2021.3.23特集

東日本大震災から10年 ~お客さまとともに歩んだ復興の道~

東日本大震災から10年。津波による壊滅的な被害を受けた東北沿岸の町、原発事故により避難を余儀なくされ無人と化した町、いつもそこにあった日常は姿を変え、10年経った今なおその影響は残り続けている。
この10年を振り返りながら、NTTデータグループが果たしてきた役割や今後に生かすべき課題など、これから先を考える。

震災直後

宮城県仙台市に本拠を置くNTTデータ東北。東日本大震災後、NTTデータは「全てのNTTデータグループ一体となり復旧、復興に取り組む」という方針を掲げた。その活動の中心となったのが、NTTデータ東北だ。復旧支援と復興事業の両面での支援活動、とくに震災後の半年間は、復旧を最優先に、被災地域(市町村)のニーズ調査を実施し、システム復旧に留まらないサポートを展開した。

震災直後は電話もつながらず、NTTデータ東北では災害用電話を使い、それでもつながらないお客さまには直接訪問を行うなど取りうる手段を使って、顧客のシステムの復旧状況を確認した。

NTTデータ東北 金融事業部 営業部 部長 平 亨

NTTデータ東北 金融事業部 営業部 部長
平 亨

「主要なお客さまである、東北地区の信用金庫のシステムは、幸いなことに予備電源によって正常稼動していました。しかし、電源復旧の見通しがない中、予備電源のみでいかにシステムを維持し続けるか必死でした。お客さまには縮退運転をご提案し、結果的にはオンライン運転を止めずに乗り切ることが出来たのですが、システム運用の維持に向けて何がサポートできるのかをひたすら考える毎日でした。」と金融機関の営業を担当する平亨は振り返る。

出典 NTTデータ東北作成「東日本大震災からの学び」

時間の経過とともにお客さまの状況、要望は変化する。システム維持や復旧サポートと並行して、水や食料、生活必需品などの物資提供も行った。それは、東京のNTTデータ復興支援本部などから届いた支援物資を、お客さまへも配るところから始まり、約2カ月に渡って継続された。

NTTデータ東北 公共事業部 営業部 課長 相場 映希

NTTデータ東北 公共事業部 営業部 課長
相場 映希

自治体を担当する相場映希は、「お客さまとの日々のコミュニケーションを通して、さまざまな困りごとがわかってきました。そこで生活支援物資提供の延長でNTTデータグループがサポートできるものを持ち寄って無償で提供することにしたのです。津波被害で不足しているPCの貸出しや、土砂崩れ予測のためにグループ企業であるHALEXの気象データを提供するなど、グループの総力をあげてサポートしました。」と語る。

システムや物資の支援に加え、音楽を通じた復興支援も行った。震災により演奏の場を失いながらも「音楽の力で市民を少しでも癒したい」と、街かどでミニコンサートを続けていた仙台フィルハーモニー管弦楽団。彼らの思いに共感し、森トラストと連携してNTTデータ東北が入居する仙台トラストシティのエントランスホールをコンサート会場として提供。2011年5月から全8回にわたって、市民の方への無料コンサートが開催された。
自ら被災しながらも、音楽を通じて市民へ癒しを届け続けようとする仙台フィルハーモニーの姿は、NTTデータの開設する特設サイトを通じて広く動画配信された。

当時のコンサートの様子はNTTデータYouTubeチャンネルでご覧いただけます
https://www.youtube.com/playlist?list=PLg0bnu8jcxnpvlMMWLwraoXm2m8yRJaj0

復興事業への取組み

NTTデータ東北 法人事業部 事業部長 杉山 光宏

NTTデータ東北 法人事業部 事業部長
杉山 光宏

震災から半年が経過する頃から、国の補正予算が付きはじめ、復興事業への取組みが本格的に始まった。
NTTデータ東北では、復興支援室を立ち上げ、自治体をはじめとするお客さまから聞いた困りごとを中心に検討し、4つの事業を推進することにした。「現業である復旧支援で精いっぱいで、体系的な情報収集もままならない状況でした。復興事業立ち上げにあたっては、出向や営業・コンサルティング契約締結を通じてNTTデータグループ全体から人を集め、現業の延長線上ではなく、復興後も見据えた新たなビジネススキームを構築しました。私たちNTTデータ東北は、被災地の地元企業。なんとしても、被災地域の自治体や企業への期待に応えたかったのです。」当時の復興支援室長の杉山光宏は語る。

