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2018年4月6日技術ブログ

RPAとAIで描く未来 ~RPA発展に関するよくある誤解とAI利用事例~

WinActorの新規提供実績が月50社を超えるペースで伸び、この1年で800社との契約に至った。誠に有難いことに、RPA(robotic process automation)自体の有効性を確認する段階は過ぎたようで、ユーザからの問い合わせも、RPA全社運用ルールや体制の構築方法と、RPAのAIによる高度な自動化が中心となってきている。そこで本稿では、後者のRPAを軸とするAI活用について触れたい。

RPAブームとAIブーム

先日、各業種を代表する大手30社が集まる会合にてRPAを紹介する機会を得たのですが、アンケートを取ったところ、既にRPAを導入済もしくはトライアル中の企業が28社、トライアル準備中の企業が2社という、予想を遥かに上回る状況でした。RPAが適する業種や企業規模などを問われる度に「RPAは遅かれ早かれあらゆるところで使われるようなります」と答えてきた私自身、この普及スピードには驚かされます。その急速な普及の背景には、RPAの前に始まったAIによる自動化ブームがあると考えています。

AIにより自動化の気運が高まったところに、導入し易く即効性も高い自動化ツールとしてRPAが現れたことで、RPAは爆発的に普及し始めました。自動化が一気に身近になったという点では良い連動だった訳ですが、この連動が、RPAとAIの関係性を分かりづらくしている面もあると感じます。正確に理解いただくことが、RPAとAIへの効率的な投資と、一層の有効活用に繋がると思いますので、本稿ではRPAとAIの関係性を解説していきます。

RPAとは、AIとは

まずRPAの定義ですが、「ルールエンジン・機械学習・人工知能(AI)などを活用したソフトウェア型のロボットが、パソコンを操作してアプリケーションを扱う各種業務を代行し、ホワイトカラーのデスクワークを効率化・自動化すること」とされています。“ルールエンジン・機械学習・人工知能(AI)などを活用し”とありますが、今のRPAは、人間が「シナリオ」と呼ぶルールを書き、RPAがルールエンジンで再現をするという、ルールベースの段階です。

図1

次にAIの定義ですが、一般的には「機械により人間の知的活動を再現したもの」とされています。その実力は、皆様もよくご存知のように、囲碁や将棋で分かりやすく証明され、医療分野などでもビジネス利用が進んでいます。ここで大事なのが、AIは「特定領域では人間を凌駕する能力を発揮している(=特化型AI)」が、「あらゆるものに答えられる賢いAI(=汎用型AI)」はまだ存在せず、その登場は2030年頃と予想されていることです。

図2

RPAとAIの定義を組み合わせると、RPAのルールエンジンを汎用型AIに置き換えることで自律型の賢いロボットが何でも勝手に自動処理してくれる仕組みが誕生する訳ですが、汎用型AIはまだ存在しないため、自動化率の一層の向上に向け、RPAに特化型AIを組み合わせて考えることが有効です。

RPA発展の3段階(Class)の誤解

RPAの発展段階は3段階で表現されることが多いですが、これももう少し分解して考える方が良いかなと思います。

図3

Class1はルールベースで動く今のRPAの段階です。AIの定義でいうと、「弱いAI/特化型AI」に該当します。

Class2はRPAによる自動化の中で、特化型AIにより強化された各種技術が活用されるようになる段階です。例えば、従来型のOCR(光学的文字認識)技術ではテキストデータ化できなかった紙や画像中の文字を、文字認識に特化したAI(AI-OCR)により自動でテキストデータ化することや、音声に特化したAI(AI音声認識エンジン)により音声をデータ化することで、RPAで自動化できる業務範囲が紙や画像、音声を扱う業務にまで広がります。

このようなRPAで自動化できる領域の面的な発展をClass2と考えていただくのが良いかと思います。RPAツール自体はClass1と変わっておらず、弱いAIで成立できます。

なお、AI-OCRをRPAツールと称する場合もあり紛らわしいのですが、OCRの専門家の立場からすると、WinActor等のいわゆるRPAツールとPrexifort-OCR等のOCRツールは分けて考えた上で、組み合わせて応用するものとご理解いただく方が誤解は無いと考えています。一方で、OCRツールも「文字入力自動化ロボット」などと定義付け、RPAツールの一種と考えることができるな、とも思います。

