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2017年3月31日技術ブログ

ICTが支える青森とイタリアの共創

ともに国の北方に位置する青森県とイタリア ピエモンテ州───。 ICTの力を借りながら、2つの地方の生産者同士が想いをつなげ、 約1万キロメートルの距離を越えた共創の取り組みを始動させています。

地方創生の新しいカタチ

地方と地方の共創をライブで体感

2017年2月13日、業種業態を超えた交流・活動拠点『3×3 Lab Future(さんさんラボ フューチャー)』(東京都大手町/運営:エコッツェリア協会)において、日本の地方と海外の地方との“食の共創”をライブで見て、聞いて、味わえるという、きわめてユニークなイベントが催されました。

『Local to Local 青森×イタリアがつながる新しい地方創生のカタチ』(東京会場)のオープニング。青森・イタリア・東京の各会場がインターネットで相互に結ばれ、それぞれの様子が3元中継スクリーンに投影された

『Local to Local 青森×イタリアがつながる新しい地方創生のカタチ』(東京会場)のオープニング。青森・イタリア・東京の各会場がインターネットで相互に結ばれ、それぞれの様子が3元中継スクリーンに投影された

イベント名は、『Local to Local 青森×イタリアがつながる新しい地方創生のカタチ』──。主催は、青森県の特定非営利活動法人プラットフォームあおもりで、同法人とともに青森県の地方創生に取り組むNTTデータとGOB Incubation Partners 株式会社が共催しました。

地方連携の意義

プラットフォームあおもりは、青森県における雇用の創出・安定を目的に、中小企業の経営支援や就業者のキャリア支援、さらには、人材育成のためのナレッジ共有といった活動を展開するNPO法人です。現在、トリノを州都するイタリア ピエモンテ州(※1)と新しい価値を共創する「Local to Local」の取り組みを進めています。

その一環として同法人が始動させているのが、日本酒やにんにく、妙丹柿(みょうたんがき)といった青森県の特産品と、ワイン、チョコレート、パスタ、チーズ、ソーセージといったイタリアの特産品を組み合わせ、新しい商品を開発する試みです。

その背後にある狙いについて、プラットフォームあおもりの理事長、米田大吉さんはこう話します。

「青森県単独でいくら東京に商品を売り込もうと頑張っても、なかなか東京の大手バイヤーの壁を乗り越えられません。流通チャネルを切り開くのはもっと大変です。そこで、青森県とトリノ(ピエモンテ州)を直接結び、共同で新しい商品を作っていこうとの発想が生まれました。こうした共創によって、それぞれの地域で同じ商品を作り、それぞれが販路を拡大させるという新しいモノの流れが生まれる可能性があります。またそうなれば、県内の中小企業の支援に大きく役立ちます。今後もピエモンテ州との交流を深め、青森県のさまざまな生産者に我々の取り組みに参加していただき、共創の輪を広げていきたいと考えています」

一方ピエモンテ州では、イタリアを代表する大手車製造企業フィアットが州都トリノに本拠を構えるなど、工業もさかんで、イタリアの地方の中では比較的裕福な地域とされています。ただし、対日輸出という点では、それほど芳しい実績は上げていません。

そんななか、ピエモンテ州で中小事業者の支援を行っているカンテーリ・イバーノさんが同州の特産品をアピールするため、2016年3月18日に青森県で講演を行い、プラットフォームあおもりの米田さんと出会いました。

これにより、海外での販路を築きたい青森県と、対日輸出を拡大させたいピエモンテ州との思惑が一致。両者の構想は、単に互いの商品を自国で売るのではなく、各者の特色を融合させた新商品を作り上げ、その拡販を図るという話へと発展していきました。

そして、2016年末には、プラットフォームあおもりが県内のいくつかの生産者に声をかけ、トリノに出向き、県の特産品を訴求するという取り組みも実践されています。

イベント会場で、「Local to Local」の意義を訴えるプラットフォームあおもり理事長、米田大吉さん

イベント会場で、「Local to Local」の意義を訴えるプラットフォームあおもり理事長、米田大吉さん

今回のイベントは、そうした「Local to Local」の共創の可能性・プロセスを、青森県とイタリア、東京との間でリアルタイムに共有する催しとして企画されたものです。イベントのスキームとして、NTTデータが地方創生の一手として推進している「空間共有」(※2)の手法を採用。青森県八戸市のキッチンスペースと、トリノのリストランテ、そして東京のイベント会場(3×3 Lab Future)をICT(インターネット)で相互に結び、各会場の参加者が他会場の様子を動画と音声を通じて双方向のライブコミュニケーションできるような環境が整えられました。そのうえで有名シェフが各会場で青森とピエモンテ州の特産品を使った料理を作り、各会場の参加者に供していくという趣向で全体が構成されたのです。

