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2022年4月1日事例を知る

ServiceNowと考える、従業員の力を最大化する自社変革

顧客満足度の向上を目指すには、まず自社の従業員体験(EX:Employee Experience)を高める必要がある。従業員接点の高度化技術で高い評価を得る米ServiceNow社とEX高度化に取り組むNTTデータが、北米でのEX最新事例を交えながら、NTTデータの自社変革手法とEX高度化の取り組みなどを紹介する。
目次

なぜ今、EXの高度化が必要なのか

事業戦略室 ビジネス・トランスフォーメーション推進部長 浦野 大

事業戦略室 ビジネス・トランスフォーメーション推進部長
浦野 大

EX(Employee Experience)とは、従業員が働く環境から得る経験・体験のことである。働く環境の高度化によりエンゲージメントが向上し、結果として組織が成長することを目指している。コンシュマー向けのビジネスではCX(Customer Experience)の高度化が差別化要因となるのと同様に、企業の成長においてはEXの高度化が重要成功要因になる。NTTデータの事業戦略室ビジネス・トランスフォーメーション推進部長の浦野は「リモートワークが当たり前になっている状況で、従業員の職務への積極的関与を引き出し、エンゲージメントを向上するには、最高のEXを提供し続け常に変化していく必要があると考えています。」とEX高度化の必要性を語る。

ではEXの高度化で何をするべきなのか。日本の視点から浦野はこう話す。「一般的に北米から数年遅れてITのトレンドは日本に普及しますが、特に形の無いものに対する価値認識が苦手な日本では、EXはUIの改善等といったITシステムだけで完結するものではなく、例えば、オフィスへ出社する為の目的やワークプレイスとしての自宅やサテライトオフィスの位置づけを再定義し、利用目的別の環境を整えるActivity Based Workingの考え方が必要だと考えています。また、前提となる人事制度や福利厚生等の土台を整えるのは言うまでもなく、場所や制度や環境を整備したうえで、従業員が日々接するデジタルテクノロジーの活用を考えるべきです。」
コロナ禍で場所や時間にとらわれない働き方が不可欠になっている状況の中では、デジタルテクノロジーの導入だけは不十分で、場所や制度設計が十分に行われることが重要であることが分かる。

ServiceNow,Inc Chief Innovation Officer Dave Wright 氏

ServiceNow,Inc Chief Innovation Officer
Dave Wright 氏

一方、北米ではどのような考え方があるのだろうか。ServiceNow社のDave Wright氏によると、北米には従業員が働く環境を決める選択権を持つ「エンプロイー・マーケット」が存在するという。食事や地域などの面で、働く人が会社からどの程度の利益が得られるかが仕事を決める大きな要因になっている。また、仕事はタスクベースで行っているため、「タスクを個別に可視化すれば従業員は働きやすくなります。リモートアクセスやモバイルを導入することで自由度は増しますし、同時にインターフェースを改善すれば、シンプルに自分のタスクにアクセスすることができるようになります。このシンプル性が技術的に重要な要素だと考えています」とEX高度化に向けて、Wright氏は話す。

ServiceNowビジネス推進室長 我妻 智之

ServiceNowビジネス推進室長
我妻 智之

次に、ソリューションの導入において重視すべき選定ポイントは何か。NTTデータ ServiceNowビジネス推進室長の我妻は、変化の激しい時代にあっては「数カ月で導入できるスピード感。そして技術進化や社会トレンドなど世の中の変化に追随できること。また、社内の縦割りの部門間に横串を刺せ、部門ごとに異なるシステムをシームレスにつなげるソリューションが必要」という。これらの選定ポイントから、EXの高度化に最適なソリューションとして「ServiceNowが優れています。企業や部門間にある文化や規則などの差異をローコードやノーコードで吸収し、社内システムに遠い所にいた社員も容易に関与できるため、システムの内製化が可能という特徴もあります」と付け加える。

変革で目指す姿とEX向上の取り組み

EX向上のために必要となるEnterprise DXへのアプローチは、従業員の働き方をプロセス、テクノロジー、ワークプレイスの3つの観点で組み立てることから始まる。このうちのプロセスは、人である従業員を中心(Employee Centric)に業務プロセスを設計することであり、その業務プロセスをストレスなく実現するために最新のデジタルテクノロジー(Leveraging Digital Technologies)を用いる。さらに従業員のワークプレイス(Activity Based Working)は、仕事の目的に応じて、オフィスや自宅、サテライトオフィスなど適切なロケーションを自由に選択できることが重要な要素となる。【図1】
浦野は「環境変化を先取りし、お客様や競合を上回る自社のEnterprise DXが出来てこそ、お客様へ魂のこもった提言が出来るようになるし、お客様の事業成長にも貢献できます」と強調する。

図1:Enterprise DXのアプローチ

図1:Enterprise DXのアプローチ

こうしたEX向上の取り組みで目指す姿は、お客様と従業員の接点を起点とした「プロセス&データドリブン」による業務実行能力の最大化である。具体的には、お客様と従業員の接点となる領域では、お客様との共創環境を充実させ社内のナレッジを即提供できる環境を目指す。業務プロセス&データ領域ではERPなどの基幹系システムや営業系システムを、業務横断で従業員が最適なワークフローでできる環境を提供。さらに、インテリジェンス領域では社内システムに蓄積されたデータを分析し、高度な経営判断やBPRを導くための業務オペレーションの最適化を実現していく。【図2】

