2021.3.23特集

デジタルで叶える人生100年時代の金融包摂

わが国では「人生100年時代」と言われるかつてない超高齢社会を迎える中、とりわけ高齢者の金融資産管理や、金融資産の高齢化による社会経済への影響が大きな課題となっている。
NTTデータでは「デジタル」によって、高齢者が安心して金融サービスを利用できる社会の実現に取り組んでいる。本記事では、認知機能の低下した高齢者への対応への課題と、その解決策の一つとして金融取引の不安を解消するサービスについて紹介する。

1.認知症の高齢者の増加と、金融経済への影響

わが国の高齢者数は2020年時点で3,617万に達し、総人口の約3割(28.7%)を占めています(※1)。とりわけ近年では認知症の高齢者が大幅に増加し、2030年の認知症者数は744万人を超え、その保有する金融資産は215兆円と、国内の家計金融資産全体の10.4%を占めるという調査結果(※2)もあり、これらに対する適切な管理・運用がされないことで、金融詐欺被害の増加や、家計の資産構成の硬直化といったリスクが高まることが懸念されています。

こうしたなか、2019年のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において「高齢化と金融包摂のためのG20 福岡ポリシー・プライオリティ」(※3)が採択され、高齢者の金融包摂の実現に向けた8つのポリシー・プライオリティ(優先項目)として「テクノロジーの活用」や「高齢者の詐欺被害防止」などが挙げられました。また、2020年の金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループ(※4)においても、「金融ジェロントロジー等の学問的見地も取り入れ、金融ビジネスのサステナビリティにも留意しつつ、こうした高齢顧客の様々な課題やニーズに対応し、顧客本位の業務運営に取り組んでいくことが金融事業者には期待される」といった言及がなされています。

図1:高齢化と金融包摂のための G20福岡ポリシー・プライオリティ

(※1) 総務省統計局「統計トピックスNo.126統計からみた我が国の高齢者」

(※2) 第一生命経済研レポート「日本~認知症患者の金融資産200兆円へ、課題は~」

(※3) 金融庁「高齢者と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ」

(※4) 金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書ー顧客本位の業務運営の進展に向けてー」

2.認知症の方の意思決定に配慮した対応が必要

では、具体的に高齢者、とりわけ認知・判断能力の低下した方々に対して、どういった対応を行うべきでしょうか?

ここで参考となるのが、認知症患者の意思決定を支援する標準的なプロセスや留意点を記載した厚生労働省の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(2018)」(※5)、及びその参考とされた、英国の「意思決定能力法(Mental Capacity Act,2005)」(※6)における“能力喪失の証明やあらゆる支援の手立てが失敗に終わったのでなければ、意思決定能力無しとみなしてはならない”、という認知能力が低下した方への対応の原則です。これを金融取引の場面に置き換えると、「例え認知症の疑いのある高齢者でも、家族や金融機関は可能な限り本人意思を尊重した対応を行うべきであり、例え善意であっても本人の意思を妨げてはならない」と読み取ることができます。 今後はますます金融機関の認知症の顧客への対応が重要になりますが、軽度の状態を含め認知判断能力に疑いのある高齢顧客にサービスや商品を提供する上では、上記の観点を十分に配慮して対応を行う必要があると考えます。

(※5) 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」

(※6) 英国「意思決定能力法(Mental Capacity Act,2005)」

3.NTTデータでの取り組み

私たちは、冒頭でご説明した社会的な動きや、意思決定能力の尊重を踏まえながら、高齢者の加齢に伴う、認知・判断能力の低下による金融取引の不安を解消する安心・安全な金融サービスをデジタル面で支援、提供することで高齢者やその家族の生活の質(Quality of Life)の向上を実現したいと考えております。

特に昨今では認知・判断能力の低下により、高齢者が誤って高額の商品を繰り返し購入したり、悪質な振り込め詐欺被害に遭遇したりすることが大きな社会課題となっておりますが、このような意図しない消費や、詐欺被害を最小限に抑止したいという高齢者自身やそのご家族の強いニーズがあります。

NTTデータはこのような社会的なニーズに応えるソリューションの第一弾として、当社が従来から得意とするインターネットバンキングサービスを通じて、高齢者が信頼できる家族などを口座の「見守り人」として予め指定し、出金などの動きをメール通知やスマートフォンアプリを通じて家族など見守ってもらうサービスの提供を開始いたしました。

図2:NTTデータ「家族の口座取引を見守るサービス」

4.家族の口座取引を見守るサービスの紹介(※7)

「家族の口座取引を見守るサービス」のメリットは、認知能力に不安のある高齢者など(見守られる人)がいつ、いくら、銀行預金の出入⾦を行ったのかを、その家族(見守る人)が把握できる点にあります。例えば、スマートフォンの通知機能で、不自然な利用や、高額の引き出しなどの通知を見た子が、高齢の親にその取引の確認を行うことで、詐欺被害や使い過ぎを抑制することが可能となります。

さらに、本サービスの特長としては

(1)見守られる人のインターネットバンキングの登録有無に関わらず、サービスの利用ができる
(2)通知する内容(金額や入金/出金)やその対象(誰に通知するか)は見守られる人自身で設定ができる

の2点が挙げられます。

1点目について、近年では高齢者を含めインターネットバンキングの利用率は大きく向上しておりますが、デジタルリテラシーの有無に関わらず、多様な方々に本サービスを利用して頂きたいという思いから、見守られる側のインターネットバンキングの登録は不要と致しました。

2点目では、本サービスによって⾼齢者などの⾏動の監視や制限をするのではなく、むしろ家族の見守りのもとで、高齢者が安心・安全かつ⾃由に⾦融サービスが利用できることを目指して、通知条件の設定や照会範囲については見守られる高齢者など本人からの申し込みを前提としています。また、「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(2018)」における”例え認知症であっても、本人の意思決定を尊重しなければならない”という趣旨の意思決定支援の基本原則も参考となりました。

(※7) NTTデータ「家族の口座取引を見守るサービス」

https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2021/032300/

5.デジタルで実現するサステナブルな社会

高齢者の(身体の)介護は、家族だけでなく、ケアマネージャーや医療・介護施設、公的施策等と連携し、高齢者の周囲、地域・行政全体で支えていくことが必要であることは、いまや共通認識になっています。

では、「お金の介護」はどうでしょうか?成年後見制度、民事信託、社会福祉事務所による日常生活支援事業、など認知の低下に伴いお金の管理に不安のある方々を支える制度は様々にあるものの、まだまだ十分に浸透・活用されているとは言えず、さらにこれらの制度をデジタルで促進する取組みも発展途上です。

NTTデータでは、今後、「家族の口座取引を見守るサービス」を起点に、支援される側の意思尊重・自律の観点をもとに、超高齢社会の課題解決にデジタルで貢献するサービス検討を行ってまいります。そのために様々なステークホルダー、例えば地域包括ケアシステム(※8)を構成する自治体、医療・介護施設、社会福祉士、成年後見人、金融機関等との連携・共創も踏まえながら、SDGs時代にふさわしいサステナブルなサービスの進化を図ってまいります。

図3:Finovate Fall 2019での登壇の様子

補足:アメリカ・ニューヨークで開催される世界最大規模のFintechピッチイベント「Finovate Fall 2019」にて、NTTデータは高齢者向けデジタル金融サービスのコンセプトを発表
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/information/2019/090600/

(※8) 厚生労働省「地域包括ケアシステム」

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