2021.6.16事例&対談

キオクシア会計システム更改から学ぶ、短期間・大規模な社内システム更改の鍵は?

キオクシア株式会社は東芝グループの連結対象からの離脱をきっかけに、独自の会計システムへの迅速かつ確実な移行を図るべく、2019年3月に共通会計システム更改プロジェクトを開始した。短期間で国内グループ会社複数社を含めた大規模会計システムの更改という厳しいミッションを遂行したプロジェクトの成功の鍵に迫る。

独自の会計システムによるIT活用と業務改善へ

2019年10月1日に東芝メモリから社名を変更したキオクシア。フラッシュメモリやSSDの開発・製造・販売を行っている半導体メーカーとして知られ、特にフラッシュメモリについては世界第2位の市場シェアを誇っている。いまやスマートフォンやPCなどさまざまなデバイスに搭載されるフラッシュメモリは、我々の生活には欠かせないものとなっている。クラウドサービス、5Gサービス、自動運転などの普及により、今後もさらなる需要拡大が予測されている。

こうした高い成長が見込まれる中、キオクシアは顧客と強固な関係を構築し、フラッシュメモリのパイオニアとしての強みを生かしつつ、業界をリードする技術力でさらに大容量かつ高性能な幅広い製品の開発を進めていくとしている。

そうした中で急遽必要となったのが、会計システムの更改だ。キオクシアは2018年に東芝グループから分離独立し、新たなスタートを切ったが、これに伴い独自の会計システムを構築する必要に迫られた。

もっともキオクシアは、このミッションをネガティブには捉えてはいない。キオクシアホールディングス 財務部 決算室 参事の碓井大介氏は、「独自の会計システムを持つことで、自分たちの事業に適したIT活用が可能となります。またとないチャンスが到来したと考えました」と話す。

こうして2019年3月に開始した共通会計システム更改プロジェクトを推進するにあたって掲げたのが、「キオクシアグループに適したデータ活用の自由度を向上する」、「システムの柔軟性や拡張性を向上する」、「法改正や内部統制の適時適切な対応を実現する」という3つの目標だ。

新しい会計システムに課せられたタイトなスケジュール

会計システムという重要な領域でありつつ、キオクシアとしてはグループからの独立以降で初の同システム刷新プロジェクトとなる。どのような苦労があり、それを乗り越えたのか。
ここからはプロジェクトマネージャーとして導入を主導したキオクシア碓井氏の他に、今回のプロジェクトを支援したNTTデータの製造ITイノベーション事業本部 コンサルティング&マーケティング事業部 部長 淵崎大蔵と同部 課長の坂井恒介を交えて当時の様子を振り返る。

――今回の共通会計システム更改プロジェクトを遂行するにあたって、どのようなご苦労があったのでしょうか。

キオクシアホールディングス株式会社 財務部 決算室 参事 碓井 大介(うすい だいすけ) 氏

キオクシアホールディングス株式会社
財務部 決算室 参事
碓井 大介(うすい だいすけ) 氏

碓井氏従前の東芝グループの会計システムを利用できる期限が決まっており、タイトなスケジュールの中で新しい会計システムを稼働させなければならない、一方、業務継続のためには従前のシステムで作りこんでいる機能性についても確保しなければならず、そのバランスをとるのがやはり最大の苦労点でした。

製造ITイノベーション事業本部 コンサルティング&マーケティング事業部 課長 坂井 恒介(さかい こうすけ)

製造ITイノベーション事業本部
コンサルティング&マーケティング事業部 課長
坂井 恒介(さかい こうすけ)

坂井NTTデータの立場からは、要件定義が最も苦労したフェーズだと感じています。私どもが提案した「Biz∫®」に対して、当初はプロジェクトメンバーの皆様からも、従前のシステムと同様の機能追加要望が多数寄せられました。しかし、そのすべてに対応していたのでは期限に間に合わなくなり、コストもどんどん膨らんでしまいます。追加開発をせずに、Biz∫標準の機能をうまく活用して業務品質を担保できる運用案を検討し、業務要件及び業務フローを定めていきました。大変ではありましたが、このフェーズでキオクシア様の業務理解も深まりました。

