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2019年10月23日技術ブログ

コンソーシアムでブロックチェーンを利用するためには

2016年のブロックチェーンブームから3年が経過した今でも、ブロックチェーンの活用が世界中で盛んに検討されている。
最近では、特にコンソーシアムという考えのもと、多くの検討が進んでいる。
ここでは、コンソーシアムでブロックチェーンを利用するための考え方と、ブロックチェーン関連コンソーシアムの最新状況について紹介する。

コンソーシアム型ブロックチェーン基盤

代表的なブロックチェーンといえば、サトシ・ナカモトの論文をベースに実装されたBitCoinやスマートコントラクトが実行できるEthereumを多くの人が答えるでしょう。これらのブロックチェーン基盤は、仮想通貨の流通に利用されていますが、ネットワークの形態からパブリック(パーミッションレス)型と呼ばれ、不特定多数のネットワーク参加者による合意形成により運用されています。
この合意形成の実装により、スループットは、たかだか十数~数tpsとなっています。

そこで、ネットワーク参加者が分かっており、ネットワークを破壊するような悪意が無いことを前提として、合意形成の制約を緩和しスループットの改善などを実施した、Hyperledger Fabricなどに代表される、コンソーシアム/プライベート(パーミッションド)型ブロックチェーン基盤(以下、コンソーシアム型ブロックチェーン基盤※)が登場しました。

このコンソーシアム型ブロックチェーン基盤を用いて、複数の運用主体が何らかのビジネスにブロックチェーンを適用するために、ブロックチェーンのコンソーシアムを立ち上げる、という動きが広がっています。

何故コンソーシアムなのか

ブロックチェーン技術が注目を浴び2~3年、多くの検討や実証実験が続けられています。これらの活動を通じ、企業間での情報連携において活用できるのではという認識が広がりました。特にサプライチェーンにおけるトレーサビリティをブロックチェーンで実現するという動きが広がっています。自社の商品もそうですが他社で作られた商品を扱う場合は、どのような工程で作られ、運ばれたかを確認するための仕組みは限定的でした。そのため、一例として、問題が発生したときに商品の回収対象を決める場合、対象の特定に時間を要し、大規模に回収するような事象がありました。

そして、ある商品が複数の企業を経由して1つのフローを形成する場合、企業間の連携は多岐にわたります。そのため、1つのサプライチェーンに加わっている特定の企業群だけで検討するのではなく、複数のサプライチェーン・競合他社も交えて検討しなければなりません。この検討のためにコンソーシアムを立ち上げます。

特定の業界団体の延長ではなく、社会的な課題を解決していくために色々な企業・組織が関わっているのです。

図1:コンソーシアムで検討すべき事項とステップ例

図1:コンソーシアムで検討すべき事項とステップ例

コンソーシアムで何をしているのか?

では、ブロックチェーンのコンソーシアムを立ち上げた場合に、実際に何を行っているか、一例を説明します。

1.対象業務の選定および課題の特定

企業間が連携している業務フローについて、どのような流れかを抽出します。企業ごとに異なっている場合は、複数のパターンを抽出します。その中において時間や費用など掛かっているポイントを抽出していきます。実際に業務に携わっている方々の意見も取り込みます。そのうえで課題が何であるかコンソーシアム参加メンバー間で認識を合わせます。
参加メンバー間で最も課題と認識したものから、享受したいブロックチェーンの特性を踏まえて、適用業務の選定・検討を進めます。

2.対象データの選定

次に、選定した業務で扱っているデータを整理します。1つの業務を進めるにしても、企業ごとにデータの扱いは異なっています。そのため、お互いで合意できる形式にしていきます。

3.サンプル実装および効果の確認

業務・データを抽出したら、それに基づくサンプルアプリケーションを作ります。アプリケーション利用者に確認しつつ、効果を見極めます。そして、お互いで合意できるものとなるまで改善していきます。1.~3.を繰り返しつつ、お互いで連携しあうデータとブロックチェーンでのデータ管理方法を決めていきます。

4.システム運用方針の選定

対象業務が決まることと併せて、システムをどのように構築するか議論します。ブロックチェーンネットワークのノードをどの企業が所有するか、複数の企業でネットワークを維持するか、オンプレミス環境、クラウド環境をどのように利用するか等を決めていきます。
特に複数企業間でネットワークを構成する場合、企業間でどのように運用するかを決めなければなりません。技術的には実現できるものの、この枠組みを決めることは時間を要します。そのため、昨今の活発なコンソーシアムでは、コンソーシアムに参加している1社がシステム運用・管理を担うようなケースが多いです。将来的に複数企業でネットワークを形成できるように検討を進めることが望ましいです。

これ以外にも法律面、規則面での検討やコンソーシアムに参加していない企業への連携、アプリケーションやシステム運用の費用負担など検討すべき項目は多いです。それらの検討項目に対して1つずつ方針を決め、サービス化に向けて活動を進めていきます。

ブロックチェーンのコンソーシアム運用のパターン

図2:ブロックチェーンのコンソーシアム運用のパターン

コンソーシアムあれこれ

コンソーシアムでは、上記のような検討を進めていきますが、では世界中で検討が進められているブロックチェーンにおいて、どのようなコンソーシアムがあるのでしょうか。
ここでは、具体的なテーマに沿ったコンソーシアムについて紹介します。

貿易コンソーシアム(日本)

NTT DATAでは貿易業務に関するコンソーシアムを立ち上げ、ビジネスへのブロックチェーン技術の導入を検討しています。
貿易コンソーシアムは、2017年に発足しました。銀行、保険、海運、商社など複数の企業が参画し、紙ベースで複雑な貿易業務に適用する検討を進めてきました。
特に文書管理に関して、技術だけでなくビジネス的な対応含めて検討を続けています。

Spunta Project(イタリア)

イタリアでは、1000を超える銀行があります。銀行間連携に関する業務は、以前からガイドラインがあったものの、それは形骸化していました。
そのため、各行ごとに業務を定義して連携していたという背景があります。
これをABI(イタリアの銀行協会)が主導し、イタリア国内の銀行間業務の体系化およびITシステムによる効率化を目指し活動を開始しました。
ITシステムとして、ブロックチェーン技術の採用を決めました。
イタリア国内の複数の銀行によるPoCを進め、商用プラットフォーム導入に向けて活動しています。

Libra Association

暗号資産に注目が集まりますが、Facebook社1社ではなくコンソーシアムとして活動しています。
Libraコインを流通させるネットワーク参加企業でネットワークを形成し、そのネットワーク上にLibraを流通させる予定です。

終わりに

ブロックチェーンに限らずコンソーシアムで重要な点は、ビジネス業務扱うデータの共通ルール作りです。特にブロックチェーンでは、従来IT化が十分でないテーマに対して導入を進めるため、1社1社の独自ルールをすべて反映させるには膨大な時間を要することになるでしょう。

まず、ビジネス効率化を進めるために、共通ルールを皆で決めること、そして、ブロックチェーン技術の適用を決める、といった流れで進めてこそ、コンソーシアムによる新たな仕組みの恩恵を受けることになるでしょう。

コンソーシアム型ブロックチェーン基盤については、以下の記事をご覧ください。

https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2018/112902/

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