生成AIを活用した営業生産性向上PoCをテプコカスタマーサービスと実施

~太陽光設備サービスにおける営業活動の効率化と業務品質向上の実現へ~

トピックス

2025年5月26日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、2025年1月から4月までの期間で、東京電力グループでカーボンニュートラル関連の設備サービスを提供するテプコカスタマーサービス株式会社(以下、TCS)とともに、太陽光発電の設置・販売事業における営業生産性向上を目的としたPoCを実施しました。TCSでは、カーボンニュートラル社会の実現に向け、幅広いお客さまへ「省エネルギー機器」への更新など、お客さまのニーズに合わせて最適なサービスを提案しており、フィールドセールスとインサイドセールス業務の効率化が課題となっています。この課題への解決策として3つのAI活用テーマを設定し実現性や期待効果を確認しました。注1
生成AIを活用した提案書・スクリプト作成の自動化においては、グラフや表を含め自動化が可能であること、商談の内容に応じたスクリプト出力による提案品質向上の効果を確認しました。AIエージェントを活用したインサイドセールス代行においては、生成AIによる対話の自然さや応対の印象は実用レベルであること、人間の自由な回答に対し意図したシナリオに沿う分岐判断が今回の検証ケースにおいて可能であることを確認しました。建物情報調査の自動化によるターゲティング精度向上においては、独自の航空写真の2D・3D解析が可能な仕組みと登記簿情報を活用し、ターゲット情報調査稼働120時間/月の削減可能性と商談先開拓の機会拡大の効果を確認しました。
今後、検証結果を踏まえて周辺のプロセスも含めた営業領域のあるべき姿を具体化し、全体最適の視点での構想策定とスモールな検証を繰り返しながら、事業拡大に向けた営業生産性向上に取り組みます。

背景

2050年カーボンニュートラル宣言以降、上場企業では環境課題への取り組みは事業継続に不可欠なものとなっています。一方、非上場の中小企業では、カーボンニュートラルへの対応に踏み切っていない企業も多くあります。TCSでは、中小企業向けにカーボンニュートラルを目的とした設備サービス事業を全国に提供しており、今回は太陽光発電設備の設置・販売事業の拡大に向けて、営業領域の生産性向上に関する検証を行いました。
急速な生成AIの普及に伴い、TCSでも単純なリソースの増強ではなく、生成AI等のテクノロジーを活用した生産性の高い事業体制で、より高い事業目標を達成することが求められており、フィールドセールスとインサイドセールス業務の効率化に重点を置いています。
NTTデータは、オフィスワーカーの生産性を抜本的に向上させる生成AI活用コンセプト「SmartAgent™」に基づき、営業領域向け生成AI活用サービス「LITRON® Sales」を2024年11月から提供しています注2。これまでの営業業務の変革と生成AI活用における知見を活用し本検証を実行しました。

図1:課題整理により「顧客接点の見直し」に着手

概要(特長)

顧客との接点の見直しにあたっては、個々の業務ではなく営業活動領域全体のプロセスを構造化し、設定した課題テーマから図1に示す3つを施策化し実現性と期待効果の評価を実施しました。顧客との接点を強化することにより、営業担当者の業務負荷は高まるため、営業生産性向上を目的に、Aの商談化以降フェーズでは営業の既存業務における事務処理負荷の軽減、Bのアプローチフェーズでは見込み顧客(リード)との接点量減少の回避、Cのターゲット選定フェーズではより収益性が高く営業コストがかからないリードを抽出する施策に取り組みました。

図2:課題解決に向けたアプローチ選定

A.生成AIを活用した提案書作成自動化による稼働削減と提案品質向上

<課題>
現在、提案書作成には熟練の営業員で1商談あたり計2時間半程度かかります。提案書には標準テンプレートがありますが、提案書に記載する内容や提案のポイントまでは標準化されておらず、今後新たな営業人員の増加や代理店との協業を見据えた際、経験値の差により現在よりも営業生産性が低下してしまうことが懸念されます。

<検証内容・評価>
環境性や経済性の効果算出のような顧客の状況に依存するコンテンツは個別にロジックを作りこみつつ、標準的な提案書やスクリプトについては、生成AIを活用して自動化の実現性を検証しました。その結果、商談までの訪問回数削減と提案品質底上げの効果を確認しました。ロジック部分の生成については、グラフや表の表現を含め提案書全22ページが高い精度で自動化可能であることを確認しました。顧客の情報や課題把握が緩い段階の初回訪問においても、その場で得た情報を提案書に反映しながらコミュニケーションを取ることが可能となるため、再訪問の負荷発生を防ぎ顧客との円滑な提案方針合意が可能です。また、提案内容要約やスクリプト生成の機能は営業のやり方やインプット情報を反映することで、新規営業員を含む組織的な営業力強化が期待できることを確認しました。