製造ITイノベーション事業本部 コンサルティング&マーケティング事業部 部長 淵崎 大蔵(ふちさき だいぞう)

製造ITイノベーション事業本部
コンサルティング&マーケティング事業部 部長
淵崎 大蔵(ふちさき だいぞう)

淵崎それが可能だった背景にあるのが、キオクシア様の高い当事者意識だったと考えています。システム構築をベンダに任せきりにするのではなく、あるべき業務運用を実現するための会計システムの在り方を主体的積極的にご検討頂きました。単純に今ある機能をそのまま実現するということではなく、業務の真の目的に立ち返り、やりたいこと・やらなくてよいことを、共に考え抜いていただいたことで、費用対効果や業務品質を確保した上で、期限内での稼働に繋がったと考えています。

システム領域だけにとどまらない業務領域での有益なアドバイス

――NTTデータを今回のプロジェクトのパートナーに選定したことには、どんな経緯があったのでしょうか。

碓井氏2018年の夏頃からベンダ及び製品評価を開始し、複数のベンダを集めて選定を行ったのですが、端的に言えばその間のやりとりを通じて、NTTデータが私たちの業務に対する理解度が最も高いと感じたのです。財務部門はもとより、IT部門のメンバーからも「さまざまな問い合わせに対するNTTデータのレスポンスは非常に早い」と高く評価する声が上がりました。こうした優れた対応力が、NTTデータを選定する決め手となったと言えます。
実際にプロジェクト開始後においても、単なるシステム開発にとどまらず、財務会計・経営管理領域のコンサルタントとして、あるべき業務運用に向けたBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)や、データ活用方法の積極的な提案、また、業務運用・システム運用の立ち上げにおいては他社実例に基づいた非常な有益なアドバイスをいただきまして、NTTデータを選んで本当に良かったと考えています。

淵崎そう言っていただけると大変嬉しく思います。実のところベンダ及び製品評価の初期段階では、碓井様からは「キオクシアの要望に対して実現できると主張しているが具体的な実現性が見えない」など、厳しい評価を受けていました。そのため、どうしたら碓井様にご理解・ご評価いただけるかを悩みながら作戦会議をしていましたので、私どもを選定していただいた際には、坂井とハイタッチして喜びました(笑)

碓井氏当時はどのベンダに対しても、厳しいことを遠慮なく言っていましたので。それにしても、プロジェクトの着手前後に研究開発拠点や生産拠点に私たちと一緒に足を運び、説明やデモンストレーションを行ってくれた熱意には本当に驚きました。

坂井キオクシア様は各工場で活動する経理部門もしっかりサポートしていくという基本方針を示されていましたので、私どもとしても拠点の要望をしっかり吸い上げ、システムに反映していくことが非常に重要と考えました。この取り組みがあってこそ、全社横断で一体感を持ったプロジェクトを進めることができたと考えています。

月次決算及び四半期決算、年度決算を滞りなく完了

――現在のシステム稼働状況について教えてください。

碓井氏「Biz∫」およびBIソリューション「Tableau™」をベースとするキオクシア独自の会計システムは2020年10月より運用開始し、月次決算及び2021年1月、初の四半期決算の処理を滞りなく完了、4月の年度決算も無事完了する事ができました。本当に決算をこなせるのか、不安もあったのですが無事にクリアすることができました。CFO、CISOからも、「こんなにもトラブルなく運用開始できるとは思っていなかった。」とコメントがあったほどで、常に先手を打ったリスク管理を行ってきたことが奏功したと考えています。

淵崎会計システムは上流システムからのデータの終着点であり財務情報を司るシステムのため決して誤りが許されません。そのため、おっしゃるとおりリスク管理は非常に重要です。今回のプロジェクトにおいては、移行した残高情報・明細情報が旧システムと新システムとで一致するか、上流システムから連携されるデータの取り込み結果が旧システムと新システムとで一致するか、実際の伝票情報を利用して業務運用が想定通りに実現できるか、トラブルや問い合わせ発生時にルールに沿ってシステム運用できるか等、入念な検証を重ねた上で本番に臨んだことでトラブルを最小限に抑えることができました。