プラットフォームあおもりの「Local to Local」のコンセプトに沿い、東京のイベント会場には、青森県とイタリア ピエモンテ州の食材と、それらを用いた料理が用意された

プラットフォームあおもりの「Local to Local」のコンセプトに沿い、東京のイベント会場には、青森県とイタリア ピエモンテ州の食材と、それらを用いた料理が用意された

※1ピエモンテ州

イタリアの北西部に位置する州。面積は2万5,399キロ平方メートルで、青森県(9,644.55キロ平方メートル)の約2.5倍、人口は青森県(2017年2月1日時点での同県庁推計値:129万人)の約3.4倍に当たる約443万6,800人(2014年時点)。スローフード発祥の地として知られ、豊富な農業資源に恵まれている(参考:イタリア観光局http://visitaly.jp/travel/piemonte)。

※2空間共有

遠隔地にいる人々が、双方の場の雰囲気をIT技術を使って共有し、コミュニケーションを取ること。NTTデータでは、これまでに宮崎県小林市などとも空間共有を使用したイベントを開催している。使用技術はパイオニアVC株式会社の「xSync Prime Collaboration」。

同じ時間、同じ体験の共有:『空間共有』

青森とイタリアの面々が集結

イベントの青森会場には、プラットフォームあおもりのプロジェクトに参加している生産者たちが顔をそろえました。

具体的には、黒にんにく『田子の黒』の製造・販売を手掛ける株式会社TAKKO商事や妙丹柿を使ったドライフルーツを製造しているなんぶ農援株式会社(ともに詳細を記事の最後に掲載)をはじめ、青森県で高級イタリア米の栽培に乗り出した山田ふぁーむ、創業230年強の歴史を有する八戸酒造株式会社、出汁の製造を手掛ける有限会社静岡屋さらには、創業158年の有限会社上ボシ武内製飴所などから代表者が集まったのです。

東京・イタリア会場の参加者に向けて自己紹介する青森会場の生産者の方々

東京・イタリア会場の参加者に向けて自己紹介する青森会場の生産者の方々

一方のイタリア会場にはイバーノさんやトリノ商工会議所の面々が参集し、青森・東京の会場とインターネットを通じて結ばれました。さらに、数々の地域の地方創生プロジェクトにかかわり、空間共有のイベントを仕掛けてきたNTTデータ イノベーション推進部オープンイノベーション事業創発室部長の吉田淳一がファシリテーターとして参加。青森・東京のファシリテーターと連携を取りながら、イタリア側の司会進行役を務めています。

吉田は、今回のイベントのシナリオ作り、コーディネーションにも全面的にかかわっており、事前にトリノ、青森の現地に訪問し綿密な仕込みと共に、関係者との想いを一つにすること、並びに信頼関係を築くことに努め、本イベントに臨みました。

イタリア会場では、NTTデータの吉田がファシリテーターを務めた

イタリア会場では、NTTデータの吉田がファシリテーターを務めた

目前で生まれた新しい料理を味わう

そんなイベントで中心的な役割を演じたのは、イタリア、青森、東京でそれぞれ活躍する3人のシェフたちです。

うち一人は、イタリアで料理学校を運営し、同国の料理番組にも出演するシェフのSergio Maria Teutonicoさん(以下:セルジオシェフ)。もう一人は、東京で現代青森料理とワインの店・ボワヴェール『Bois Vert feat』などを運営するシェフの川口かずのりさん、残る一人は、青森県青森市でイタリア料理店『LINCE』を経営するオーナーシェフの滝沢英哲さんです。

