NTT DATA

DATA INSIGHT

NTTデータの「知見」と「先見」を社会へ届けるメディア

絞り込み検索
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
img-detail-40
2017年7月26日INSIGHT

グローバルオープンイノベーションコンテストが今年も募集開始!

NTTデータが2016年度の大きなチャレンジとして開催した 「第5回 豊洲の港から presents グローバルオープンイノベーションコンテスト」。 その第2弾となる第7回の応募受付が、7月26日から始まりました。 第5回のグランドフィナーレを振り返りながら、第7回の行方を想像しましょう。

Open InnovationをリードするNTTデータ

グローバルで主導権を取るために

プレゼンの様子。登壇はSocial Coinのイバン・カバレロさん

プレゼンの様子。登壇はSocial Coinのイバン・カバレロさん

3月15日はNTTデータにとって記念すべき日となりました。2017年2月から3月にかけて世界9カ国10都市で実施してきたグローバルオープンイノベーションコンテストのファイナリストたちが東京・豊洲に一堂に会し、最優秀賞を競うグランドフィナーレが開催されたのです。

このコンテストを企画したオープンイノベーション事業創発室長・残間光太朗は言います。

「世界中のみなさんとつながって、世界をハッピーにするソリューションを作ろう、それが今回のコンテストの目的でした。NTTデータが持つ技術と、われわれのお客さまを始めとする国内外の企業ネットワーク、世界中のスタートアップの力をWin-Win-Winで組み合わせ、世界の苦しみ、課題を解決したい。ともに世界を変えていきたい」

グローバルオープンイノベーションビジネスコンテストは、2月2日のサンパウロ(ブラジル)を皮切りに、テルアビブ(イスラエル)、ロンドン(イギリス)、マドリッド、バルセロナ(ともにスペイン)、トロント(カナダ)、北京(中国)、シンガポール、サンフランシスコ(アメリカ)をめぐり、3月2日の東京まで、世界各地で怒涛の勢いで開催され、約200社の応募、総勢1000人規模の動員がありました。

開催にあたっては、ロンドンのInnovate Finance<(※1)、トロントのMaRSディスカバリー・ディストリクト(※2)を代表に、各地の有力なベンチャーキャピタルやイノベーションハブ等の協力がありました。

グランドフィナーレのピッチコンテストでは、各都市から選ばれたファイナリストがそれぞれ7分間のプレゼンと2分間の質疑応答を行います。内部審査員としてNTTデータの事業部門から11名が、外部審査員として、ベンチャー支援で名高い多摩大学客員教授 本荘修二(ほんじょう・しょうじ)氏を筆頭に5名が出席し、全世界の最優秀企業を決定しました。また、当日はスマホアプリを活用した参加者投票によりオーディエンス賞も選定しました。

開催にあたり挨拶に立った本荘氏は、「3年前、初めてNTTデータからグローバルオープンイノベーションコンテストの開催について相談を受けたときには、NTTデータは、まだ国内企業だった。しかし今や、欧米をはじめ世界50カ国以上に拠点を持つグローバル企業であり、今回、このような大掛かりなグローバルコンテストを自ら仕掛けた。国際的なイノベーションのイニシアチブを取るために、実績を積み上げている」とNTTデータのここまでの足跡を評価します。

多摩大学 本荘客員教授

多摩大学 本荘客員教授

続けて「今日は日本の大企業から約300名集まっているが、世界の優れたイノベーターを目の当たりにできる機会はめったにない。ぜひ楽しみながら世界のイノベーションを感じてほしい」と、これから始まるピッチコンテストへの期待を語りました。

特色豊かなファイナリストたち

東京のファイナリスト、チームArs Techne VRCの久保田巖さん

東京のファイナリスト、チームArs Techne VRCの久保田巖さん

ファイナリストたちのプレゼンは休憩を挟んで前後半で行われましたが、途中で残間が「気にせずネクタイを緩めて、上着を脱いで楽にしてください」とアナウンスするほど、熱を帯びたものになりました。各地のコンテストを勝ち抜いたレベルの高いプレゼンテーションは見ごたえがありました。
以下、日付変更線から西進する順番で行われた各プレゼンの概要を簡単に記します。

