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2021年3月22日INSIGHT

連載:企業のDX推進アプローチ(3)

デジタルトランスフォーメーション(以降DX)の取り組みを実施している企業も増えており、DXは根付きつつあるといえるが、成果を出せている企業は2~3割前後にとどまっている。DX推進の成功方法について、計3回の連載記事で紹介する。

前回は、DX活動で直面する代表的な課題と対応について議論した。最終回は俯瞰的な視点で、DXを成功に導くための4つのチェックポイントについて議論する。DX活動中の方もセルフチェックの参考にしていただけると幸いである。

DX活動のポイント

Q:DX活動確認すべきチェックポイントは?

‐チェックポイント(1):DX活動のゴール・目的設定はできているか

船木まずは、「DX活動のゴール・目的の設定」がポイントとなりますね。AI/IoT等のテクノロジーを活用して、業務起点からあるべき事業像を打ちだし、DX活動につなげていくことが重要です。これができていないとPoCから先に進まないといった事態になりえるでしょう。

前回の議論にも挙がりましたが、経営層との協力体制構築が重要です。加えて、現場の目線を上げるためのゴール設定、現場の腹落ちを実現するための目的の明確化が肝になります。

チェックポイント(1):DX活動のゴール・目的設定
  • 経営層の協力体制が構築できているか?
  • 目線を上げたゴール設定ができているか?
  • 現場の動機づけのための目的の明確化ができているか?

鈴木DX活動は社長や副社長といった強力なリーダーシップのもと、トップダウンで全社活動化する場合が多いですが、ここでいう経営層とはそのリーダー以外の役員をさします。経営層の協力体制の構築とは、経営層がDX活動について理解し、当事者・活動のスポンサーとして活動内容にコミットメントする状態をつくることです。経営層と密にコミュニケーションを取り、経営層の思い・考えの明文化により実現していきます。

小川目線を上げるために、我々のような外部コンサルタントが支援するケースが多くありますね。その際によく、「事例を知りたい」と要望を受けます。事例を参考にするのはよいですが、単純に「あっ、この事例つかえるね!このようにしよう」と、思考を停止していませんか?私自身は、「ひとの振り見てわが振りなおす」ポリシーで、自分たちならどうするべきかを考えます。その上で、事例を活用し、目線を上げるためのゴール設定のお手伝いをしています。

鈴木なぜそのゴールをめざすのか、目的を明らかにするのも重要ですね。経営層とゴール設定をしたのち各事業部のリーダーへ話を下ろす際、経営層が抱いている危機感や市場の動向等を併せて伝えましょう。「なぜその施策をやるべきか?」を丁寧に伝えることも現場の動機づけとなります。

Q:ゴール・目的を設定したあとのポイントは?

‐チェックポイント(2):当事者意識を持てるDXグランドデザインになっているか

小川ゴール・目的を設定したあとは、DX活動の計画となるDXグランドデザインを描きます。そこでは「当事者意識を持てるDXグランドデザインの策定」がポイントです。

チェックポイント(2):当事者意識を持てるDXグランドデザイン
  • 現場が主体的に取り組めるDXグランドデザインとなっているか?
  • 小さな成功体験が積める計画となっているか?

鈴木私が支援したプロジェクトでは、他社事例等の情報提供、議論のファシリテート、検討結果の資料化等は我々がお手伝いする一方、企業が進むべき方向性は社員自らで考えいただくよう進めました。将来像の検討といった普段はやらない業務です。当初は戸惑いもあったでしょう。しかし終盤に向かうにつれ「時間が足りない!」と自主的に会議を開くまでになりました。そうした生の声から策定したグランドデザインであるほど、実行フェーズに入った時の当事者意識が強くなると感じています。

小川また、小さな成功体験を積めるように計画することも有効です。検討ばかりで効果が出ている実感が持てず、意欲が低下する状況は避けたいものです。改革が進んでいる実感を得られるよう、DX活動のシンボルとなるパイロットプロジェクトを短期で実行する計画づくりが有効です。

‐チェックポイント(3):現場推進体制は確立できているか

鈴木DXグランドデザイン策定の際には、「現場推進体制の確立」もポイントになりますね。DX活動では業務変革を伴うため、変革を推し進めるリーダーのアサインが肝になります。

チェックポイント(3):現場推進体制の確立
  • 業務変革を可能とする推進リーダーがアサインできているか?
  • 必要な権限が与えられているか?

