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2019年12月24日INSIGHT

SDGsX:企業経営に変革を促すSDGs

昨今、メディアでも大きく取り上げられているSDGs(持続可能な開発目標)。2015年9月の国連総会で、加盟193か国により採択され、政府や企業、NGO/NPOなどの市民社会が2030年までに達成すべき17の目標と169の詳細なターゲットで構成されている。今、このSDGsが企業経営に変革を促している。この“SDGsトランスフォーメーション(SDGsX)”について、SDGsが内在する4つの志向性から考察する。

1.アウトサイド・イン志向

SDGsは、企業経営にアウトサイド・インの考え方を導入するよう求めています。アウトサイド・インとは、外部の視点を経営に取り込むことを意味しています。社会が企業に期待しているレベルと経営の現状にギャップがある場合、そのギャップを埋めるようにSDGsは企業に促しています。確かに、SDGsが採択される以前から、企業は外部のステークホルダー(利害関係者)の視点を取り入れて経営していましたが、それは、「株主・投資家」(利益、経営の健全性)や「お客様」(高品質・低価格の製品・サービス)の視点が中心でした。これに対して、SDGsは、「社員」の視点(働きやすい職場、ダイバーシティ&インクルージョン)、「地球環境」の視点(温室効果ガス排出抑制、生物多様性保全)、「NGO・NPO」の視点(貧困削減、食料確保、教育や医療の充実、人権尊重)、「取引先」の視点(持続可能な調達)などの多様なステークホルダーの視点を考慮して企業経営を進めるよう求めています。

図2:企業とステークホルダー

図2:企業とステークホルダー

2.バックキャスティング志向

SDGsは2030年までに達成すべき目標ですが、各目標に紐づいた169のターゲットを読むと、具体的な2030年の社会像をイメージすることができます。また、その社会像を起点に、自社にとっての将来のビジネス機会やリスクについても、想定することができるでしょう。2030年時点で自社が持続可能な状態になっているためには、SDGsから読み取ったビジネス機会やリスクを考慮した上で、現時点の経営計画を立てておくべきです。このように、将来から遡って現在を観ることをバックキャスティングと言います。企業の中には、SDGsをきっかけに2030年までの長期経営目標と、それに対応した実行計画を立てるところも増えてきました。企業はこれまでも、持続可能な社会の実現に向けて様々な取り組みを行ってきましたが、各社が考える社会像は曖昧かつ異なるものでした。SDGsは、2030年の社会像に関する193か国の共通認識を表現しています。この共通の社会像の実現を目指し、バックキャストして経営計画を立て、着実に実行するよう、SDGsは企業に促しています。

図3:バックキャスティング

図3:バックキャスティング

3.ビジネス志向

持続可能な社会の実現に向けて、企業はどのようなアプローチで貢献できるでしょうか。金銭寄付や物品寄贈、また、社員のボランティア活動などの「フィランソロピー」を思い浮かべる方が多いかもしれません。また、その企業が、製品やサービスを生産・販売する過程で、大気・海洋汚染などの環境破壊や児童労働などの人権侵害など、環境や社会に対する負荷(外部不経済)をかけている場合は、その生産・販売プロセスを自社の負担で変更すること(内部化)で、持続可能な社会の実現に貢献するという「外部不経済の内部化」というアプローチもあります。これらは引き続き、大変重要な社会との関わり方ではありますが、SDGsの登場で、ある”古くて新しい”アプローチが脚光を浴びています。それが、ビジネスというアプローチです。市場メカニズムを活用して、特に、社会課題の解決に資する製品やサービスをより多くの人々に提供する「課題解決型ビジネス」がSDGsによって推奨されました。但し、注意しなければならないことがあります。それは、その製品やサービスが社会課題の解決に規模感のある正のインパクト、言い換えれば、「社会価値」を創造しているかという点です。この視点を欠いたままビジネスを続けている場合、その企業は、SDGsを単に収益拡大やレピュテーション向上を通じた「企業価値」の創造に利用する「SDGsウォッシュ(見せかけ)」企業として非難されてしまうでしょう。SDGsは企業経営に「フィランソロピー」「外部不経済の内部化」に加えて、「課題解決型ビジネス」を実践するよう求めています。

図4:インパクト重視のビジネス志向

図4:インパクト重視のビジネス志向

4.パートナーシップ志向

SDGsの17のゴールには、1つだけ性格の異なるものがあります。それが、パートナーシップの重要性を示す17番目のゴールです。他の16ゴールは、貧困やまちづくりなど、社会課題自体、すなわちwhatを前面に押し出した目標となっていますが、17番目のゴールは、様々な課題を解決するためにどのように行動したらよいかというHowに言及しながら、自社だけでなく他組織と一緒に、SDGsに取り組むことを推奨しています。この背景にも、やはり、より大きな社会に対する正のインパクト、「社会価値」の創造に対する期待があります。各国の政府、企業、NGO・NPOなどの市民社会、そして、私たち一人ひとりがバラバラにSDGsの達成に向けて行動していても大きな「社会価値」を創造することはできません。それぞれ異なる考え方や強みを組み合わせることによって、イノベーションを生み出し、大きな「社会価値」を創造することができるでしょう。SDGsの登場以降、ユニークな技術や発想を持つスタートアップ企業、社会課題を熟知しているNGO・NPO、才能と情熱に溢れる個人と組む、また、最近では、共通の課題を乗り越えなければならない同業他社で構成される業界団体のイニシアティブで行動する、さらに、それら業界団体の動きを横断的に推し進める経済界のイニシアティブに参画する企業が増えています。SDGsは、企業経営におけるパートナーシップ戦略の位置付けを、これまで以上に高めています。

図5:ゴール17

図5:ゴール17

このようにSDGsXは、企業経営の計画段階と実施段階の両方で始まっています。

2019年5月、NTTデータは2019‐21年中期経営計画を公表しました。本中期経営計画の策定にあたっては、SDGsを参照し、実際にアウトサイド・インやバックキャスティングの考え方を取り入れています。多様なステークホルダーとのパートナーシップ、特に、お客様とのLong-term relationを基本に、引き続き、事業と企業活動を通じて社会課題を解決に導くことで、SDGsの達成に貢献してまいります。

参考

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