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2020年3月27日技術ブログ

ブロックチェーン技術が支えるトレーサビリティにおけるビジネス価値

ビットコインを支える基盤技術として、一躍世間の注目の的となったブロックチェーン。
その適用の期待範囲は今や暗号資産に止まらず、あらゆる産業領域にわたる。
本記事では、「ブロックチェーン×トレーサビリティ」という観点で、NTTデータが日本国内外の案件を通じて培ってきた知見と併せて、最先端テクノロジーが生み出すビジネス価値について説明する。

トレーサビリティとは

トレーサビリティ(Traceability)とは、日本語では「追跡可能性」と訳される言葉で、ビジネス領域における一般的な「トレーサビリティ」とは、原材料の調達から加工、流通、販売までの履歴を追跡(または遡及)できる状態のことを指します。

サプライチェーンの上流工程の事業者側は、自分たちの作ったものが「どこに行ったのか追跡(=トレースフォワード)する」ことができ、下流工程の事業者側や消費者は、製品が「どこから来たのか遡及(=トレースバック)する」ことができます。

戦前からあったこの「トレーサビリティ」の概念ですが、2020年現在においても、トレーサビリティのニーズは存在し、理想的なトレーサビリティ実現までには未だに大きな障壁が立ちはだかっています。

トレーサビリティの課題とブロックチェーン技術の適用可能性

では、このトレーサビリティに関して、NTTデータが国内外のプロジェクトを通じて抽出してきた課題とそれらに対するアプローチ概要をブロックチェーン技術という観点から具体的に説明いたします。

(1)協業企業同士のルールの不一致

上流工程から下流工程までの一連のサプライチェーンを繋ぐ企業同士が協業する場合、一企業が音頭を取って、垂直な関係で事業経営していくのであればまだしも、生産業者・卸売業者・流通業者・店舗業者等を水平な関係で繋ごうとすると、各企業の文化や重きを置いている価値観・認識のずれが障壁となります。

例えば、トレースフォワード(追跡)とトレースバック(遡及)のニーズを取ってみても、消費者に近い下流工程の事業者側は、リコール対応や製品の安全性訴求といった消費者にかかわる遡及ニーズが強い一方で、上流工程の事業者側では、製品の追跡ニーズがそこまで高くないという企業間のミスマッチが起こっています。

すなわち、現状、上流事業者側にとって、下流事業者側のニーズのために、業務をデジタル化してまで、データを提供するインセンティブがないことが課題のひとつとして挙げられます。

そこで、NTTデータはサプライチェーン事業各社、特に上流事業者側が何らかの導入価値を見出せるシステムの構築が必要であると考えています。

具体的に、製品の付加価値向上に寄与したデータ提供に対するインセンティブを授受し合うためには、『ある事業者が製品の付加価値向上に寄与した特定のデータを提供した』という情報の証跡がいつでも誰でも参照でき、検証可能となるような流通情報を可視化する仕組みが必要です。

したがって、事業者間で取り決めたポリシーに基づいて、インセンティブを分配し合える仕組みまで含めた複数事業者間のルール設計が求められます。

この現状を打破するアプローチとして、ブロックチェーン技術を用いた『トークナイゼーション(=Tokenization)』が挙げられます。

トークン(Token)とは、ブロックチェーン上に権利・情報を付与し、データ自体の価値を可視化することで、一種の経済圏を創り、新規ビジネス創発に期待されているブロックチェーン技術の一つです。

流通するモノとそれに関連する情報を紐づけてトークン化し、参画各社のデータ提供による製品の付加価値分の貢献度合いとポリシーに沿って、データ提供者にインセンティブが付与される仕組みをデータプラットフォーム上に構築していくことが必要となります。

(2)データ入力にかかるコストと信頼性

現場側では、「ヒト」を介して、手動でデータを入力しているケースが往々にしてあります。つまり、情報自体の真偽性や信頼性に関しては、基本的に「ヒト」に委ねられています。

現行の業務フローでは、入力情報に関しては現場担当者、入力された後の情報に関しては運用管理者といった「ヒト」に対する信頼性によって、データの信頼性が保証されています。言い換えれば、性善説を拠り所として、データの真正性が保証されていると言っても過言ではありません。

他にも、業務オペレーションに「ヒト」が介在することによるデメリットが存在します。例えば、運用ルールが統一されていないため、急な遡及依頼があった場合など、都度、参照コストが発生し、その依頼数によっては業務遅延に波及します。

その根本原因のひとつとして、複数事業者間が情報を連携する際のデータモデルが標準化されていないことが挙げられます。したがって、データ入力の正当性を担保するためには、まず、ルールを標準化・統一化した上で、IoTデバイスやセンシング技術等の現実世界のリアルなデータを吸い上げるためのテクノロジー群とデータプラットフォームを複合的にインテグレートしていく必要があります。

データの運用に関していえば、ブロックチェーンの技術要素を構成する暗号技術としてのデジタル署名やハッシュ値を入れることによる改ざんの困難性でもって、「ヒト」ではなく、「システム」によって、データの信頼性を担保していくデータ管理の仕組みが求められます。

(3)第三者信頼機関との連携にかかる規制の課題

では、上記の(1)と(2)といったビジネス的課題や技術的課題をクリアするだけで、トレーサビリティが実現できるかといえばそうではありません。(1)と(2)をクリアしたその先に、さらに規制の課題があります。

複数事業者がデータを持ち寄る際に参照コストがかかるという状況に通ずる話ですが、現在、アナログ運用を行っている事業者が第三者信頼機関に情報提出を行う役務が発生する場合、都度、アクセスコストがかかり、リアルタイムな情報の透明性が低い状況にあります。

昨今の国内外の流通市場を見れば、モノを国外に運ぶためには外部監査は避けては通れません。

そのためには、一連の追跡記録や情報を公開することで、外部の人もその記録に関係する当事者の行いについて正当性を検証できる必要があります。

スムーズな情報連携を実現するためには、情報の透明性を担保するブロックチェーン技術を用いながら、外部監査のための検査基準に合わせたルール設計を行っていく必要があります。

こういった取り組みは一企業の中だけで完結できる話ではなく、複数企業を巻き込んで、分野横断的にビジネスを推し進めていく必要があります。

システムの実現性を加味しながら、ガバナンスモデルを設計していくという活動は、よりチャレンジングな取り組みであると考えています。

終わりに

政府が掲げる『Society5.0』によれば、フィジカル空間(現実空間)とサイバー空間(仮想空間)が高度に融合された未来社会を提唱しています。

このフィジカル空間とサイバー空間を統合させていく取り組みこそが、現在、トレーサビリティシステムに求められていることそのものであり、そして、そのニーズは今後、拡大していくと考えられます。

昨今のサプライチェーン市場は、グローバリゼーションの波とともに、今までは国内流通のみで閉じていた製品が今までは届いていなかったエリアにまで流通網が広がっていくという潮流の中にあります。

そんな中で、新たなモノの流通が加速していく局面における規制側のスタンスとしても、そもそも、安全性が保証されていない製品が市場に出回ることを許すことはできず、より厳格な規制体制が国際的にも敷かれつつあります。

NTTデータは品質証明がデフォルトになっていくその先の世界を想定し、トレーサビリティニーズを支える技術としてのブロックチェーン技術へのアプローチ、そして、複数のテクノロジーを統合させることで生み出される新たな付加価値というものをお客様と模索していく必要があります。

これから実現していくであろうデジタル化社会に向けて、NTTデータはお客様と新たなビジネスを促進して参ります。

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