※発表順。

●東京:チームArs Techne VRC───株式会社アルステクネ 代表取締役CTO 久保田巖さん、株式会社VRC 代表取締役社長 シェー・インディーさん
美術品、文化財のデジタル・アーカイブ技術「リマスターアート」と、この技術から派生する「デジタルミュージアム」等の事業に取り組む。「リマスターアート」は「DTIP」と呼ばれる3D技術と、スキャナーシステム等からなり、デジタル・アーカイブされたレプリカ(複製画)は、本物の立体的な質感を高精細に再現できる。オルセー美術館ですでに本格導入が進むほか、国内外でさまざまなプロジェクトが始まろうとしている。

●北京:Institute of Software Chinese Academy Beihang University───ヂャオ・カイキさん
多角的・複合的なデータ収集と分析による企業総合能力評価モデルをプレゼン。膨大な企業のデータを、事業情報、知的所有権情報、アニュアルレポート、裁判記録、財務情報等々、500以上の項目で収集。これらのデータはさらに1400種類以上に分類され、ディープラーニングで企業評価に使用される。データのスパンや軸が多様なので、経営の戦略立案や意思決定のほか、銀行や投資家による利用など、様々な活用が想定できる。

●シンガポール:Gaudio Lab Inc.───COO ベン・チョンさん
視聴者・ユーザーの動きに合わせて適切な音環境を再現する没入型のサウンドソリューション。的確なサウンドレンダリングを高速で行い、臨場感あふれる音環境をリアルタイムで再現する。VRを代表に様々なイマーシブコンテンツが拡大するなか、映像に比して音声の技術は弱いとされてきたが、脳内で結像するような臨場感のある音声を提供する。再生ツール、ゲーミング領域への応用などにも取り組む。映画、VR、ゲーム等、既存のコンテンツにはすべて対応できるとしている。

●テルアビブ:PayKey───Product Manager アリエ・カッツさん
SNSで、銀行決済等のペイメントを安全かつシームレスに実行できるソリューション。アプリとして稼働するのではなく、キーボードの機能の一部として実装させるというユニークな技術。銀行アプリに機能を追加させる形で実装でき、ホワイトラベル(※3)での提供も想定。「アップルのシンプルさ、Googleのスマートさ、WhatsAppのエンゲージメントを同時に実現するもの」で「銀行のセキュアさとSNSの利便性を持つ」とカッツさん。NTTデータが顧客に金融機関を多く持つことから、強力なシナジーを生み出せるとアピール。審査員特別賞を受賞。

●バルセロナ:SOCIAL COIN───CEO イバン・カバレロさん
自治体の課題をSNS等からビッグデータ収集し、AIで抽出・可視化するとともに、それに対する人々の善行を評価し、報酬を与えるシステムを開発。インターフェイスは「deeds」というプラットフォームを使用する。2017年9月に開設する予定で、国連、欧州委員会からすでに高い評価と助成を受けている。例えば、交通量の多い道路での事故のリスクを市民が潜在的に不安視していることをデータ解析で把握し、高齢者の横断を手伝うなどの市民の慈善行為を評価して、市民に報酬を提供できる。「世界に幸せを届けたい」とカバレロさん。自治体だけでなく一般企業もCSR目的で導入が進む。最優秀賞を受賞。

※1Innovate Finance

イギリスにおけるFinTechのコミュニティとして設立された、営利を目的としない会員制の組織。2014年にロンドンの行政と民間企業によって設立された。 http://new.innovatefinance.com

※2MaRSディスカバリーディストリクト

トロント(カナダ)にあるイノベーションハブ。教育家や研究者、起業家などをつなげ、公共と私事の溝を埋めることを使命とする。 https://www.marsdd.com/

※3ホワイトラベル

white label。主に日本では、オンライン取引プラットフォームやクレジットカードサービスを、取引先金融機関のブランドでエンドユーザー(金融機関の顧客)に提供する、という意味で使われる。