碓井氏加えてシステム利用者の視点から、「Biz∫」は非常に視認性・操作性に優れたERPパッケージであると実感しました。今まで何かしら会計システムを利用したことがある経理担当者であれば、問題なく操作することができ、レスポンスも非常によいです。経理知識の少ない現場担当者が伝票入力する場合でも直感的に理解できます。本プロジェクトにおいては、1000名近くの現場担当者に対してトレーニングやユーザテストを実施していますが問題なく展開できました。こうしたストレスの少ないシステムを提供できたことも、スムーズな運用開始を実現できた背景となっています。

また、「Tableau」については、さまざまな経営情報をグラフィカルに可視化できることに大きな刺激を受け、財務部門、生産拠点、研究開発拠点の担当者もデータ活用を推進しています。プロジェクト当初からの目標の一つである「キオクシアグループに適したデータ活用の自由度を向上する」の実現化に向けて今後対応していく予定です。

成功要因は全メンバーの緊密なコミュニケーション

――まとめとして、今回のプロジェクト成功の秘訣を改めてお聞かせください。

碓井氏最大のポイントは緊密なコミュニケーションに尽きます。本社財務部門、本社IT部門、導入グループ各社、そしてNTTデータのすべてのメンバーが一体となってプロジェクトを遂行してきました。お互いに信頼し合えるコミュニケーションを確立したからこそ、コロナ禍で各メンバーがリモートワークを余儀なくされた際にも、システム構築やテスト、利用者の教育を遅滞なく進めることができました。

淵崎私どもからはキオクシア様の当事者意識の高さを、最大の成功要因として重ねて述べさせていただきたいと思います。各メンバーの方々には、製品選定や要件定義工程の段階から、「デモ環境をもっと操作したいから土日も含めオンライン時間を伸ばしていただけないか」と積極的にご要望をいただきました。また、マネージャー層の方々も自らが陣頭指揮に立って課題を解決するという気概を持ってプロジェクトに臨んでいただき、新型コロナが感染拡大し始めた中でも、緊急事態宣言に先んじてオンライン主体でもプロジェクトが継続できるような環境・やり方を検討いただきました。その結果として、誰もが経験したことがないような状況だったにも関わらず、大きな問題なく予定通りの運用開始に繋がったと考えています。

碓井氏そう言っていただけると私たちも嬉しく思います。プロジェクトの経験がはじめてのメンバーが大半であったこともあり、本番稼働直前の2020年8~9月はシステム構築の追い込みで大変でしたが、そこを乗り越えられたからこそ、スムーズに本番稼働できたと考えています。

坂井その結果として、プロジェクトメンバーはもとより利用者の皆様まで全員に喜んでいただける会計システムを提供できて本当に良かったです。

碓井氏会計システムの導入は一区切りしましたが、経理業務の改善に終わりはありません。私たちは電子帳簿保存法改正への対応や、働き方改革に向けた証憑電子化・ペーパーレス化を推進し、キオクシアグループにおけるさらなる経理業務の標準化・効率化、経営管理の高度化・迅速化を目指します。その意味でもNTTデータには、さらなる連携強化をお願いします。

淵崎・坂井こちらこそよろしくお願いいたします。キオクシア様のご期待にしっかりお応えしていく所存です。

キオクシア株式会社
1987年に世界初 NAND型フラッシュメモリを発明したフラッシュメモリ業界のパイオニア。2017年に株式会社東芝から分社。2019年10月にキオクシア株式会社に社名変更。フラッシュメモリは世界第2位のシェアを誇り、業界をリードする技術力で、大容量、高性能な新製品の開発を進めています。

「Biz∫」は、株式会社NTTデータおよび株式会社NTTデータ・ビズインテグラルの登録商標です。

「Tableau」は、Tableau Softwareの商標です。

- NTTデータは、「これから」を描き、その実現に向け進み続けます -
お問い合わせ