2019.8.26技術ブログ

次世代モビリティ×金融の可能性

昨今、次世代モビリティが盛り上がりを見せている。自動運転などを中心に注目される分野であるが、金融においても決して無関係ではない。本稿では、次世代モビリティに係る金融への影響および今後の展望についてご紹介する。

モビリティ分野で今、MaaS(Mobility as a Service)(※1)などに代表される、次世代に向けた取り組みが進められています。自動車業界にとっては「100年に一度の大変革期」と言われるほど注目が高まっていますが、金融業界にとっての影響も小さくありません。その影響は、三つに大別できます。

  1. 足元のそれぞれのサービスにおける影響(カー/ライドシェア、自動運転)
  2. MaaSプラットフォーム形成に係る影響
  3. 空間の自由化/移動の高度化による影響

次世代モビリティの影響というと、(1)(もしくは(2))の話に収れんしがちですが、もう少し未来の(3)の影響も見据えることがポイントです。

(1)足元のそれぞれのサービスにおける影響(カー/ライドシェア、自動運転)

保険、融資、決済における金融サービスを整理すると、1.ライドシェア関連金融サービス2.自動運転保険3.自動車連動決済が今まさに新規サービス創成が試みられているジャンルということができます。(図1)

図1:カーシェア/ライドシェア、自動運転車に係る影響

図1:カーシェア/ライドシェア、自動運転車に係る影響

一方で、現在、所有者が使わないときに車を貸すサービスが登場していることからも見受けられるように、個人所有とシェアの境界は曖昧になりつつあります。この境界が曖昧になると、車の稼働状況は常に変動することとなり、ダイナミックプライシングモデルへと変化することが予想されます。現在でもテレマティクス保険(※2)が商用化されていますが、実績だけではなく、「今」の稼働/リスク状況に基づく保険・融資・決済が広まることが想定されます。例えばサブスクリプション型での一定期間の車利用が広まると、短期間での借り換えを前提としたローンの需要につながることもあるかもしれません。

(2)MaaSプラットフォーム形成に係る影響

今は(1)のサービスを足掛かりに、各社がMaaSプラットフォームを制するべくしのぎを削っている段階です。また、MaaSは自動車会社、交通機関、保険会社、決済業者…など、多くのステークホルダーが存在するビジネスかつ、そこで流れるデータは価値が高く、VUCA(※3)の要素も多いため、ブロックチェーンや量子コンピュータ(※4)といった新規技術の活用が期待されています。例えば、ブロックチェーン技術をベースに多数の関係者間で共同運用する(特定の事業者に依存しない)ことや、量子コンピュータを使って個車の最適な移動ルートを瞬時に導き出すことなどが今、各社で検討されています。

現在は交通系データの活用が主戦場ではありますが、今後はプライシング、決済(本人認証+課金)も加えての最適化が期待されます。金融機関が決済部分だけではなく、プライシングモデルに寄与する部分にも関わり、仕組みを作っていくことが期待されます。

(3)空間の自由化/移動の高度化による影響

今後、自動運転が高度化していくにつれ、移動の概念は大きく変わっていくことが想定されます。移動しながら食事ができるレストラン、寝ている間に目的地に到着するホテル…など、利用者の移動中の時間活用の検討はもちろんですが、VR/ARのようなテクノロジーが発展すれば、究極は誰も移動しないで済んでしまうかもしれません。さらに、駐車場がなくなる、二酸化炭素が減る、交通事故が減る、カメラやセンサーが増加する…といった社会全体への影響も考えられます。

こういったドラスティックな変化に対し、金融への影響をすぐに特定することは難しいですが、今現在でも、呼べばやってくるオンデマンド型ATMや、VRでの接客などが検討・実現されています。未来予測からどんな金融サービスがイメージできるか、その金融サービスが実現するとして、今できることは何かを考えることが必要となります。

※1 あらゆる交通手段を統合し、その最適化を図ったうえで、マイカーと同等か、それ以上に快適な移動サービスを提供する新しい概念。

日高洋祐、牧村和彦、井上岳一、井上佳三『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』(2018、日経BP社、P.4)より引用。

※2

車載機器より得た走行距離やドライバーの運転特性といったデータを踏まえ、保険料を決定するしくみ。

※3 MaaSプラットフォームにおけるVUCAの要素として、
V(変動性・不安定さ)
ダイヤ改正、急な混雑、人工の増減
U(不確実性、不確定さ)
交通事業者間の情報の連携不足
C(複雑性)
多くの事業者の存在、名称の揺れ、輸送モードの多さ(快速、特急、普通など)
A(曖昧性・不明確さ)
個別情報としての確かさはあるが、複数の統合データが一致するのか、関連するのかというあいまいさ
が挙げられる。

日高洋祐、牧村和彦、井上岳一、井上佳三『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』(2018、日経BP社、P.237)より引用。

※4

ここでは、複数条件の組み合わせの中から最適解を瞬時に導き出す「組み合わせ最適化」を実現する量子アニーリング型を想定している。

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