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2019年2月12日技術ブログ

持続可能な地球環境を創るテクノロジー

循環型の社会の必要性は20世紀以前から提言されており、対策として地に足の着いた取り組みだけでなく、実現不可能と思われるようなチャレンジングな試みも数多く実施されてきた。今回は、人々の生活様式を変え循環型で持続可能な地球環境を創る可能性を秘めた夢のテクノロジーを探る。

はじめに

近年新たな概念としてサーキュラーエコノミーという考え方が注目されています。
宇宙船地球号のような全世界平和的な発想から一歩踏み出し、循環を通じて「ビジネス面でも利益を生み出す」発想が特徴で、企業活動との相性が良いため、ESG経営やサステナビリティレポート、CSRに絡めて急速に広まりを見せています。
循環型社会やサーキュラーエコノミーに関連した取り組みの例としては、海洋プラスチックを回収してリサイクル工場に運ぶ活動などが代表的です。
一方で、「どれだけ食べても無くならない食べ物を作る」といった夢物語の類への挑戦も続けられてきました。
今回は、現在行われている取り組みからSF映画等で構想されてきたような未来のテクノロジーに至るまで、循環型で持続可能な地球環境を創る可能性を秘めた銀の弾丸を探します。

世界で高まる循環型の経済活動

EUでは、2015年に「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」政策が採択されており(※1)、例えば廃棄物に関する目標として「2030年までに加盟国各自治体の廃棄物の65%をリサイクルする」といった意思表示をしています。
日本でも、循環型の社会を目指すため環境省が3R(Reduce・Reuse・Recycle)政策を打ち出すなど、特にリサイクルを軸とした取り組みが行われきました。
国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)(※2)においては、持続可能な世界を作る観点で経済成長・海洋資源・産業化・生産消費・医療・教育など多くの分野に目標が定められており、近年のサーキュラーエコノミーに関連した取り組みの追い風となっています。
2018年の株主総会に関する新聞記事では「株主が株主総会を通じて企業のESG経営を後押ししはじめた」との表現も使われ、ESG経営の重要性が大きくなってきている情勢が見て取れます。
こうした社会情勢・経済情勢からも、循環型の経済活動は企業のビジネスにとって今後一層重要になってくることは間違いないでしょう。

なぜ今これほど、循環型の経済活動が重要課題として叫ばれるのか、それは人が身近に想像できるほどに、様々な「終わり」が垣間見えてきたことが大きいと思います。
水が無くなる、食べられる魚が無くなる、資源が枯渇する、大気汚染や土壌汚染で住めなくなる、空き家だらけになる、ごみを捨てられる場所が無くなる、気温が高くなり住めなくなる、…といったことが、実感に加えて数字を伴った推移予測からも明らかになったことで、本当に起こり得る事態として多くの人々がリアルな危機感を感じたのでしょう。
加えて生活者の価値観が所有から利用へ変化したことにも後押しされ、企業活動が循環型の経済活動へシフトする大きな流れが生まれています。

今現在の取り組み

持続可能な地球環境を創るために実際どのような取り組みが行われているのか、まずは今現在の具体例をいくつか紹介します。

エネルギー:バイオディーゼル(※3)

いすゞ自動車はユーグレナ社と協力し、次世代バイオディーゼル燃料で走るバスの実証走行を開始すると発表しました。燃料となる油はミドリムシが光合成で育つ過程で作られるため、二酸化炭素排出量削減の観点からも有効で、炭素循環型の社会を目指した取り組みとして非常に象徴的です。

食:コオロギパン(※4)

フィンランドのFazer社は、コオロギを練り込んだパンを世界で初めて販売した会社として知られます。乾燥したコオロギの粉末を使い、約70匹分がひとつのパンに含まれているそうです。なお、人口増加により将来タンパク源としての肉が足りなくなることを危惧し、国連食糧農業機関(FAO)が代わりになるものとして昆虫を推奨する報告書を出していた背景もあり、フィンランドでは2017年に食用昆虫の養殖や昆虫食品の販売が可能になりました。日本でも先日「昆虫食自販機(※5)」が登場し話題になったことは記憶に新しく、この数年で昆虫食は存在感を増しています。

素材:全製品を再生素材化(※6)

スウェーデンのIKEAはサーキュラーエコノミーを大きく掲げて実践しており、自社事業における具体的な達成目標を期限付きで公表しています。2030年までに全商品をリサイクル素材に変更するなど、意欲的な内容です。IKEAは日本にも大型店舗があるため、商品を購入したことがある人も多いのではないでしょうか。

その他参考までに、サーキュラーエコノミーについてはアクセンチュアのページで事例も含めて非常に詳しくレポートされています(※7)

今現在行われている環境面での取り組みは、再生可能エネルギー、リサイクル、シェアリング、メンテナンスサービスなどが代表的です。いずれも重要で価値のある活動ですが、それだけでは完全な解決が難しい側面もあります。根本的には資源の消費を減らすだけでなく、収支を0以下にしなければ続かないからです。どのようなテクノロジーを用いて何をすれば良いのか。既に研究開発が進んでいる物はあるのか。次項で未来の姿を探っていきます。

銀の弾丸はどこにある?

