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2021年9月22日技術ブログ

データで見る!コロナ禍の開発現場における生産性の実態と工夫とは!?

コロナ禍でリモートワークが進むなど働き方は大きく変化したが、生産性は維持できているのか?NTTデータのシステム開発・運用保守現場における影響をデータ分析した結果より、生産性の低下を防ぎ、さらに高めるための工夫を紹介する。
目次

1. コロナ禍の生産性影響に対するNTTデータの取り組み

2020年2月に始まったコロナ禍は、世界中のあらゆる業界の働き方に大きなインパクトを与えました。NTTデータのシステム開発・運用保守(以後「システム開発」という)現場においても例外ではなく、リモートワークへのシフト等、働き方が大きく変化しています。この変化が、システム開発の生産性に対してどのような範囲でどの程度影響を及ぼしたのでしょうか。社内では、生産性が下がっているのではないかという意見も当然出ていました。

NTTデータには、競争力の源泉となる“生産技術”を革新させるミッションを担う生産技術部という部署があります。現在、生産技術部は活動の一環として、コロナ禍におけるシステム開発現場の生産性状況を明らかし、ニューノーマル時代の生産性向上策を見出そうと取り組んでいます。そのため、NTTデータグループ全社にむけたアンケートを実施し、システム開発現場の生産性に対するコロナ禍による影響(コロナ前と比較して生産性がどうなったか)を調査・分析しました。システム開発現場の担当者向け、プロジェクト向けの2種類のアンケートを実施し、担当者向けアンケートは800名以上、プロジェクト向けアンケートは150プロジェクト以上と、統計上有効な回答を得ています。また、コロナ禍におけるシステム開発現場の課題として特に注視したほうがよいと判断した回答については、追加調査としてヒアリングを実施しました。生々しい課題や現場ならではの工夫を聞くことで、生産性向上対策のインプットとしています。

本記事では、アンケートで明らかとなった、コロナ禍がNTTデータのシステム開発現場へ齎した生産性影響と、今後の展望についてご紹介します。

2. 時間の経過から見るコロナ禍の影響

回答者全体の生産性(コロナ前との比較)を時系列で見ると(図1)、コロナ禍発生直後(2020年3月時点)では多くのシステム開発現場で生産性が低下したものの、約1年後(2021年1月時点)にはほぼコロナ前の生産性まで回復していることが定量的に確認できました。

図1:全体での生産性の変化

図1:全体での生産性の変化

なぜ時間の経過とともに生産性が回復したのでしょうか。アンケート回答や回答者へのヒアリングでは、リモートワークをすることで個人ワークに集中できるようになったことや、通勤時間や勤務時間が柔軟になったことにより生産性が高くなったとの意見が多く見られました。リモートワークを行うために様々な工夫も行われています。ここでは、システム開発現場で実際に行われている工夫の一部をご紹介します。

システム開発環境のクラウド移行

コロナ前は製造環境や試験環境を閉域網(※1)の中に整備し、社内の専用端末からアクセスして製造や試験を実施している現場が多くありました。コロナ禍を機にこれらの環境をクラウド環境(※2)へ移行したことで、リモートワークでもシステム開発を行うことができる現場が増えました。

リモートワーク環境の整備

NTTデータではコロナ前から、クラウド上での業務を可能にするサービスBizXaaS Office(※3)は普及していましたが、リモートワークはそれほど進んでおらず、リモートワークに必要なクライアント端末や周辺機器が充実していませんでした。コロナ発生を契機とし、徐々にシステム開発現場でこれらの整備が進み、リモートワーク希望者にいつでも貸し出せる状態となっていきました(※4)。中には、オンライン会議用のペン型マウスやヘッドセットを貸し出したり、お客様との電話用にソフトフォン(※5)を導入した現場もあります。
同時に、自宅環境もリモートワーク用に整備されていきました。好みの机や椅子を買ったり、リモートワークしやすい部屋作りをしたりと、個人での独自の工夫も見られました。

コミュニケーションツールやルールの整備・策定

コロナ前は、「コミュニケーションといえばメールや対面での会話だ」という現場が多くありました。コロナ禍を機にリモートワークが増え、従来のコミュニケーションができなくなったことで生産性が低下したと答えた回答者も多くいました。現在、チャットツールやオンライン会議ツールの導入が進み、これらを利用するにあたってのローカルルールを各現場で策定し浸透したことで、設計や実装等に関する質問や相談をしやすくなり、生産性が回復したという現場が増えています。

(※1)インターネットに接続していないネットワークを指します。

(※2)NTTデータでは「統合開発クラウド」の利用を推進しています。

https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2017/012500/

(※3)PC環境をクラウド上で提供するNTTデータのサービスです。

https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/bizxaas_office/

(※4)NTTデータでは「セキュアFAT」の利用を推進しています。

https://www.bizxaas.com/application/office/bmws/bmws-option/securefat/

(※5)PCやスマートフォンにインストールしてIP電話を利用できるサービスを指します。

3. 現場の特徴から見るコロナ禍の影響

一方、コロナ禍による緊急事態宣言後(2020年6月以降)には生産性が向上したと回答した現場も見られました。

職種別の生産性を時系列で見ると(表1)、コロナ禍発生直後(2020年3月時点)ではすべての職種で生産性が低下していますが、約1年後(2021年1月時点)には、研究開発、スタッフ、および支援組織・PMOの現場において生産性が回復・向上しています。
生産性が回復・向上している理由として、当該職種では業務の実施場所に対する制約のない現場が多くリモートワークへの移行がスムーズだったことや、個人ワークの割合が高いため、リモートワークを行うことで個人ワークに集中しやすくなったこと等が考えられます。

