる整理例

目指す姿・変革テーマ・具体的なプロジェクトのKGI/KPIは、可能な限り上位目的と整合した定量指標を設定することで、取り組みの意義や位置付けの説明、全体的な整合性や達成状況の確認、費用対効果の検討や検証が行いやすくなります。KGI/KPIの設定にあたっては、事業・業務領域やDXの目的(売上向上や生産性向上等)に応じて設定すべき指標を予め体系化しておくことも有用です。個々のプロジェクトによる価値創出や最終的な目指す姿の実現には、KGI/KPIの設定と継続的な改善のための取り組みが重要になりますが、KGI/KPIの設定には一定の負荷があるためです。

図2:KGI/KPI指標の例

図2:KGI/KPI指標の例

(2)変革テーマ(プログラム)単位でのマネジメント(実行)

各変革テーマに沿ったプロジェクトの具体化・実行段階でも、様々な問題に直面します。当社のご支援事例においては、以下のような例がみられました。

  • 各事業部門やDX推進組織が個別でプロジェクト推進、マネジメントを行っていたため、ある部門のプロジェクト遅延が思わぬ形で波及し、成果創出に遅れが出てしまう
  • プロジェクトを進めるうちに個々のプロジェクトの事情が優先され、本来達成すべき目的から乖離していく
  • 環境が変化し従来の取り組みでは十分な成果が創出できなくなっているにも関わらず成行で取り組みを続けてしまうことで、システムコストや人的リソースの無駄が発生している(利用されなくなったダッシュボードやデータマートが見直しされずに維持運用し続けられている等)

上記のような問題を防ぎ、成果を創出するには、変革テーマやプロジェクトの関係性を俯瞰的に捉えた上で、優先順位をつけて対処する必要があります。また、外部環境、内部環境の変化を捉えた継続的な見直しも必要です。

具体的には、個々のプロジェクト単位でマネジメントを行うのではなく、目指す姿の実現に向けた変革テーマ(プログラム)単位でマネジメントを行うことが有効です。変革テーマやプロジェクトのPDCAプロセスを策定し、そのプロセスに沿って、経営層、事業部門、DX推進組織が連携して全体的にマネジメントを行う体制を構築するべきです。進捗状況や成果創出状況を継続的にモニタリングし、目指す姿の実現に向けた影響度合いを踏まえた上で優先順位を協議し、課題に対処するととともに、場合によってはプロジェクトの廃止も含めて適切な判断をタイムリーに下す必要があります。しかし、ここで注意したいのは、初期の単発PoCの結果のみでプロジェクト廃止を決断することです。全社・事業レベルの成果創出に向けた変革の起点となる重要な取り組みであれば、初期的な取り組み結果に関わらず粘り強く対応する必要があります。目指す姿の実現における各プロジェクトの位置付けについて、各ステークホルダーが共通理解を持って判断することが重要です。

図3:DXプロジェクトのPDCAマネジメント

図3:DXプロジェクトのPDCAマネジメント

プロジェクトのPDCAプロセスにおいては、デジタル投資管理の在り方も論点の一つです。従来のIT投資とデジタル投資のバランスをどうすべきか、既存のIT投資管理プロセスとは異なるデジタル投資管理プロセスを構築するべきか等が検討ポイントになります。
投資管理は「目的達成に向けたリソース割り当ての管理」という戦略の根幹に当たるため、各企業の置かれている環境や方針によって取るべき選択肢は異なりますが、プロジェクトを可視化・ポートフォリオ化することで、自社にとって最適な状態を議論できるようにしておくことが重要です。

(3)事業部門の自走化に向けた支援(推進体制)

これまでに述べた取り組みを加速し、早期成果創出を実現するには推進体制の強化も重要なポイントです。当社のご支援事例においては、推進体制の問題として以下のような例がみられました。

  • 各事業部門がバラバラのやり方で進めているため検討項目の抜け漏れが発生する
  • 各事業部門が似たような課題に直面するが、解決策が共有・組織知化されておらず各々が苦労して課題に対処している
  • 事業部門単独での取り組みが難しくDX推進組織のハンズオンでの支援が必要なため、DX推進組織のリソースがボトルネックとなって取り組みが広がらない

全社・事業レベルの成果創出に向けては、事業部門が主体的に変革テーマやプロジェクトを企画・推進できるようになることが重要であり、DX推進組織はそのための仕組みを整備することが求められます。

各事業部門が主体的に変革テーマやプロジェクトを企画・推進し、着実かつ効率的に成果を創出するためには、事業部門が活用可能な標準的なプロジェクト推進プロセスを整備することが有用です。過去の案件での活動等をもとに標準手法・プロセスと支援機能をクイックに検討・作成し、まずはトライアルを行ってみることをお勧めします。プロセスに完璧なものを求めず、使いながらブラッシュアップしていくことで、実態に沿ったプロセスを整備できます。

図4:DXプロジェクトの標準推進プロセス例(BI構築)

図4:DXプロジェクトの標準推進プロセス例(BI構築)

プロセス整備においては、最終的に事業部門が使いこなして自らプロジェクトを推進できるようにすることが重要です。そのためには各事業部門の成熟度に応じて、DX推進組織が密に連携・支援し、事業部門のDX成熟度を上げていく必要があります。事業部門の成熟度に応じてDX推進組織の支援範囲を段階的に狭めていくことで、自走化を促します。事業部門の取り組み意欲促進の観点でも、初期はDX推進組織が主体的に推進して早期に成果を創出することに意味があります。

図5:事業部門の自走化に向けたDX推進組織の関与

図5:事業部門の自走化に向けたDX推進組織の関与

3.終わりに

DXにより全社・事業レベルの成果を創出するためにDX推進組織が担うべき役割や具体的な取り組みを、先進企業の事例を踏まえてご紹介しました。NTTデータはお客さまに成功をもたらすDXの取り組みをデジタルサクセスと名付けて、多くのお客さまを支援しています。本稿で説明したDX推進組織のご支援については、デジタル時代の組織の在り方設計や変革テーマの企画・推進、デジタル人材育成等さまざまなご支援を行っています。DXを進めているが、思うように成果を創出できていない、事業部門によるDXの取り組みが進まない等の悩みを抱えている方は是非ご相談ください。

図6:DX推進組織向けのご支援例

図6:DX推進組織向けのご支援例

デジタル変革・DXを成功に導く「デジタルサクセス」の詳細はこちら:
https://enterprise-aiiot.nttdata.com/service/digital_success

組織人材戦略の策定・実行で企業変革を支援する「変革支援コンサルティング」はこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/transformation-support/

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