イタリア会場で腕を振るうセルジオシェフ

イタリア会場で腕を振るうセルジオシェフ

東京会場の川口かずのりシェフ。川口さんは、滝沢・セルジオ両シェフのレシピに基づき、2人の創作料理を東京で再現した

東京会場の川口かずのりシェフ。川口さんは、滝沢・セルジオ両シェフのレシピに基づき、2人の創作料理を東京で再現した

青森会場の滝沢シェフ

青森会場の滝沢シェフ

滝沢シェフが経営する青森県青森市のイタリア料理店『LINCE』

滝沢シェフが経営する青森県青森市のイタリア料理店『LINCE』

イベントでは主として青森会場の滝沢シェフと、イタリア会場のセルジオシェフが、青森県とピエモンテ州の食材を用いた創作料理を参加者の目の前で解説しながら作ります。シェフの作る新しい料理を青森・イタリアの各会場にいる参加者たちがそれぞれ味わうというかたちで会が進行していきました。

例えば、滝沢シェフは、ピエモンテ州産チーズの酒粕づけや、酒粕と妙丹柿を用いたジェラート、青森県産のイカに米とイタリアのサルシッチャ(生ソーセージ)を詰めた「イカめし」などを披露、一方のセルジオシェフも、青森産のリンゴやなんぶ農援のドライフルーツなどを用いたアップルパイのほか、黒にんにく(『田子の黒』)と静岡屋の出汁を用いたパスタなどを作り上げ、イタリアと青森の各会場を新鮮な驚きと“味わい”で包み込みました。

東京会場では、川口シェフが滝沢・セルジオ両シェフのレシピを参考に同様の料理をいくつか作り、それを試食した来場者に、カメラの前で感想を述べてもらうという試みも行われました。

東京会場では、滝沢シェフのレシピを基に東京で再現された「イカめし」を来場者が試食

東京会場では、滝沢シェフのレシピを基に東京で再現された「イカめし」を来場者が試食

加えて、3会場の全参加者に対して、八戸酒造の日本酒とイタリアのチョコレートで作られた「ホットチョコレート」が振る舞われました。こちらも、試飲した参加者の感想を、各会場のすべての参加者がリアルタイムに共有しています。

東京会場で振る舞われたホットチョコレート。八戸酒造の日本酒とイタリアのチョコが使われている

東京会場で振る舞われたホットチョコレート。八戸酒造の日本酒とイタリアのチョコが使われている

こうした工夫を凝らした演出・趣向もあり、東京会場の来場者たちも、終始、食い入るように青森・イタリアから中継される映像に目を凝らし、2時間にわたるイベントのときは瞬く間に過ぎていきました。

終了後には、東京会場では試食・試飲会を兼ねた懇親会が催され、イベントで紹介された青森・ピエモンテ州の食材やそれを用いた料理が、全員に供されています。これにより、東京会場に集まった参加者全員が、それぞれの食材・料理の背後にある作り手の想いや物語を身近に感じながら、食を楽しむことができたはずです。仮に、その食材について過去に味わった経験があったとしても、これまでとはまた異なる、新たな気づきが得られたかもしれません。

東京会場では、イベント終了後に懇親会が催され、イベント紹介された食材・料理の多くを来場者全員が味わった

東京会場では、イベント終了後に懇親会が催され、イベント紹介された食材・料理の多くを来場者全員が味わった

空間共有がもたらした感動と気づき

映像を通じた熱意の伝搬

もう一つ、今回のイベントで印象的だったのは、青森県にいる生産者やシェフと、イタリア会場にいるシェフ・参加者が、約1万キロメートルの距離の隔たりを越えて、あたかも同じ場所で対話をしているように想いを通わせていたことです。

例えば、黒にんにくを用いたパスタ料理作りに臨んだイタリアのセルジオシェフは、TAKKO商事の『田子の黒』を、「このようなフルーティなにんにくを味わったことはない」と絶賛、その言葉を受けて、NTTデータの吉田は、自らが青森県の現地で撮影した『田子の黒』の製造現場の映像をイタリアから流し、全会場で共有しました。

NTTデータの吉田は、『田子の黒』の製造現場の映像をイタリアから流し、黒にんにくかける生産者、佐藤さんの熱意を来場者全員に伝えた(右の写真は、現地取材時に撮影した画像)

NTTデータの吉田は、『田子の黒』の製造現場の映像をイタリアから流し、黒にんにくかける生産者、佐藤さんの熱意を来場者全員に伝えた(右の写真は、現地取材時に撮影した画像)

