2020.6.29技術ブログ

コロナで変わる大学の形~加速するパラダイムシフト~

新型コロナウイルスの感染拡大は世の中の在り方を大きく変えた。教育・研究現場ではその変化が顕著であり、大学業界の現状が社会のパラダイムシフトの1つのテストケースとなるといえる。クニエで大学向けコンサルティングに従事する下山、石黒がその展望を語る。

1.コロナ以降、キャンパスが変わった

コロナ以降、ビジネスのさまざまな領域でバーチャル化が強制されています。その結果、いままでさまざまな効果が期待されていながらも、なかなか一歩を踏み出さずに済んでいたものが、今回強制されたことで、その効果が実感として認識されつつあります。最たる例が、リモートワークです。さまざまな課題はありますが、業務が効率的になった、働き方改革につながった、という声もよく聞きます。リモートは特段の事情がある場合に採られる手段のひとつではなく、あたりまえに行われるものであり、逆にリアルを選択することが違和感を持たれるといったマインドが醸成されたことも、重要な変化といえるでしょう。そうした環境では、単純なビフォア・コロナ時代のリアル前提のビジネスへの逆戻りが許容されないというのが、その大きなポイントです。アフター・コロナ時代は、ビフォア・コロナ時代への回帰ではなく、ウィズ・コロナ時代の延長線上にあるものと考えます。

これは一般の企業に限らず、私たちが支援している大学業界でも同様の事象が発生しています。 緊急事態宣言が出された4月~5月は、本来であれば新年度が始まって学生が一番多い時期ですが、多くの大学が基本的にリモート学修に切り替えています。その結果、大学に通う時間が有効活用された、大教室で行っていた授業でも質問がしやすくなった、理解が深まったという声も聞こえています。
ただ、問題が無かったわけではなく、ある程度リモート学修システムを整備できていた大学でも、すべての講義をリモートで行うことを前提としておらず、有事の対応として何とか環境づくりをしていたようです。
また、教職員も、基本的にリモート推奨となっていたものの、書類など、紙運用での課題や、ノートパソコンや通信機器の環境不備で教職員が交代で出勤せざるを得ず、今後の環境に課題を感じた大学もあったようです。
このように大学におけるリモートでの学修、教育・研究、事務は簡単でありませんでした。ただ、そうした状況でも、リモートに対するメリットやウィズ・コロナ時代を考慮した課題感から、学生や教職員のマインドが変化しています。
こうしたマインドがより定着していけば、学修も、教育・研究も、事務もリモートが前提となり、学生は自分の所属する大学に拘らず、いつでもどこでも好きな授業が受けられ、教職員は自宅等で教育・研究、事務ができる、そんな時代が来るかもしれません。大学そのものの在り方が変わっていく可能性もあります。

2.Society 5.0の加速がスマートキャンパスを実現する

大学に限らず、直近はコロナ問題への対応でリモートという物理的な距離に目が行きがちです。しかし、今回、多くの人が新たな認識を得たことにより、本質的にはSociety 5.0におけるスマート化が加速していくと思います。内閣府によると「フィジカル(現実)空間からセンサーとIoTを通じてあらゆる情報が集積(ビッグデータ)」し、また「人工知能(AI)がビックデータを解析し、高付加価値を現実空間にフィードバック」するような社会という説明がされています。
この流れはスマートキャンパスという形で大学にも広がってきます。大学ではまだ紙や人手が中心の運用が根強く残っており、学生の学修履歴や進路との関わり、教員の研究費の使い方や設備の活用のされ方など、有効活用できる情報がデータ化されていなかったり、分散してしまっていたりすることが少なくありません。ただ、スマート化が進み、リモートが主体になるとバーチャルでの行動・活動が情報として取り扱われます。最終的に様々な情報がリアルからバーチャルに置き換っていくことで、こうした情報の活用が可能になります。
これにより教育・研究活動の高度化、さらには私たちがコンサルティングで携わっている会計・財務の側面でも多くのメリットがもたらされると考えています。

3.単なるバーチャル化は、重要な付加価値をなくしてしまう

ただ、リアルな場を単純にバーチャルに置き換えるだけでは不十分です。リアルな場で大学が提供している重要な付加価値が何なのかを見定め、それが抜け落ちないような工夫が必要です。たとえば、リアルな場の講義では、隣の席になった学生同士の交流や、講義後に一緒に学食に行くことまで含めて付加価値となります。また、実験や実習など、どうしてもバーチャルでは完結しないものも存在します。教職員の業務も同様で、例えば学生から受けた問い合わせの回答をAIに任せれば効率化はできますが、本当にそれだけで良いのか、立ち止まって考える必要があります。

