第一生命保険株式会社様

保険×テクノロジーの「InsTech」で保険ビジネスにイノベーションを!
パブリッククラウドを活用した健康増進アプリ「健康第一」を開発

国内大手保険会社、第一生命保険株式会社(以下、第一生命)は2017年3月21日、パートナー企業とのコラボレーションにより、スマホ向け健康増進アプリ「健康第一」を提供開始すると発表した。スマホで撮影した写真から、将来の姿をシミュレーションする「FaceAI機能」、スマホアプリや一部ウェアラブル端末と同期して歩数取得する「歩数・BMI記録機能」、歩数実績に応じて抽選に参加し、クーポン獲得可能な「抽選・クーポン交換機能」を第一弾として、「健やかに生きる。幸せをつくる」というサービスコンセプトに基づき、サービスが展開されていく予定だ。同サービスは保険契約者以外にも広く一般に無料で提供されるため、それを支えるIT基盤には利用者の増加に柔軟に対応できる拡張性と、サービス利用者の個人情報を扱うためのセキュリティ性と拡張性の高さが必須となり、さらに新たなサービスをより機動的に展開するため短期間でのシステム構築が求められた。

お客様の課題

  • 迅速なサービス開発・展開を実現できるICT基盤の短期での開発
  • 一般ユーザー向けに広く提供するサービスの顧客管理体制を確立する必要
  • 今後のサービスイノベーションにつながる情報やアイデアを社外から獲得し続ける構造の確立が必要

解決策

  • Microsoft Azureの活用および金融業界の特性を踏まえた開発により、約4ヶ月で構築完了
  • 個人情報の管理に必要なセキュリティを確保しながら、サービス拡張に柔軟に対応できる顧客管理システムを構築
  • NTTデータ主催のオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」でのアイデア募集および新規パートナーの獲得

ケーススタディ

開発の背景

社会的課題の解決につながる「健康増進」を最新テクノロジーで推進!

第一生命はこれまで、国立の研究機関と連携した医療情報網の構築や、健康・医療・育児・介護に関する相談・情報提供を行う「メディカルサポートサービス」の設置、自治体と連携したスポーツイベントの支援を通して、自社の顧客のみならず、地域の健康増進支援に取り組んできた。健康増進による健康年齢の延伸は、国民のQOLを高める要素であると同時に、高齢化による医療費の増加を防ぎ、財政難が続く社会保障制度の負荷軽減にも寄与する。

今回の「健康第一」はこうした流れを汲むものであると同時に、同社が掲げる戦略課題"InsTech"を具現化するものでもある。InsTechとは、保険ビジネス(Insurance)とテクノロジー(Technology)の両面から生命保険事業独自のイノベーションを創出する取り組みだ。外部の開発力やアイデアを積極的に取り入れながら業界全体をリードしていくことを目的として2015年から推進されており、「健康第一」の企画はこの中で生まれた。

スマートフォンという身近なデバイスを通じて、広く一般に日常的な運動を促すだけでなく、運動量に応じてクーポンなどを提供するサービスも展開予定で、「何かがあった時のための備え」という、従来の保険業のイメージを大きく変えるものとなっている。

同社補佐役の岩井 泰雅氏は「サービス内容を固めるのに合わせ、それを支える拡張性・柔軟性を持った基盤として、当社では初めてパブリッククラウドを利用することに決めました」と説明。サービス開発・提供のスピードと、今後の展開に柔軟に対応させることを考えての決定だったという。

第一生命保険株式会社
補佐役
岩井 泰雅氏

選定ポイント

豊富な実績と提案力への信頼とともにビジネスチャンス創出のパートナーとして

第一生命ではサービス開始時期を2017年春に設定していたため、短期開発の実現が本プロジェクトの重要なポイントのひとつとなった。そのため複数のパートナー企業と連携し、各社が得意分野に専念できる開発体制を採ることを決定。2016年8月より開発プロジェクトがスタートし、クラウド基盤構築および顧客管理システム開発をNTTデータが担当することになった。

NTTデータを基盤・顧客管理システムの担当に選定した理由として、岩井氏は円滑な開発とサービス提供の要となるクラウド基盤構築での開発力、そしてセキュリティへの知見が深いことを挙げた。個人情報、資産情報を扱う金融機関に求められるセキュリティレベルは高く、国の監査にも対応する必要がある。その点、NTTデータは金融業界での経験が豊富で、肝を押さえた具体的なセキュリティ対策を提案したことが決め手となった。

さらにNTTデータが過去十数年にわたって第一生命のネットワーク構築を手がけ、最近ではアプリケーション開発でも実績を上げているという信頼感があった。

「今回発注した企業の中で唯一、当社のノウハウを知っているのがNTTデータでしたから、他社をリードして欲しいという期待がありました」(岩井氏)