その映像を見たセルジオさんは改めて青森会場にいるTAKKO商事会長の佐藤裕一さんにこう語りかけます。「佐藤さん、あなたの仕事は本当に素晴らしい。この黒にんにくは、香りも、味も世界最高です。今日は、佐藤さんとこうして会って話ができて本当に興奮しています。黒にんにくはイタリアの伝統的料理バーニャカウダ(※1)にも最適で、是非、日本でも試して味わっていただきたい」

(左)インターネットを通じて、セルジオさんの黒にんにくへの賛辞に応える佐藤さん(右)佐藤さんが生産した黒にんにく

(左)インターネットを通じて、セルジオさんの黒にんにくへの賛辞に応える佐藤さん(右)佐藤さんが生産した黒にんにく

この賛辞に佐藤さんは少し照れ笑いを浮かべながら、こう答えています。「私たちも日本一のにんにくを使い、丹精を込めて作った食材を世界に届けたいと考えています。今回、それをイタリアに届けることができ、喜んでもらえて本当にうれしい」

さらに、セルジオさんは、特性のケーキを作りながらそれに使用したなんぶ農援の妙丹柿のドライフルーツに言及し、その出来栄えの良さを称えました。その様子を映像で見ながら、なんぶ農援の専務取締役、岩間 正雄さんは次のような感動を口にしています。

セルジオさんのアイディアにより、なんぶ農援が開発した妙丹柿のドライフルーツがオリジナルケーキのエッセンスとして活用された

セルジオさんのアイディアにより、なんぶ農援が開発した妙丹柿のドライフルーツがオリジナルケーキのエッセンスとして活用された

「妙丹柿は南部藩主が厳しい冬の糧にと250年前に栽培を始めたものです。ただ、渋みが非常に強く、若者たちには馴染みの薄い干し柿にする以外に食す方法がなく、近年では多くが放置の状態にありました。それを我々はドライフルーツのかたちへと加工し、少しでも多くの人に妙丹柿を食べてもらおうと苦心してきました。それが今、イタリアの地で用いられ、青森県人ですら存在を忘れてかけていた妙丹柿に新たな付加価値が加えられようとしています──。それを目の当たりにできて感激しています」

空間共有で「心」を通わせる(気持ちのシェアリング・エコノミー)

このように、映像・音声を介して、青森とイタリアのように離れた場所にいる人たちの想いをつなげること───。「それこそが『気持ちを含む空間共有』(気持ちのシェアリング・エコノミー)の効果です」とNTTデータの吉田は指摘します。

空間共有の基本は、離れているもの同士が、互いの映像・音声をリアルタイムで見聞きしながらコミュニケーションを取ることです。こう言うと単なるTV会議のように聞こえるかもしれませんが、空間共有のポイントは、通信相手と自分のいるリアルな環境自体にもつながりが確保される点にあります。

「例えば、互いにレストランにいて、相手が注文したものを自分も注文することができる。そんなシチュエーションや体験、映像の共有によって、互いの距離は近づき、あたかも同じ場所にいるかのように密接なコミュニケーションを取ることが可能になるのです」と、吉田は説明します。

今回のイベントでも、青森、イタリア、東京の3カ所で、青森・イタリアの食材やそれを使った料理が試食できるという同様のシチュエーションが築かれています。しかも、青森とイタリアでは、互いの食材を用いた新しい料理が目の前で作られていき、その東京での反応をすぐさま確認できるといった体験も共有されました。

「その結果として、青森とイタリアの距離は近づき、互いを一層身近に感じたはずです。実際、青森会場で滝沢シェフが披露した“イカめし”の試食者を東京会場で募ったとき、その試食の対象外だったイタリア会場の参加者全員が、思わず『食べたい』と手を上げていました。それほど青森を近くに感じていたのです」と語り、こうも続けます。

「青森の生産者も、イタリアの生産者も、自分の手掛けたモノに対して強い情熱やこだわりを持っていますが、それを言葉で強くアピールすることはどちらかと言えば苦手としています。ただ、空間共有の演出の中で、彼らの活動の一端を映像で流せば、それを見た全員に熱意がすぐに伝わり、その商品を味わってみたい、使ってみたい、もっとうまく活用したいという欲求が自ずと高まっていくのです」

