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2020.9.8技術ブログ

COVID-19により米国で急速に進む産業構造の変化 Vol3.ヘルスケア編
~危機の時こそ積極的に加速する米国の力強さに学ぶ~

NTTデータは北米でテクノロジートレンドの調査やMIT等の先進研究機関やスタートアップと先進的なPoCを進め、お客様への情報提供や提案に活用している。今回、現地に駐在する社員から、COVID-19により米国で進む変化について4つの業界についてレポートする。
これらの変化のコンセプトは決して新しいものではないが、危機の時こそ積極的に投資して予見されたコンセプトを実装し加速する米国の力強さは、我々日本企業も学ぶところが多い。

  1. 物流 ~ Resilient Supply Chain
  2. リテール ~ 店舗は生き残れるか
  3. ヘルスケア ~ 遠隔医療の進展
  4. 金融 ~ 金融のリバンドル

COVID-19がもたらした遠隔医療の急速な浸透

昨今のICT技術の発展にも関わらず、米国における医療・ヘルスケアサービスのデリバリ形態は1918年にスペイン風邪が流行して以来100年間ほとんど変わっていませんでした。いわゆる対面ベースの診断・治療サイクルが、年間5億人のプライマリケア(かかりつけ医)訪問の中で繰り返されています。
しかし、COVID-19は、その対面ベースの医療サービスを非対面へ強制的に変化させることになりました。「10年で起こるべき変化が1週間で起こった」、「POST COVID-19でも元には戻らないだろう」、これが巷のヘルスケア業界アナリスト達の見解です。
ただし、この変化はこれまで着実に準備されてきた結果であると認識する必要があります。米国では国土の広さ等の理由により早期から遠隔医療サービス導入が進められていました。全米の約6,000の病院における遠隔医療システム導入率は2017年時点で76%に達しています。一方で、保険によってカバーできるのか、プライバシーの懸念、技術リテラシ等、様々な理由で、医師・患者サイドともに積極的な利用には至っていませんでした。患者サイドにおいては「なんやかんや言ってやっぱ対面が良いよね」という身も蓋もない理由が一番に挙げられていて、そのような患者のマインドが大きな普及の障壁にもなっていたようです。
しかしながらCOVID-19はそのような患者のマインドチェンジを起こすだけではなく、政府による規制緩和拡大、保険会社の遠隔診療の償還カバー範囲の拡大等、これまであった利用障壁を取り除きつつあります。一つの例として、カルフォルニア州にあるUS San Diego Healthでは、3月中旬から遠隔医療件数が激増、対面医療件数を逆転し、以降、それが継続しているのがわかります。

図1:Telehealth Visits Allow Patients to Connect to Care During COVID-19

図1:Telehealth Visits Allow Patients to Connect to Care During COVID-19
https://ucsdnews.ucsd.edu/feature/telehealth-visits-allow-patients-to-connect-to-care-during-covid-19

また、遠隔医療の利用増にともなって、遠隔医療のラストワンマイルとも言える、オンライン薬局にも注目が集まっています。具体的には、オンラインでの診察を行った後、オンラインで処方箋を受け取り処方薬のパッケージング・デリバリまでを行うサービスが急速に展開しており、また、ドローンを利用した処方薬デリバリサービス等も始まっています。

分散・非接触型医療に向かうヘルスケアイノベーション

COVID-19は、遠隔医療・オンライン薬局の他にも、これまでも進行していた様々なデジタル技術によるヘルスケアイノベーションの実装を加速しています。Point-of-Care診断、モバイルヘルスデバイス(mHealth)、デジタル療法(Digital Therapeutics:DTx)、ヘルスケアロボット、EHR(電子カルテ)データインテグレーション等、医療現場・医療システムを「物理的コンタクトレス+デジタルコネクテッド」された分散・非接触型の医療に変えていくモーメンタムを作っていると言えます。
これらの中からモバイルヘルスデバイス(mHealth)について具体的に紹介します。遠隔医療サービスのユーザー体験、治療効果、スピード、安全性を高めるために、モバイルヘルスデバイスの活用が試行されています。

Binah.ai:スマートフォンのカメラ等で撮影するビデオ(顔)から様々なバイタルサイン(心拍数、心拍数変動、呼吸、酸素飽和度等)を測定する技術により、遠隔医療中に医師が患者のバイタルサインに関する情報を確認できるようにする。

https://www.binah.ai/industry-digital-health-covid-19/

Tyto Care:自宅等で体温、喉、耳、心音、肺音等を遠隔診察するための小型デバイスを提供し、デバイスとアプリを通じて医師のガイドを受けながら診察を可能にするサービスを提供できるようにする。(4月に$50M調達)

https://www.tytocare.com/cmp/covid-19/

当然、これらの技術はCOVID-19のみではなく、慢性病等の様々な病気に対しての遠隔医療に活用できます。COVID-19のShelter-In-Placeは糖尿病等の生活習慣病を増加・悪化させるとも予想されていますが、こういったモバイルヘルスデバイスの活用がますます重要となるでしょう。

図2:TypoCare Kits

図2:TypoCare Kits
https://www.tytocare.com/

そして、モバイルヘルスデバイスも含め、こうしたイノベーションによる分散・非接触型医療が目指すところは何でしょうか。COVID-19以降に創られるべき”Build Back Better”な世界を想像すると、「医療が病院だけで行われるものではなく、社会・生活全体の中で医療従事者や患者にとって適切なタイミング、適切な場所で行われるものに変わる(”Healthcare in the right place and at the right time”)」ということではないかと考えています。そのような世界では、保険会社、医療機関、製薬企業、ガバメントと協力して、各種医療サービスをデジタル化しインテグレーションするための高信頼でセキュアなプラットフォームが必要・重要になってくるでしょう。

日本市場に対する示唆

遠隔医療の普及はCOVID-19以降も続くと考えられます。今回のパンデミックへの対応で様々な課題がレポートされると考えられますが、その経験・対応策は日本においても重要な検討材料になります。今後大きなチャンスになり、一方、日本では遠隔医療システム導入が米国ほど整っていないことや、規制面の相違、保険償還の問題等があるため、日本に合った遠隔医療導入ビジョンを検討する必要があります。
また、遠隔医療を起点にして、医療の分散化や非接触化する技術・イノベーションの導入が進むと考えられます。特に遠隔かつ適材適所で医療サービスを提供するためには、EHRデータへのアクセスが必要不可欠です。米保健福祉省によると、2017年時点で米国の病院の96%、開業医の86%がEHRシステムを導入しているのに対して、日本ではまだ導入率が低い状況であります。この課題を解決するためにEHRや他の様々な新技術利用を可能とするSaaS的なPFサービスの提供に大きなチャンスがあるかもしれません。

次回は金融編をお届けします。

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