もうひとつNTTデータが持つ大きな優位性として、岩井氏は「豊洲の港から」の存在を挙げた。「豊洲の港から」はNTTデータが主催するオープンイノベーションフォーラムで、毎回テーマに合わせた先進的なベンチャー企業や顧客を招き、自社社員を含めた多様なメンバーで新たなビジネス創発に向けたディスカッションとコミュニティーの創造を行うものだ。また、年に2回ビジネスコンテストを開催しており、2016年下期は世界10都市でベンチャー企業の先進的なビジネスアイデアを募集、優秀なものはNTTデータとの協業を目指した事業化サポートを行っている。

「イノベーション創出に積極的なNTTデータとパートナーになることのメリットに加え、このビジネスコンテストに参加することで『健康第一』を拡張するにあたってのヒントを得たり、有力なパートナーを見つけるチャンスが広がると考えました」(岩井氏)

開発の流れ

Azureによる短期開発が進む中 新規パートナーの獲得にも成功

プロジェクト参加各社がそれぞれの開発を進めていく上で基盤となるクラウドサービスには、パブリッククラウドMicrosoft Azure(以下、Azure)を採用した。そこには、Azureが金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準に対応し、クラウドセキュリティ推進協議会のCSマークを取得していること。また、セキュリティ面でのメリットはもちろん、Azureを活用すればオンプレミスでの構築に比べ初期投資を抑えられ、短期間のサービス開発、継続的なサービス拡大にも対応できることなど、今回のプロジェクトに最適なサービスを評価したNTTデータの提案があった。NTTデータはAzureに用意されているサービスを最大限に利用することで、約4ヶ月というごく短期間での開発を成功させた。

開発が進む中、「豊洲の港から」でも成果があった。2016年9月のフォーラムに参加した岩井氏は、スキンケア製品のリアルな使用感を写真やビデオでシミュレートするサービスなどを手がけるテックパワー社が紹介した、エイジングシミュレーション機能に着目した。

「若年層の保険離れが指摘される中、スマートフォンから手軽に試せてインパクトのあるエイジングシミュレーションが、健康増進ひいては保険への関心を高める入り口になるかもしれないと思いました」(岩井氏)

岩井氏はすぐにテックパワー社をプロジェクトに招き入れ、「健康第一」の目玉のひとつとして「エイジングシミュレーション」がラインアップされることとなった。

今回の開発プロジェクトは、エイジングシミュレーションや、歩数に応じたクーポン提供等の新しいサービスを短期間で提供し続けるために、IT/健康にかかわる幅広いノウハウやソリューションをさまざまな企業から結集させる「エコシステム」の概念に基づくものとなった。NTTデータは複数のパートナーと協力して、各社が開発する「健康第一」の機能が柔軟に連携しやすく、かつ今後予定される利用者属性に応じたサービス、コンテンツの提供などといった拡張が容易となるIT基盤を開発した。

今後の展望

「健康第一」のサービス拡張による健康増進とInsTech推進によるイノベーション創出を目指す

2017年3月21日にサービスがスタートした「健康第一」だが、翌日の3月22日には「豊洲の港から」presents InsTechオープンイノベーションビジネスコンテストを開催。同コンテスト内で優れた企画があれば、近い将来「健康第一」のサービスとして加えられることになるという。

「『健康第一』が国民の皆様の健康増進、健康寿命延伸のきっかけとなれば、当社としても嬉しく思います。NTTデータをはじめとするパートナー各社とは、今後も保険、健康を切り口としたイノベーション創出に向け、積極的に取り組んでいきます」(岩井氏)

また岩井氏は、今回初めて取り組んだクラウド利用について、「健康第一」での運用を通してメリット・デメリットを吟味した上で、将来的には既存ビジネスでの活用の検討も示唆した。同社でのクラウド化が本格化してデータ活用の幅が広がれば、InsTechは加速度を増し、さらに大きなイノベーションが生まれることになるかもしれない。

お客様プロフィール

お客様名

第一生命保険株式会社

所在地

東京都千代田区有楽町1-13-1(日比谷本社)

設立

1902年9月15日

事業概要

「お客さま第一主義」を経営理念に、生命保険の提供を中心とした事業を展開。2016年に持株会社体制へ移行し、第一生命ホールディングス株式会社のグループ企業となった。生命保険の他、年金保険、損害保険、がん保険、投資信託など、グループ全体で幅広い金融商品を取り扱う他、健康増進や、美術・音楽・スポーツ振興、環境保全といった社会貢献活動にも注力している。