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2015年1月8日技術ブログ

アルゴリズムによる高速・高頻度の取引「High Frequency Trade(HFT)」

近年の取引市場では、ミリ秒単位で高頻度の売買注文を繰り返すHigh Frequency Trade(HFT)と呼ばれる取引が主流になっています。

HFTとは

アルゴリズムによる高速・高頻度の取引は、HFT(High Frequency Trade、高頻度取引)と呼ばれます。ただし、HFTについての厳密な定義は、現時点ではありません。IOSCO(証券監督者国際機構)のレポートでは、「HFTの定義は困難で、単一の合意された定義はない」としています参考1。同レポートではHFTの取引参加者に見られる特徴を列挙しており、例えば以下のような特徴が挙げられています。

  • レイテンシーに敏感である。高速なサービスを活用し、より高速であることを重視する。
  • 取引の回転が速い。ポジションの保有時間は数秒か、あるいは秒以下である。また大量に注文して大量にキャンセルする。
  • 高度なツールを使って、取引市場の定量分析や、複数の異なる取引戦略の執行を行う。
  • 自己勘定取引が主体である。

近年、世界の主要な取引所ではHFTが取引の主流になっており、当社の先端金融工学センターでもHFTを研究テーマの1つとしています。

取引環境の高速化

取引参加者による高速化・高頻度化のニーズが、取引所のシステムの高速化を進め、またそれがさらに取引参加者の高速化を促進しています。東京証券取引所でも、2010年に新しい取引システムarrowheadをリリースしました。arrowhead稼動前は注文に対する平均応答時間は平均2~3秒でしたが、稼動後は平均2ミリ秒にまで短縮されています。arrowheadはその後も性能が改善されて、2012年には平均1ミリ秒の応答性能を達成しています。2015年にもリニューアルが予定されており、そこでは平均0.5ミリ秒が実現される予定です参考2

HFTで要求される1ミリ秒という時間は、光速で往復できる距離に換算すると、片道約150kmです。これは東京から静岡市辺りまでの距離に相当します。この水準になると、サーバーやネットワークの機器性能だけでなく、取引所までの地理的な距離をも意識しなければなりません。例えばサーバーを大阪に置いた時点で、東京まで片道約400kmあるため、応答時間1ミリ秒の達成は物理的に不可能になります。

【図】

図1:東京から150km圏内
東京-大阪間の400kmは光速でも往復約2.7ミリ秒かかる

地理的なレイテンシーを最小化するニーズに応えるため、多くの取引所では、取引所のデータセンター内に取引参加者のサーバーを設置する「コロケーション」のサービスを提供しています(図2)参考3

【図】

図2:コロケーション
アルゴリズム・トレードAPを実装したサーバーを取引所のシステム内に設置できるサービス

HFTの影響についての議論

HFTの増加が取引市場にどのような影響を与えているのか、さまざまな調査研究がなされていますが、いまだ統一的な見解は定まっていません。市場に流動性を提供しているという指摘がある一方で、2010年に米国で発生したフラッシュ・クラッシュのように、流動性の質を低下させ、市場を不安定にしている可能性も指摘されています。

HFTによる大量注文・大量キャンセルが原因とみられるシステム障害も発生していることから、HFTを規制する論議が高まっています。EUでは、2014年5月のMiFID II(第2次金融商品市場指令)の改定で、HFTの取引参加者に対して、監査当局によるアルゴリズムの検査・承認義務などが盛り込まれ、話題となりました参考4。今後の各国の動向が注視されます。

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