表1:職種別の生産性の変化

表1:職種別の生産性の変化

システム開発の現場(開発、運用保守)に絞って、コロナ禍発生から約1年後(2021年1月時点)における開発人数別の生産性を見ると(図2)、100人未満の開発プロジェクト、および10人未満の運用保守プロジェクトでは生産性が回復・向上しています。これに対し、100人以上の開発プロジェクト、および10人以上の運用保守プロジェクトではコロナ禍による生産性低下の影響が大きく出ており、生産性が十分回復していないことが確認できました。
生産性が回復していない理由として、商用環境への接続制限やお客様対応等により業務の実施場所に対する制約がありリモートワークへの移行が難しいことや、開発人数の多さがコミュニケーションパスや頻度の多さに繋がりリモートワークのマイナス面がより強く現れたこと等が考えられます。

図2:職種・開発人数別での生産性状況(2021年1月時点)

図2:職種・開発人数別での生産性状況(2021年1月時点)

生産性が向上した・回復する過程において、システム開発現場では様々な工夫が行われています。ここでは、アンケートや回答者へのヒアリングから得られたシステム開発現場で実際に行われている工夫の一部をご紹介します。

システム開発の現場で生産性を回復・向上させるための工夫

システム開発の現場では、「特定環境での業務により出社する必要がある」、「状況やフェーズに応じて即時性の高いコミュニケーションが必要となる」等の回答が多くありました。その中で行われている工夫には以下のようなものがあります。

  • 業務内容によって出社とリモートワークを使い分ける
    出社:特定環境での業務、立ち上げ、検討、連携先システムとの疎通確認
    リモートワーク:個人ワーク、定例会議等
  • 毎朝チーム内ミーティングを行い、前日の課題を共有する
  • 定例会議とは別で、フランクな相談の場(オンライン会議)を設ける

運用保守の現場で生産性を回復・向上させるための工夫

運用保守の現場では、特定環境での業務やお客様対応等の理由により出社する必要があるため、リモートワークを輪番で実施しているとの回答が多くありました。その中で行われている工夫は以下のようなものがあります。

  • 業務内容によって出社とリモートワークを使い分ける
    出社:商用環境での業務、サービスデスク業務等
    リモートワーク:個人ワーク、定例会議等
  • 紙媒体の資料を電子化する
  • 出社時に実施する業務の一部をマクロやツールを使って自動化する

4. リモートワーク実施率から見るコロナ禍の影響

コロナ禍発生から約1年後(2021年1月時点)におけるリモートワーク実施率別の生産性を見ると(図3)、リモートワーク実施率が75%以上の現場では生産性が回復・向上しています。一方で、リモートワーク実施率が50%前後までの現場ではコロナ禍による生産性低下の影響が大きく出ており、生産性が十分回復していないことが確認できました。
前章で生産性が回復していないと述べた100人以上の開発プロジェクト、および10人以上の運用保守プロジェクトにおいて、リモートワーク実施率が50%前後までの割合が高くなっていることから、生産性が回復していない理由は前章記載の理由と同様であると考えられます。

図3:リモートワーク実施率別での生産性状況(2021年1月時点)

図3:リモートワーク実施率別での生産性状況(2021年1月時点)

各現場で行われている工夫は一律適用しても逆効果となることが分かっています。そのため、ここでは一例として、フルリモートワークができる現場かそうでない現場かに分けて、生産性が向上した現場や、各現場で生産性が回復する過程において、実際に行われてきた工夫の一部をご紹介します。

フルリモートワークの現場で、生産性を回復・向上させるための工夫

クラウド環境を利用している等、出社しなくてもできる業務中心のシステム開発現場で行われている工夫は、以下のようなものがあります。

  • タスクや期限をチケットで管理する
  • 成果物のレビューをプルリクエスト(※6)や書面で実施する
  • コミュニケーションと成果物管理を同じツール内で行うことでシームレス化する
  • モブプログラミング(※7)を実施する

リモートワークと出社を併用している現場で、生産性を回復・向上させるための工夫

製造環境や試験環境での業務がある等の理由により、出社しないとできない業務があるシステム開発現場にて行われている工夫は、以下のようなものがあります。

  • 業務内容によって出社とリモートワークを使い分ける
    出社:特定環境での業務、立ち上げ、検討、意思決定会議等
    リモートワーク:個人ワーク、定例会議等
  • 資料のやりとりのみで完結する会議を廃止する
  • 発生した事象ごとにチャットツールのチャネルを作り、関係者への情報共有や会議をそのチャネル内で実施する
  • 未成熟メンバーと高スキル者とで共に出社する期間を設ける

(※6)分散バージョン管理システムの機能の1つで、ソースコード等の変更をレビュワーに通知し、マージを依頼する機能を指します。

(※7)画面を共有し、複数人でプログラミングや業務を行うことを指します。

5. 今後の展望

本記事でご紹介したシステム開発現場での工夫を発展させ、他のシステム開発プロジェクトにも浸透させることにより、コロナ前よりもさらに生産性を高めていける余地があります。
現在、コロナ禍のみならず、デジタル化の進展により、システム開発の在り方が多様化してきており、システム開発・管理のプロセスもそれらに合わせて進化し始めています。NTTデータにおいては従来のTERASOLUNA標準手順(※8)を進化、および昇華させ、デジタル化に対応しつつ、ニューノーマルに対応したシステム開発・管理プロセスの技術開発を進めており、今後のさらなる生産性向上を目指していきます。

(※8)オープンシステム開発・運用・保守に関するNTTデータグループの標準手順を指します。

https://www.terasoluna.jp/product/process.html

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