株式会社NTTフィールドテクノ様

技術者の現在位置から装備やスキルまで、あらゆる情報を地図上に一元化
手配業務を効率化するマルチアサインツールでBPRを積極推進

関西6府県において約40のオンサイトサービス拠点を展開し、公共性の高い通信インフラの故障・修理からネットワーク構築まで、ワンストップでサポートしている株式会社NTTフィールドテクノ関西支店(以下、NTTフィールドテクノ)。顧客におけるオフィス内や自宅の通信環境の高度化を踏まえ、技術者の手配業務の抜本的な改善を目指したBPR(業務プロセスの最適化)に乗り出した。NTTデータと共同し、アジャイル開発手法を用いた「マルチアサインツール」を構築。顧客の多様な“お困り事”に即応できる、現場業務の効率的運営を実現した。

お客様の課題

  • ICTの進展とともに顧客のオフィス内や自宅の通信環境が高度化
  • 案件ごとに業務フローや連絡様式が異なっており技術者の手配が煩雑化
  • 統制者の属人的なノウハウに頼っており継承が困難

導入効果

  • アジャイル開発手法を用いることで、BPRを支える「マルチアサインツール」を1カ月半の短期スケジュールで構築
  • 関西支店エリアにおける技術者手配の効率を10%向上
  • 最適手配のレコメンデーションや戦略的な人材育成のための基礎を確立

ケーススタディ

導入の背景と課題

“成長ビジネス”拡大の一方で技術者手配の課題が顕在化

NTT西日本グループのNTTフィールドテクノは、「電話や光ファイバー網など通信インフラの保守・保全を脈々と担ってきた企業」だ。地域に密着した“ライフパートナー”として、通信設備の構築・保守を通じてビジネスや暮らしを支え、社会のICT化の進展とともに事業領域を拡大してきた。現在、同社の関西支店エリアには約40のオンサイトサービス拠点があり、日々、約1,000台の自動車が巡回して現場に駆け付け、故障修理やサポートを行っているという。

同社の取締役であり関西支店長を務める猪俣貴志氏は「HEMS(家庭エネルギー管理システム)やBEMS(ビルエネルギー管理システム)、Wi-Fi、IoTなどに象徴される、お客様側の通信環境の高度化に合わせたワンストップのサポートを拡大しています。これを私たちの成長ビジネスと位置づけています」と語る。

だが、その一方で顕在化してきたのが、技術者の手配(アサイン)の問題だ。屋外の通信設備(電柱、通信ケーブルなど)の故障については、NTTの基幹システムで一括した管理・指示が行われるためスピーディな動きがとれるが、顧客のオフィスや自宅で発生するさまざまな“お困り事”の対応はそうはいかない。案件そのものが多岐にわたるのに加え、オーダーの依頼元や連絡様式(メール、FAXなど)もバラバラで、煩雑な手配を余儀なくされていたのである。

「技術者の状況把握に手間取り、無駄な移動や待ち時間が発生することがありました。また手配業務はベテラン統制者の経験に頼っているのが実情で、属人化したノウハウを若い世代に継承するのも困難が予想されました」と猪俣氏は語る。

株式会社NTTフィールドテクノ
取締役
関西支店長
猪俣 貴志氏

選定ポイント

市販ソフトも組み合わせながら低コストのアジャイル開発を実践

そこで同社が乗り出したのが、手配業務のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)である。ICTを活用したコントロールのもと、技術者一人あたりの日々の訪問件数を増やすことができれば、そのぶん顧客満足度も向上する。

もちろん、現場に駆けつけるスピードを向上することだけが目的ではない。あくまでも移動時の安全を守り、顧客先で確実かつ丁寧な作業を遂行することが、信頼獲得における最も重要なポイントとなるのだ。

「依頼場所の近くに誰がいるのか、車にどんな装備を積んでいるのかなど、あらゆる情報を集約して可視化し、状況把握から手配、指示へとフロースルーすることで、技術者の空き時間を上手くコントロールした効率的なオンサイト対応を実現します」と猪俣氏は語る。また、「技術者一人ひとりのスキルも加味して経験を積ませたい案件を振り分けたり、熟練者に帯同させたりすることで、育成にもつなげていきたいと考えています。これが私たちの目指すBPRのあり方です」と強調する。