キーワードは「技術と愛」

イノベーションは土地が育む

各プレゼンの後には、「事業部で協業できそうだ」と感じたNTTデータ内部審査員が挙手する簡易審査も行った

各プレゼンの後には、「事業部で協業できそうだ」と感じたNTTデータ内部審査員が挙手する簡易審査も行った

後半のプレゼンテーションはさらに熱が入り、参加者もますます引き込まれていきます。

●マドリッド:EMOTION RESEARCH LAB───マリア・ポコビ・ウベダさん
顔の動きの分析と目の動きのトラッキングで、感情をセンシングするソリューション。幸せ、驚き、怒り、嫌悪、恐れ、悲しみを表情の動きから分析する。「人間の行動の60%は感情に基づいて」おり、マーケティング等幅広く活用できるという。競合他社にない優位性は、瞬間の感情だけでなく「ムード」の把握もできる点。すでに広告代理店とのビジネスがある。店頭などのサイネージへの導入のほか、自動車の運転、教育分野等での利用も見込まれる。

●ロンドン:Everledger───Founder & CEO リアン・ケンプ
ブロックチェーンを利用した高価格品のトラッキングシステムを提供している。すでにダイヤモンド取引で実績がある。2014年に同社設立、125万件のダイヤモンドのデータを格納しており、2015年にはロンドンのダイヤ不正取引阻止にも協力しているという。ブロックチェーンのセキュアで不変であるという特性を生かし、貴重なアセットを認識しトラッキングすることで、取引の透明性を高め、リスクを低減するとともに不正取引を防止する。保険との組み合わせなど、価値流通のためのプラットフォームとして期待される。審査員特別賞を受賞。

●サンパウロ:LeagalBot───ジョルジュ・アゼベドさん
ビジネス展開上、新しい製品やサービスが規制に抵触するかどうかや、新しい規制が導入されることでもたらされる影響などのリサーチや当局との対応にかかる「ギャップコスト」を低減に貢献するソリューションを提案。「アメリカだけで年間1兆8,000億ドルのギャップコストが発生している」という。マシンラーニングで情報を収集し、分類。選択的に優先順位を付けクライアントに提供する。ユニークなのは、マシンラーニングだけでは成立せず、人間の手を組み合わせることで強力なツールにした点。南米最大手の銀行も導入している。

●トロント:Soundpays───Chairman, co-founder ピーター・ミシェク
不可聴域の音声を使ってスマホに情報を送信、広告表示、購買促進、ペイメントまでフォローするシステム。スピーカーさえあれば導入できるため、街中の看板でもテレビでも「あらゆるサウンド・システムから」使うことが可能であり、「新しいコマースのチャンネルができると言える」とミシェクさん。認証等が不要なのでシームレスに使える特徴もある。ホワイトラベルで提供し、バンクアプリ等にアドインさせることもできる。POSで導入すればレジでのモバイルペイメントも可能になるなど、その利用範囲はアイディア次第で広がる。

●サンフランシスコ:ShoCard───Founder, CEO アーミン・イブラヒミさん
ブロックチェーンのデータレイヤー上に構築するデジタルID認証プラットフォーム。現行のオンライン上にあるID、パスワードはログインまでにアクセスポイントが多く、ハックされるリスクが高い。ShoCardを利用すればプロセスが簡略化されるうえ、ウェブ上の複数のIDやパスワードを統合的に利用することもできるようになる。本人認証、KYC(※1)でも利用が可能とされており、金融機関間でKYCの共有もできるという。

グランドフィナーレを制したのは“SOCIAL COIN”

各地のコンテストの様子をレポートする後半のイベント

各地のコンテストの様子をレポートする後半のイベント

プレゼン終了後は、各地の会場でのコンテストの様子をファイナリストのインタビューも交えながら紹介する特別セッションが行われました。ここでも各地の文化の違いが垣間見えました。

例えばテルアビブではデロイト・イスラエルの協力の下にコンテストを開催しましたが、ドラムンベースが鳴り響くパーティのような雰囲気の中で行われたこと。トロントではアフリカや中国からの企業を含んだ総勢200人以上が参加し、もっとも国際色が豊かであったこと。シンガポールでは政府高官が挨拶をするなど、国からの注目度が高かったことなどが紹介されました。