解釈が難しいのがClass3です。「強いAI/汎用型AI」が活用され、「自律」的に自動化される段階と説明されているものが多いのですが、先のAIの定義でも記載しましたように、汎用型AIの登場は2030年頃と予想されている以上、Class3に到達するのも2030年頃、ということになり、既に実現段階に入っているClass2と大きな乖離があります。

ただ、このClass3の手前に、いわゆるClass2とも少し異なる、Class2.5のような中間段階を意識いただくとよいと考えています。Class2がRPAの面的な広がり、Class2.5は質的な深まり、というイメージです。また、Class1~Class3は直線的な成長軸で捉えるよりも、Class1・Class2・Class2.5と面で全体像を捉えていただく方が、RPAとAIの組み合せがイメージし易いかと思います。

図4

RPAとAIの発展を面でとらえてみる

Class2を分解し、RPAの発展を面でとらえるように考えると、AIの活用が現実的な手段して見えてきます。RPAツールと特化型AIツールの組み合せには、大きく3つの方向性があると考えられます。

図5

1.RPAツールで扱うデータ等を拡大
これは先に記載しましたClass2のことで、AI-OCRやAIスピーカーなどの技術を利用して、紙や画像、音声などの情報を、RPAが扱えるような形式のデータに変換し、自動化できる業務の範囲を広げることです。非構造化データを構造化する、というような言い方もされます。RPAツールという自動化ロボットに、AI-OCRという優れた目を与えたり、AIスピーカーという優れた耳を与えたりするイメージです。

2.審査等の判断業務との連動
RPAでAIのような高度な判断までできないの?とは、よく頂戴する質問です。これも高度な判断をする特化型AIと組み合わせて実現すると考えていただくのがよいかと思います。

例えば与信審査判断力を鍛えた特化型AI商品があるとして、以下のような組み合わせのイメージとなります。

(1)RPAが与信審査AIに所得等の情報を渡し、この人にお金を貸しても大丈夫かと問う
(2)与信審査AIは、受け取った情報から貸与可否を審査判断する
(3)RPAは与信審査AIから戻ってきた審査判断に応じた処理を行う
(貸与可であれば、貸し出す業務を自動実行する)

この先、何かしらの目的に特化したAI商品が増えていくと予想されます。実用段階に達して商品化された特化型AIをRPAと組み合わせることで、RPAに難しい業務を自動化させられるようになります。RPAという自動化ロボットに、審査AI等の相談相手を付けてあげるイメージでしょうか。

3.自動化シナリオ作成の高度化
特定の業務の分析に特化したAIを活用して業務分析を行い、業務の無駄を見つけたり、改善策としてRPAによる自動化をレコメンドさせたりといったAIの成長はイメージし易いですね。

図6

またその延長で、RPAでの自動化に適した業務改善案を作ったり、その業務を自動処理するためのシナリオまで作ったり、ということは十分考えられます。NTTデータでも、WinActorのシナリオ案を自動作成してレコメンド(推薦)させるなど、自動化手法をAIにより高度化する研究開発を進めています。これはRPAツールという自動化ロボットの脳にあたる部分を強化するイメージでしょうか。

図7

なお、ここで「レコメンド(推薦)」としましたが、当面は、人間がレコメンドされたシナリオを評価し、必要に応じて手を加えた上で使用することになると考えています。

まとめ

RPAとAIが混在した状態ですと、AIで何でもできるとの誤解から導入してみたけど上手くいかなかったり、逆に現実にはまだまだ実用性が無いと誤解してせっかくのチャンスを逃してしまったり、というもったいない結果になりがちです。RPAと、目的別に実用化された特化型AIを上手く組み合わせていくと、現時点でも高度に自動化できることは意外に多いのではないでしょうか。

また、賢いけれど、時に、人間からすると一目瞭然な間違いをすることのあるAIと、賢くはないけど、ルール通りに同じ結果を出すRPAを組み合わせることは、ミスを減らすという観点でも有効と思います。

NTTデータでは、このような考えから、RPAを軸とする地に足の着いたAI活用を提案しております。そして、地に足の着いたAI活用を続けていくことが、デジタルデータおよびAIに関する知見の蓄積に繋がり、「あらゆるものに答えられる賢いAI(=汎用型AI)」の呼び水になると考えておりますので、ご期待ください。

  1. ※ RPAとAIで描く未来に関するホワイトペーパー公開中
    http://tech.nikkeibp.co.jp/it/atclact/activewp/b/18/01/11/00583/(外部リンク)
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