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2020年8月14日INSIGHT

“紙よさらば”Vol.2 ペーパーレス化20年の歴史を持つ建設業界に学ぶ

建設業界の工事発注は、いわゆるピラミッド構造と称される。元請けを先頭に1次、2次請けへと続く中で、見積、契約、出来高報告、請求など書類のやり取りが頻繁に行われる。この効率化と紙削減を図る電子化を、建設業界は20年前から取り組んできた。業界内でデジタル対応の中心的な役割を担うコンストラクション・イーシー・ドットコム村瀬知良取締役の話を通し、デジタル化するメリットや重要性を探る。

競う必要のない事務作業

――押印や原本書類(紙)がビジネスプロセスには欠かせないとする考え方を見直し、デジタル化で業務の効率化、紙の削減を図ろうとする機運が高まっています。しかし、昔ながらのやり方に固執する抵抗勢力は企業内に根強く、ハンコ文化を変えるのは容易ではないのが現状だと思います。建設業界はどのようにして契約書などの電子化を実現させてきたのでしょうか。

村瀬
大手ゼネコンを中心に電子契約などのデジタル化に向けた基準づくりでコンセンサスをとったことがあげられます。コンペティターと同じ仕組みを持つことに違和感を持つかもしれませんが、競うのは技術力・施工力です。そのほかの一般業務とくに下請も関係する事務関係は共通化している方が、元請だけでなく下請も利便性が高まります。例えば建設業界では、ジョイントベンチャー(JV)として他社と共同企業体を設けビルなどを建設することがあります。インターネットが普及し始めたとき、一つのJV建設現場で、構成企業ごとに各社の社内システムへ接続する方法が存在しました。JV建設現場にも共通のネットワークが必要です。スポンサー企業によってネットワークの方式が異なると非効率となります。そこでJV建設現場のネットワークの考え方・方式が建設業界で統一されたということもあります。このように、仕組みを共有する電子化は、競う必要のない事務作業の効率を大幅に向上させる効果があります。

現在の電子商取引の取組みは、国土交通省が建設業界の生産性向上、企業間取引の効率化・高度化のほか、取引の適正化と透明性を確保し、コンプライアンス促進につなげようと推進したことに始まります。2001年4月には建設業法が改正され、電子契約が可能になり、建設業界全体で電子化が進むことになりました。

建設業界における企業間の商取引を電子的に行うための業界標準のEDIルールとしてCI-NET規約が設定され、見積依頼と回答、注文と注文請け、出来高報告と確認、請求等のデータ交換などが可能になったのです。現在、当社はCI-NET規約に準拠したASPサービス「CIWEB」を提供しています。

トップダウンで進んだ電子化への対応

トップダウンで進んだ電子化への対応

――業界統一の標準ルール作りで困難だったことはありますか。また、CI-NETの現状を教えてください。

村瀬
大手ゼネコン各社のトップがデジタル化への取組みに積極的で、行政側の後押しもあり、基準ルール作りはスムーズだったと聞いています。トップダウンで行われたことが、いち早く電子契約へと舵を切ることができたわけで、これは他業界とは違う点かもしれません。ただ、仕組みを業界内に浸透させていくのは容易ではありません。その流れは現在も続いていることですが、元請が電子化しても下請が対応しなければ、昔ながらの紙が介在するやり取りになってしまいます。対応がなかなか進んでいない地方ゼネコンなどへは、機会を設けて説明に出向くなど地道な努力を積み重ねています。

CI-NETがスタートした2000年度の利用社数は598社でした。その後、10年程度は大手ゼネコンを中心に利用社を増やし2012年ごろから中堅・地方ゼネコンへの展開を始め2019年度は1万2,640社に達しています。このうち当社のCIWEB会員数は約8割を占める9,800社。現在会員数は順調に増加し、7月末時点で1万社を超えました。

――CIWEBの特徴としてどのようなことがあげられますか、その導入効果についてもお聞かせください。

村瀬
クラウドサービスのため、導入期間が短くハード・ソフトはもちろん維持管理も必要ないので、低コストで契約書などの電子化ができるのが大きな特徴です。紙に印刷して郵送する作業からも解放されますので事務負担は大幅に軽減できますし、電子化することで契約書に必要となる印紙代が不要になりコスト削減にもつながります。また、蓄積された見積の明細データの活用もできるほか、建設業法に基づくチェック機能や業務ごとの業務権限機能などがあり、社内監査など適切な対応が可能になるなどコンプライアンスへの寄与もあげられます。信頼性、安全性を有しているのはいうまでもないでしょう。

コンストラクション・イーシー・ドットコム 取締役 村瀬知良 氏

きめ細やかなサポートが不可欠

――電子化を業界内でさらに普及させていくためには、どのような展開を考えているのでしょうか。

村瀬
建設業許可を持つ企業は全国に約45万社あり、現状の電子化対応社数でみれば、まだこれからです。さらに中堅・地方ゼネコンへの電子化普及に力を入れていく必要があり、紙の削減や印紙が不要など目に見える効果に加え、生産性向上や働き方改革に寄与する等のメリットも伝えていきたい。

同時にサポート体制も充実させていきます。ASPサービスなので、電子化を開始するための新たな設備負担は不要です。しかしながら、CIWEBを使えこなせない担当者も少なくありません。ヘルプデスクでの電話応対やオンライン遠隔サポート、操作講習会の開催のほか、eラーニングツールの提供も行っています。

発注者がCIWEBを導入される際には、そのサポートだけでなく、社内や取引先への操作説明会なども支援させていただいており、きめ細やかな対応をより積極化させていく方針です。さらに、何度も強調しますが、電子化によるメリットを1社でも多く伝えていくことが重要ですし、それが当社の使命だと考えています。

――日本社会が目指すべき姿の一つとして紙書類を電子化することが必須だと思います。いち早く取り組み着実な成果を出されている建設業界から見て他業界への電子化への流れをどのように見ていますか。

村瀬
取引には多くの手続きが必要で、その都度、書類を作り押印するのが日本的ビジネスの特徴ですが、この流れは間違いなく変化していくと思います。電子化するメリットに触れれば、押印しない不安感は無くなるはず。安全面からみてもクラウドでしっかりと保管されるので、不幸にも災害に見まわれて紙の契約書が流出しても、電子化してあれば、この面では問題ありません。

契約書はどの業界にもあるので、すべての契約書類をまるごと管理する電子契約サービスを業界に関わらず広げていきたいと思います。弊社は、これまで培った電子契約サービスの業務ノウハウを活用し、業界・業種を問わず、より多くの企業にご利用いただける電子契約サービスとして「CECTRUST-Light」の提供を始めており、すでに約2,500社でご利用いただいております。また、グローバルスタンダードな電子文書管理サービスである「DocuSign」の展開も行っていますので、顧客ニーズに合わせた電子契約サービスを提供することが可能です。

時代は確実にデジタル化に向かっています。社会の仕組みを変えていく取組みを通し、建設業界だけでなく幅広い業界の発展に寄与していけることに誇りを感じています。

コンストラクション・イーシー・ドットコム CIWEBサービス

http://www.construction-ec.com/ciweb-services/

コンストラクション・イーシー・ドットコム CECTRUST-Lightサービス

http://www.construction-ec.com/cectrust-light/

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