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2024年3月28日展望を知る

「やめること」が一番難しい 組織改革に本当に必要なこと

「既存事業がうまくいっている組織が、新しい試みにリソースを振り向けるのは、やはり勇気が必要です」

既存事業と新規事業の両立を目指す「両利きの経営」の研究者であり、多くの企業でヒアリングを重ねてきた加藤雅則氏はそう話す。

NTTデータも、実装フェーズに留まらず、事業戦略から成長まで一貫して伴走する存在を目指し、未来を見据えた組織転換に取り組んでいる。

とはいえ、号令だけでは現場は動かない。予算や人員が限られている中で必要な意識改革は?既存事業と新規事業、どうバランスをとる?

変革の旗振りをする一人、同社コンサルティング&アセットビジネス変革本部 副本部長・野崎大喜を迎え、NTTデータの“本気”に加藤氏が迫る。

前編はこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2024/032701/

目次

組織変革は「やめること」が一番難しい

加藤: 変革の旗振り役としてどんな課題や葛藤を感じていますか?

野崎: 当社だけに限らないと思いますが、現場はすでに頑張っているんですよね。一生懸命目の前のお客様とプロジェクトに全力で向き合っている。そんな中で「新しいことやるぞ!」と上から威勢よく言われても「そっちもやるの?今そんな余力ないよ」と及び腰になってしまいます。組織として実現可能な環境やムードを作っていくことが課題ですね。

野崎 大喜

加藤: ギリギリの状態でさらに新しい取り組みを増やす挑戦は、多くの日本企業に共通する課題ですよね。スタートアップだったら「やるぞ!」のかけ声で一気に進めるかもしれませんが、既存事業がある程度うまくいっている中で、新しい試みにリソースを振り向ける決断はやはり勇気が必要です。既存事業と新規事業の両立を実現する「両利きの経営」はまさにそういう場面で求められている考え方だと思います。

野崎: その観点からぜひ加藤さんに伺いたいのですが、リソースが限られている中で新しい挑戦をしていくためにはどんなことが重要ですか?

加藤 雅則 氏

加藤: 不易流行――変えてはいけないところは変えず、変えるところを明らかにして変えていく意識が大切です。変えてはいけないところは強みがある領域。一方、変えるべき部分は、「新しく始めること」「継続して強化すること」そして「やめること」に整理することが大事です。まず整理をしないと、時間も予算も人も足りなくなってしまいます。

野崎: その3つに分けると「やめること」が最も難しいですね。

加藤: そうですよね。私が組織改革コンサルタントとして支援に関わってきた企業でも、やりたいことや自社の強みについての議論は盛り上がりますが「そのために何をやめるか」の話になると急にまったく意見が出なくなります(笑)。やめることは今までやってきたことを否定することになるため、その判断が難しい。

ある時、静まり返ったそんな会議の中で、参加者の一人が「加藤さん、やめるのは無理です。でも、脱力はできるかもしれない」とボソリと言ったんですよね。これまでの取り組みを完全にやめてゼロにするのではなく、いい意味で“手を抜ける”ところ、ここまでリソースを注がなくていいかもしれない、と一致する部分を探していくということです。

野崎: それはいいアプローチですね。例えば、私たちも日進月歩で進化するITを活用して価値を提供するために、幅広く新技術を追いかけています。市場に適用するためにはさまざまな技術検証が必要で、相当なパワーがかかります。

あらゆるお客様からのご要望に応えるなかで取捨選択は難しいですが、「これから本当に求められる技術は何か?」の視点で、”手を抜く”ところを見ていくと、注力分野が見えやすくなっていく気がします。

加藤: 中長期の企業の成長と、足元の収益のバランスを取ることも重要ですよね。放っておくと企業は足元の収益を確保することに気をとられ、中長期の計画を掲げてはみたもののあっという間に形骸化してしまいます。その点では、企業ビジョンの浸透への取り組み、経営層からのしっかりとしたメッセージングが重要です。

新規事業は「出島」ではない

野崎: 新しい挑戦は、既存の事業から切り出して進めていくことが重要だと思っています。ただ、完全に切り離してしまうと別事業になり「両利き」にはなりませんよね。切り出しながらも握りつつ、成果が出始めたタイミングで再び本体に組み戻すことが重要だと理解していますが、どうでしょうか。

加藤: その通りです。新規事業は「出島」、本体から切り離して全く新しい成果を独立した形で実行していくものと勘違いしている人も多いのです。しかし、本来の目標とは少し違っていて、切り出して育てながら、最終的には本体の事業に戻すことが肝要です。そのプロセスで組織自体が変わっていくんです。

