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2015年1月15日技術ブログ

Startups vs Established?!~要求定義の特徴比較~

米国のシリコンバレーで1年間に起業される新興企業(Startups)の数は4,000を超えます。そのようなStartupsでは、自社の提供するサービスやプロダクトの要求定義はどのように行われているのでしょうか?

本コラムでは、昨年(2014年8月)にスウェーデンで開催された要求工学国際会議(International Requirements Engineering Conference)参考1で、米国カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)のアンソニー・ワッサーマン教授(Prof. Anthony I. Wasserman)参考2が発表された基調講演の内容をご紹介します。ワッサーマン教授は、オープンソースソフトウェアの推進を目的とする組織であるOSI(Open Source Initiative)参考3のDirectorも務められています。

Startupsの要求定義

ワッサーマン教授は、Startupsが行う要求定義とは「ショッピングリストを作成することである」と述べていました。私たちがお店で夕飯の材料を買う場合に、今晩作ろうと思っている夕飯のメニューに応じて買うもの(食材)をメモする(ショッピングリストを作成する)ことはあります。しかし、実際にお店に行って、例えば特売品を見つければそれに応じて夕飯のメニューを見直すこともあります。結果として、ショッピングリストの内容と異なる食材を買うことは誰しも経験したことがあると思います。ワッサーマン教授は、Startupsの扱う要求はまさにこのショッピングリストの食材であり、常に変化するものであると強調していました。

Startups vs Established Companies

ワッサーマン教授は、Startupsが行う要求定義の幾つかの特徴を、Startupsと対極をなす大企業(Established Companies)との比較を通じて提示されていました(下表を参照)。

特徴新興企業(Startups)大企業(Established Companies)
要求定義の目的
  • 顧客が必要、もしくは要求している何か(Pain Points)が分かること
  • 顧客の要求を正確、且つ網羅的に獲得し、仕様化すること
要求定義のアプローチ
  • 全ての顧客に要求を聞く必要はない
  • 全てのステークホルダを集めて、それぞれから要求を聞くべき
要求定義の成果物
  • 長い文書は書かない
  • システム機能の大雑把な推測(Rough Guess)で十分
  • 要求定義の内容を省略せずに執筆(文書化)
  • 全てのステークホルダが明確に理解するために非あいまいに記述
成果物の位置付け
  • プロトタイプ/試行サービスを作るための入力情報(変更が前提)
  • 後工程(設計・実装)に進むかを判断するための情報
成果物の評価
  • 少人数の投資家が短い時間(例:5分)で内容(投資可否)を判断
  • 複数の専門家・有識者が時間をかけて内容を評価

表:新興企業と大企業における要求定義の特徴の比較

  • ワッサーマン教授の講演内容に基づき筆者が作成

Established Companiesが、もし新規に取り組むビジネスの要求定義をする際には、以下のような指摘が社内からされるとも述べています。

  • ビジネスを遂行するための予算はあるのか?
  • 自社の既存の製品・サービスはどうするのか?
  • 社内の販売やマーケティング組織と連携するのか?
  • 組織の上の人間は何と言っているのか?
  • 自社内に競合製品・サービスはあるのか?

発表の中でワッサーマン教授は、Startupsの創業者たちはこのような指摘をされず、早いサイクルでビジネスの立ち上げ・試行ができるため、Established Companiesでは実現が難しいイノベーションをStartupsは起こすことができると話されていました。

もちろんワッサーマン教授は、企業形態を意図的に2極化して議論されています。多くの企業では、StartupsやEstablished Companiesの特徴を持つプロジェクトが混在しているのが現実です。画一的な方法論やツールを採用するのではなく、プロジェクトの特徴を踏まえて要求定義を進めること、それが重要であると考えます。

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