鈴木例えば、製造業のお客様の案件では、経営層の協力のもと工場内で調整力の高い推進リーダーとともに工場のありたい姿を検討したことが成功につながりました。変革を実現するための推進リーダーのアサインは、DX活動の成否を分けるほど重要なポイントだと思います。

船木DX活動を新しい取り組みと捉えて推進リーダーに若手社員を抜てきした結果、PoCで終わってしまうケースも多く見られます。業務変革に必要な権限がないためです。PoCから本格導入に入るために必要な、業務を大きく変えるための強い権限をトップダウンでフォローすることもセットで考えなければなりません。

小川DX活動を新しい取り組みと捉える点では、DX推進組織を既存組織と切り離して立ち上げる場合もあります。既存の取り組みと異なるスキルや考え方が必要なるためです。特に、チャレンジを推奨し失敗を許容する文化の醸成は短期間で実現できません。そこで、新たな組織でDXに適した人財を社内外から受け入れ、新しい組織文化の中で徹底的な指導を行っていく方法もあります。

Q:グランドデザインといった計画を策定したあとのポイントは?

‐チェックポイント(4):DX活動の活性化・促進のためモニタリングは行っているか

鈴木全社活動をモニタリングし、各活動を促進する仕掛けづくりも大切です。

チェックポイント(4):DX活動の活性化・促進のためのモニタリング
  • プロジェクト状況を経営層へ見せる化するための仕掛けがあるか?
  • 効果を創出できる案件に投資するための仕掛けがあるか?

鈴木全社のプロジェクト状況を定期的に経営層へ見せる化して、経営層が活動状況を理解する仕掛けをつくること。そして活動推進における課題提起~議論を経営層も含めた場で行う仕掛けをつくることが重要です。厳しい意見を含め、経営層の継続的な関与が総じて活動全体を活性化するための原動力となるケースが多いようです。

船木DX活動は企業競争力を高めるための活動ですから効果にこだわるべきです。ただ、新たなチャレンジをする場合は、アイデアの着想時点では効果まで想定できないことが多くあります。DX活動を進める中でその都度想定効果を見定め、投資対象をコントロールし、限られたリソースで最大限の効果を創出する仕掛けづくりが重要となります。

Q:チェックポイントに改善が必要な場合のアプローチ方法は?

三好これまで申し上げた活動のチェックポイントを実現するためには、全社のDX活動を推進する組織機能の整備・強化が有効です。NTTデータで提供している「デジタルサクセス®プログラム」の中では、7つの組織機能を定義しています。

図:DX活動を推進する組織機能

三好まず、全社のDX活動を運営する機能として、「デジタル変革統括」「組織・人財変革」を担う組織機能が必要です。DXグランドデザイン策定、DX施策の投資管理ルール整備、DX人財戦略、組織文化/意識変革等を担っていく機能です。現場社員がデジタル化をリードできるように、アイデア創出のしくみづくりや社内のコミュニティ活性化等も担っていきます。
次に、DXはデジタル技術が重要な要素となるため、「先端技術リサーチ」「ナレッジ整備」をする組織機能が必要になるでしょう。その中で肝となるデータ活用のための「環境整備」をする組織機能では、社内のデータ活用を促進するためのデータガバナンスの整備等も行います。
また、「デジタル変革実行支援」「高度・重要テーマ実行支援」といった、デジタル施策を実行するための組織機能も欠かせません。各プロジェクトや全社横串でのDX活動の実行を支援します。