野崎: 既存事業と、切り出して育てる新規事業では評価やスピードも異なりますよね。今までと違う評価基準で判断できるかどうかも重要なポイントだと感じます。

加藤: そうですね。既存事業と新規事業は成長のスピードが異なります。経営を指揮者に例えると、リズムの違いを踏まえてコンダクトすることによって新規事業が育ち、本体に戻した時に新しいハーモニーを奏でられるようになります。

野崎: 同感です。私はよくスポーツに例えます。既存事業を野球、新規事業をバスケットボールとすると、点が入るスピードが違いますし、1点の価値も違う。そういった違いを認識しておくことが重要ですよね。「1点」の言葉や単位が同じであるため、そこを一緒にして考えると混乱してしまうと思います。

「システム屋さん」から「社会実装屋さん」へ

加藤: 大きな話になってしまうのですが、NTTデータとは何者なんでしょうか。今までの定義でいうとシステム屋になると思いますが、「これから何屋さんになるの?」と聞かれたらどう答えますか?

野崎: 今までを「システム屋さん」と表現するなら…これから目指すのは「社会実装屋さん」だと思っています。自分たちで構想したものがきちんと世の中で使われている。システムを作って終わりではなくて、成果や変化につながっている状態ですね。

加藤: 社会実装屋さん!いいですね、イメージわきますね。お話を聞いていると、これまで特定のフェーズを担っていたのが、AtoZ、事業成長の最初から最後まで伴走していく存在になっていくのかなと感じました。そのためにどんなケイパビリティが必要ですか?

国内産業成長の2つの源泉

野崎: 社会実装のスタートは構想力ですよね。お客様がどうありたいか、社会はどうあるべきか、をきちんと構想――つまり、よりよい未来予想図を妄想しつつ、実現するための道筋を立てていくこと。そこで言うと我々には「妄想力」がまだ足りないと思っていて、そこがコンサルティング力にもつながると考えています。

事業を取り巻く環境が難しくなっていく中で、お客様自身はさらに一段目線を上げて戦っていただかないといけないわけで、我々が担うべき範囲も引っ張られて広がるはず。そこに期待も責任もあるのかなと。

加藤: 顧客の成長とともに、自分たちの成長もある。だから特定の接点だけでなく、全面的な接点、接着面を作って後押ししたいという意味なんですね。

自分たちの存在を自分たちで定義する

野崎: こういう立場で多くの社員たちと会話していて強く思うのは、我々は社会やお客様の成長を心から願っている企業体だな、ということです。目先の利益よりも「世の中のために情報技術を活用したい、よりよい未来を作りたい」思いが個々人の根底にあるんです。

だから、社会や企業が直面している課題を目の前にするとみんなアドレナリンが出るし、本気で解決策を考える。このNTTデータという会社のよいカルチャーをもっと成長させたいし、事業につなげていきたいと思っています。

加藤: 自分たちは何者か、を考え直すアイデンティティーの話には2つの側面があります。1つは社員たちのアイデンティティーで、自分たちが自分たちをどう捉えるか。もう1つは社会やステークホルダーから見たアイデンティティーで、何を期待されている会社か。

どちらを先に構築していくかは企業によりますが、NTTデータはコンサルティングによって顧客のビジネス変革を実現することを宣言しました。次は、その宣言を自分たちがどう解釈し、どのような取り組みをしていくかを明らかにしていくステップだと思います。

野崎: そうですね。大きなビジョンと戦略を踏まえて、我々がどういう企業を目指すかを自分たちの言葉で語っていくことが大事だと思います。

加藤: そこで大事なのは、自分たちのナラティブが出てくること。上から与えられたキャッチコピーではなく「確かにそうだ、うちはそういう会社だ」とみんなが納得できる言葉が、仲間の口から出てくる瞬間があるはずです。

野崎さんは「社会実装屋」と表現しましたが、社内で対話する中で「こういう言い方がいいんじゃないですか?」「やっぱりこうじゃないですか?」なんて提案や対案が出てくると思います。社内で実際に業務に取り組む人たちが、自分たちのあり方について自分たちの言葉でアイデンティティーを議論することで、ビジョンが腹落ちしやすくなりますし、業務にも主体性が出やすくなる。

新しいNTTデータからどんな新しいキーワードが出てくるのか、私自身もとても楽しみです。さらなる成長と挑戦に大いに期待しています。

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