4.スマートキャンパスの実現と大学改革

では単なるバーチャル化とならないよう考慮すべき付加価値は何でしょうか。 スマートキャンパスでは、さまざまな「情報」の流通が促進されます。ただ、実際のインパクトは「情報」に限らず、「ヒト」、「モノ」、「カネ」を含め広範囲におよびます。端的にいえば、大学改革そのものの話に発展してくると考えています。

・「ヒト」の観点

たとえば、教員の在り方に影響が出てきます。極端な例になりますが、バーチャルな場で講義を提供するのであれば、優れた教員の動画がいくつかあれば十分です。そうすると、講義に充てていた時間をもっと少人数ゼミの指導の時間や、教員自身の研究時間に充てることもできるのではないでしょうか。

・「モノ」の観点

大学の施設の在り方が変わります。大講義室は不要になりますし、リモート学修による低稼働の施設の再構成が可能となります。結果として、ラーニングスペースを工夫した施設等への投資を行う余裕が出てくるかもしれません。全国の設備の配置状況と利用状況が一元的にデータ化できれば、より効率的に施設を共同利用することもできます。

・「カネ」の観点

大学の収入は、公財政からの収入や学生納付金収入の割合が相当大きい状況です。ただ、公財政からの収入は減少傾向、学生納付金収入も18歳人口の減少もあってあまり期待できません。また、国からは寄附金や受託研究費といったいわゆる自己収入の獲得や財源多様化を求められています。運営から経営への急な転換を求められる状況に戸惑う声をよく聞きます。近年までは、支出削減の取組みで踏み止まってきた大学も多いのですが、今後は、教育・研究の質や量を担保するために、収入獲得にも注力する財務改革が不可欠となります。
財務改革には支出面と収入面の2つの側面があります。支出については、これまでもある程度取組みが進んでいますが、スマートキャンパスの実現により、不要なものが明らかになり、今後本当に必要な教員や施設に投資が可能になってきます。他方、収入については、大学の持っている資産の活用がポイントになります。この資産は単なる「モノ」ではなく、もっと広義の意味です。大学にいる学生や教職員といった「ヒト」も資産ですし、大学の保有する流動資産等の「カネ」もあります。また、スマートキャンパスの実現によって一層蓄積されるであろう「情報」も資産です。それらをうまく活用したスキームを組み立て、収入の獲得につなげることが可能だと考えています。

・「情報」の観点

最後に、「情報」の観点です。大学は公財政からの収入が多いことも影響して、公的機関への申請、許認可、実績報告といった紙文化の手続きが多く存在しています。電子化に向けて業務を見直す動きはありますが、データ化の作業負担や業務の見直しの負担もあってあまり進んでいません。しかし、リモートが前提になると、紙ベースでの業務は実施できないため、紙文化を見直す契機になり、結果として「情報」という資産を活用可能な形であるデータとして蓄積することに繋がります。例えば、研究予算と成果のデータが集まれば、もっと効果的な投資判断が可能になります。また、学生の学修データ(履修した授業や提出したレポート、研究成果等)があれば、企業はより求める人財を採用できるようになります。進路のデータが集まれば、大学と企業の共同研究は相互に声掛けしやすくなり、産学連携はもっと活発になるでしょう。大学への出資を行う企業も増えるかもしれません。大学は、この強制的な社会環境の変化を、むしろチャンスとして前向きにとらえるべきだと思います。

図:ヒト・モノ・カネ・情報のパラダイムシフト

5.アフター・コロナ時代の大学の方向性

新型コロナウイルスは人の生命に影響を及ぼしたり、自粛による収入が減少したりといった問題があるのは事実です。しかし、この困難や社会・人々の変化をチャンスと捉えて、いかに前向きな行動ができるかが、非常に大事だと思っています。
近年、大学は各校の強み・特色を生かした機能強化が進んできました。そしてさらに、今後はこのコロナ問題を契機として、そうした機能強化を加速できるか否かが、未来に大きく関わってきます。
大学は単なる独立した教育・研究機関ではなく、企業や社会と深く関わる存在です。大学が変化していくことが、社会の変革を大きく前進させることに繋がってゆくのです。クニエは、このタイミングをチャンスと捉える改革意欲の高い大学とともに、アフター・コロナ時代の新たな大学経営の在り方を検討し、また実行していく支援をしていきたいと思っています。

株式会社クニエ:https://www.qunie.com
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