「現在、NTTデータは全社改革プロジェクト“Project GAIA”として、基幹系システムおよび経営ダッシュボードの更改を行っています。データ分析の領域ではすでに、分析環境を提供することで、「問題プロジェクトの予兆検知」や「収益の着地予測」といったデータ分析結果を根拠とした将来の予測・判断が実現できています」と話す。

図2:Enterprise DXの目指す姿

図2:Enterprise DXの目指す姿

次に、従業員体験を最適化するプラットフォーム(Employee Experience Platform)について浦野は次のように説明する。「コンシュマー向けの顧客接点ノウハウを従業員に適用し、従業員接点を高度化するアプローチをとります」。従業員を中心としたEXは、ServiceNowを活用することで、先述したように個人の属性に応じて情報配信を提供する「パーソナライズ化」「ナビゲーション」のほか、社内にあふれる情報をシステム横断で検索可能にする「情報リーチの容易性」や、従業員がタスクを漏れなく実施し管理職が状況をモニタリングできる環境を整える「タスクドリブン」が可能だ。

図3:Employee Experience Platform

図3:Employee Experience Platform

予想される反発など丁寧な説明も必要

NTTデータの自社変革について浦野は「Enterprise DXは、本社がドライブする施策です。ServiceNowは、社内のあらゆるシステムを統合するプラットフォームであること、そして従業員があらゆる社内手続きを行う上でのEXとして最適であることから採用しました。」と語る。「全社規模での業務変革は全体最適化を忘れず、社内DXチームが利用部門に対してコンサルティング活動を丁寧に実施し、反発を一つずつ解消することが重要成功要因です。」また、既存ルールの無い業務領域ではデジタルテクノロジーの活用や行動変容を大胆に実施し、挑戦を楽しむ余裕も必要だという。「ただ、大規模な投資判断になりますので、既存ビジネスに最適化された社内承認プロセスやベンダーとの良好な関係を築くことが不可欠です」と話す。

デジタル時代の新しい働き方とは

テクロノジーを使った従業員体験の変革には3つの視点がある。それはパフォーマンスの向上、作業効率を高めるプロセスの最適化、新しいビジネスモデルを駆動すること。Wright氏は「DXリーダーのアマゾンやネットフリックス、テスラなどの企業は、我々の生活を一変させました。ですが、これらの企業はこれまでにない新しい技術を作ったのではなく、映画や旅行など昔からある体験をより良いものにしたのです。より良い体験なしに消費者はサービスを利用してくれません。従業員に対しても同じ考え方が必要ですが、そこに企業は目を向けて来ませんでした」と語る。

図4:テクロノジーを使った従業員体験の変革

図4:テクロノジーを使った従業員体験の変革

従業員により良い体験を提供するためには、阻害要因を取り除く必要がある。では、どのようなステップを踏まなければいけないのだろうか。Wright氏は「最初にワークプロセスの最適化に取り組みます。単にデジタル化するだけではなく、効率の悪い部分を改善しながら進めることが重要です。そして何よりもEXの重要性を忘れないことです。企業が本当の意味でデジタル変革するには、EXの高度化が必要です」と説明する。

CX/EX向上に向けたUIデザインの重要性

EX高度化のカギとなるのが「従業員向けUI」のデザインだ。コロナ禍でリモートワークが定着し、従業員と企業との関係は希薄になりがち。WEB会議が対面の会議と同様に位置づけられ、従業員と企業の接点である社内システムや社内ポータルサイトの重要性が高まってきている。我妻は「使い勝手の良いUIはEX向上のカギになります。ポータルサイトなどが改善すれば余計な従業員のストレスが軽減でき、結果として優れたCXを生み出し、企業価値や収益の向上につながると考えています」と話す。CXについては「モノやサービスがコモデティ化する中で企業の競争優位性はモノの価格やスペックで決まるのではなく、モノやサービスなどによる体験に移行しています。顧客体験(CX)の向上はどの企業にとっても重要な課題になっています」と説明する。つまり、CX向上にはサービス体験の向上が必要であり、その実現のためにも従業員体験の向上が不可欠となる。EX向上ひいてはCX向上のためにも、「従業員向けUI」の使い勝手の向上が重要なのだ。

図5:EX向上の必要性と向上のカギ

図5:EX向上の必要性と向上のカギ

NTTデータ自身はEXの向上にどのように取り組んでいるのか。我妻はServiceNowビジネス推進室の活動から「ServiceNowの優れたデジタルワークフロー基盤上で従業員と顧客に対し、常に新しいデジタルエクスペリエンスを生み出しています」と語る。同推進室は、社内ポータルサイトの更改に取り組んでいるが、ここでもUIが重要なテーマだとする。NTTデータ社員は、これまでにない新たなデジタル体験を得られ、それを顧客にも提供できるようになるという。
NTTデータは、ServiceNowの技術を使いこなした自身の体験を通し、それを顧客に提供していく。「今後、必須となるEXソリューションで顧客に貢献し、さらには社会の発展に貢献していく」と浦野は語った。

本記事は、2022年1月27日、28日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2022での講演をもとに構成しています。

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