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2020年12月15日INSIGHT

「Service Design」と「Digital Experience」で進化するデジタルマーケティング

猛威を続けるCOVID-19により私たちの生活は一変した。BtoC企業は生活者とのリアル接点の持つ意味を再考し、リアルとデジタルを自在に行き来するカスタマージャーニーの実現に向けた試行錯誤が進んでいる。モノに溢れる超成熟社会において、数ある商品からいかに自社の商品・サービスを選択してもらうか、もはやこれは商品自体の魅力を高めていくプロダクトアウトの発想だけでは解決できないレベルに行きついている。どのようにして永続的に生活者との関係性を紡いでいくか、生活者にとって快適な距離感・頻度・内容で寄り添うマーケティングのあり方を模索するチャレンジについて、NTTデータ SDDX事業部の内藤一章に聞いた。

NTT DATA Innovation Conference 2021において本記事に関する講演があります。
詳細は本記事の下部をご覧ください。

SDDX──それは能動的に体験変革をドライブするためのキーワード

2020年現在、私はNTTデータ内のSDDX事業部という組織に所属しています。
SDDXは、「Service Design」と「Digital Experience」という二つの言葉が合わさってできた言葉です。

同事業部は、お客さまのデジタル変革の加速と新規デジタルサービス創出を目的に2019年4月に誕生し、顧客接点領域から企業全体のデジタルトランスフォーメーションを実現することをミッションとしています。半歩先の未来を見据え、先進的な取り組みにチャレンジされているお客さまとともに、圧倒的な業務変革を最新のテクノロジーを駆使して実現していくことをポリシーとしています。

私自身、SDDXには2019年11月から関わっていますが、それまでのキャリアは長らく広告や放送といったセクターにおいて、メディア業界の重要なお客さまを担当する営業を担当していました。顧客営業はお客さま自身の事業成長を共に実現していく事に徹底してこだわりを持つやりがいのある仕事なのですが、複数のお客さまを担当し業界俯瞰的な課題に直面すると、新しいサービスをご提供し、広く課題解決を図りたいと考えるようになりました。

現組織は、サービスの創出を主たるミッションとしており、ビジネスディベロッパー、サービスデザイナー、コンサルタント、セールス、デリバリ等、多様性をもったタレントが集まり、業界のお客さまに横たわる共通的なマーケティング課題を解決するための取り組みを進めています。この多様性を束ねて市場価値の高いサービスを創出することはとても難しくもあり、刺激的でもあります。

「繋がる」技術から「繋がり続けたい」サービスへ

5Gといったモバイルネットワークの進化、クラウドサービスの普及によって、消費者がさまざまなデバイスを通じてサービスと「繋がる」ことは身近なものになってきています。

これにより今まで取ることができていなかったデータが日々蓄積されてきています。例えばPOSデータは、購入者と購入された商品との紐付けのみが基本でした。しかし2019年に当社が実証実験を行ったレジ無し店舗「Catch&Go」では、購入者が店内をどのように回遊したか、商品の棚から何を手に取り、何を戻したのかといった情報が人と紐づく形でデータ化されるようになったのです。

図1:Catch&GOの概要

図1:Catch&GOの概要

そうした中で、消費者が本当に利用し続けたい(繋がり続けたい)サービスをいかに生んでいくのかがポイントになると思っています。

流通・小売の業界の中でデジタル技術を積極的に活用している企業はまだ数少ないものの、いかに商品の在庫を余すことなく届けるのか、という基本的なマーチャンダイジングの概念を踏まえたうえで、消費者との長期的なエンゲージメントを築くというところに試行錯誤して挑戦しているお客さまは多くいらっしゃいます。

こうしたお客さまに対して、私自身も“カスタマーサクセス”を意識して日々活動を進めています。例えば「CAFIS Explorer」という当社のサービスをとある鉄道グループ会社様に導入いただいています。ここでは、主に商業施設で買い物をした際のお客さまのポイントを管理しています。導入して1年くらい経ってデータが溜まってきているので、それを活用して、お客さまのために、どういった施策を打つべきかというデータ分析までサポートしていく取り組みを進めています。

図2:CAFIS Explorerの概要

図2:CAFIS Explorerの概要

私たちが提供するサービスをご活用頂くお客さま、更にその先の生活者の皆様にとって豊かさや便利さを提供していくことを第一義として事業を営む姿勢が何よりも重要であると考えています。

消費者とのエンゲージは流通小売以外も注目

私たちのお客さまは流通小売業が中心ですが、Direct to Consumer(D2C)の時流により、メーカーも消費者との長期的な関係性を築いていくというトレンドが更に進むと考えています。

自動車メーカーがモノを売る視点からモビリティを中核としたサービス事業に変容する、スポーツメーカーが生活者の健康増進プログラムを提供する等の動きが進んでいますが、これは、従来のモノの購入(消費行動)の裏側にある本質的な生活者の欲求そのものを継続的にサポートし続け、生活の一部に溶け込んでいく関係性を企業側も生活者側も双方が求めていることの現れだと思います。つまり、今後はなおいっそう単に安く、手軽に取得できるといった即物的な視点だけでは長期的な関係性の持続が難しくなってくることを意味しており、より自身のライフスタイルや価値観に合致している等の心理的な側面での共感性をいかに高めていくかがより重要になってくると考えています。

