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2015年10月30日技術ブログ

電力・ガス戦国時代において求められるETRMの概要

電力・ガスシステム改革に伴い、今後エネルギートレーディングおよびリスク管理高度化の必要性が高まることが予想されます。今回は、改革の概要とエネルギー自由化先進国からもたらされた「ETRM(Energy Trading and Risk Management)」をご紹介します。

電力・ガスシステム改革

資源エネルギー庁は、エネルギーシステムの一体改革として電力・ガスシステムの改革を推進しており、電力分野では2020年までに、ガス分野では2022年までに改革が完了する予定となっています。

【図】

図1:電力・ガスシステム改革スケジュール(出典:資源エネルギー庁)参考1

これにより、電気・ガスを創る、送る、売る、の各バリューチェーンにおいて以下のような環境変化がもたらされます。

【図】

図2:改革に伴う環境変化(出典:資源エネルギー庁) 参考2

消費者にとってはコストの安い電力会社を選べたり、望む種類の発電源による電力を購入できたりと選択肢が広がる一方で、既存の電力会社やガス会社にとっては、域外ガス会社・電力会社および他業種などからの新規参入による競争激化や、リスクフリーであった総括原価方式の撤廃等による収益悪化などが懸念されます。

また、現在日本ではJEPX参考3、JOE参考4という電力・ガスの取引市場が存在しますが、ガスに先んじて改革が先行する電力分野においては、市場の活性化を目的として新規市場の創設も予定されています。例えば、TOCOM参考5が電力先物市場の新設を検討しているほか、JEPXでは従来市場に加えて一時間前市場の新設が決定しており、さらにリアルタイム市場の新設を検討しています。

電力・ガスシステム改革により、電力・ガス会社は燃料の価格変動に対するリスクだけでなく市場リスクにさらされる機会が増大し、ポートフォリオにおけるポジションの把握と分析、適切なリスクヘッジの必要性が増すと想定されます。顧客の流動性が増す中で、いかに既存顧客の脱落を防ぎ、新規顧客を開拓し、リスクを回避しながら収益を確保していくかが重要になってくるでしょう。また、新規参入する会社においても、シェア拡大に向けて同様のリスク・リターン戦略が必要となります。

ETRMとは

ETRMとはEnergy Trading and Risk Managementの略であり、電力・燃料(石炭、石油、ガス等)に係る各種取引とリスク管理を表す言葉です。欧米ではさまざまなETRMシステムが存在し、一般化されたETRMパッケージ製品の普及も進んでいます。ETRMシステムは概ね以下のような機能を兼ね備えています。

  • 取引および取引相手、契約、クレジットの管理(ポートフォリオ管理)
  • ポジションの評価、リスク計測、シミュレーション
  • リアルタイムデータアクセス(価格指標等)
  • 収益管理
  • 決済またはバックオフィス連携(決済データ、AP、AR)

つまり、ETRMシステムはエネルギートレーディングに係る各種情報を管理し、分析し、評価することで、バリューチェーンの各ステップにおけるリスクを見える化し、収益最大化のための戦略的意思決定に係るタイムリーな情報を提供する存在であると言えます。

エネルギー自由化先進国では、現物取引のみならず先物・デリバティブ取引等が州や国境を越えて市場にて活発に取り引きされており、エネルギー企業だけでなくさまざまな企業が市場参加しています。このような環境の中で、各企業においては、トレーディング部門またはトレーディング子会社などを設置し、ETRMシステムの各種機能を通じてエネルギートレーディングを行っています。

【図】

図3:トレーディング部門の位置付けの一例
(出典:電力中央研究所 研究報告書 「欧州のエネルギー事業者におけるトレーディング部門の役割」)参考6

日本においては、自由化直後に市場流動性が急激に上がり、市場参加者がすぐに大きなリスクに直面するという場面は遠い将来の事に思えるかもしれません。しかし、欧米諸国が何十年もかけて実行してきた電力・ガスシステム改革を、日本ではあと7年で完了させようとしています。この急激な環境変化に対応すべく、既存のエネルギー企業と新規参入企業は、いずれも体制づくりやETRMシステム整備を早急に行っていくべきと考えます。

尚、東京電力では社内カンパニー制度参考7が既に導入されており、2016年4月1日にはホールディングカンパニー制へ移行する予定です。また、燃料輸送事業および燃料トレーディング事業については、中部電力と組んで2015年4月に設立した株式会社JERAへの承継が行われ、バリューチェーン全体の一括マネジメントにより、積極的に利益の追求を図ることを明示的に示しています。電力・ガスシステム改革対応はまさに「待ったなし!」の状況なのです。NTTデータグループでは、改革の進むエネルギー市場に着目し、ETRM分野のシステム市場開拓に乗り出しています。

参考文献

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