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2015年4月9日技術ブログ

ITを活用して新たな価値を創出するリーンビジネスモデルデザイン方法

ITと情報システムは企業経営において重要な資源の一つです。近年、EC(Electronic Commerce)、IoT(Internet of Things)を始めとする新しいITを活用した情報システムで新たな価値を創出するビジネスモデル参考1の開発に多くの企業が取り組み、実際に数多くのビジネスが生み出されています。

ビジネスモデルを俯瞰的に視覚化し、アイデア発想のフレームワークとなる「ビジネスモデルキャンバス」

新たな価値を創出するビジネスを包括的にデザインする方法として、リーンスタートアップやビジネスモデルジェネレーションが活用されています。ビジネスモデルジェネレーションは、価値の創出とそれを顧客へ提供できるビジネスモデルを俯瞰的にデザインする方法です参考2、3。その技法の一つに「ビジネスモデルキャンバス」があります。図1に示すような、顧客、価値提案、インフラ、資金の4領域をカバーする9つのブロックから構成され、ビジネスモデルを俯瞰的に視覚化できるため、ビジネスモデルのデザインに関係するステークホルダー間でアイデア発想や課題の共有などができます。

【図】

図1:ビジネスモデルキャンバス(BMC)

時間や労力、リソースの無駄をなくしてビジネスを開発するリーンスタートアップ

リーンスタートアップは、少コストと短サイクルで構築と検証を繰り返しながら、時間や労力、リソースの無駄をなくしながら事業を段階的に開発することができる方法論です参考4。図2に示すように、構築(Build)、計測(Measure)、学習(Learn)のフィードバックループを通して、仮説検証のための必要最小のプロダクトやサービスであるMVP(Minimum Viable Product)を作り、それにより顧客からのフィードバックを得て、プロダクトやサービスの改善を繰り返す方法です。

【図】

図2:リーンスタートアップのプロセス

探索型でビジネスモデルをデザインする「リーンビジネスモデルデザイン方法」

変化の激しいビジネス環境においては、将来のビジネス環境の予測は困難で、多くの不確定要因を抱えています。そのため、ビジネスモデルのデザインでは試行錯誤を繰り返し学習しながらデザインすることが避けられません。最初からビジネスゴールを達成するようなビジネスモデルをデザインするのではなく、探索的な試行錯誤を短いサイクルで繰り返して、ビジネス環境に適合し、ビジネスゴールの達成に近づくようにビジネスモデルをデザインして評価、学習しながら、それを詳細化するアプローチをとる「リーンビジネスモデルデザイン」が有効です。

リーンビジネスモデルデザインは、図3に示すように、初期ビジネスモデルデザインと詳細ビジネスモデルデザインの2層構造のデザインプロセスから構成されます。初期ビジネスモデルデザインは、活用候補のITと、そのITを活用して創出できるビジネス価値の抽出、そのビジネス価値を創出するビジネスモデル仮説のデザイン、評価、学習を探索型で繰り返しながらビジネスモデル仮説の精度を高めるプロセスです。詳細ビジネスモデルデザインは、有用で実現可能なビジネスモデル仮説を構築に向けて段階的に詳細化するプロセスです。

リーンビジネスモデルデザインは、ビジネスモデルの実現で必要不可欠となるビジネスモデルのIT、情報システムのビューである情報システムモデル、IT人材と組織、ITの業務プロセスから構成されるシステムアーキテクチャも同時にデザインできます。

【図】

図3:リーンビジネスモデルデザインのプロセス

ITの価値の可能性を分析する変換フレームワーク"IT価値変換マトリクス"

技術を活かした商品開発のアイデアを発想する技法である「SN変換法」と、アイデア発想の枠組みであるシーズニーズマトリクス参考5、6を拡張した「IT価値変換マトリクス」を活用すれば、IT×ビジネスモデルがどのような価値をもたらすか分析することができます。具体的には、ITによって実現される機能の構造分析からシステム価値を、システム価値の構造分析からビジネス価値を抽出します。図4のようにIT価値変換マトリクスでビジネス価値、システム価値を分析し、図5、6のようにリーンビジネスモデルデザインでビジネスモデルをデザインします。

【図】

図4:IT価値変換マトリクス

【図】

図5:デザインしたビジネスモデルの例(ビジネスのビュー)

【図】

図6:デザインしたビジネスモデルの例(IT・情報システムのビュー)

変化に即したビジネスモデルのデザインで価値を創造できるIT部門へ

リーンビジネスモデルデザイン方法は、急速に発展するITを活用して、ビジネスを取り巻く環境の変化に即した新たな価値を提供するビジネスモデルのデザインフレームワークとプロセスを提供しています。また、ITの活用で得られる価値を分析し、その価値主導で新たな価値を創出できるビジネスモデル仮説をデザインするため、無駄なリソース投下の排除や既存経営資源の有効活用にも効果があります。ITおよび情報システムをマネジメントしているIT部門にとって、リーンビジネスモデルデザイン方法はビジネスの持続的な成長やビジネスイノベーションに貢献する切り札になると考えています。

参考文献

  • 参考1ビジネスモデルとは、『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』(参考2)において、「どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したもの」と定義されています。また、ジョンソンらは、ビジネスモデルは、顧客価値提案、利益方程式、主要経営資源、主要業務プロセスの4要素から構成されると定義している。
    • マーク・W・ジョンソン、クレイトン・M・クリステンセン、ヘニング・カガーマン『ビジネスモデル・イノベーションの原則』ハーバード・ビジネス・レビュー 2009年4月号.
  • 参考2アレックス・オスターワルダー(著)、イヴ・ピニュール(著)、小山 龍介(翻訳)『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』翔泳社、2012年
  • 参考3ITC大阪城ビジネスモデル・ジェネレーション WG「ビジネスモデル・ジェネレーション研究(テーマ研究調査報告書)」2014年(PDF:44ページ, 734KB)(外部リンク)
  • 参考4エリック・リース(著)、伊藤 穣一(解説)、井口 耕二(翻訳)『リーン・スタートアップ』日経BP社、2012年
  • 参考5近藤 修司、巽 龍雄、西岡 久継「日本的MOT(技術経営)と日本企業に合致した価値創造型ビジネスモデル構築のために」『経営教育研究 Vol. 8』日本マネジメント学会、2005年3月、pp. 25-57
  • 参考6鈴木 剛一郎『新製品・新事業開発の進め方―顧客価値創造の体系的アプローチ』同文舘出版、2009年
  • Masahiro Ide, Tomoko Kishida, Mikio Aoyama, Yasuhiro Kikushima, An IT-Driven Business Requirements Engineering Methodology, Proc. of the First Asia-Pacific Requirements Engineering Symposium (APRES 2014), CCIS (Communications in Computer and Information Science), Vol. 432, Springer, Apr. 2014, pp. 60-76.
  • Masahiro Ide, Tomoko Kishida, Mikio Aoyama, Yasuhiro Kikushima, An IT-Driven Business Model Design Methodology and Its Evaluation, Proc. of the 1st Int'l Workshop on the Interrelations between Requirements Engineering & Business Process Management (REBPM 2014), IEEE, Aug. 2014, pp. 1-10.
  • Masahiro Ide, Tomoko Kishida, Mikio Aoyama, Yasuhiro Kikushima, A Goal-Oriented Design Methodology of IT-Driven Business Architecture, Proc. of 21st Asia-Pacific Software Engineering Conference (APSEC 2014), IEEE Conference Publishing Services, Dec. 2014, pp. 11-14.
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