「今回のイベントを通じて、食材や食に対するシェフたちの熱意や愛情も参加者全員に映像・音声で伝えられました。「これにより、生産者の方々の意欲も高められたはずですし、シェフたちの創意工夫から何らかの気づきを得られたに違いありません。このように、単なる情報ではなく、想いや情熱をネットワークで通わせ、新たなニーズ、意欲、気づき、つながりを生み、コトを起こすことが空間共有で我々が目指している世界です。今回のイベントで、その一端が示せたのではないかと考えています」

この言葉に呼応するように、青森会場でファシリテーターを務めたプラットフォームあおもりの理事、玉樹真一郎さんは、イベントをこう評価します。

「青森会場では、生産者の皆さんが、心の底からイベントを楽しみ、あたかも仲間で集まったかのようにイベントに参加していました。青森とイタリア、東京間のコミュニケーションが完全にシンクロしていたわけではないと思いますが、誰もが悪い印象を一切持たず、終始、各会場の様子を見ながら自分たちの対話を弾ませ、他会場との対話も楽しんでいました。そんな和気あいあいのムードの中で、新しい料理が生まれ、新しい気づきも得らる──。その点に、驚きとICTのすごさを感じました。このスキームならば、自分と仲の良い海外の友人と話を弾ませるだけで、地方創生につながる何かが得られるはずです。今後も同様の取り組みを続けていければと願っています」

青森会場でファシリテーターを務める玉樹さん

青森会場でファシリテーターを務める玉樹さん


●『田子の黒』を生産するTAKKO商事

TAKKO商事では、にんにくの自家栽培にも取り組む

TAKKO商事では、にんにくの自家栽培にも取り組む

「黒にんにく」は、国内有数のにんにくの産地・青森県が誇る高級特産品の一つです。青森県田子町あるTAKKO商事では、田子町の特産品であるにんにく「たっこにんにく」を原料にした黒にんにく『田子の黒』の製造・販売で業績を伸ばしています。『田子の黒』の製造に当たっては、まずは手作業で、“黒にんにく化”するに値する粒を選り分けします。のちに自家製の乾燥機に選り分けたにんにくを収納、徹底した温度管理の下で乾燥・発酵・熟成を促します。こうして丹念に仕上げられた黒にんにくは、手作業によって丁寧にパッケージングされて市場に投入され、消費者の元に届けられます。その出来栄えに対する評価は高く、120g相当の『田子の黒』のパックは、月平均で1万個が出荷されているとのこと。TAKKO商事会長の佐藤さんは、田子の黒の完成までには、何度もの試行錯誤の繰り返しがあったと言います。それだけに田子の黒に対する佐藤さんの思い入れとこだわり、自信のほどはすこぶる強いのです。

●ドライフルーツ化で妙丹柿に光を当てるなんぶ農援

なんぶ濃援の皆さん

なんぶ濃援の皆さん

なんぶ農援は、青森県三戸市南部町にある家族経営の会社です。農家支援を社是として掲げ、十和田湖畔にある土産物店「渓流の駅おいらせ」をはじめ、産直ショップ「とれたて市」、さらにはご当地グルメが楽しめるレストラン&カフェ「奥入瀬ガーデン」などを運営する一方、オリジナルのジャムやジュース、ドライフルーツなどを企画・製造しています。そんな同社が着手したのが、妙丹柿のドライフルーツ化です。妙丹柿は約250年の歴史を有する南部町特産の果物でありながら、渋みが強く、干し柿のニーズが薄れた近年では、食用としてほとんど利用されていなかったのが現実でした。そこでなんぶ農援では、若者にも受け入れられる妙丹柿の加工品として、ドライフルーツ化を企画し、製造・販売に乗り出しています。干し柿よりも果肉に歯ごたえがあり、甘みが強いのが特徴です。また、イタリアとの共創を進めるプラットフォームあおもりの取り組みに呼応するかたちで、妙丹柿のドライフルーツとイタリアのチョコをミックスさせた新商品の開発・製品化にも取り組んでいます。

※1バーニャカウダ

鍋の上でアンチョビ、ニンニク、オリーブ・オイルなどを混ぜ合わせたディップソースを温め、野菜を浸して食べるフォンデュ形式の料理。

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