これら組織機能がそれぞれ強化され、円滑に連携がなされる状態の実現により、DX活動を成功に導くこと、つまりはデジタル変革が実現できるでしょう。

最後に

鈴木デジタル変革の課題は多岐にわたり、次から次へと発生します。そこで、NTTデータグループでは、DX活動にたけたコンサルタント、データサイエンティスト、AI/IoTエンジニアが、お客様のデジタル変革のメンバーの一員となり、デジタル変革を進める中で発生するさまざまな課題解決をサポートしています。
コンサルティング領域では、お客様メンバーの一員、いわば“かかりつけ医”となって、グランドデザイン策定から組織風土変革まで多様なサポートを提供しています。NTTデータグループメンバーがお客様とよい「化学反応」を起こし、お客様のデジタル化の促進を行いたいと考えています。

菊山デジタル変革で求められるのは、「デザイン(D)」「データ(D)」「ビジネス(B)」「テクノロジー(T)」の4つのケイパビリティであり、私たちは、「DDBT」と総称しています。特にスマホやクラウドがベースとなるデジタルならではの特性を十分理解したうえで、顧客課題を再定義し、解決する体験をデザインすること。そしてデータを活用して顧客への提供価値を継続的に向上させるしくみを作りこんでいくことがとても重要です。

業界が変容するようなデジタル変革については、各企業手探りの状態かもしれません。NTTデータグループでは独自に未来像を議論したり、その一部を具現化したサービスを試行したりする取り組みをしています。これらの取り組みを参考にしながら、より確度の高い未来像を一緒に作り上げる。その実現に必要なケイパビリティをNTTデータグループで支援しながら、足りない部分については他社を巻き込んでいく。そうして一緒にデジタル変革に取り組んでいきたいと考えています。

「DDBT」と言いましたが、それぞれの専門家だけがいればよいわけではありません。必要なテクノロジーや専門スキルを横断的に統合して、不確実な未来に向けて皆を引っ張っていく、あるいは泥臭い調整ごとも含めて着実な推進を支える、そのような力も求められていると感じます。NTTデータグループはTrusted Global Innovatorとして、皆様とともに、顧客/社会の課題を解決するためのデジタル変革をいかに進めていくべきかを考え、その実現に貢献します。

参考:デジタル変革コンサルティング支援サービスのご紹介

NTTデータグループでは「デジタルサクセス®プログラム」において、「デジタル変革コンサルティング支援」サービスを提供している。本稿で述べたDX運営に関わる「デジタル変革統括」「組織・人財変革」を中心に、お客様のデジタル変革における推進組織の一員となり、さまざまな課題をお客様とともに解決するコンサルティングサービスを提供している。DX推進における課題解決の一手としてこうしたサービスも活用いただきたい。

図:デジタル変革コンサルティング支援サービスの概要

菊山 直也

NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部
コンサルティング&マーケティング事業部 菊山 直也

IT戦略から業務改革、新規サービスの立ち上げ、DX推進まで数多くのコンサルティング実績を有する。最近は、デザインとデータ活用でDX実現を目指すアプローチ:Design and Data driven Business Transformationに力を入れており、とくに業際領域のDXに注目している。

三好 寛

NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部
コンサルティング&マーケティング事業部 三好 寛

製造業/小売業/公共分野の幅広い領域で、DXグランドデザインやDX組織の立ち上げなどに関するコンサルティングに従事。単なるIT改善に留まらない活動にするために、組織変革/人財強化などのDX支援にも注力している。

小川 敬造

クニエ CS事業本部 CDO 小川 敬造
製造業(プロセス、組み立て)などを中心に、DXを軸としたCX、バリューチェーンイノベーション、ビジネスイノベーションに関するコンサルティングに従事。日本の誇れるものづくり力を再興し、将来にわたりグローバルで戦える企業・産業立国をめざしている。

船木 春重

NTTデータ経営研究所 情報戦略事業本部
デジタルイノベーションコンサルティングユニット 船木 春重

デジタル戦略・IT戦略立案のコンサルティングに従事。
最近は経済産業省デジタルガバナンス・コードの策定を支援し、経営とデジタルが一体となった形のDX推進支援に取り組んでいる。

鈴木 潤

NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部
コンサルティング&マーケティング事業部 鈴木 潤

大手製造業を中心に、DX組織の立ち上げ支援からデジタル技術導入の個別PoC支援まで、DXに関する幅広いコンサルティングに従事。最近では、製造業に対するDX支援の経験を活かして、公共分野のDX支援にも取り組んでいる。

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