低遅延・広帯域を実現するIOWN APNを用いたデータセンター相互接続の有効性を実証
~地理的に分散させたデータセンターで、信頼性と耐障害性の高い次世代金融システムの構築をめざす~
トピックス
2025年3月7日
株式会社三菱UFJ銀行
株式会社NTTデータグループ
西日本電信電話株式会社
株式会社三菱UFJ銀行(取締役頭取執行役員 半沢 淳一、以下三菱UFJ銀行)、株式会社NTTデータグループ(代表取締役社長 佐々木 裕、以下NTTデータグループ)、西日本電信電話株式会社(代表取締役社長 北村 亮太、以下NTT西日本)の三社は、IOWN Global Forumで金融ユースケースの取り組みを推進しており、今般、IOWN APNを用いたデータセンター相互接続の有効性を実証しました。三社は引き続き、強靭(きょうじん)な次世代金融システム構築をめざし、IOWN技術適用の可能性を検証します。
取り組み背景
安定的なサービスの提供のため、金融システムは高い信頼性や耐災害性の強化等が求められ、地理的に分散されたデータセンターの活用が一つの方策として検討されています。異なる場所にあるコンピューターを効果的に利用するためには、システムの停止時間を最小化しながらデータを高速に移行するしくみが求められ、さらには、災害対応時の迅速なインフラ復旧のため、遠隔地におけるシステムのバックアップやデータ転送の高度化が必要であり、IOWN APNに期待が寄せられています。
三菱UFJ銀行およびNTTデータグループは、次世代の金融システム構築に向けIOWN技術のユース検討をリードする中、IOWN Global Forum注1を通じ、2024年7月、金融業界におけるデジタルトランスフォーメーションに資するIOWN技術の活用策をテーマとしたホワイトペーパー注2を発行、2025年2月、IOWN技術の実装時に参考となるアーキテクチャーと検証時のガイドラインをまとめたホワイトペーパー注3を発表しました。
この取り組みのさらなる推進のため、三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本の三社は、次世代の金融システム構築に向けたIOWN技術適用ユースケースや要求性能に基づき、実証実験を行いました。
各社の役割
企業名 | 役割 |
---|---|
三菱UFJ銀行 | 金融ドメインでの分散データセンター活用シナリオの検討 |
NTTデータグループ | データベースシステム設計・構築、検証推進 |
NTT西日本 | APNを含めた検証環境提供、ネットワークインフラ設計・構築 |
実証実験の概要
1.複数データセンター間でのシステムの稼働ロケーションの切り替え
NTTデータグループおよびNTT西日本は、70km圏内に配置された複数のデータセンター間で、仮想化された疑似金融システムの稼働ロケーション切り替えの検証を行い、データ転送時間やシステム停止時間の測定を行いました。アプリケーション、データベース、仮想化基盤、ネットワークの観点で測定結果の評価を行い、IOWN APNの利用により、システム停止時間を1秒以下に抑えたロケーションの切り替えができることを実証しました。
No. | 評価観点 | 主な評価内容 |
---|---|---|
1 | アプリケーション | ユーザー処理の継続性 |
2 | データベース | トランザクション損失の有無 |
3 | 仮想化基盤 | メモリコピー準備時間や仮想マシン停止時間 |
4 | ネットワーク | データ転送時間やシステム停止時間 |

2.長距離データベース同期レプリケーション
三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本の三社は、250~2,500kmにわたる長距離光伝送等を想定し、物理的距離があるデータベース間での同期データ転送注4の性能測定を行いました。主にデータベースの観点で測定結果の評価を行い、同期データ転送時間の遅延とゆらぎが大幅に削減されることを確認しました。その結果、IOWN APNを利用することで、従来では困難とされていた長距離間の異なるデータベース間での同期転送が機能することを実証できました。
No. | 評価観点 | 主な評価内容 |
---|---|---|
1 | データベース | レイテンシ、スループット、データ転送ラグ |

今後の展開
今回の実証実験で得られた成果を基に、三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本は、IOWN技術を活用した新しいICTシステムとサービスの創出に向けた取り組みを続け、より豊かで調和の取れた未来の姿を追求していきます。三社は引き続き、金融ドメインにおける光ネットワークの技術実証等を予定しており、IOWN Global Forumを通じて課題解決の手法や知見をフィードバックし、パートナー企業による多様なユースケースの創発とIOWN技術の社会への広がりに貢献して新たな価値の共創を進めます。
なお、今回の実証実験の内容について、2025年3月12日に行われるNTTデータ テクノロジーカンファレンス2025(https://oss.nttdata.com/techconf2025/)にて発表予定です。
注釈
- 注1 IOWN Global Forumとは、異業種のデータ、活動、人々が一体となったスマートな世界を実現することで、人と社会が自分と環境にシームレスに合わせた高度な技術から恩恵を受ける、完全に接続されたインテリジェントな社会の実現をめざすコンソーシアムです。次世代フォトニクス基盤技術などの最先端技術により、低消費電力、超広帯域、大規模シミュレーション、超臨場感UI/UXなどの高度な機能を提供できる「革新的光・無線ネットワーク(IOWN)」の実現に取り組んでいます。フォトニクスの研究開発、分散コネクテッド・コンピューティング、ユースケースとベストプラクティスなどの分野における新技術、フレームワーク、仕様、リファレンスデザインの開発を通じて、将来のデータとコンピューティングの要求を満たす新しい通信インフラのイノベーションと導入を加速することを目的としています。三菱UFJ銀行およびNTT グループが参画する当コンソーシアムには、2025年3月現在において150を超える世界中の企業・研究機関・自治体などが加盟しています。
- 注2 「Services Infrastructure for Financial Industry Use Case」(https://iowngf.org/content-type/use-cases/)
- 注3 「Reference Implementation Model and Proof-of-Concept Reference of Services Infrastructure for Financial Industry Use Case」(https://iowngf.org/content-type/technology-docs/)
- 注4 同期レプリケーション。データベースやファイルシステムなどにおいて、データの高可用性や災害復旧能力を向上させるために使用される技術の一つです。この技術では、変更が発生したデータが、変更が完了すると同時に、他のノード(通常は物理的に異なる場所にある)に対して同じデータ変更が複製されます。これにより、データの整合性と同期をリアルタイムで保つことができます。
- 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部
Innovation技術部
IOWN推進室
三浦、梅森
E-mail:iown@kits.nttdata.co.jp
西日本電信電話株式会社
デジタル革新本部
技術革新部
IOWN推進室
小山、吉田
E-mail:iown-pr@west.ntt.co.jp