環境の悪化を超える効率で回復する、手持ちの資源を全く減らさずに完全循環することで永久に使い続ける、宇宙など地球外から新資源を取ってくる・・・例えばこんな解決方法はありでしょうか? 夢物語に聞こえるかもしれませんが、実現を予感させる取り組みや発見は、時折ニュース等で紹介されています。

ゴミの変換と無害化

ゴミをエネルギーに変換するテクノロジーは近年飛躍的に進化しています。途上国で食品ごみを回収しバイオガスやお金に換えて渡す取り組み(※8)は、明るい未来を感じさせるものです。同様の変換設備を小型化し、各家庭単位で利用可能にする企業も現れました。また、日本では燃えるゴミをまるごとエタノールに変換するプラント(※9)が稼働する予定になっています。燃えるゴミ以外の厄介なゴミ、プラスチックや放射能汚染ゴミについては、生物を使って無害化を図る「バイオレメディエーション」が研究されています(※10)。例えば、ペットボトルのプラスチックを分解して栄養源とする酵素(※11)や放射性物質を無害化する細菌(※12)が見つかっており、有効活用に向けた検証が進められています。

太陽光と重力で発電

地球に存在する資源でほぼ際限なく使えるものと言えば、太陽光と重力です。特に太陽光発電は急速に発達しており、効率と設置範囲次第では、全人類が生活するのに必要な電力全てを賄うだけでなく電気が余る事態になる可能性をも秘めています。大気圏外に太陽光パネルを設置し、天候や昼夜によらず発電できる宇宙太陽光発電(※13)といったアイデアも研究されています。発電した電力を扱うのに欠かせない電池の進化にも期待が大きく、組み合わされば鬼に金棒となることでしょう。
重力を使った発電も興味深いものがあります。重力で光を発生させる GravityLight(※14)は、途上国で灯油ランプの代わりに使える光源として考え出されたもので、多くの賞を取りました。重力発電装置は他にも様々な試作品が作られてきましたが、産業で積極的に活用するには発電量が小さいことが難点だったと考えられます。燃料を使わずお金も掛からない画期的な技術であるため、太陽光発電と共に持続可能なエネルギー源として今後の発展を期待したいところです。

人工光合成

人工光合成(※15)は夢の技術とも言われ、産学連携で研究開発が続けられています。植物が行っている光合成と同じ反応を人工的に再現する試みであり、温暖化で問題視されている二酸化炭素を直接的に減らし、化学品として利用するという、まさに夢のような話です。人工光合成で使われる触媒技術に関して日本は強みを持つため、日本の国際的な競争力の源泉としての期待も掛かっています。

培養肉

細胞を培養して育てる「培養肉」が進歩を見せています(※16)。特にここ数年で生産コストが大幅に下がっており、将来はコンビニやスーパーで気軽に培養肉を販売している時代になる、という話も現実味を帯びてきました。培養肉は畜産に対する考え方を変える大きなインパクトを持ち、従来型の食肉生産に必要な水や土地などのリソースを劇的に削減可能なため、利用が拡大する路線は間違いないでしょう。

今回、大きく4つの分類で持続可能な地球環境を創るテクノロジーを紹介しました。この他にも様々な挑戦が行われており、SF映画等で描かれる未来の世界へ続く道が具体化されてきた気配があります。最終的に進んだ先には、人間の意識をコンピュータ上に転送しデジタル化して生き続ける、といった形で、環境を超えて「寿命」や「存在」までをも持続可能な世界に至るのかもしれません。テクノロジーがもたらす変化をどこまで人が許容できるかを知り、考え方を適応させていくこともまた重要になると思います。

余談ですが、筆者個人としては「大気汚染を回復する方法」にイノベーションのチャンスを感じています。巨大な空気清浄機を設置(※17)した記事はなかなかに刺激的です。

図1:描いた夢は現実になる

※2持続可能な開発のための2030アジェンダ

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000270935.pdf

※3次世代バイオディーゼル DeuSEL

http://www.deusel.jp/

※7Accenture 無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する

https://www.accenture.com/jp-ja/insight-creating-advantage-circular-economy

※8スマートエネルギー情報局 家庭の生ごみがバイオガスとお金に

http://www.afpbb.com/articles/-/3187230

※9燃えるゴミをまるごとエタノールに変換する新技術

https://www.kankyo-business.jp/news/016268.php

※10地球をクリーンにしてくれる生物7つ

https://logmi.jp/business/articles/284113

※11プラスチックを分解するバクテリアが発見され研究が急ピッチで進む!救世主となるか?

https://waraukurumi.com/bacteria-petase-eats-plastic-pet-pef/

※12放射性物質を無害化する微生物

http://www.seibutsushi.net/blog/2014/07/2127.html

※13JAXA:宇宙太陽光発電システム(SSPS)について

http://www.kenkai.jaxa.jp/research/ssps/ssps-ssps.html

※14GravityLight財団

https://www.deciwatt.global/

※15日本発の夢技術「人工光合成」はここまで来た

https://toyokeizai.net/articles/-/235204

※16食卓が変わる日 10年後、私たちは培養肉を食べている

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12721

※17中国で始まった豪快すぎる「大気汚染対策」

https://tabi-labo.com/287457/journey-huge-air-purifier

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