復興事業の4プロジェクト

IT融合による新産業創出研究開発事業 社会インフラ等、点検調査・診断評価(共創型M2Mクラウド)
宮城県/福島県
多メディアを活用した災害情報伝達システム(多層的な災害情報伝達システムの研究開発)
宮城県/福島県
スマートコミュニティ導入促進事業(再生エネルギー関連)
宮古市/石巻市
きずな再生事業(被災者情報管理)
石巻市役所

4つの事業のひとつ、「きずな再生事業」では、石巻市役所の被災者情報管理に関連する手続きのサポートを行った。
罹災証明書発行手続きは象徴的だ。「困っている市民のために早く対応したくても、申請数が多く、しかもシステム投入に非常に手間がかかるのです。市の職員の人数はもともと潤沢ではなく、私たちが石巻市役所に赴いてシステム投入作業を支援しました。」(相場)

被災地の雇用創出目的から生まれた石巻BPOセンター

NTTデータは、被災地の雇用創出を目的に、宮城県石巻市に新たな拠点も立ち上げた。2012年1月、当初はNTTデータ、NTTデータ東北、NTTデータ3C(現NTTデータ・スマートソーシング)の3社共同運営によるNTTデータグループ内の各種業務支援機能やコールセンター機能を担う拠点を設立。その後NTTデータ・スマートソーシングの手により事業は拡大を続け、現在では、「NTTデータ・スマートソーシング 石巻BPOセンター」として顧客企業向けの大規模コールセンターを担う等、同社の一翼を担う存在にまで成長している。

業務開始時点の人数は、石巻市で採用した4名を含むわずか10名。他の企業が復興支援として被災地各地に新設した拠点と比較すると規模は小さく、目立たないものであった。 しかし、これには理由があった。一過性の支援ではなく、安定した雇用を10年、20年のスパンで継続していくことが真の復興支援になるという考えに立ち、“事業継続性”を重視したのだ。

企業の事業所である以上、事業に見合った規模でないと採算が取れず、いつかは撤退せざるを得なくなる。
当時のプレスリリースに書かれた「開設から3年以内に100名体制の達成を目指す」というメッセージ。
これは、“3年以内に100名の雇用を実現できるだけの事業を石巻の地で作り上げる”という宣言でもあった。

NTTデータ・スマートソーシング BPO事業本部 石巻業務部 部長 増田 英理子

NTTデータ・スマートソーシング BPO事業本部 石巻業務部 部長
増田 英理子

これまでの事業基盤が無いなか、この石巻での事業拡大を任されたのが、NTTデータ・スマートソーシングの増田英理子だ。
増田にとっても、“3年以内に100名規模の事業に成長させる”という目標は非常に厳しいものだったが、結果的に2年半でこの目標を達成することになる。
「短期間に事業を拡大できたのは、開業時よりNTTデータグループ各社がさまざまな業務を委託してくれた背景があります。それにより、早期にリーダー格人材を育成できたのが大きかったです。」(増田) 石巻で雇用した社員をリーダーとして育成し、彼らを軸にさらなる社員を育成していく。それと並行し、NTTデータ・スマートソーシングは事業拡大のため、全社一丸となってNTTデータグループ外の企業からの業務獲得に奔走した。

2014年8月に石巻BPOセンターは社員数100名を達成。その頃、震災後に被災地に新たに拠点を構えたものの、既に姿を消していた企業も少なくなかった。

「設立当初を振り返ると、石巻BPOセンターにはとても感慨深いものを感じます」
現在200名を超える社員が働く石巻BPOセンターを眺めながら増田はこう語る。
設立当初からBPOセンターのマネジメントに携わってきた増田にとっても、石巻への想いは特別なものがあるに違いない。