サービスは、つなげて、大きくする

サービスを創出するにあたっては、早期に市場に表出させるスピード感がとても重要です。市場と対話しながら、継続的に磨き上げていくという断続的なPDCAを回していくアプローチこそが求められています。その反面、私は少し違った懸念を感じています。早期に立ち上げ、早期に投資回収することを優先するがゆえに、そのサービスが解決する課題がピンポイントなものになりがちであるという事です。その結果、サイロ化されたサービスの乱立、生活者からみたジャーニーの断絶とも言えるような事態に陥りがちだなと感じます。
こうした状況を考えたとき、生活者のニーズに寄り添い、サイロ化しがちなサービスを組み合わせ、それだけでは事足りない場合は人の力も組合せて、体験価値を高めていくことが重要になると思っています。サービス単体としての価値を高めることは私たちの事業活動上大切な事ですが、一方でいかに組み合わせてより便利な体験を提供する、この両視点を並走させる意識がとても大事であると考えています。

例えば、先ほど例に出した「CAFIS Explorer」は、会員様のポイント付与・利用情報を管理するために汎用的なAPIを提供していますが、そのAPIを駆使して、とある企業様ではベンチャー企業と連携してグループ内の商業施設の買い回りを楽しんで頂くキャンペーンを企画・実践しました。

新しい体験を作っていく上では、私たちだけで完結するのでなく、よりオープンに幅広い繋がりの中でデザインをしていく、かつそれをスピーディーに試す、そのチャレンジの結果を企業様と生活者の双方の価値の側面から評価すること、そしてこのようなチャレンジを重層的に繋げていくことが何よりも重要だと考えています。

機能的価値と情緒的価値

私自身、現在の部署に属する前の2015年頃から、「上質なコミュニケーション」というテーマで、いかに人とデジタルが共生するのかについて、コンタクトセンタを舞台にチームを作り検討してきました。その頃からずっと思っていることは、テックドリブンで考えた「こうあったら便利だよね」という考えではピントを外してしまいがちということです。そこに人ならではの「しっかりとコンテクストを読み取る力」を加味して、本当にユーザーにとって嬉しいサービスは何かを、テックと人間的な視点との折衷で作っていくことに拘らないといけないと思っています。

これは、機能的価値と、情緒的価値という言葉で表されます。
機能的価値の追求はテクノロジーで解決できて、再現性が高いもの。情緒的な価値というのは、単にパーソナライズするのではなく、「あなたにこういう生活をしてほしい」とか「こういう企業であり続けたい」といったようなエモーショナルな部分も含めて共感してもらうことで、オリジナルな価値を出すという点でなにものにも代えがたいものです。

図3:機能的価値と情緒的価値

図3:機能的価値と情緒的価値

NTTデータとしても、小売店向けに、アバター遠隔接客を提供しています。非接触でアバターを介しながらも、オンラインの先にいるコミュニケーター(接客担当者)を通じて、消費者が欲している情報をしっかり汲み取ったコミュニケーションと、丁寧な接客ができ、デジタルデバイスを介しながらも、情緒的価値を提供できるものと考えています。

とくに、昨今のコロナ禍における状況を考えたときに、初期段階においてはいかに非接触を実現するか、そのための安心・安全の方向性に寄っていました。しかし今は「人」だからこその価値への揺り戻しがきていると思っています。
むしろこの方が本質的で、今後はそれを模索する動きがあらゆる業界で進んでいくのではないでしょうか。

真のカスタマーサクセス実現に向けて

NTTデータでは、Salesforce社のサービスを活用した事業拡大にも取り組んでいますが、私たちの事業部でもデジタルマーケティング領域におけるSalesforce社との連携に取り組んでいます。

私たちの根源的な存在意義は、生活者にとってより豊かで便利なサービスを企業が提供できるよう支援することにあります。そのためIT導入は、“はじめの一歩”に過ぎません。導入したITを駆使して、生活者の方といかに良質なコミュニケーションを築いて頂くか、そして生活者との間に絆にも似た長期的な信頼関係を紡ぎあげて頂くか、企業様と共に二人三脚で取り組んで頂きたいと考えています。これが私たちなりのカスタマーサクセスの考え方です。このような話を、より積極的に言えるようになったのも、2019年度から当社グループの一員となったネットイヤーグループとのタッグが実現したからでもあります。彼ら彼女らと共に、またその他多くのコラボレーションを通じて、私たちもSDDXを進化させていきたいと思っています。

講演情報

NTT DATA Innovation Conference 2021
デジタルで創る新しい社会
2021年1月28日(木)、29日(金)講演ライブ配信
2021年1月28日(木)~2月26日(金)オンライン展示期間

2021年1月28日(木)15:15~15:45
「生活者と企業が共生する時代へ(BtoCからBwithCへの潮流)―デジタルの時代だからこそ大切にしたいこと」
NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部
SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部
内藤 一章

お申し込みはこちら:https://www.nttdata.com/jp/ja/innovation-conference/

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