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2021年3月16日INSIGHT

ニューノーマルを豊かに。新しいパーソナルデータ活用

新型コロナウイルスの流行を発端として、人々の価値観・常識が一変し「ニューノーマル」の用語も一般的になりつつある。日本国内で注目されてきている「情報銀行」が「ニューノーマル」においてどのような役割を期待されているか、紹介する。

2020年は新型コロナウイルスの流行を発端に、様々な変化が生じた1年となりました。
NTTデータが属するNTTグループでは、間接部門を中心に在宅勤務5割を標準にすることを掲げ、「ニューノーマル」な働き方実現に向けて急速な行動変容が進んでいます。
変化しているのは働き方だけではありません。人々の価値観も変化しています。
本稿では、パーソナルデータ利活用に生じている変化や、日本特有の「情報銀行」の取り組みが「ニューノーマル」において期待される役割を紹介したいと思います。

パーソナルデータ利活用の広がりと課題

新型コロナウイルス流行以前から、EUをはじめとする諸外国においては個人情報を含むパーソナルデータの利活用の試みがなされてきました。新型コロナウイルスの流行を発端として、生活や命を守るために、更にパーソナルデータを活用していこうという動きが活発化しているようです。
例えば南アフリカのケープタウン大学では、施設への入退室の際、職業情報(当該施設に勤務しているという情報)と健康情報を組み合わせて、施設へ入場する権利を証明するソリューションが開発されています。またEUは「新型コロナウイルスワクチンの接種有無、PCR検査の結果や新型コロナウイルスの感染歴などを記録する『グリーンパス』を発行するための法案を2021年3月中に提示する』と、表明しています。これらは自身の生活を守るために、複数のパーソナルデータを組み合わせて「自己証明」するものとなります。 また、スイスのスイス連邦工科大学においては、咳の音声を記録するだけで新型コロナウイルスの感染を診断するソリューション「Coughvid」が開発されています。これは、一種のパーソナルデータとも言える「咳の音」を多くの人が提供することで実現可能となります。同大学は将来的に70%程度の精度を目標にすることを掲げています。
上に挙げた2つの例は、いずれも自分自身あるいは他人の生活や命を守るためにパーソナルデータを提供、活用する事例であり、このような事例が増えてきたことがここ1年での特徴と考えられています。

パーソナルデータを提供する一方で、提供時の条件を正確に理解し、納得したいという個人の要望も高まってきました。個人のそのような要望に対して、企業も対応を進めています。企業側も自社の活動の正当性を個人に理解してもらおうと取り組んでいるのです。
GAFAの一企業であるアップルは、個人がアプリをインストールする際にプライバシーポリシーのハイライト版表示を義務付けることを表明しました(※)。アップルは個人に対して分かりやすく通知し、条件を理解した上でのインストールを促すことを目的としていると考えられます。

しかしEU諸国では、パーソナルデータ利活用を全て個人に委ねることとした結果、流通しにくくなってしまったという課題が出てきています。そのような状況下で、世界からも今後の動向が注視されている日本の取り組みがあります。それが「情報銀行」です。

情報銀行はパーソナルデータ提供に関する個人の判断をサポート

個人情報保護法改正のポイント、今後の方向性は?」にもある通り、2020年の個人情報保護法改正では、現在の社会状況にあわせて個人情報の保護と利活用両面でのアップデートがされました。
しかし、「自分のパーソナルデータを利活用して、何か新たなサービスを受けたい!」となったときに「どんな会社やサービスに、どのような情報を提供したら良いのか?」「情報を提供することに危険はないのか?」といったことを全て自分で調べて、調査することは大変ですよね?
このような課題を解決するとともに、個人の要望を理解して、個人に代わって判断してくれる、あるいは助言してくれるポジションとして期待されているのが「情報銀行」です。

「AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ 中間とりまとめの概要」(内閣官房IT総合戦略室)より

図の左側にある事業者A~Cはあなたのパーソナルデータを保有している企業で、右側の事業者D~Fがあなたのパーソナルデータを活用して、あなたに新たなサービスなどを提供したい事業者だとします。
このとき、情報銀行はあなたが希望する条件などを考慮した上で、あなたへの便益還元や、あなたが期待する結果(社会全体への還元等)が実現できるように、判断を補助することが期待されています。
例えば、最近のSDGsの認知度向上もあり「サステナブル経営に力を入れている企業に対して積極的にデータを提供し、自身のデータを利活用してもらいたい!新たなサービス提供を受けたい!」と考える方が増えているかもしれません。情報銀行はそういった条件を加味して「その条件であれば、事業者Fへあなたのデータを提供しましょう」と助言をしてくれます。
第三者である「情報銀行」が個人の預託を受けパーソナルデータの利活用を推進する。この日本発のモデルは、EU諸国で生じたパーソナルデータ利活用の課題を解決する手段として注目されています。

情報銀行への高まる期待

グローバルレベルでは「個人がパーソナルデータを自分自身のために使い、自分の意思で安全に共有できるようにする」ことを目的とした組織「MyData Global」が精力的に活動しています。NTTデータも会員として所属する「MyData Global」では、考え方に賛同する世界各国の企業や個人が定期的に集い議論するほか、取り組みの紹介や意見交換を行う「MyData Conference」を毎年開催しています。
2019年に開催された「MyData Conference」では、「情報銀行」がパーソナルデータ利活用の新たな手法として注目に値すると紹介されました。実際に「情報銀行」として事業を開始した企業も出てきており、いよいよ事業が本格化し、皆さんが利用する日が近づいてきているとも言えます。

人々の考え方や価値観が大きく変容した「ニューノーマル」は、自身の意思でパーソナルデータをコントロールする「自律分散型社会」の到来と言えるかもしれません。「情報銀行」は「自律分散型社会」において、あなたの生活をより豊かにする助けとなるでしょう。

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