そして、このBPRを実現する「マルチアサインツール」の構想を描いた猪俣氏が、共同開発に向けて声をかけたのが、以前から面識のあったNTTデータである。

「この手のシステムはスピード感が重要で、1カ月程度で形にしたいという無茶な打診だったにもかかわらず、NTTデータさんは『ぜひやらせてください』と二つ返事で引き受けてくださいました。実際、1週間後には基本仕様が届き、市販ソフトも組み合わせながら低コストでアジャイル開発を実践するという提案内容に感銘を受け、これならきっと画期的なシステムを実現できると直感しました」と猪俣氏は語る。

図:マルチアサインツール概要

図:マルチアサイン地図画面

導入の流れ

2週間単位のプロトタイピングを繰り返し1カ月半の短期間でシステムを実現

2015年4月にキックオフしたマルチアサインツールのアジャイル開発は、自発的に手を挙げた3つのオンサイト拠点のメンバーも加え、2週間単位のプロトタイピングを繰り返して実施された。現場対応にあたっている技術者の意見を反映しながらブラッシュアップを図り、約1カ月半というタイトなスケジュールで初期バージョンを完成した。そして同年9月までに、関西支店配下の全拠点への展開を完了し、本番運用を開始した。

「現場の優れたアイデアやニーズをダイレクトに吸収できるのがアジャイル開発のメリットです。ただ現場にとっては、目の前の課題解決が最優先で、ともすれば近視眼的な対応に陥りがちです。そうした中でNTTデータさんは、『業務をどう変えるのか』というBPRの本来の目的を常に念頭におき、現場側と経営側のバランスのとれた開発を一貫してリードしてくれました。こうしたNTTデータさんのマネジメント力こそが、今回の最大の成功要因と言えそうです」と猪俣氏は評価する。

導入効果と今後の展望

西日本全域への展開とともに将来予測などの機能拡充を目指す

マルチアサインツールはさまざまな案件および技術者の現在位置をマップ画面上に一元的に表示することで、統制担当者によるリアルタイムかつ直感的な手配を実現した。発生した案件の近くにいる技術者の位置や状況のほか、各自のスキルや装備に至るまで、調整判断に必要なすべての情報がマルチアサインツールのダッシュボードに集約されているのである。細かいところでは経験の浅い技術者に初心者マークを表示するなど、さまざまな情報がひと目で見分けられる工夫も施されている。

この結果、「マルチアサインツールの導入エリアでは手配効率が10%向上しました。」(猪俣氏)

今後に向けて、マルチアサインツールをコアとしたさらなるICTの活用も大きなテーマである。「AI(人工知能)や機械学習などの技術も積極的に導入し、マルチアサインツールに大量に蓄積されていくサポート履歴情報や周辺情報のビッグデータ分析を行い、将来予測に基づいた最適な手配のレコメンデーションや技術者の戦略的な育成などに生かしていきたいと考えています」と猪俣氏は語る。また、多様な案件の現場で作業にあたっている技術者に対しても「音声認識やウェアラブルの技術を使ったハンズフリーの支援策も整えていきたい」という意向を示す。

マルチアサインツールの構築を機に、同社におけるBPRの取り組みは大きな弾みをつけ、ますます加速していく勢いにある。

お客様プロフィール

お客様名

株式会社NTTフィールドテクノ

所在地

大阪府大阪市中央区平野町2-3-7 アーバンエース北浜ビル

設立

1999年4月1日

事業概要

西日本電信電話株式会社(NTT西日本)100%出資の企業のミッションとして地域社会の快適な通信環境を実現するため、公共性の高い通信設備の計画から構築・開通・点検・メンテナンスを実施。災害時にも速やかに故障設備の復旧作業にあたり、通信インフラを支えている。また、自宅設備に関する業務として、顧客の自宅やオフィスなどに技術者が訪問し、通信回線や、ICT情報機器(NTTの情報端末機器、他社商品)などの問題・課題の解決をワンストップで対応している。