一方、別室では審査が行われていました。そして1時間後、結果発表へ。

激戦を制し、最優秀賞を受賞したのはバルセロナのSocial Coinでした。本荘さんは「将来に向けて、素晴らしい社会的な価値を提供しようとしている。プレゼンも素晴らしかった。まさに技術と愛を結びあわせて生まれたイノベーションだと思う」とコメント。現在、NTTデータとの3カ月間の協業検討を行っています。

そして、一般投票で決まる「オーディエンス賞」はトロントのSound Paysが受賞。「さすが各国の優勝チーム、選ぶのが大変苦しかった」(残間)として、審査員特別賞を2チーム選出。テルアビブのPayKey、ロンドンのEverledgerが受賞しました。

PayKeyについて審査員の平石郁生氏(サンブリッジグローバルベンチャーズ代表取締役 法政大学経営大学院客員教授)は「非常にセクシーなアイディアだと思う。これからの成長を感じさせる」とコメント。Everledgerについて、審査員のティモシー・ロメロ氏(Host of Disrupting Japan, Serial Entrepreneur)は、「グローバルで成長、活躍すると思う」と激賞しました。

しかし「この会場に来たすべての企業が勝利者だ」と本荘氏がいうように、新しいビジネス創発に向けて協業していくのは、受賞した企業だけではありません。

「この場に参加している大企業やNTTデータと絆を深めて事業機会を育てていくことができるのが、このコンテストの最大の特徴。今日1日で終わるのではなく、ともにイノベーションのエコシステムを作り、世界を変えていきましょう!」

「技術と愛」が世界をハッピーに

最優秀賞を輝いたSocial Coinのメンバーと本荘さん(左から2番目)、残間(左端)

最優秀賞を輝いたSocial Coinのメンバーと本荘さん(左から2番目)、残間(左端)

最優秀賞を受賞したSocial CoinのCEOを務めるイヴァン氏は、取材に対して「本荘さんが私たちの『技術と愛』を評価してくれたことが何よりもうれしい。このサービスは、行動と感謝の気持ちを社会に与えてくれるもの。ソリューションが社会を動かすきっかけとなり、世界を変えていくことに繋がるように取り組みたい」と感想を述べました。

本荘氏は「どこが優勝してもおかしくない僅差の中、ユニークなソリューションで、短期的な目的だけでなく、長期的なビジョンも持っていたことを高く評価した」とコメント。

世界中でその土地ならではオープンイノベーションのエコシステムが生まれ育っていますが、そこに足を踏み入れ、世界中を相手に、ともに革新的なソリューションを生み出そうと取り組まれたNTTデータのグローバルオープンイノベーションコンテスト。世界有数のスタートアップ達と審査員や参加者達が集い、これまでにない盛り上がりを見せました。

残間は「われわれのコンテストは“ともに世界を変えていこう”という合言葉に一緒にイノベーションに取り組んで行けるベンチャー企業やソリューションを求めています。2017年度もこれまでどおり年2回の開催、そして下期には、今回以上の規模でグローバル開催を行います」と宣言。

そして4月からは、最優秀賞を獲得したSocial Coinとはかなり密なやり取りとともに事業化検討を始め、7月からはNTTデータグループ内でソリューションの試用をスタートしています。

「次は、どんな企業が集まり、新たにビジネスチャンスを手にするのか、心から楽しみにしています。マンスリーオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」は、月に一回開催されており、一緒に新しい世界をつくっていこうという気概あるすべての人に乗船券が用意されています。是非とも皆さまに積極的にご参加いただきたく思っています」

また、今年度のグローバルコンテストは、開催地をオーストラリア、インド、ポルトガル、イタリアを追加し15都市に拡大、7月26日より募集開始しました(10月10日締切)。募集テーマもさらに拡大しており、ここからどんな「ともに世界を変えていく」ビジネスが発掘されるか、ますます目が離せません。詳しくは、コンテスト公式サイトをご覧ください。

第7回 豊洲の港から presents グローバルオープンイノベーションコンテスト

※1KYC

Know Your Customerの略。主に銀行口座を新規に開設する際に求められる一連の書類手続きのことを指す。顧客確認。

お問い合わせ