B.AIエージェントを活用したインサイドセールス代行

<課題>
顧客との接点見直しに伴い、大量の架電によるリードアプローチを行っていたインサイドセールスに替わる手法を検討しています。リードアプローチ段階から対面に切り替えることで1件に対する確度向上は期待できるものの、リードとの継続的な接点量は大きく減少します。

<検証内容・評価>
インサイドセールスを代替する手段として、AIエージェントによる電話営業の実現性を検証・評価しました。実際にAIエージェントと会話した検証担当者からのフィードバックで最も多かった回答は「想像していたよりも自然」でした。対話型での自由な会話やイレギュラーな状況でも従来とは比較して柔軟な判断で意図したシナリオへ誘導する結果が確認できました。今後、実用に向けてはAIからの架電に対する信頼性担保が検討事項となっています。資料請求のフォローアップや契約済みの顧客の契約更新等のユースケースでは信頼性の懸念が低く実現可能性が高いとの回答もあり、目的に応じたAIエージェント活用を検討していきます。

C.建物情報調査の自動化による優良リード発掘精度向上

<課題>
収益性が高く営業コストがかからないリードの選定において、太陽光パネル設置対象の建物の構造や古さ、屋根の素材や方角といった情報は重要な情報です。このような解像度の高い現地情報は取得が難しく、月に120時間程度をかけて人手で1件ずつマップの航空写真確認を行っています。提案除外対象を選別する効果はありますが、注力したいリードを特定するほどの効果までは得られていません。また、調査可能件数に限りがあることで機会損失の懸念もありました。

<検証内容・評価>
独自の航空写真の2D・3D解析が可能な仕組みと登記簿情報を活用し、優良条件建物の自動検出を行い精度向上や運用性を評価しました。
自動化により月120時間程度の削減可能性を確認できました。さらに、指定エリアに対する網羅的な建物検出により、今回検証対象としたエリアで手動調査では発掘に至らなかったインサイドセールスのアプローチ候補が発掘できました。また、これまでの調査では感覚値であった太陽光パネル設置不可条件となる「屋根素材」「建物設置年」「建物所有者」といった情報の精度向上が期待できることも確認できています。また、太陽光パネルの設置年数情報から、新たなターゲット層としてリプレイス提案先の抽出が可能となることも確認できました。

今後の展開

今回の検証で、想定していたあるべき姿に対し十分に実現性があるものについては、次の段階として前後の業務プロセスと連動させ業務適用による効果最大化に向けた検討が必要です。実用に向けた課題が明らかになったものについては、他ツールの検討や精度向上により、営業生産性を高めるための取り組みを提案していきます。
NTTデータでは2024年から営業領域のBPS注3を開始しており、本事例のように具体的な業務課題に対し検証と評価を繰り返しながらあるべき状態を描き、その実現に必要なパーツ・機能を人とデジタルセットで提供することが可能です。生成AIの普及によりさまざまな製品が溢れていますが、事業全体としての成果を得るためには業務オペレーションや構造全体を踏まえた人とデジタルの組み合わせを検討しながら最適な配置を見つけていくことが重要です。全体最適の視点での構想とスモールな検証を繰り返しながら、事業拡大に向けた営業生産性向上を推し進めていきます。

NTTデータグループが描く生成AI活用の未来

NTTデータグループは、積極的なAI活用の推進とガバナンスの両輪でお客さまのビジネス、当社のビジネスの変革を推進します。お客さまのビジネスでは、AIエージェントが指示に応じ自律的に対象業務のタスクを抽出・整理・実行する「SmartAgent™」の実現をめざします。当社のビジネスでは、ソフトウェア開発の大幅な生産性向上や実践的生成AI人財の育成を加速します。これにより、人手不足等の社会課題解決に貢献するとともに、人が付加価値の高い業務領域に注力できる世界を実現していきます。

注釈

  • 注1 設備サービス事業者の顧客に向けた実ビジネス適用は行わず内部での実用性評価として実施
  • 注2 AIエージェントを活用した新たな生成AIサービスを提供開始 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP
  • 注3 BPS(ビジネスプロセスサービス)とは、企業のビジネスプロセス全体を外部に委託し、委託先にてITや先進技術を活用して業務の抜本的な改革を行うサービスのことを指します。ビジネスプロセスを外部に委託する従来のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を進化させたものがBPSであり、企業のビジネスプロセスの効率化、コスト削減、品質向上などを目指します。
  • SmartAgentは日本国内における株式会社NTTデータグループの商標です。
  • LITRONは日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
テクノロジーコンサルティング事業本部
テクノロジーコンサルティング事業部
新屋、西澤、小澤
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