NTTデータ・スマートソーシング BPO事業本部 石巻業務部 西城 大樹

NTTデータ・スマートソーシング BPO事業本部 石巻業務部
西城 大樹

石巻BPOセンターは石巻の地に、雇用のみならず“新たな職種の選択肢”をもたらした。これまで石巻市では、100%オフィスワークという仕事はあまりなかったという。現在社員構成は女性8割、男性2割だが、男性社員の定着率も高い。震災を機に、東京での仕事を辞め当センターにUターン就職した西城大樹もそのひとりだ。「東京でオフィスワークをしてきた自分にとって、期間限定の求人が多い中、継続雇用を前提とした求人は魅力的でした。震災をきっかけに東京から故郷に戻った自分が、復興とともに成長してきた石巻BPOセンターで働いているということが、どこかで誰かの、何かしらの希望になってくれればと思っています。」と語る。

石巻BPOセンターの特長を増田はこう語る。
「小所帯でスタートしたこともあり、助け合いの精神を大切にしてきました。それは企業風土として根付いています。」
これは、雇用を通じた復興支援を目的に設立され、石巻の復興と共に成長を続けてきたからだけでなく、石巻の、さらには東北の人々だからこそ生まれた企業風土なのだろう。

いま、石巻BPOセンターではIT人材の育成も進んでいる。既存業務への積極的なRPA導入に加え、市内の学生向けにWinActorを使ったRPA体験教室なども計画中だ。

震災がもたらしたもの

NTTデータ・スマートソーシングが、雇用創出きっかけとして設立したBPOセンターを通じて、石巻の地に新たな価値を提供しようとしているように、震災が大きなきっかけとなった取り組みがある。

NTTデータの「減災コミュニケーションシステム」における対応だ。
震災では、多くの自治体で住民に対する情報伝達の課題が浮き彫りとなった。
自治体から住民へ、確実に防災情報を伝達することを目的としてきた「減災コミュニケーションシステム」に、東日本大震災は大きな教訓をもたらした。
NTTデータ東北が復興事業のひとつとして進めた「多メディアを活用した災害情報伝達システム」の実証実験。ここから得た成果や、震災時の経験や反省をふまえたしくみが、減災コミュニケーションシステムに取り込まれ、現在では国の推奨モデルとなっている。

そしてこのシステムは、災害対策のみならず平時の地域コミュニティ基盤としての役割も担うソリューションに発展し、全国の自治体に提供されている。NTTデータ東北にとっても屋台骨となる事業となった。減災コミュニケーションシステムを立ち上げから担当してきた相場は「復興事業の中から全国展開されたソリューションも生まれ、10年経ってITによってお客さまを下支えできる企業になってきたと実感しています。」と語る。

震災の経験を通して
~寄り添うということ~

NTTデータ東北 公共事業部 営業部 古山 裕幸

NTTデータ東北 公共事業部 営業部
古山 裕幸

NTTデータ東北の古山裕幸は震災直後の入社だ。「入社以来、ITを活用した復興支援に携わってきました。お客さまと共に歩んできたその経験・教訓は、いまもお客さまと私たちが何かを考える時のベースになっています。」と語る。一方、この10年で当時小学生だった子供たちは成人し、世代が入れ替わりつつあるのも事実だ。「マインド面も含めて、何を残し、語り継いでいくべきか。震災を通じて得たものを風化させないことも重要な課題と感じています。」(平)

インタビューの際、開口一番に杉山が言った言葉が忘れられない。「震災当時は10年先を考えられなかったが、振り返るとあっという間だった。震災直後に、お客さまの災害対策室にかけつけたときから、今も変わらずITでどんな貢献をできるかを考え続けています。」

石巻BPOセンターの増田の目も、これから先を見つめている。
「これからも、地元企業として事業を継続していけるよう、そして“我が子を入社させたい“、と思っていただける企業をめざしています。」

NTTデータ東北は、震災直後からずっとお客さまとともに復旧、復興に携わってきた。
NTTデータ・スマートソーシングは、石巻の地で地元の人々とともに復興の道を歩み続けてきた。
そして、これから先もお客さまや石巻の人々と共に寄り添い、共に歩んでいこうとしている。
この精神は、NTTデータグループの変わらぬ信念として受け継いでいかなくてはいけない。

  • 「WinActor」は日本国内におけるNTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。
  • 「減災コミュニケーションシステム」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
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